1 / 43
1.鏡の中からこんにちは
1‐1
しおりを挟む
今まで感じたことがない、光の中に自分がいるということを、少しずつ実感する。
立っている足の裏には、床を踏みしめているという感覚がある。
ひらっと身体を少しひねれば、ふわっと舞った制服のスカートの重みが伝わってくる。
……意外に、スカートって重いんだ。
半袖のセーラー服から伸びる、日焼けした肌。
そっ、と触ってみると、今までと違う、熱を感じる。
「出……ちゃった、の?」
ふにっと、自分の頬っぺたをつねってみれば、かすかに痛みを感じた。
感じた。そう。感じるの。
目の前の洗面台の蛇口は、ちょっぴりヒヤッとして、レバーをあげれば、勢いよくジャーッて水が流れ出す。
触れてみようと手を伸ばせば、水は四方に飛び散った。
「キャーッ!」
慌てて手を引っ込めるものの、手だけでなく制服も髪も濡れてしまった。
ポタッと、前髪から落ちる雫が洗面所の床に落ちる。
「現実……よね?」
おそるおそる、前を向く。
洗面台だから、そこには当然【鏡】がある。
見たら、どうなるんだろう?
わたしは、また、戻っちゃうのかな?
そこに映っていたのは、わたしの姿。
それともあたしなのかな?
【鏡】に映る姿は何も反応がない。
……向こうは、どうなっているんだろう?
そっと【鏡】に触れようとしたところ、大きな声が響いてきた。
「莉菜ーっ! いつまで洗面所にいるの! 遅刻するでしょっ」
多分、お母さんだ。
とにかく、今は支度して学校に行かないと、だよね?
「はーいっ! 今行く!」
最後にもう一度【鏡】を見てみるけど、やっぱりそこには莉菜の姿が映っているだけだった。
とにかく今は、莉菜として過ごしてみよう!
だって、せっかく外に出られたんだもん。
思いもしなかった出来事にワクワクしながら、わたしは洗面所を鼻歌交じりに飛び出した。
立っている足の裏には、床を踏みしめているという感覚がある。
ひらっと身体を少しひねれば、ふわっと舞った制服のスカートの重みが伝わってくる。
……意外に、スカートって重いんだ。
半袖のセーラー服から伸びる、日焼けした肌。
そっ、と触ってみると、今までと違う、熱を感じる。
「出……ちゃった、の?」
ふにっと、自分の頬っぺたをつねってみれば、かすかに痛みを感じた。
感じた。そう。感じるの。
目の前の洗面台の蛇口は、ちょっぴりヒヤッとして、レバーをあげれば、勢いよくジャーッて水が流れ出す。
触れてみようと手を伸ばせば、水は四方に飛び散った。
「キャーッ!」
慌てて手を引っ込めるものの、手だけでなく制服も髪も濡れてしまった。
ポタッと、前髪から落ちる雫が洗面所の床に落ちる。
「現実……よね?」
おそるおそる、前を向く。
洗面台だから、そこには当然【鏡】がある。
見たら、どうなるんだろう?
わたしは、また、戻っちゃうのかな?
そこに映っていたのは、わたしの姿。
それともあたしなのかな?
【鏡】に映る姿は何も反応がない。
……向こうは、どうなっているんだろう?
そっと【鏡】に触れようとしたところ、大きな声が響いてきた。
「莉菜ーっ! いつまで洗面所にいるの! 遅刻するでしょっ」
多分、お母さんだ。
とにかく、今は支度して学校に行かないと、だよね?
「はーいっ! 今行く!」
最後にもう一度【鏡】を見てみるけど、やっぱりそこには莉菜の姿が映っているだけだった。
とにかく今は、莉菜として過ごしてみよう!
だって、せっかく外に出られたんだもん。
思いもしなかった出来事にワクワクしながら、わたしは洗面所を鼻歌交じりに飛び出した。
17
お気に入りに追加
8
あなたにおすすめの小説
校長室のソファの染みを知っていますか?
フルーツパフェ
大衆娯楽
校長室ならば必ず置かれている黒いソファ。
しかしそれが何のために置かれているのか、考えたことはあるだろうか。
座面にこびりついた幾つもの染みが、その真実を物語る
極甘独占欲持ち王子様は、優しくて甘すぎて。
猫菜こん
児童書・童話
私は人より目立たずに、ひっそりと生きていたい。
だから大きな伊達眼鏡で、毎日を静かに過ごしていたのに――……。
「それじゃあこの子は、俺がもらうよ。」
優しく引き寄せられ、“王子様”の腕の中に閉じ込められ。
……これは一体どういう状況なんですか!?
静かな場所が好きで大人しめな地味子ちゃん
できるだけ目立たないように過ごしたい
湖宮結衣(こみやゆい)
×
文武両道な学園の王子様
実は、好きな子を誰よりも独り占めしたがり……?
氷堂秦斗(ひょうどうかなと)
最初は【仮】のはずだった。
「結衣さん……って呼んでもいい?
だから、俺のことも名前で呼んでほしいな。」
「さっきので嫉妬したから、ちょっとだけ抱きしめられてて。」
「俺は前から結衣さんのことが好きだったし、
今もどうしようもないくらい好きなんだ。」
……でもいつの間にか、どうしようもないくらい溺れていた。
オオカミ少女と呼ばないで
柳律斗
児童書・童話
「大神くんの頭、オオカミみたいな耳、生えてる……?」 その一言が、私をオオカミ少女にした。
空気を読むことが少し苦手なさくら。人気者の男子、大神くんと接点を持つようになって以降、クラスの女子に目をつけられてしまう。そんな中、あるできごとをきっかけに「空気の色」が見えるように――
表紙画像はノーコピーライトガール様よりお借りしました。ありがとうございます。
校外学習の帰りに渋滞に巻き込まれた女子高生たちが小さな公園のトイレをみんなで使う話
赤髪命
大衆娯楽
少し田舎の土地にある女子校、華水黄杏女学園の1年生のあるクラスの乗ったバスが校外学習の帰りに渋滞に巻き込まれてしまい、急遽トイレ休憩のために立ち寄った小さな公園のトイレでクラスの女子がトイレを済ませる話です(分かりにくくてすみません。詳しくは本文を読んで下さい)
初恋の王子様
中小路かほ
児童書・童話
あたし、朝倉ほのかの好きな人――。
それは、優しくて王子様のような
学校一の人気者、渡優馬くん。
優馬くんは、あたしの初恋の王子様。
そんなとき、あたしの前に現れたのは、
いつもとは雰囲気の違う
無愛想で強引な……優馬くん!?
その正体とは、
優馬くんとは正反対の性格の双子の弟、
燈馬くん。
あたしは優馬くんのことが好きなのに、
なぜか燈馬くんが邪魔をしてくる。
――あたしの小指に結ばれた赤い糸。
それをたどった先にいる運命の人は、
優馬くん?…それとも燈馬くん?
既存の『お前、俺に惚れてんだろ?』をジュニア向けに改稿しました。
ストーリーもコンパクトになり、内容もマイルドになっています。
第2回きずな児童書大賞にて、
奨励賞を受賞しました♡!!
ナミダルマン
ヒノモト テルヲ
児童書・童話
だれかの流したナミダが雪になって、それが雪ダルマになると、ナミダルマンになります。あなたに話しかけるために、どこかに立っているかもしれません。あれ、こんなところに雪ダルマがなんて、思いがけないところにあったりして。そんな雪ダルマにまつわる短いお話を集めてみました。
【完結】てのひらは君のため
星名柚花
児童書・童話
あまりの暑さで熱中症になりかけていた深森真白に、美少年が声をかけてきた。
彼は同じ中学に通う一つ年下の男子、成瀬漣里。
無口、無表情、無愛想。
三拍子そろった彼は入学早々、上級生を殴った不良として有名だった。
てっきり怖い人かと思いきや、不良を殴ったのはイジメを止めるためだったらしい。
話してみると、本当の彼は照れ屋で可愛かった。
交流を深めていくうちに、真白はどんどん漣里に惹かれていく。
でも、周囲に不良と誤解されている彼との恋は前途多難な様子で…?
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる