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時が巻き戻った?①

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「…リア。リア!…起きてリア、学校遅れるよ!」

バサっと布団を剥がされる。何言ってんのお姉ちゃん、私卒業したし何なら死んだんだけど…。…、……。………?…あれ?私神殿で死んだ、よね?
 慌てて辺りを見渡すと、そこは紛れもなく私の部屋だった。潰されたはずの目もちゃんとあるし、左腕もちゃんとある。…どういう事?しかもなんか縮んでない?

「リア?大丈夫?」

呆然として返事のない私の顔を、記憶よりずっと幼いお姉ちゃんが覗き込む。お姉ちゃんは初等学校の制服に身を包んでいた。…夢、なのかな。

「…うん、大丈夫。…おはよう、お姉ちゃん。」
「おはよう。朝ごはんできてるよ、行こう!」

そう言ってお姉ちゃんは私の手を引いて私の部屋を出た。…そういえばお姉ちゃん、昔はこんなに大きかったんだよね…。

「お母さん、起こして来たよー。」
「ありがとう、おはようリア。…あら、寝癖ついてるわよ。」

お母さんはふふ、と笑って頭を撫でるように寝癖を直してくれる。…お姉ちゃんの手もお母さんの手も、あったかい。

「…うん、おはよう。」
「ほら、ご飯食べちゃいなさい。今日はクララの卒業式でしょ?」

あぁ、お姉ちゃんの卒業式か…。お姉ちゃんは魔法の基礎を学ぶ初等学校を卒業した後、そのまま冒険者になって実践で色々学んでいったんだよね。

「そうだねー。リア、卒業式終わったら一緒にケーキ食べよ!」
「…、うん!楽しみにしてるね。」
「じゃ、いただきます!」
「いただきます。」

私は朝ごはんのスープを一口飲んだ。食べ慣れた、お母さんのスープの味だ。ちゃんと暖かい。パンもちゃんと食感が感じられるし、味もちゃんとわかる。…夢にしてはリアルすぎるような…。試しにこっそり足をつねってみるとちゃんと痛いし、掌を見ても手相がくっきりはっきり見えた。…もしかして、時が戻った…?
 そんな疑念を抱えながら学校へ行き、家に帰ってからお姉ちゃんや弟達とケーキを食べる。そしてお姉ちゃんが冒険者としてギルドで登録する所を見届け、お風呂に入った。お湯もちゃんと熱い。今日一日色々試してみたが、どう考えてもこれは夢じゃない。現実だ。以前時を戻す魔法があるらしいという話をニゲルから聞いた事があるし、本当に過去に戻ったのかもしれない。

 ──それなら、今度は殿下との婚約を回避して処刑も回避できるんじゃ…?

 …うん、そうだ。もしこれが夢なんかじゃなくて、誰かがくれたチャンスなら。処刑も婚約も回避して、今度こそ私のこの想いを彼に伝えたい。


「おはようマリウス、聞いて欲しい事があるの!」
「おはようリア、朝から元気だな…。」

翌朝、すぐ近くに住む幼馴染の家に登校前に突撃し、マリウスはまだ眠たそうにしながら返事をした。私はマリウスの手をギュッと握る。

「私と結婚しましょう!」
「は?????」
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