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二章

手合わせ

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「大丈夫!!もし、予定があったとしても空けるから!」

僕は忘れないうちに、週末の予定が空いてるか、教室に来ていたバルドに訪ねた。

「リュカありがとな!最高の誕生日祝いだ!!」

「う、うん…」

手合わせをするのは兄様で、その約束をしたのはバルドだ。これを誕生日祝いと言っていいのかは分からないけれど、とりあえず、忘れててごめんと、心の中でバルドに謝っておいた。

「わ、私も、行きたいです!私も行ってもいいですか!!」

今回は珍しく、コンラッドから積極的に行きたいと行って来た。普段来る時や、何処に行くのも仕方なさそうにしているのに…。まあ、理由は何となく分かるけど…。

「もちろん!」

「今から、楽しみだな!」

週末までの数日間、バルドは落ち着きなさそうに授業を受けていた。その度に、講師達に叱られていたが、その間も何処か楽しそうにしているせいで、更に叱られる原因になっていた。

「リュカ!来たぞ!!」

何時もよりも速く、僕の屋敷へとやって来たバルド達が、使用人に連れられながら、僕の部屋までやって来た。

「速いね?」

「楽しみ過ぎて、夜も眠れなくてな!」

「予定よりも速く来てしまい、すみません。朝速くからずっと騒いでいるバルドに、速く行き過ぎても、相手の迷惑になると言ったのですが、どうにも聞かなくて…」

「え?コンラッドだって、ずっとそわそわしながら、時計見てたじゃん?」

「バ、バルド!!」

2人が何時ものようになる前に、僕は声を掛けた。

「ネアがまだ来てないから、もう少し待ってね?」

「え!?ネア、まだ来てないのか!?俺!走って迎えに行ってこようか!?」

「そんな事をしても、入れ違いになるだけでしょう!」

何時ものやり取りを聞いている間に、ネアが到着したので、執務室で仕事をしている兄様に、みんなで声を掛けに行った。

「兄様。みんな、到着したけど大丈夫?」

「ああ。時間まで、暇を潰していただけだからな」

執務室で仕事をしていた兄様に声を掛ければ、机の書類を片付けて、僕達がいる扉の方まで歩いて来た。

「今日は!よろしくお願いします!!」

「お、お邪魔しております。今日は、バルドの不躾な頼みに時間を作って頂いて、ありがとうございます!」

「約束をしたのは私なのだから、そこまでかしこまる必要はない。それに、弟の友人ならば、何時でも歓迎する」

部屋に来るまでも、緊張した様子の2人だったけど、声も何時もよりうわずっていた。僕の横で、いつも通りな態度でいるネアの方が、何だか今は落ち着いた。

練習場に到着した後は、2人の手合わせの邪魔にならないよう、僕達は離れて観戦する事にした。

大会の試合では剣を使うから、怪我をするんじゃないかと、怖くて見れなかった。でも、木刀ならそこまで怪我をする心配がないから、まだ見ていられそうだ。

「はーっ!」

バルドが、掛け声と共に走り出すと、そのまま兄様に木刀を振り下ろした。しかし、木刀は兄様には当たる事はなく、何故かバルドの後ろに木刀が弾き飛ばされていた。

「え!?何が起こったの!?」

「私に聞かないで下さい!」

最初の位置から、兄様ほとんど動いているようにも見えなかった。

「剣先でバルドの軌道を変え、体制が崩れて力が緩んだ瞬間に、一気に弾き飛ばしてたな」

「ネア!分かるの!?あれが、見えてたの!?」

「見えるが?」

「なら、解説をお願い!速くて全く見えない!!」

「私からもお願いします!」

「分かった」

その後も、ネアに解説を頼みながら、2人の手合わせを見ていたけど、とにかく凄いのだけは分かった。バルドが、何度攻撃しても、兄様は涼しい顔をしながら攻撃を受け流していた。

ネアが言うには、バルドが怪我をしないようにしているからだと言っていた。たしかに、木刀を弾き飛ばしたり、バルドを転ばせる事はあっても、兄様の木刀はバルドに一度も当たっていないようだった。

段々と息が上がりながらも、バルドは楽しそうに笑っていた。

「あー!もう動けねー!でも、楽しかった!!」

何度目、転ばされたのか分からなくなった頃、寝転びながらバルドが楽しそうに叫んだ。そんなバルドに、兄様が近寄り声を掛けた。

「見ていても思ったが、常に力を込めて剣を握っているだろう。それだと、体力が長く続かない。試合ならばそれでいいかも知れないが、魔物相手になると体力の温存も大事になってくる。だから、力を込めるのは一瞬だけでいい」

「それ、親父にも言われたけど、よく分からないです…?」

「素振りをする時など、自分がどう力を込めているか、意識するだけでも変わるはずだ」

「はい!やってみます!!」

師弟のように話す2人を見ていると、横から羨ましげな声が聞こえて来た。

「私も、混ざりたい…。もっと、真剣に剣術をやっておくべきでした…」

僕には、バルドみたいになったコンラットを、とても想像できそうになかった。
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