117 / 228
三章
普段から
しおりを挟む
「まあ、程々に楽しめたから、冗談もここまでにしましょうか」
え…今のが冗談なの…?兄様達もそうだけど、冗談に聞こえないし、見えないのはなんでなんだろう…。
「それにしても、こんな情けなさい姿を見ると、ちゃんと社交界でもやって行けるのかと不安になるわ」
静かに座る2人を横目で見ながら、ため息を付くように言った。
「男連中の事は、エレナとも話したりするけれど、女性に花を持たせてこそ、本当の紳士だと思うのよ。息子の貴方もそう思わなくて?」
「えっ!?あ…そうなんですかね…」
いきなり話しを振られて、どう返答したらいいのか分からないのもあったけど、肯定してもいいのかも分からなかったから、曖昧な返事になってしまった…。
「はぁ…。そんな曖昧な事を言っていると、足元をすくわれるわよ。身内や知り合いなら良いかもしれないけれど、社交界においては、少しのすきが命取りになる事もあるわ。あれが父親なら、注意し過ぎる事はないから覚えておきなさい」
「はい…。気を付けるようにします…」
他愛のない話から、急に真面目な駄目出しを受けた。そのせいで、初めて参加したパーティで、迷惑をかけるだけで終わってしまった事も思い出し、少しへこんでしまった。
パーティの時もそうだけど、父様達が何時も側にいてくれるわけじゃない。僕の一言で、父様達に迷惑を掛けたくはないから、今後の事を考えるなら、言動には注意した方が良さそうだ…。
「そ、そんな気にするなって!ほら、俺も出来てないから!」
「分かっているなら、貴方は治す努力をしなさいね」
「はい…」
僕を励まそうとしたバルドが、巻き添えを食らう形で撃沈していた。
「そんな事より、それは何時買ったんですか?そんなの付けてる所見た事ないですよ?」
僕達のために話題を変えようとしてくれたのか、お兄さんがネックレスに付いて聞くと、先程とはうってかわって楽しそうに笑いながら答えた。
「フフッ、これは買ったわけじゃないわ。昔、口止め料として貰った物だから、普段は付けたりしないのだけど、今回は面白そうだったから付けてみたの」
「面白そう?」
「そうよ」
小さく笑い声を上げながら話す様子だけを見ると、さっきまでのやり取りが夢だったんじゃないかと感じられるから不思議だ。
その後は、学院での事を聞かれたり、バルドの昔の失敗談を教えて貰ったりと、他愛ない話題をしながら過ぎて行った。でも、最初の方の印象が強すぎて、僕も父様達と同じように、苦手だなと思った。
僕達は夕食が無事に終わった後、それぞれの客室に行く前に、バルドの部屋へと一度戻って来た。
「疲れた…」
部屋に着くなりネアは、ぐったりと2人がけのソファーに身を沈み込ませながら言った。
「それにしても、お前、別人みたいだったな」
「うん!僕も、びっくりした」
目の前のソファーでぐったりと寝そべっている姿からは想像出来ないくらい、さっきまでの様子はしっかりしていた。マナーとかもしっかりしていて、僕達と同じ貴族みたいだった。
「普段から、あの態度で過ごせば、面倒事をさけられると思いますよ?」
「堅苦しいのは好きじゃない。今回は、昔に習った事も使ってなんとか凌いだが、あんな誤魔化しが長く続くわけがないだろう」
ネアは、目を閉じたまま、身じろぎもしないで、力なくコンラッドの言葉に答えていた。
「そんな事ないって、毎回、頼みたいぐらいだった」
「断固として断る!」
バルドの言葉を聞いた瞬間、閉じていた目を開けて、ネアにしては珍しく頑なな態度見せた。
「わ、悪い…」
ネアの一歩も引かない気迫を感じ取ったのか、バルドが小さな声で謝った。
「と、とりあえず、今日はもう寝よう?」
「そ、そうですね。」
バルドが言った言葉で、若干気まずい空気を残しながら、自分達の客室へと戻った。
「ネア、おはよう!ど、どうしたの!?」
次の日、ネアの後ろ姿を見つけて挨拶したら、寝起きだからなのか、ネアの顔が少し引きっ釣ったように強張っていた。
「普段、使わない筋肉を使ったせいか、顔が痛い…」
ネアは、片手で頬を擦りながら、苦い顔をしていた。どうやら、昨日の夕食の間、愛想笑いをしていたせいで、顔が筋肉痛になったようだった。
「普段から、もう少し笑ったら…」
兄様も最近は笑うようになって来たけど、ネアと同じように普段から表情が動く事が少ないから、少しは笑って鍛えた方がいいと言っとこう…。
え…今のが冗談なの…?兄様達もそうだけど、冗談に聞こえないし、見えないのはなんでなんだろう…。
「それにしても、こんな情けなさい姿を見ると、ちゃんと社交界でもやって行けるのかと不安になるわ」
静かに座る2人を横目で見ながら、ため息を付くように言った。
「男連中の事は、エレナとも話したりするけれど、女性に花を持たせてこそ、本当の紳士だと思うのよ。息子の貴方もそう思わなくて?」
「えっ!?あ…そうなんですかね…」
いきなり話しを振られて、どう返答したらいいのか分からないのもあったけど、肯定してもいいのかも分からなかったから、曖昧な返事になってしまった…。
「はぁ…。そんな曖昧な事を言っていると、足元をすくわれるわよ。身内や知り合いなら良いかもしれないけれど、社交界においては、少しのすきが命取りになる事もあるわ。あれが父親なら、注意し過ぎる事はないから覚えておきなさい」
「はい…。気を付けるようにします…」
他愛のない話から、急に真面目な駄目出しを受けた。そのせいで、初めて参加したパーティで、迷惑をかけるだけで終わってしまった事も思い出し、少しへこんでしまった。
パーティの時もそうだけど、父様達が何時も側にいてくれるわけじゃない。僕の一言で、父様達に迷惑を掛けたくはないから、今後の事を考えるなら、言動には注意した方が良さそうだ…。
「そ、そんな気にするなって!ほら、俺も出来てないから!」
「分かっているなら、貴方は治す努力をしなさいね」
「はい…」
僕を励まそうとしたバルドが、巻き添えを食らう形で撃沈していた。
「そんな事より、それは何時買ったんですか?そんなの付けてる所見た事ないですよ?」
僕達のために話題を変えようとしてくれたのか、お兄さんがネックレスに付いて聞くと、先程とはうってかわって楽しそうに笑いながら答えた。
「フフッ、これは買ったわけじゃないわ。昔、口止め料として貰った物だから、普段は付けたりしないのだけど、今回は面白そうだったから付けてみたの」
「面白そう?」
「そうよ」
小さく笑い声を上げながら話す様子だけを見ると、さっきまでのやり取りが夢だったんじゃないかと感じられるから不思議だ。
その後は、学院での事を聞かれたり、バルドの昔の失敗談を教えて貰ったりと、他愛ない話題をしながら過ぎて行った。でも、最初の方の印象が強すぎて、僕も父様達と同じように、苦手だなと思った。
僕達は夕食が無事に終わった後、それぞれの客室に行く前に、バルドの部屋へと一度戻って来た。
「疲れた…」
部屋に着くなりネアは、ぐったりと2人がけのソファーに身を沈み込ませながら言った。
「それにしても、お前、別人みたいだったな」
「うん!僕も、びっくりした」
目の前のソファーでぐったりと寝そべっている姿からは想像出来ないくらい、さっきまでの様子はしっかりしていた。マナーとかもしっかりしていて、僕達と同じ貴族みたいだった。
「普段から、あの態度で過ごせば、面倒事をさけられると思いますよ?」
「堅苦しいのは好きじゃない。今回は、昔に習った事も使ってなんとか凌いだが、あんな誤魔化しが長く続くわけがないだろう」
ネアは、目を閉じたまま、身じろぎもしないで、力なくコンラッドの言葉に答えていた。
「そんな事ないって、毎回、頼みたいぐらいだった」
「断固として断る!」
バルドの言葉を聞いた瞬間、閉じていた目を開けて、ネアにしては珍しく頑なな態度見せた。
「わ、悪い…」
ネアの一歩も引かない気迫を感じ取ったのか、バルドが小さな声で謝った。
「と、とりあえず、今日はもう寝よう?」
「そ、そうですね。」
バルドが言った言葉で、若干気まずい空気を残しながら、自分達の客室へと戻った。
「ネア、おはよう!ど、どうしたの!?」
次の日、ネアの後ろ姿を見つけて挨拶したら、寝起きだからなのか、ネアの顔が少し引きっ釣ったように強張っていた。
「普段、使わない筋肉を使ったせいか、顔が痛い…」
ネアは、片手で頬を擦りながら、苦い顔をしていた。どうやら、昨日の夕食の間、愛想笑いをしていたせいで、顔が筋肉痛になったようだった。
「普段から、もう少し笑ったら…」
兄様も最近は笑うようになって来たけど、ネアと同じように普段から表情が動く事が少ないから、少しは笑って鍛えた方がいいと言っとこう…。
0
お気に入りに追加
74
あなたにおすすめの小説
主人公は高みの見物していたい
ポリ 外丸
ファンタジー
高等魔術学園に入学した主人公の新田伸。彼は大人しく高校生活を送りたいのに、友人たちが問題を持ち込んでくる。嫌々ながら巻き込まれつつ、彼は徹底的に目立たないようにやり過ごそうとする。例え相手が高校最強と呼ばれる人間だろうと、やり過ごす自信が彼にはあった。何故なら、彼こそが世界最強の魔術使いなのだから……。最強の魔術使いの高校生が、平穏な学園生活のために実力を隠しながら、迫り来る問題を解決していく物語。
※主人公はできる限り本気を出さず、ずっと実力を誤魔化し続けます
※小説家になろう、ノベルアップ+、ノベルバ、カクヨムにも投稿しています。
レジェンドテイマー ~異世界に召喚されて勇者じゃないから棄てられたけど、絶対に元の世界に帰ると誓う男の物語~
裏影P
ファンタジー
【2022/9/1 一章二章大幅改稿しました。三章作成中です】
宝くじで一等十億円に当選した運河京太郎は、突然異世界に召喚されてしまう。
異世界に召喚された京太郎だったが、京太郎は既に百人以上召喚されているテイマーというクラスだったため、不要と判断されてかえされることになる。
元の世界に帰してくれると思っていた京太郎だったが、その先は死の危険が蔓延る異世界の森だった。
そこで出会った瀕死の蜘蛛の魔物と遭遇し、運よくテイムすることに成功する。
大精霊のウンディーネなど、個性溢れすぎる尖った魔物たちをテイムしていく京太郎だが、自分が元の世界に帰るときにテイムした魔物たちのことや、突然降って湧いた様な強大な力や、伝説級のスキルの存在に葛藤していく。
持っている力に振り回されぬよう、京太郎自身も力に負けない精神力を鍛えようと決意していき、絶対に元の世界に帰ることを胸に、テイマーとして異世界を生き延びていく。
※カクヨム・小説家になろうにて同時掲載中です。
僕の召喚獣がおかしい ~呼び出したのは超上級召喚獣? 異端の召喚師ルークの困惑
つちねこ
ファンタジー
この世界では、十四歳になると自らが呼び出した召喚獣の影響で魔法が使えるようになる。
とはいっても、誰でも使えるわけではない。魔法学園に入学して学園で管理された魔方陣を使わなければならないからだ。
そして、それなりに裕福な生まれの者でなければ魔法学園に通うことすらできない。
魔法は契約した召喚獣を通じて使用できるようになるため、強い召喚獣を呼び出し、無事に契約を結んだ者こそが、エリートであり優秀者と呼ばれる。
もちろん、下級召喚獣と契約したからといって強くなれないわけではない。
召喚主と召喚獣の信頼関係、経験値の積み重ねによりレベルを上げていき、上位の召喚獣へと進化させることも可能だからだ。
しかしながら、この物語は弱い召喚獣を強くしていく成り上がりストーリーではない。
一般よりも少し裕福な商人の次男坊ルーク・エルフェンが、何故かヤバい召喚獣を呼び出してしまったことによるドタバタコメディーであり、また仲間と共に成長していくストーリーでもある。
『収納』は異世界最強です 正直すまんかったと思ってる
農民ヤズ―
ファンタジー
「ようこそおいでくださいました。勇者さま」
そんな言葉から始まった異世界召喚。
呼び出された他の勇者は複数の<スキル>を持っているはずなのに俺は収納スキル一つだけ!?
そんなふざけた事になったうえ俺たちを呼び出した国はなんだか色々とヤバそう!
このままじゃ俺は殺されてしまう。そうなる前にこの国から逃げ出さないといけない。
勇者なら全員が使える収納スキルのみしか使うことのできない勇者の出来損ないと呼ばれた男が収納スキルで無双して世界を旅する物語(予定
私のメンタルは金魚掬いのポイと同じ脆さなので感想を送っていただける際は語調が強くないと嬉しく思います。
ただそれでも初心者故、度々間違えることがあるとは思いますので感想にて教えていただけるとありがたいです。
他にも今後の進展や投稿済みの箇所でこうしたほうがいいと思われた方がいらっしゃったら感想にて待ってます。
なお、書籍化に伴い内容の齟齬がありますがご了承ください。
ローグ・ナイト ~復讐者の研究記録~
mimiaizu
ファンタジー
迷宮に迷い込んでしまった少年がいた。憎しみが芽生え、復讐者へと豹変した少年は、迷宮を攻略したことで『前世』を手に入れる。それは少年をさらに変えるものだった。迷宮から脱出した少年は、【魔法】が差別と偏見を引き起こす世界で、復讐と大きな『謎』に挑むダークファンタジー。※小説家になろう様・カクヨム様でも投稿を始めました。
異世界召喚に条件を付けたのに、女神様に呼ばれた
りゅう
ファンタジー
異世界召喚。サラリーマンだって、そんな空想をする。
いや、さすがに大人なので空想する内容も大人だ。少年の心が残っていても、現実社会でもまれた人間はまた別の空想をするのだ。
その日の神岡龍二も、日々の生活から離れ異世界を想像して遊んでいるだけのハズだった。そこには何の問題もないハズだった。だが、そんなお気楽な日々は、この日が最後となってしまった。
私の推しメンは噛ませ犬◆こっち向いてよヒロイン様!◆
ナユタ
恋愛
十歳の誕生日のプレゼントでショッキングな前世を知り、
パニックを起こして寝込んだ田舎貴族の娘ルシア・リンクス。
一度は今世の幸せを享受しようと割りきったものの、前世の記憶が甦ったことである心残りが発生する。
それはここがドハマりした乙女ゲームの世界であり、
究極不人気、どのルートでも死にエンド不可避だった、
自身の狂おしい推し(悪役噛ませ犬)が実在するという事実だった。
ヒロインに愛されないと彼は死ぬ。タイムリミットは学園生活の三年間!?
これはゲームに全く噛まないはずのモブ令嬢が推しメンを幸せにする為の奮闘記。
★のマークのお話は推しメン視点でお送りします。
私の愛した召喚獣
Azanasi
ファンタジー
アルメニア王国の貴族は召喚獣を従者として使うのがしきたりだった。
15歳になると召喚に必要な召喚球をもらい、召喚獣を召喚するアメリアの召喚した召喚獣はフェンリルだった。
実はそのフェンリルは現代社会で勤務中に死亡した久志と言う人間だった、久志は女神の指令を受けてアメリアの召喚獣へとさせられたのだった。
腐敗した世界を正しき方向に導けるのかはたまた破滅目と導くのか世界のカウントダウンは静かに始まるのだった。
※途中で方針転換してしまいタイトルと内容がちょっと合わなく成りつつありますがここまで来てタイトルを変えるのも何ですので、?と思われるかも知れませんがご了承下さい。
注)4章以前の文書に誤字&脱字が多数散見している模様です、現在、修正中ですので今暫くご容赦下さい。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる