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二章

疑惑

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僕達はそのまま、生徒指導室まで連行された。先生から怒鳴られはしないものの、何も言わずに無言でいられるのも辛い…。

今は、親や担任のリオ先生に連絡するため、席を外して僕達しかいないが、誰も話そうとする気配がない。

痛いくらいの静寂に包まれているせいか、自然と視線が下がって来る。そんな僕の視界に、伸びてヨレヨレになったネアの裾が見えた。

「ネア…ごめんね…」

「何が?」

「服…僕のせいで伸びちゃったから…。ちゃんと、弁償するね…」

「安物だから気にするな」

そうは言っても、一箇所だけ伸びてよれたその服は、もう着れそうにないよね…。会話が途切れると、再び部屋に沈黙が下りる。下手に喋ったりせいか、さっきよりも何だか気不味い…。そんな空気の中、扉が開く音がした。

「リュカ。迎えに来たよ。屋敷に帰ろうか」

学院から連絡が行って、父様が来てくれたようだった。リータス先生が後ろに見えるから、事情はもう説明済みなんだろう。でも、父様の表情を見る限りだと、怒っているようには見えなかった。

「じゃあ…先に帰るね…」

「はい…」

「ああ…」

「……」

バルドが、さっきから一言も話さないのは気になるけれど、僕はみんなに別れの挨拶をしてから、父様に連れられて、先に部屋を後にした。

「父様…ごめんなさい…」

屋敷に帰る馬車の中でも、父様は怒ったりしなかった。だけど、僕の口からは自然と謝罪の言葉が出た。

「リュカが怪我をしていないのなら、それで良いよ。でも、魔物が出たりするから、森に行ったのは不味かったね」

「怒らないの…?」

「うーん…。私も、リュカを怒れるほど、品行方正じゃなかったからね…。それに、オルフェの時も、何度か学院に呼び出された事もあって、これが始めてではないんだ。それに、今回の事なんて可愛い物だよ」

あの冷静そうな兄様が、問題を起こすなんて考えられないけど、それなら、兄様からも、怒られないかな?

「でも、エレナから怒られるのは、覚悟した方が良いよ」

「はい…」

父様の言う通り覚悟はしていたけれど、屋敷に付くなり、母様からかなり怒られた。そんな僕を、父様と兄様は庇ってくれたけど、ドミニクが母様に味方したせいで、1週間オヤツ禁止になった…。

オヤツ禁止は、確かに嫌だけど、思ったよりも罰が軽くてほっとした。

次の日、教室に行くと、相変わらずネアだけが何時も通りだった。それに引き換え、バルドは机に突っ伏したまま、全く動かないんだけど…生きてるよね…?

「おはよう…。バルドは、どうしたの?」

「おはようございます。バルドは、昨日、家族に黙って屋敷を出て来てたらしくて、かなり怒られたんだそうです。それで、罰として、来月の長期休みが終わるまで学院以外は、外出禁止になったらしいです…」

「えっ!?バルド、何も言って来なかったの!?」

僕の声に、首だけを僕の方に向けたバルドが、弱々しい声で行った。

「たまに遊び疲れて、そのままコンラッドの家に泊まっても、何も言われなかったから、今回も大丈夫かと思ったんだ…」

「私の屋敷にいると思っていたのに、学院の森に侵入しようとしたと連絡が来たら、まず驚くでしょうね…」

「それは…驚くだろうね…」

「あー!長期休みの予定!色々考えていたのに!!」

バルドは、頭を抱えながら物凄く悔しそうに叫んでたけど、自業自得だよね…?。

「それにしても、リータス先生は、何故あの場所にいたんですかね?」

バルドから視線を逸したコンラッドが、不思議そうに呟いた。

「騒ぎ声が聞こえたからじゃないの?」

「それにしては、駆け付けるのが速すぎますよ」

「見回りで、巡回してたとか?」

「あの時間は、別の場所を巡回しているはずだ」

「何で、ネアはそんな事知ってるの?」

「忍び込むのなら、情報は先に仕入れておくものだ」

当然の事みたいに言ってるけど、それは何に対しての心構えなの?ネアは、何処を目指してるの?

「もう!リータス先生が来なかったら、親父に怒られたりする事もなかったのに!!待ち伏せでもしてたみたいに来るなよ!!」

「待ち伏せは、さすがにないんじゃないかな?」

「そもそも肝試しは、昨日、急に決まった物で、リオ先生くらいしか、私達が学院に来る事なんて知りませんよ。それに、森に行ったのは、バルドの思い付きなので、付けてでも来ないと、あのタイミングでは来られないです」

「なら、付けてたんじゃないのか。あの手紙も、リータス先生じゃないよな…」

バルドが、何処か不貞腐れたように言うけど、それはどうなんだろうか…。

「教師なら、夜の見回りの際とかに入れる事は可能だろうな」

「やっぱり、あの先生が犯人だ!リュカも、そう思うよな!」

確かに、犯行が可能で怪しいのは事実だ。それに、目付きが怖いし、性格も悪そう。

そんな事を思っていたら、段々と犯人じゃないかと言う不審感が募った。

「そうかもね!」

それに、僕だけに厳しかったりもしたし、ネアに対しても同じ事をしているのかもしれない!

「それ…私怨混ざってませんか…?」

「「混ざってない(よ)!!」」

珍しく、僕とバルドの意見が一致した。
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