上 下
94 / 218
二章

お土産

しおりを挟む
「みんなに、お土産買って来たから、僕の家に来た時にでも渡すね」

「ホントか!?何買って来たんだ!?」

「何を買って来たらいいのか分からなかったから、兄様が買ったお土産と同じ置物と、焼き菓子を買って来たよ」

「オルフェ様が買ったのと同じなんですか!?」

「種類は、違うけどね…」

「それでも良いです!ありがとうございます!!」

コンラットの分は、兄様に直接選んで貰った方が良かったかな…。でも、それは何か違う気がするしなぁ…。まずは、喜んでいるようだからいいかな?

「今日、貰いに行ってもいいのか!?」

「別に良いけど、走って通っているのに、荷物持って帰れるの?」

「あっ…」

やっぱり、帰る時の事まで、考えていなかったみたいだ…。

「明後日まで、待てば良いでしょう」

「俺は、速く欲しいんだよ!」

そんな事言われても、持って来ていない物は渡せない。明日持って来ても、そんなに変わらないだろうし…。

「週末に、みんなと一緒に渡すね」

バルドは、あからさまに落ち込んでたけど、街で買える物だから、そこまで期待しないでね?兄様と一緒って言ったから、高価な物だって勘違いしてないよね?

僕はみんなに、街で買ったお土産である事を伝えたけど、特に問題はなさそうだったので、少し安心した。

「みんなは、この休み中どうだったの?」

他のみんなは、どうしてたのか気になって、休み中の事を聞いてみた。

「俺は、補修だよ…」

「家にいたな」

「今年の夏は静かだったので、実に有意義に過ごせました」

「俺が、外出禁止食らってて出られないのに、全然来ないんだぜ!」

「遠いから、この暑い中行きたくないんですよ」

「バルドが使ってる抜け道は?」

「抜け道に、新しい鍵が付いてから、気軽に使えなくなったんだよ…」

「でも、隣なんだから、そんなに変わらないでしょ?」

「かなり変わるぞ!」

抜け道が近いと言っても、隣にあるんだったら、行き来するのもそこまで大変じゃないと思ったら、バルドから強い否定が返って来た。

「隣と言っても、裏庭が面しているだけなので、正面が真逆何です。だから、一本、道を変えなければ行けないんです。ですが、屋敷が一軒ずつが大きいので、横道まで行くのも遠いんです…」

「ぬけ道使えば、屋敷から走って5分くらいで付くけど、外を周って行ったら40分かかるからな!」

道が1本違うだけで、そんなに時間がかかるなら、バルドが何時も近道したいのも分かる気がする。

「みんなは出掛けなかったんだね…」

僕だけ出掛けた事が、少し気不味かったけど、お土産を買って来たから許して貰おう…。

「出掛けたら煩そうな人が近くにいるのに、出掛けられる訳ないじゃないですか…」

「コンラッド!でも、それなら俺の家来てくれても良くない?」

「それとこれとは別です。来年は、補習にならないようにして下さいよ」

コンラッドは、優しいのか優しくないのか、よく分からないな。でも、見慣れた2人のやり取りを見ていると、帰って来た気がする。

週末、屋敷に来たみんなに、買って来た焼き菓子と一緒に、バルドに狼、コンラッドには馬の置物を渡した。

「よく分かったな!これ、大事にするからな!」

「私も、大事にします。来年、何処か行けたら何か買ってきますね」

僕の印象で選んで来たけど、喜んで貰えたなら良かった。

「ネアは、それで良かった?」

何も言わないから、気に入らなかったかと心配になって、ネアに聞いてみた。

「ああ、家宝にする」

「いや…そこまで凄い物じゃないから…」

「猫。それだけで価値がある」

置物を嬉しそうに見てくれるのは、僕としても嬉しいけど、ネアって、猫好きだったんだね…。そんなに、満面な笑み、今まで見た事ないんだけど…。

「リュカ!この焼き菓子も上手いな!」

僕がよそ見をしている間に、バルドは焼き菓子をすでに開けて食べていた。

「言っておきますけど、食べてなくなっても、私は分けて上げませんからね」

「え!?普段から、あまりお菓子食べないだろ!?」

「食べませんけど、これは、私が貰った物ですから上げませよ」

「えー!少し、少し分けて!!」

「嫌です」

家族との旅行も楽しかったけど、来年は、みんなで何処か行けたら楽しそうだな。僕は、旅行での出来事や、みんなの話を聞きながらそう思った。

「買ったお土産、兄様は渡しに行った?」

「…まだだ」

みんなが帰った後、兄様のお土産がどうなったのか、気になって聞いてみたら、僅かな間の後に、兄様が小さな声で返事が返って来た。

「喜んで貰えるといいね!」

「そうだな…」

兄様のお土産も、みんなと同じくらい喜んで貰えるといいな。
しおりを挟む

あなたにおすすめの小説

異世界王女に転生したけど、貧乏生活から脱出できるのか

片上尚
ファンタジー
海の事故で命を落とした山田陽子は、女神ロミア様に頼まれて魔法がある世界のとある国、ファルメディアの第三王女アリスティアに転生! 悠々自適の贅沢王女生活やイケメン王子との結婚、もしくは現代知識で無双チートを夢見て目覚めてみると、待っていたのは3食草粥生活でした… アリスティアは現代知識を使って自国を豊かにできるのか? 痩せっぽっちの王女様奮闘記。

残滓と呼ばれたウィザード、絶望の底で大覚醒! 僕を虐げてくれたみんなのおかげだよ(ニヤリ)

SHO
ファンタジー
15歳になり、女神からの神託の儀で魔法使い(ウィザード)のジョブを授かった少年ショーンは、幼馴染で剣闘士(ソードファイター)のジョブを授かったデライラと共に、冒険者になるべく街に出た。 しかし、着々と実績を上げていくデライラとは正反対に、ショーンはまともに魔法を発動する事すら出来ない。 相棒のデライラからは愛想を尽かされ、他の冒険者たちからも孤立していくショーンのたった一つの心の拠り所は、森で助けた黒ウサギのノワールだった。 そんなある日、ショーンに悲劇が襲い掛かる。しかしその悲劇が、彼の人生を一変させた。 無双あり、ザマァあり、復讐あり、もふもふありの大冒険、いざ開幕!

騎士志望のご令息は暗躍がお得意

月野槐樹
ファンタジー
王弟で辺境伯である父を保つマーカスは、辺境の田舎育ちのマイペースな次男坊。 剣の腕は、かつて「魔王」とまで言われた父や父似の兄に比べれば平凡と自認していて、剣より魔法が大好き。戦う時は武力より、どちらというと裏工作? だけど、ちょっとした気まぐれで騎士を目指してみました。 典型的な「騎士」とは違うかもしれないけど、護る時は全力です。 従者のジョセフィンと駆け抜ける青春学園騎士物語。

僕の家族は母様と母様の子供の弟妹達と使い魔達だけだよ?

闇夜の現し人(ヤミヨノウツシビト)
ファンタジー
ー 母さんは、「絶世の美女」と呼ばれるほど美しく、国の中で最も権力の強い貴族と呼ばれる公爵様の寵姫だった。 しかし、それをよく思わない正妻やその親戚たちに毒を盛られてしまった。 幸い発熱だけですんだがお腹に子が出来てしまった以上ここにいては危険だと判断し、仲の良かった侍女数名に「ここを離れる」と言い残し公爵家を後にした。 お母さん大好きっ子な主人公は、毒を盛られるという失態をおかした父親や毒を盛った親戚たちを嫌悪するがお母さんが日々、「家族で暮らしたい」と話していたため、ある出来事をきっかけに一緒に暮らし始めた。 しかし、自分が家族だと認めた者がいれば初めて見た者は跪くと言われる程の華の顔(カンバセ)を綻ばせ笑うが、家族がいなければ心底どうでもいいというような表情をしていて、人形の方がまだ表情があると言われていた。 『無能で無価値の稚拙な愚父共が僕の家族を名乗る資格なんて無いんだよ?』 さぁ、ここに超絶チートを持つ自分が認めた家族以外の生き物全てを嫌う主人公の物語が始まる。 〈念の為〉 稚拙→ちせつ 愚父→ぐふ ⚠︎注意⚠︎ 不定期更新です。作者の妄想をつぎ込んだ作品です。

婚約破棄の後始末 ~息子よ、貴様何をしてくれってんだ! 

タヌキ汁
ファンタジー
 国一番の権勢を誇る公爵家の令嬢と政略結婚が決められていた王子。だが政略結婚を嫌がり、自分の好き相手と結婚する為に取り巻き達と共に、公爵令嬢に冤罪をかけ婚約破棄をしてしまう、それが国を揺るがすことになるとも思わずに。  これは馬鹿なことをやらかした息子を持つ父親達の嘆きの物語である。

追放された無能テイマーの英雄譚〜騎士団に雇われてスライム無双を始めたら落ちぶれた元仲間が戻ってこいと言ってきたので、返り討ちにしてやります〜

無名 -ムメイ-
ファンタジー
「アルト。お前のような役立たずは俺のパーティーには必要ない。出て行ってくれ」 俺とカインは昔からの友人で、ともに冒険者になろうと誓い合った仲だ。しかしFランク冒険者である俺は若くしてSランクに昇格したカインにパーティーから追い出されることになる。 故郷に帰った俺だったが何もかもが嫌になり、家に引きこもるようになっていた。数ヶ月のときが経ち、俺の前に女騎士が姿を現す。 「――勇者アルト! キミにはぜひとも私たちと一緒に、魔物と戦ってもらいたい」 「あなたにしか出来ないことです。どうか、私たちに力を貸してはもらえませんか?」 ん? 俺が勇者だって? 何のことか分からないまま、俺は女騎士に戦場へ連れて行かれてしまう。 だが、俺には【魔物生産】というスキルがあった。冒険者時代にはまともに使わせてもらえなかったスキルだが、引きこもっている間にひっそりと練習していた。 「……アルトさん。これ、気のせいかもしれないんですけど、スライムたち連携して戦っていませんか?」 「よく分かったな。あいつらには役割があって、主に四つに分かれてる。陽動・防御・攻撃。そして、司令塔。まあ、司令塔が居なくてもあいつらは意識的に繋がってるから何の問題もないけど」 「アルトさん。もしかしてあのスライムの群れ、私たち騎士団より強いのではないでしょうか?」 「かもしれないな。あいつら、魔物を倒すたびに強くなってるし」 俺は自分の魔力を消費して千に迫る数のスライムを作り出し、数百を超える魔物の群れを一気に殱滅する。そして俺は女騎士たちと行動をともにするようになった。 そんな俺とは裏腹に、俺をパーティーから追放したカインは、暴力事件を起こしたせいで牢屋に収監されていた。 これは役立たずだとパーティーから追放された俺が女だらけの騎士団に雇われて、魔物に日常を脅かされている人々を助ける英雄譚。 この作品は小説家になろうにも投稿しています。

無能なので辞めさせていただきます!

サカキ カリイ
ファンタジー
ブラック商業ギルドにて、休みなく働き詰めだった自分。 マウントとる新人が入って来て、馬鹿にされだした。 えっ上司まで新人に同調してこちらに辞めろだって? 残業は無能の証拠、職務に時間が長くかかる分、 無駄に残業代払わせてるからお前を辞めさせたいって? はいはいわかりました。 辞めますよ。 退職後、困ったんですかね?さあ、知りませんねえ。 自分無能なんで、なんにもわかりませんから。 カクヨム、なろうにも同内容のものを時差投稿しております。

魔王を倒した手柄を横取りされたけど、俺を処刑するのは無理じゃないかな

七辻ゆゆ
ファンタジー
「では罪人よ。おまえはあくまで自分が勇者であり、魔王を倒したと言うのだな?」 「そうそう」  茶番にも飽きてきた。処刑できるというのなら、ぜひやってみてほしい。  無理だと思うけど。

処理中です...