16 / 26
謎と理由と不安
しおりを挟む
フィストが仕事に出た後、朝食の片付けをしながら俺はフィストとの会話を思い出していた。
「今日はフィストの意外な面を知れたな……」
まともだった人が何かあって変になったのかと思っていたが、元々少し変わっていたようだ。ただ、それがあまり表に出ず、優秀な人だったから気付かれなかったのだろう。
「誰にも気付かれず、注意もされなくて、気付いたとしてもまさかフィストがそんな間違いするわけないと思われてて、指摘もされなかったってことなんだろうな……」
お皿を洗いながら、そんな事を考える。
俺は何に関しても適当で大雑把なので、こんな事になる余地もない。
今回、逃げずにフィストの元に戻ったのも、好きだと告白して押し倒したのもあんまり深く考えず行動した結果だ。
「俺も俺で、結構常識が無いな……」
改めて考思い返してみると、滅茶苦茶な事をしていた。
人の事を評価できるほど自信のある生き方はしていない。本当に適当で行き当たりばったりなのだ。
「フィストが俺の事好きなのは確実だと思うんだけどな……」
フィストの態度は俺に好意があるようにしか見えない。
本人はまったくそのつもりはないみたいだが、俺にはそうとしか見えない。
「まあ、それも可愛いと思っちゃう俺も相当変なのかも……」
不器用だが生真面目で真っすぐなあの性格は自分には無いものだ、だからこそ軟禁されても逃げなかったし、なにかと世話を焼いてしまう。
そして、そこを好きになったんだろう。
夕方になり、フィストが仕事から帰ってきた。
昨日から変だった空気は少し和らいでいる気がする。フィストはちょっとこの関係性に慣れてきたようだ。
俺はいつも通り夕食の準備をして、向かい合って食べる。
フィストの仕事の話とか、家で何をしていたとか。今度これを買ってきて欲しいとか他愛のない話をする。
食事中も明らかに昨日より和やかな雰囲気になった。
ふと、フィストが何かしらの結論を出さなくてもいいかもしれないと思う。
知りたいが、無理をする必要もない。こんな風に穏やかな時間をすごしていくのも悪くないと思う。
「本格的にここで店を探そうかな……」
ポツリと呟く。
「うん?なんの話だ?」
「いや、自分の店を持つために準備してるって言ってたでしょ?」
「ああ、そうだったな」
「ここの街に来たのも、物件を探しに来たのがきっかけでしたし。他の街でも考えていたんですけど。どうせならもっときちんと探していい物件があれば買ってしまおうかと思って……」
探すと以前に言っていたものの、真面目には探していなかった。でもこのままだとこの街にいる時間が長くなりそうだ。いっそのことここに長くいると決めて探してみてもいいかもしれない。
「なるほど、そうか。だったら、俺も応援するよ。そうだ、知り合いに不動産をしてる奴がいるから、なにかいい物件がないか聞いてみる」
「本当?ありがとう、フィストはここが地元ですもんね、心強いです」
「まあ、地元と言ってもそこまで顔は広くないから期待はしないでくれ」
食事が終わり片付けがおわると、フィストはシャワーを浴びにバスルームに入った。
俺も、食器を片付け終わると、頃合いを見計らってバスルームに向かった。
「ん?ヤンか?な、なんだ?」
フィストは俺が入ってくると、驚いて後ずさった。そして、俺の姿を見るなり真っ赤になる。
「フィストも前、俺にしただろ?」
俺はニヤリと笑って言う。
「あ、あれは……」
「これは、仕返し」
俺はジリジリと近づきフィストを壁際に追い込む。フィストは俺より大きな体のくせに、オロオロして逃げようとする。
俺は壁に手を突いて逃げられないようにして、そのままフィストの唇を塞いだ。
フィストは俺より力があるのに、素直にキスをさせてくれる。最初は軽いキス、角度を変えて何度もキスをしていく。
フィストも次第に力が抜けていった。
「フィスト、口を開けて下さい」
俺はそう言いながら、唇を舐める。フィストは顔を真っ赤にさせつつ素直に口を開いた。
すかさず舌を入れ込み、深くキスをする。
探るように舌を絡ませ、唇を甘く噛む。シャワーの水音とは違う水音が聞こえる。
俺はさらにフィストに密着してフィストの物に触れた。
フィストはビクリと体を反応させたが、止めさせようとはしない。だから俺は自分の物とフィストの物を束ね扱く。
そうすると、硬かった体もそれと分かるくらい力が抜けきた。しかし、逆に股間のものは硬く熱くなってくる。
それと同時にフィストの腕がおずおずと俺の体に回された。しかし、背中を迷うように触っているだけだ。
「フィスト、好きなところを触っていいですよ」
「っ……ああ……」
顔を上げそう言うと、迷いながらも頷く。それでもその目には確実に熱が籠っていた。
フィストの手がそろりと下の方に触れる。
ついこの間まで、何度もセックスしていたのになんでこんなに戸惑うのか分からない。
「っん……」
最初は触れるだけだったがその手は次第に大胆に奥まで探るように動く。フィストの体は熱くなっているがこちらも負けず熱くなっているのがわかる。
キスも最初はこちらがリードしていたがフィストも積極的になってきた。
「っ……は……」
息を継ぐために一度離れるとトロリと糸を引く。気持よくて頭がぼんやりしてきた。フィストの目の奥は欲望が燃えていて真っすぐにこちらを見ている。
「フィスト……ここ、入れて……」
俺はフィストに背を向けて壁に手を突きながら言った。少し恥ずかしいが見せつけるように足を開き、さっきまでフィストが解していたところを自分の手で広げる。
フィストは少し迷ったものの、ゴクリと喉を鳴らしたあと、すぐに中に入ってきた。
「っあ……」
さっきまで戸惑って遠慮がちだったのに、入れてしまうとガツガツと勢いよく動き出した。
一気に快楽が体を襲う。
「っく……ヤン……」
「っあ……あん!……あ……フィスト……気持ちいいよ」
背中を逸らしいいところに当たるようにする。何度もしているから、フィストもそれが分かっているのかガッツリと腰を掴み、そこを何度もえぐるように動かす。
「っく、ヤン!!」
後を振り向きながら、そう言うとフィストの動きがさらに激しくなる。
自然と声がこぼれ、体の熱がさらに上げる。冷たいタイルに体の熱を逃がしても追いつきそうにない。
限界はすぐに来た。バチンバチンと肌がぶつかる音がバスルームに響く。
「っあ!……ああ!」
目の奥でチカチカ星が飛んだと同時に下半身に溜まっていた熱を吐き出す。背中にゾクゾクしたものが走り中に入っているフィストを締め付ける。
足ががくがくして立っているのがやっとだ。しかし、しっかりフィストに腰を掴まれていてさらに奥に押し込んだ。
「っく……俺もイク……ぞ……」
フィストがそう言った途端中でフィストの物がブワリと大きくなり弾けたのがわかった。
何度かに分けて吐き出すと、フィストはそこから引き抜く。
「あ……っあ……」
ドロリと中に出されたものが出てきて、敏感になった体がそれにも反応してしまう。
「大丈夫か?」
「はい……でも、ちょっと休憩させて……」
シャワーを浴びながらだったから、少しのぼせた。俺達はバスタブにぬるめのお湯を貯めてそれに浸かりながら休む。
座っているフィストの足の間に座りもたれる。
「はー、気持ちよかった……」
適当に体を洗いながら呟く。
「そうか……それは良かった……」
フィストは少しぐったりしたがら言う。
「フィストは良くなかったですか?」
「いや、まあ……気持ちは良かったが……」
少し赤くなりながらもごもご言った。それを聞いて俺は笑う。こんな事を言っているがフィストの手は俺の太ももを撫でている。俺はフィストの厚い胸板にもたれ顔を上げた。
丁度目が合ったがフィストは恥ずかしそうに目を逸らしてしまった。
それが面白くて俺は笑う。
「そんなに笑わなくても……」
フィストは困ったように言う。
「だって、ついこの間まであんなに何度もセックスしてたのに、なんでそんなに初めてセックスした高校生みたいな反応になるんですか?」
「そ、それは……ヤンがいきなり俺の事を好きなんていうから……」
「それだけで?フィストはモテるだろうし、好きだって言われることはよくあるでしょ?」
俺は首を傾げながら聞く。
「自分でもよく分からない……ヤンが近くにいると緊張してどうしていいか分からなくなる……勝手に顔が赤くなるんだ」
フィストは心底困ったように言う。
「やっぱり、それ俺のこと好きでしょ」
「そ、そうなのか?」
「違うんですか?」
目に見えて明らかなのに、フィストはまだ分からないようだ。
「そう言えば、黒いものがどうのって前言ってましたけど、なんのことか分かりましたか?」
答えが出なさそうなので、俺は話題を変える。
「ああ、その事か……」
「魔力とかディアボルスとは、関係ないって言ってましたよね……」
人間は魔力のあるものとないものがいる。昔はどんな人にも魔力があったらしい、しかも人によるが今よりもっと魔力の高い人間がいて銀の弾なんて使わなくても、その魔力で直接ディアボルスと戦えたんだそうだ。
しかし、魔力はたいして使い道がない。それこそ、ディアボルスに対抗するくらいだ。だから、魔力が衰退したし、その代わり科学が発展した。
魔法は古くて、廃れた技術なのだ。
「一応なにかあるかもと思って、過去の文献を調べたが分からなかった。ただ、それとは関係なさそうだ」
「そうですか……」
「でも考えていくうちに思い出した事もある」
「本当ですか?」
「よくよく思い出してみたら、ずっと昔にもこの黒いものは現れていたんだ」
「え?以前から?思い出したって……忘れてたんです?」
以前からあったとは初耳だ。
「自分でもよくわからないんだ。明らかによくわからないものなのに思い出しもしてなかった」
フィストは不思議そうに言う。
「それは、不思議ですね……最初はあったのはいつからですか?」
「俺の記憶がそもそも信用できないから確かじゃないがおそらく高校くらいの年だったと思う」
「そんな前ですか……じゃあ、確かにディアボルスとは関係なさそうですね」
俺は首をひねり考えこむ。
しかし、感覚的なことだしフィストにしかわからないことだ。
ぼんやり考えながら水面を波立たせる。
その時、フィストがギュッと俺を抱きしめた。
「フィスト、どうしたんですか?」
「ヤンはどうして……そんなに優しいんだ?」
フィストは絞りだすように言った。
「そうですか?」
「嘘をついて軟禁して……それなのにこの家にいたいと言って俺のよくわからない話に真剣に付き合ってくれて……」
「フィスト……」
「俺は自分で自分の事が信じられない。また、なにかしてしまうかもしれない……だから……」
そう言ったフィストはとても辛そうだった。
「フィスト……辛いなら、俺はここにいない方がいいですか?」
俺がここにいるのは、俺の我儘だ。もしかしたら、フィストが変になるのは俺が要因の可能性もある。
しかし、そう言うとフィストは泣きそうな顔になって、さらに俺を腕に力を入れて抱きしめた。
「ヤンがそうしたいならそうしてくれ……でも……」
フィストはそこで言葉を切ってしまう。それでも何となくここにいて欲しいと言っているように感じた。
その表情からフィストは一人思い悩んで不安にもなっていたのだろう。
何だか可哀想になってきた。そして、それと同時に愛おしさがこみ上げる。
「フィスト」
そう言ってフィストと向かい合い、の顔を両手で挟む。
「ヤン……」
「もう、いいです。今日はもう何も考えないで……」
俺はそう言って、キスをする。
「ヤン、でも……」
「今夜だけでもいいです、もっと、気持ちいいとしましょう」
そう言ってさらにさっきより深くキスをして腰を押し付けた。
フィストはもうなにも言わなかった、その代わりに俺のキスに応える。
キスは次第に激しくなっていった。息を継ぐために少し離れた。フィストの目には熱が戻っている。
「フィスト、ここじゃゆっくり出来ない。ベッドに行きましょう」
「ああ」
そうして、俺達は声が枯れて何も出なくなるまでお互いを貪り合った。
「今日はフィストの意外な面を知れたな……」
まともだった人が何かあって変になったのかと思っていたが、元々少し変わっていたようだ。ただ、それがあまり表に出ず、優秀な人だったから気付かれなかったのだろう。
「誰にも気付かれず、注意もされなくて、気付いたとしてもまさかフィストがそんな間違いするわけないと思われてて、指摘もされなかったってことなんだろうな……」
お皿を洗いながら、そんな事を考える。
俺は何に関しても適当で大雑把なので、こんな事になる余地もない。
今回、逃げずにフィストの元に戻ったのも、好きだと告白して押し倒したのもあんまり深く考えず行動した結果だ。
「俺も俺で、結構常識が無いな……」
改めて考思い返してみると、滅茶苦茶な事をしていた。
人の事を評価できるほど自信のある生き方はしていない。本当に適当で行き当たりばったりなのだ。
「フィストが俺の事好きなのは確実だと思うんだけどな……」
フィストの態度は俺に好意があるようにしか見えない。
本人はまったくそのつもりはないみたいだが、俺にはそうとしか見えない。
「まあ、それも可愛いと思っちゃう俺も相当変なのかも……」
不器用だが生真面目で真っすぐなあの性格は自分には無いものだ、だからこそ軟禁されても逃げなかったし、なにかと世話を焼いてしまう。
そして、そこを好きになったんだろう。
夕方になり、フィストが仕事から帰ってきた。
昨日から変だった空気は少し和らいでいる気がする。フィストはちょっとこの関係性に慣れてきたようだ。
俺はいつも通り夕食の準備をして、向かい合って食べる。
フィストの仕事の話とか、家で何をしていたとか。今度これを買ってきて欲しいとか他愛のない話をする。
食事中も明らかに昨日より和やかな雰囲気になった。
ふと、フィストが何かしらの結論を出さなくてもいいかもしれないと思う。
知りたいが、無理をする必要もない。こんな風に穏やかな時間をすごしていくのも悪くないと思う。
「本格的にここで店を探そうかな……」
ポツリと呟く。
「うん?なんの話だ?」
「いや、自分の店を持つために準備してるって言ってたでしょ?」
「ああ、そうだったな」
「ここの街に来たのも、物件を探しに来たのがきっかけでしたし。他の街でも考えていたんですけど。どうせならもっときちんと探していい物件があれば買ってしまおうかと思って……」
探すと以前に言っていたものの、真面目には探していなかった。でもこのままだとこの街にいる時間が長くなりそうだ。いっそのことここに長くいると決めて探してみてもいいかもしれない。
「なるほど、そうか。だったら、俺も応援するよ。そうだ、知り合いに不動産をしてる奴がいるから、なにかいい物件がないか聞いてみる」
「本当?ありがとう、フィストはここが地元ですもんね、心強いです」
「まあ、地元と言ってもそこまで顔は広くないから期待はしないでくれ」
食事が終わり片付けがおわると、フィストはシャワーを浴びにバスルームに入った。
俺も、食器を片付け終わると、頃合いを見計らってバスルームに向かった。
「ん?ヤンか?な、なんだ?」
フィストは俺が入ってくると、驚いて後ずさった。そして、俺の姿を見るなり真っ赤になる。
「フィストも前、俺にしただろ?」
俺はニヤリと笑って言う。
「あ、あれは……」
「これは、仕返し」
俺はジリジリと近づきフィストを壁際に追い込む。フィストは俺より大きな体のくせに、オロオロして逃げようとする。
俺は壁に手を突いて逃げられないようにして、そのままフィストの唇を塞いだ。
フィストは俺より力があるのに、素直にキスをさせてくれる。最初は軽いキス、角度を変えて何度もキスをしていく。
フィストも次第に力が抜けていった。
「フィスト、口を開けて下さい」
俺はそう言いながら、唇を舐める。フィストは顔を真っ赤にさせつつ素直に口を開いた。
すかさず舌を入れ込み、深くキスをする。
探るように舌を絡ませ、唇を甘く噛む。シャワーの水音とは違う水音が聞こえる。
俺はさらにフィストに密着してフィストの物に触れた。
フィストはビクリと体を反応させたが、止めさせようとはしない。だから俺は自分の物とフィストの物を束ね扱く。
そうすると、硬かった体もそれと分かるくらい力が抜けきた。しかし、逆に股間のものは硬く熱くなってくる。
それと同時にフィストの腕がおずおずと俺の体に回された。しかし、背中を迷うように触っているだけだ。
「フィスト、好きなところを触っていいですよ」
「っ……ああ……」
顔を上げそう言うと、迷いながらも頷く。それでもその目には確実に熱が籠っていた。
フィストの手がそろりと下の方に触れる。
ついこの間まで、何度もセックスしていたのになんでこんなに戸惑うのか分からない。
「っん……」
最初は触れるだけだったがその手は次第に大胆に奥まで探るように動く。フィストの体は熱くなっているがこちらも負けず熱くなっているのがわかる。
キスも最初はこちらがリードしていたがフィストも積極的になってきた。
「っ……は……」
息を継ぐために一度離れるとトロリと糸を引く。気持よくて頭がぼんやりしてきた。フィストの目の奥は欲望が燃えていて真っすぐにこちらを見ている。
「フィスト……ここ、入れて……」
俺はフィストに背を向けて壁に手を突きながら言った。少し恥ずかしいが見せつけるように足を開き、さっきまでフィストが解していたところを自分の手で広げる。
フィストは少し迷ったものの、ゴクリと喉を鳴らしたあと、すぐに中に入ってきた。
「っあ……」
さっきまで戸惑って遠慮がちだったのに、入れてしまうとガツガツと勢いよく動き出した。
一気に快楽が体を襲う。
「っく……ヤン……」
「っあ……あん!……あ……フィスト……気持ちいいよ」
背中を逸らしいいところに当たるようにする。何度もしているから、フィストもそれが分かっているのかガッツリと腰を掴み、そこを何度もえぐるように動かす。
「っく、ヤン!!」
後を振り向きながら、そう言うとフィストの動きがさらに激しくなる。
自然と声がこぼれ、体の熱がさらに上げる。冷たいタイルに体の熱を逃がしても追いつきそうにない。
限界はすぐに来た。バチンバチンと肌がぶつかる音がバスルームに響く。
「っあ!……ああ!」
目の奥でチカチカ星が飛んだと同時に下半身に溜まっていた熱を吐き出す。背中にゾクゾクしたものが走り中に入っているフィストを締め付ける。
足ががくがくして立っているのがやっとだ。しかし、しっかりフィストに腰を掴まれていてさらに奥に押し込んだ。
「っく……俺もイク……ぞ……」
フィストがそう言った途端中でフィストの物がブワリと大きくなり弾けたのがわかった。
何度かに分けて吐き出すと、フィストはそこから引き抜く。
「あ……っあ……」
ドロリと中に出されたものが出てきて、敏感になった体がそれにも反応してしまう。
「大丈夫か?」
「はい……でも、ちょっと休憩させて……」
シャワーを浴びながらだったから、少しのぼせた。俺達はバスタブにぬるめのお湯を貯めてそれに浸かりながら休む。
座っているフィストの足の間に座りもたれる。
「はー、気持ちよかった……」
適当に体を洗いながら呟く。
「そうか……それは良かった……」
フィストは少しぐったりしたがら言う。
「フィストは良くなかったですか?」
「いや、まあ……気持ちは良かったが……」
少し赤くなりながらもごもご言った。それを聞いて俺は笑う。こんな事を言っているがフィストの手は俺の太ももを撫でている。俺はフィストの厚い胸板にもたれ顔を上げた。
丁度目が合ったがフィストは恥ずかしそうに目を逸らしてしまった。
それが面白くて俺は笑う。
「そんなに笑わなくても……」
フィストは困ったように言う。
「だって、ついこの間まであんなに何度もセックスしてたのに、なんでそんなに初めてセックスした高校生みたいな反応になるんですか?」
「そ、それは……ヤンがいきなり俺の事を好きなんていうから……」
「それだけで?フィストはモテるだろうし、好きだって言われることはよくあるでしょ?」
俺は首を傾げながら聞く。
「自分でもよく分からない……ヤンが近くにいると緊張してどうしていいか分からなくなる……勝手に顔が赤くなるんだ」
フィストは心底困ったように言う。
「やっぱり、それ俺のこと好きでしょ」
「そ、そうなのか?」
「違うんですか?」
目に見えて明らかなのに、フィストはまだ分からないようだ。
「そう言えば、黒いものがどうのって前言ってましたけど、なんのことか分かりましたか?」
答えが出なさそうなので、俺は話題を変える。
「ああ、その事か……」
「魔力とかディアボルスとは、関係ないって言ってましたよね……」
人間は魔力のあるものとないものがいる。昔はどんな人にも魔力があったらしい、しかも人によるが今よりもっと魔力の高い人間がいて銀の弾なんて使わなくても、その魔力で直接ディアボルスと戦えたんだそうだ。
しかし、魔力はたいして使い道がない。それこそ、ディアボルスに対抗するくらいだ。だから、魔力が衰退したし、その代わり科学が発展した。
魔法は古くて、廃れた技術なのだ。
「一応なにかあるかもと思って、過去の文献を調べたが分からなかった。ただ、それとは関係なさそうだ」
「そうですか……」
「でも考えていくうちに思い出した事もある」
「本当ですか?」
「よくよく思い出してみたら、ずっと昔にもこの黒いものは現れていたんだ」
「え?以前から?思い出したって……忘れてたんです?」
以前からあったとは初耳だ。
「自分でもよくわからないんだ。明らかによくわからないものなのに思い出しもしてなかった」
フィストは不思議そうに言う。
「それは、不思議ですね……最初はあったのはいつからですか?」
「俺の記憶がそもそも信用できないから確かじゃないがおそらく高校くらいの年だったと思う」
「そんな前ですか……じゃあ、確かにディアボルスとは関係なさそうですね」
俺は首をひねり考えこむ。
しかし、感覚的なことだしフィストにしかわからないことだ。
ぼんやり考えながら水面を波立たせる。
その時、フィストがギュッと俺を抱きしめた。
「フィスト、どうしたんですか?」
「ヤンはどうして……そんなに優しいんだ?」
フィストは絞りだすように言った。
「そうですか?」
「嘘をついて軟禁して……それなのにこの家にいたいと言って俺のよくわからない話に真剣に付き合ってくれて……」
「フィスト……」
「俺は自分で自分の事が信じられない。また、なにかしてしまうかもしれない……だから……」
そう言ったフィストはとても辛そうだった。
「フィスト……辛いなら、俺はここにいない方がいいですか?」
俺がここにいるのは、俺の我儘だ。もしかしたら、フィストが変になるのは俺が要因の可能性もある。
しかし、そう言うとフィストは泣きそうな顔になって、さらに俺を腕に力を入れて抱きしめた。
「ヤンがそうしたいならそうしてくれ……でも……」
フィストはそこで言葉を切ってしまう。それでも何となくここにいて欲しいと言っているように感じた。
その表情からフィストは一人思い悩んで不安にもなっていたのだろう。
何だか可哀想になってきた。そして、それと同時に愛おしさがこみ上げる。
「フィスト」
そう言ってフィストと向かい合い、の顔を両手で挟む。
「ヤン……」
「もう、いいです。今日はもう何も考えないで……」
俺はそう言って、キスをする。
「ヤン、でも……」
「今夜だけでもいいです、もっと、気持ちいいとしましょう」
そう言ってさらにさっきより深くキスをして腰を押し付けた。
フィストはもうなにも言わなかった、その代わりに俺のキスに応える。
キスは次第に激しくなっていった。息を継ぐために少し離れた。フィストの目には熱が戻っている。
「フィスト、ここじゃゆっくり出来ない。ベッドに行きましょう」
「ああ」
そうして、俺達は声が枯れて何も出なくなるまでお互いを貪り合った。
0
お気に入りに追加
163
あなたにおすすめの小説
【完】死にたがりの少年は、拾われて初めて愛される幸せを知る。
唯月漣
BL
「アンタなんか産まなきゃよかった」
コレが俺の母さんの口癖だった。
生まれたときからこの世界に俺の居場所なんてなくて、生きるためには何だってやるしかなかった。
毒親に育てられた真冬にとって、この世界で生きる事は辛い事以外の何者でもなかった。一人で眠るといつも見てしまう、地獄のような悪夢。
悪夢から逃れるため、真冬は今宵も自分を抱きしめてくれる一夜限りの相手を求め、夜の街で男を漁る。
そんな折り、ひょんな事から真冬はラーメン屋の店主、常春に拾われる。
誰にでも見返りを求めずに優しくする大谷常春という人物に、真冬は衝撃を受け、段々と惹かれていく。
人間の幸せとは何かを日々教えてくれる常春に、死にたがりだった真冬は、初めて『幸せになりたい』と願う。
けれど、そんな常春には真冬の知らない秘密の過去があった。残酷な運命に翻弄される二人は、果たして幸せになれるのだろうかーーーー!?
◇◆◇◆◇◆
★第一章【優しさ垂れ流しお兄さん✕死にたがり病み少年】
第二章【明るく元気な大学生✕年上美人のお兄さん】です。
【含まれる要素】焦らし、攻めフェ、リバ体質のキャラ、お仕置き、くすぐりプレイ、顔射】等。
☆エロ回には*を付けています。
一部に残酷な描写があります。
★ムーンライトノベルズにも掲載中。
※この物語はフィクションです。実際の事件や実在の人物とは一切関係ありません。犯罪行為を容認する意図等は一切ございません。
アングレカム
むぎ
BL
オメガバース作品。初投稿。
産まれた時から病弱だったが、愛情深い家族や周囲の支えを受け、真っ直ぐ健気に育った月見里時雨(やまなししぐれ・15歳・最上位Ω)。
アメリカで療養していたが、高校入学を機に、兄のいる日本に帰国する。
進学先で出逢ったのは、世界を牛耳る来栖財閥の嫡男、来栖櫂斗(くるすかいと・15歳・最上位α)
時雨と鷹斗は運命の番同士、出逢った瞬間から惹かれ合う。
ーいつまでも2人で過ごせますようにー
溺愛攻め×病弱健気受け
※医療・病気に関する描写がありますが、現実とは異なるものであり、架空のものです。全てフィクションで医療的知識はございません。
年下彼氏の策略
水無瀬雨音
BL
※タイトル変更しました。
「あんたを汚したら、俺は楽になれるんですかね」
千堂樹はイケメン高身長かつ愛想よく明るいキャラクターで社内外の誰からも人気の営業マン。表面上取り繕っているだけで幼少期のトラウマから人を心から信じることができず、内心はかなりの腹黒。
誰とでもなんなく付き合えるのに、先輩の小鳩祐だけは苦手だった。
利益があるから人に優しくすると思っている樹にとって、利益もないのに誰にでも親切な祐が理解できない。見ているだけで祐に苛立つ樹だったが、関わらなければいいと思いながらも何故か関わってしまう。ならば徹底的に付きまとって祐の裏の顔を暴いてやろうと思う樹だったが、だんだんと樹の純真さに惹かれていく。
くっつく前のじれったい感じを書きたいのですぐにはくっつかないと思います。
腹黒年下×ほんわか地味メガネ(素顔はそこそこイケメン)
※作者未経験の業種のため業務内容など現実と差異がある場合があります。スルー推奨。
途中急展開しております。もうすこし丁寧に書きたかったのですが、いい加減引っ張りすぎかと。
※当然ですがこの作品の著作権は作者にあります。
設定、話の流れ、セリフなど盗作することは絶対にやめてください。
多少変えたとしても類似していれば運営さま、その他に通報します。
またこの作品と似たモノを見つけたら作者及び運営さままで通報いただけますようお願い申し上げます。
護衛騎士をやめたら軟禁されました。
海野クラゲ
BL
護衛騎士である【ルドルフ】は子爵の後継者であり麗しき美貌の持ち主である【アーロ】に想いを寄せてしまう。
けれども男であり護衛騎士の身分である為、それに耐えきれず逃げるかのように護衛騎士を退職することに。
しかしアーロによって塔に軟禁されてしまう。
メンヘラ攻め×歳上受けです。ほぼエロですがご了承ください。
恋に臆病な僕らのリスタート ~傷心を癒してくれたのはウリ専の男でした~
有村千代
BL
傷心の堅物リーマン×淫らな癒し系ウリ専。淫猥なようであたたかく切ない、救済系じれじれラブ。
<あらすじ>
サラリーマンの及川隆之は、長年付き合っていた彼女に別れを告げられ傷心していた。
その手にあったのは婚約指輪で、投げやりになって川に投げ捨てるも、突如として現れた青年に拾われてしまう。
彼の優しげな言葉に乗せられ、飲みに行った先で身の上話をする隆之。しかしあろうことか眠り込んでしまい、再び意識が戻ったときに見たものは…、
「俺に全部任せてよ、気持ちよくしてあげるから」
なんと、自分の上で淫らに腰を振る青年の姿!? ウリ専・風俗店「Oasis」――ナツ。渡された名刺にはそう書いてあったのだった。
後日、隆之は立て替えてもらった料金を支払おうと店へ出向くことに。
「きっと寂しいんだよね。俺さ――ここにぽっかり穴が開いちゃった人、見過ごせないんだ」
そう口にするナツに身も心もほだされていきながら、次第に彼が抱える孤独に気づきはじめる。
ところが、あくまでも二人は客とボーイという金ありきの関係。一線を超えぬまま、互いに恋愛感情が膨らんでいき…?
【傷心の堅物リーマン×淫らな癒し系ウリ専(社会人/歳の差)】
※『★』マークがついている章は性的な描写が含まれています
※全10話+番外編1話(ほぼ毎日更新)
※イチャラブ多めですが、シリアス寄りの内容です
※作者X(Twitter)【https://twitter.com/tiyo_arimura_】
※マシュマロ【https://bit.ly/3QSv9o7】
※掲載箇所【エブリスタ/アルファポリス/ムーンライトノベルズ/BLove/fujossy/pixiv/pictBLand】
おっさんが願うもの
猫の手
BL
今まで普通に人生を歩んできたはずなのに…。
38歳、独身。事務機器メーカーの営業マンとして平々凡々と生きてきた。
8年前、結婚を考えていた彼女の浮気が発覚し破局。要するに二股されていたのだ。わかった時の修羅場といったら、それはもう悲惨だった…。
それから8年。彼女も作らず、というか結構なトラウマになってしまったらしく、女性と付き合うことが出来なくなってしまった。
そんな俺がまさかこんな世界に放り込まれるなんて。
俺は目の前で片膝を付いて手を差し出している男の顔をマジマジと見つめる。
どう見たってこれは求愛だろう。
なんで俺が…。
※初投稿です。
※異世界ものですが、その世界観を知ってもらうために、説明に近い文が多いと思います。どうか飽きずに読んで頂けると幸いです。
※「小説家になろう」にも数話遅れて投稿しています。
狂宴〜接待させられる美少年〜
はる
BL
アイドル級に可愛い18歳の美少年、空。ある日、空は何者かに拉致監禁され、ありとあらゆる"性接待"を強いられる事となる。
※めちゃくちゃ可愛い男の子がひたすらエロい目に合うお話です。8割エロです。予告なく性描写入ります。
※この辺のキーワードがお好きな方にオススメです
⇒「美少年受け」「エロエロ」「総受け」「複数」「調教」「監禁」「触手」「衆人環視」「羞恥」「視姦」「モブ攻め」「オークション」「快楽地獄」「男体盛り」etc
※痛い系の描写はありません(可哀想なので)
※ピーナッツバター、永遠の夏に出てくる空のパラレル話です。この話だけ別物と考えて下さい。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる