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三章

普段から

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「まあ、程々に楽しめたから、冗談もここまでにしましょうか」

え…今のが冗談なの…?兄様達もそうだけど、冗談に聞こえないし、見えないのはなんでなんだろう…。

「それにしても、こんな情けなさい姿を見ると、ちゃんと社交界でもやって行けるのかと不安になるわ」

静かに座る2人を横目で見ながら、ため息を付くように言った。

「男連中の事は、エレナとも話したりするけれど、女性に花を持たせてこそ、本当の紳士だと思うのよ。息子の貴方もそう思わなくて?」

「えっ!?あ…そうなんですかね…」

いきなり話しを振られて、どう返答したらいいのか分からないのもあったけど、肯定してもいいのかも分からなかったから、曖昧な返事になってしまった…。

「はぁ…。そんな曖昧な事を言っていると、足元をすくわれるわよ。身内や知り合いなら良いかもしれないけれど、社交界においては、少しのすきが命取りになる事もあるわ。あれが父親なら、注意し過ぎる事はないから覚えておきなさい」

「はい…。気を付けるようにします…」

他愛のない話から、急に真面目な駄目出しを受けた。そのせいで、初めて参加したパーティで、迷惑をかけるだけで終わってしまった事も思い出し、少しへこんでしまった。

パーティの時もそうだけど、父様達が何時も側にいてくれるわけじゃない。僕の一言で、父様達に迷惑を掛けたくはないから、今後の事を考えるなら、言動には注意した方が良さそうだ…。

「そ、そんな気にするなって!ほら、俺も出来てないから!」

「分かっているなら、貴方は治す努力をしなさいね」

「はい…」

僕を励まそうとしたバルドが、巻き添えを食らう形で撃沈していた。

「そんな事より、それは何時買ったんですか?そんなの付けてる所見た事ないですよ?」

僕達のために話題を変えようとしてくれたのか、お兄さんがネックレスに付いて聞くと、先程とはうってかわって楽しそうに笑いながら答えた。

「フフッ、これは買ったわけじゃないわ。昔、口止め料として貰った物だから、普段は付けたりしないのだけど、今回は面白そうだったから付けてみたの」

「面白そう?」

「そうよ」

小さく笑い声を上げながら話す様子だけを見ると、さっきまでのやり取りが夢だったんじゃないかと感じられるから不思議だ。

その後は、学院での事を聞かれたり、バルドの昔の失敗談を教えて貰ったりと、他愛ない話題をしながら過ぎて行った。でも、最初の方の印象が強すぎて、僕も父様達と同じように、苦手だなと思った。

僕達は夕食が無事に終わった後、それぞれの客室に行く前に、バルドの部屋へと一度戻って来た。

「疲れた…」

部屋に着くなりネアは、ぐったりと2人がけのソファーに身を沈み込ませながら言った。

「それにしても、お前、別人みたいだったな」

「うん!僕も、びっくりした」

目の前のソファーでぐったりと寝そべっている姿からは想像出来ないくらい、さっきまでの様子はしっかりしていた。マナーとかもしっかりしていて、僕達と同じ貴族みたいだった。

「普段から、あの態度で過ごせば、面倒事をさけられると思いますよ?」

「堅苦しいのは好きじゃない。今回は、昔に習った事も使ってなんとか凌いだが、あんな誤魔化しが長く続くわけがないだろう」

ネアは、目を閉じたまま、身じろぎもしないで、力なくコンラッドの言葉に答えていた。

「そんな事ないって、毎回、頼みたいぐらいだった」

「断固として断る!」

バルドの言葉を聞いた瞬間、閉じていた目を開けて、ネアにしては珍しく頑なな態度見せた。

「わ、悪い…」

ネアの一歩も引かない気迫を感じ取ったのか、バルドが小さな声で謝った。

「と、とりあえず、今日はもう寝よう?」

「そ、そうですね。」

バルドが言った言葉で、若干気まずい空気を残しながら、自分達の客室へと戻った。

「ネア、おはよう!ど、どうしたの!?」

次の日、ネアの後ろ姿を見つけて挨拶したら、寝起きだからなのか、ネアの顔が少し引きっ釣ったように強張っていた。

「普段、使わない筋肉を使ったせいか、顔が痛い…」

ネアは、片手で頬を擦りながら、苦い顔をしていた。どうやら、昨日の夕食の間、愛想笑いをしていたせいで、顔が筋肉痛になったようだった。

「普段から、もう少し笑ったら…」

兄様も最近は笑うようになって来たけど、ネアと同じように普段から表情が動く事が少ないから、少しは笑って鍛えた方がいいと言っとこう…。
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