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四章
問題なのは?
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新学期になり学院が始まると、僕達の教室も門から少し離れた別の棟へと変わったため、窓から見える景色にも少しだけ変化があった。だけど、それ以外は特に変わりばえなく、何時もと変わらないような時間が流れていた。
「やっぱり門からの距離が遠くなると、やはり少しだけですが疲れますね…」
新学期が始まって一週間くらいが経った頃、門から歩いてきただろうコンラットが朝の挨拶もそこそこに、少し疲れたような様子で僕達にぼやいて来た。
「何言ってんだ?こんなの誤差みたいなもんだろ?」
「毎日、屋敷から走って通って来ている人に取っては、そうなんでしょうね…」
入学していた頃から続けている走り込みを兼ねた通学は、今もなおバルドは続いているようで、僕も馬車で帰り道とかで、たまに街の子達と一緒にいるのを見掛けた事もある。
だから、家が隣のコンラットにとっては周知の事実だけど、僕よりも体力がないから、未だに理解出来ないような視線を向けていた。
「でも、最近そのせいで少し悩んでるんだよなぁ…」
「貴女が悩み事なんて、珍しいですね?」
考えるよりも、先ずは行動するバルドにしては珍しいなと、僕も一緒になって不思議そうな視線を向けていれば、バルドが徐に口を開いた。
「最初の頃より時間が掛からなくなったから、朝一人でいる時間が長くなって暇なんだよ…」
バルドに取っては重要な事のようで、少し寂しそうでつまらなそうな顔をしつつも、何処か真剣な顔を浮かべていた。だけど、こっちとしては少し拍子抜けしてしまい何も言わないでいると、ネアへと視線を向けた。
「なぁ?ネアは、もう少し速く来たりしないのか?」
「何で俺が、そんな理由で速く起きなきゃいけないんだよ」
「だよな…。リュカ達は、朝出る時間決まっているから無理だろうし…」
僕達は父様達と朝食を食べてから来るから、学院に付く時間はだいたい決まっていた。でも、ネアは自分が起きた時間に合わせているから、毎回学院に付く時間がまちまちで、朝速い時もあれば、たまに遅刻しそうな時間に来る事もあった。だけど、それでも1度も遅刻した事はないのが凄い。
「そもそも、貴方がもう少し遅く出て来れば良いだけじゃないんですか?」
「うーん…今更朝の習慣を変えると、何か調子崩しそうなんだよな…」
コンラットの言葉に納得はしていても、いまいちピンと来ていないような浮かない顔で唸っていた。
「それなら、その時間を利用して勉強でもしていたらどうですか?」
「そういえば、リュカは選択科目はもう決めたのか!?」
「話しを逸らしましたね…」
「何言ってんだ!?リュカだけがまだ決めてなかったから、それを心配するのは友達として当たり前だろ!?」
ジト目で見ているコンラットに、バルドは少し動揺したように返してた。何だか話しを逸らすために利用されたような感じは否めないけれど、気に掛けて貰えていたのは少し嬉しい。
「それで、決めたのか!?」
「うん。薬学にしようかなって」
「薬学?何か、つまんなさそうだな?」
僕の言葉にバルドが訝しげな声を上げ、その隣でにいたコンラットも不思議そうな顔をしていた。
「私はてっきり、得意の数学か、好きな音楽とかを選ぶのだと思っていました」
コンラットの言う通り、僕も最初はどっちかにしようかなと思ったりもした。
「兄様に聞いたら、薬学が一番役に立ったって言ってたから、僕もそれにしてみようかなって思って」
兄様は役に立つかどうかよりも、僕が好きな物を選べば良いとも言っていたけど、どうせなら役に立つものを学びたい。
「あぁ、確かに役立ちそうだな!俺も良く稽古の時とかに怪我するから、傷薬とかよく使うぞ!」
僕はあまり使った事はないけれど、バルドに取っては身近な物みたいで、僕が薬学を選んだ事に凄く好意的な反応だった。
「まぁ、お前が決めたなら良いが、周りの連中には気を付けろよ」
「何で?」
好意的な反応の後に不穏な事を言って来るから、ネアに若干の不満を滲ませながら聞き返す。
「体力がなくても取得出来る専門科は、位の低い次男や三男が多かったりするんだよ。だから、お前みたいなのは格好の獲物としてまとわり付かれる可能性があるからな」
「そ、それは…何か嫌だなぁ…」
ネアの言葉を受けて、僕が嫌そうな顔を浮かべたけれど、自分にはどうしようもないとでも言うような淡々とした態度で言って来た。
「俺達は側に居ないんだから、それは自分で何とかしろよ」
やっぱり、みんなと一緒に受けれる科目にしようかな…でもなぁ…と僕が悩んでいると、そんな僕の迷いに気付いていないのか、コンラットが口を開いた。
「とりあえず、今から先の事を心配しても仕方がないので、先ずは提出だけでも済ませてしまいませんか?そうでないと、提出を忘れそうな人が1人いますので」
「だから!あれは忘れてたわけじゃないって!」
コンラットがあからさまな視線を向けられたせいか、バルドは憤りの声を上げていた。でも、忘れていなかったとしても、理由が理由だから、みんなから向けられる視線は少し冷たい。
コンラットの意見も一理あった事もあり、その後、みんなでリータス先生に提出しに行く事になった。だけど、その間もバルドは少し不機嫌そうなままだったけど、そこまでのその道すがら、僕は別な事で悩んでいたので、気に掛ける余裕は僕にはなかった。
提出を終え、次の月から選択科目が徐々に始まったけれど、魔力操作は兄様とか習っていたし、召喚獣の授業もみんなと一緒に受けるから、特に問題はなかった。だけど、自分で選んだ最後の授業だけが問題だった。
今まで授業を受ける時は常にバルド達と一緒で、何時も周りには見知った誰かがいた。そのため、教室の席に一人で座っている今の状況は、物凄く心細さを感じる。
だけど、ネアの予想と反して、みんなが僕の事を避けられているのか、遠巻きにしか人がいない。視線を向けられている事に居心地の悪さを感じ、どうしてもそちらへと視線を向けられず、その後の授業もずっと下を向いていた。
「はぁ…」
「ため息なんて付いてどうしたんだ?」
初めての授業を終え、みんなでお昼ご飯を食べようと集まった食堂で僕がため息を付けば、バルドは食べていた手を止めて、僕へと視線を向けた。
「薬草の名前とか、全く覚えられそうになくて…」
「あぁ、お前、暗記とか苦手だもんな」
止めていた手を再び動かしながら、僕の言葉に納得したように相槌を打っていた。
「うん…それに、話し掛けては来ないのに、僕の事見てる視線だけを感じて、教室の中が居心地悪い…」
「そうなのか?それは大変だな」
さり気なく一番の悩み事を打ち明けても、バルドは気遣うような言葉を掛けつつも、何処か他人事のようだった。
「それって、お前に声掛けられるの待ってんじゃないか?」
「えっと…?それって、どういう事?」
悩み事をサラッと流された事を不満に思っていた僕は、ネアから言われた事が咄嗟に理解出来ず、疑問符を付けながら聞き返す。すると、ネアは至って当然の事を口にするように、僕へと言った。
「互いに牽制してるから動かないだけで、目線とかきっかけさえあれば、普通に声掛けて来ると思うぞ」
言われて思い返してみれば、授業が始まる前後とか、やたら僕の周りで人が動いているような物音はしていた気がする。そんな僕の様子を見て、ネアはだいたいの状況を察したようだった。
「鈍くて助かったな」
「それなら、ネアの方はどうなの?」
「別に、特に普通だ」
何処かからかうように言うネアにムッとしつつ、僕がネアへと聞返せば、平然とした様子を崩す事なく返事が返ってきて、僕としては面白くない。そんな気持ちを誤魔化すために、その向かいへと視線を向ける。
「コンラットはネアと一緒だけど、本当に何もないの?」
「そうですね。ネアの言う通り、今の所は何もありません。ですが、前にネアと騒ぎになった相手がいたので、今後が心配です…」
「あぁ…ネア…容赦なく反撃したみたいだからな…」
前に嫌がらせをされた際、ネアがそいつ等に反撃して、少し騒ぎになった事がある。
「やり返される覚悟もないのに絡んで来る方が悪い」
「普通は、爵位持ちの相手にやり返したりしませんよ…」
「ネアの場合、しっかり証拠も準備してから反撃してるから、やっぱり成績良い奴違うな!俺なら直ぐに殴りそう!」
バルドは、その時の事を思い出しかのように、感心した様子で笑いながら頷いていた。
「貴方ならそうでしょうね…。ですが、幾ら学院が平等を掲げていても、余りにも無茶が過ぎますよ…」
「だから、証拠を用意してから手を出しただろう」
ネアの発言を裏付ける嫌がらせの証拠があったから、街の人間が貴族に手を出した事で騒ぎにはなっても、あの件は大きな問題にはならなかった。だけど、それがあったからか、あからさまな嫌がらせがなくなって、無視される程度になったらしい。
「はぁ…今年度が平和に終わるまで、誰もネアに絡まないでくれる事を祈ります…」
本人も無理だと思っているのか、半ば諦めたような顔を浮かべていた。
「それにしても、バルドが一番問題がないと言うのは、少し予想外でした」
落ち込んでても仕方がないと思ったのか、調子を戻すようにバルドへと声を掛ける。だけど、声を掛けられた方は食べていたのを止めて、少し微妙そうな顔を浮かべていた。
「そんな事ない…アリアがいた…」
「アリアがですか?それなら、真っ先に不満を私達に言いそうなのものですが?」
バルドの性格をよく知っているコンラットにとっては、当然の疑問なようで、不思議そうな顔をしていた。
「うーん…今までだとネアくらいしかまともに戦える相手がいないと思ってたけど、ネアはやる気ないからつまらない時があって…だけど、今回アリアとやったら、意外と手応えあって楽しい…けど…うーん…」
コンラットからの問い掛けに、自分でもどう説明して良いのか分からなそうな、何とも微妙かつ、複雑そうな顔で唸っていた。だけど、そんなバルドの話しを聞いていて、僕は1つだけ気付いた事があった。
「知り合いがいないの…僕だけなんだね…」
言葉にすると、何だか更に物悲しくなり、速くも薬学を選んた事を後悔し始めた。
「やっぱり門からの距離が遠くなると、やはり少しだけですが疲れますね…」
新学期が始まって一週間くらいが経った頃、門から歩いてきただろうコンラットが朝の挨拶もそこそこに、少し疲れたような様子で僕達にぼやいて来た。
「何言ってんだ?こんなの誤差みたいなもんだろ?」
「毎日、屋敷から走って通って来ている人に取っては、そうなんでしょうね…」
入学していた頃から続けている走り込みを兼ねた通学は、今もなおバルドは続いているようで、僕も馬車で帰り道とかで、たまに街の子達と一緒にいるのを見掛けた事もある。
だから、家が隣のコンラットにとっては周知の事実だけど、僕よりも体力がないから、未だに理解出来ないような視線を向けていた。
「でも、最近そのせいで少し悩んでるんだよなぁ…」
「貴女が悩み事なんて、珍しいですね?」
考えるよりも、先ずは行動するバルドにしては珍しいなと、僕も一緒になって不思議そうな視線を向けていれば、バルドが徐に口を開いた。
「最初の頃より時間が掛からなくなったから、朝一人でいる時間が長くなって暇なんだよ…」
バルドに取っては重要な事のようで、少し寂しそうでつまらなそうな顔をしつつも、何処か真剣な顔を浮かべていた。だけど、こっちとしては少し拍子抜けしてしまい何も言わないでいると、ネアへと視線を向けた。
「なぁ?ネアは、もう少し速く来たりしないのか?」
「何で俺が、そんな理由で速く起きなきゃいけないんだよ」
「だよな…。リュカ達は、朝出る時間決まっているから無理だろうし…」
僕達は父様達と朝食を食べてから来るから、学院に付く時間はだいたい決まっていた。でも、ネアは自分が起きた時間に合わせているから、毎回学院に付く時間がまちまちで、朝速い時もあれば、たまに遅刻しそうな時間に来る事もあった。だけど、それでも1度も遅刻した事はないのが凄い。
「そもそも、貴方がもう少し遅く出て来れば良いだけじゃないんですか?」
「うーん…今更朝の習慣を変えると、何か調子崩しそうなんだよな…」
コンラットの言葉に納得はしていても、いまいちピンと来ていないような浮かない顔で唸っていた。
「それなら、その時間を利用して勉強でもしていたらどうですか?」
「そういえば、リュカは選択科目はもう決めたのか!?」
「話しを逸らしましたね…」
「何言ってんだ!?リュカだけがまだ決めてなかったから、それを心配するのは友達として当たり前だろ!?」
ジト目で見ているコンラットに、バルドは少し動揺したように返してた。何だか話しを逸らすために利用されたような感じは否めないけれど、気に掛けて貰えていたのは少し嬉しい。
「それで、決めたのか!?」
「うん。薬学にしようかなって」
「薬学?何か、つまんなさそうだな?」
僕の言葉にバルドが訝しげな声を上げ、その隣でにいたコンラットも不思議そうな顔をしていた。
「私はてっきり、得意の数学か、好きな音楽とかを選ぶのだと思っていました」
コンラットの言う通り、僕も最初はどっちかにしようかなと思ったりもした。
「兄様に聞いたら、薬学が一番役に立ったって言ってたから、僕もそれにしてみようかなって思って」
兄様は役に立つかどうかよりも、僕が好きな物を選べば良いとも言っていたけど、どうせなら役に立つものを学びたい。
「あぁ、確かに役立ちそうだな!俺も良く稽古の時とかに怪我するから、傷薬とかよく使うぞ!」
僕はあまり使った事はないけれど、バルドに取っては身近な物みたいで、僕が薬学を選んだ事に凄く好意的な反応だった。
「まぁ、お前が決めたなら良いが、周りの連中には気を付けろよ」
「何で?」
好意的な反応の後に不穏な事を言って来るから、ネアに若干の不満を滲ませながら聞き返す。
「体力がなくても取得出来る専門科は、位の低い次男や三男が多かったりするんだよ。だから、お前みたいなのは格好の獲物としてまとわり付かれる可能性があるからな」
「そ、それは…何か嫌だなぁ…」
ネアの言葉を受けて、僕が嫌そうな顔を浮かべたけれど、自分にはどうしようもないとでも言うような淡々とした態度で言って来た。
「俺達は側に居ないんだから、それは自分で何とかしろよ」
やっぱり、みんなと一緒に受けれる科目にしようかな…でもなぁ…と僕が悩んでいると、そんな僕の迷いに気付いていないのか、コンラットが口を開いた。
「とりあえず、今から先の事を心配しても仕方がないので、先ずは提出だけでも済ませてしまいませんか?そうでないと、提出を忘れそうな人が1人いますので」
「だから!あれは忘れてたわけじゃないって!」
コンラットがあからさまな視線を向けられたせいか、バルドは憤りの声を上げていた。でも、忘れていなかったとしても、理由が理由だから、みんなから向けられる視線は少し冷たい。
コンラットの意見も一理あった事もあり、その後、みんなでリータス先生に提出しに行く事になった。だけど、その間もバルドは少し不機嫌そうなままだったけど、そこまでのその道すがら、僕は別な事で悩んでいたので、気に掛ける余裕は僕にはなかった。
提出を終え、次の月から選択科目が徐々に始まったけれど、魔力操作は兄様とか習っていたし、召喚獣の授業もみんなと一緒に受けるから、特に問題はなかった。だけど、自分で選んだ最後の授業だけが問題だった。
今まで授業を受ける時は常にバルド達と一緒で、何時も周りには見知った誰かがいた。そのため、教室の席に一人で座っている今の状況は、物凄く心細さを感じる。
だけど、ネアの予想と反して、みんなが僕の事を避けられているのか、遠巻きにしか人がいない。視線を向けられている事に居心地の悪さを感じ、どうしてもそちらへと視線を向けられず、その後の授業もずっと下を向いていた。
「はぁ…」
「ため息なんて付いてどうしたんだ?」
初めての授業を終え、みんなでお昼ご飯を食べようと集まった食堂で僕がため息を付けば、バルドは食べていた手を止めて、僕へと視線を向けた。
「薬草の名前とか、全く覚えられそうになくて…」
「あぁ、お前、暗記とか苦手だもんな」
止めていた手を再び動かしながら、僕の言葉に納得したように相槌を打っていた。
「うん…それに、話し掛けては来ないのに、僕の事見てる視線だけを感じて、教室の中が居心地悪い…」
「そうなのか?それは大変だな」
さり気なく一番の悩み事を打ち明けても、バルドは気遣うような言葉を掛けつつも、何処か他人事のようだった。
「それって、お前に声掛けられるの待ってんじゃないか?」
「えっと…?それって、どういう事?」
悩み事をサラッと流された事を不満に思っていた僕は、ネアから言われた事が咄嗟に理解出来ず、疑問符を付けながら聞き返す。すると、ネアは至って当然の事を口にするように、僕へと言った。
「互いに牽制してるから動かないだけで、目線とかきっかけさえあれば、普通に声掛けて来ると思うぞ」
言われて思い返してみれば、授業が始まる前後とか、やたら僕の周りで人が動いているような物音はしていた気がする。そんな僕の様子を見て、ネアはだいたいの状況を察したようだった。
「鈍くて助かったな」
「それなら、ネアの方はどうなの?」
「別に、特に普通だ」
何処かからかうように言うネアにムッとしつつ、僕がネアへと聞返せば、平然とした様子を崩す事なく返事が返ってきて、僕としては面白くない。そんな気持ちを誤魔化すために、その向かいへと視線を向ける。
「コンラットはネアと一緒だけど、本当に何もないの?」
「そうですね。ネアの言う通り、今の所は何もありません。ですが、前にネアと騒ぎになった相手がいたので、今後が心配です…」
「あぁ…ネア…容赦なく反撃したみたいだからな…」
前に嫌がらせをされた際、ネアがそいつ等に反撃して、少し騒ぎになった事がある。
「やり返される覚悟もないのに絡んで来る方が悪い」
「普通は、爵位持ちの相手にやり返したりしませんよ…」
「ネアの場合、しっかり証拠も準備してから反撃してるから、やっぱり成績良い奴違うな!俺なら直ぐに殴りそう!」
バルドは、その時の事を思い出しかのように、感心した様子で笑いながら頷いていた。
「貴方ならそうでしょうね…。ですが、幾ら学院が平等を掲げていても、余りにも無茶が過ぎますよ…」
「だから、証拠を用意してから手を出しただろう」
ネアの発言を裏付ける嫌がらせの証拠があったから、街の人間が貴族に手を出した事で騒ぎにはなっても、あの件は大きな問題にはならなかった。だけど、それがあったからか、あからさまな嫌がらせがなくなって、無視される程度になったらしい。
「はぁ…今年度が平和に終わるまで、誰もネアに絡まないでくれる事を祈ります…」
本人も無理だと思っているのか、半ば諦めたような顔を浮かべていた。
「それにしても、バルドが一番問題がないと言うのは、少し予想外でした」
落ち込んでても仕方がないと思ったのか、調子を戻すようにバルドへと声を掛ける。だけど、声を掛けられた方は食べていたのを止めて、少し微妙そうな顔を浮かべていた。
「そんな事ない…アリアがいた…」
「アリアがですか?それなら、真っ先に不満を私達に言いそうなのものですが?」
バルドの性格をよく知っているコンラットにとっては、当然の疑問なようで、不思議そうな顔をしていた。
「うーん…今までだとネアくらいしかまともに戦える相手がいないと思ってたけど、ネアはやる気ないからつまらない時があって…だけど、今回アリアとやったら、意外と手応えあって楽しい…けど…うーん…」
コンラットからの問い掛けに、自分でもどう説明して良いのか分からなそうな、何とも微妙かつ、複雑そうな顔で唸っていた。だけど、そんなバルドの話しを聞いていて、僕は1つだけ気付いた事があった。
「知り合いがいないの…僕だけなんだね…」
言葉にすると、何だか更に物悲しくなり、速くも薬学を選んた事を後悔し始めた。
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