77 / 228
二章
忘れずに
しおりを挟む
「どうして先に教えてくれなかったんですか!?」
「ご、ごめん…。忘れてた…」
父様達が書庫から去って行った後、コンラットから事情を聞かれた僕は、正直に来る事を伝え忘れていたと言った。
「そういう大事な事は、忘れないで下さい!!勉強の前に、記憶力を何とかした方が良いんじゃないですか!?」
僕も、それが出来るならそうしたいけど、記憶力の向上なんてどうすればいいのさ…。
「まあ、リュカも悪気があったわけじゃないんだから、そんなに怒るなって」
「貴方も、何ちゃっかりと手合わせの約束を取り付けてるんですか!?」
「会えたら、駄目もとで頼んでみようと思ってたんだよ」
「ああ…。挨拶らしい挨拶も、何も出来なかった…。礼儀知らずだと、思われてないですよね…」
僕からバルドに、怒りが転化したと思ったら、今度は盛大に落ち込み初めた。下手に声を掛けると、また怒られそうなので、少しでも話題を変えるために、ネアと話しを振った。
「ネアは、緊張しているのかと思ってたけど、何も変わってなかったね」
「そんな事はない。俺も、余計な事は言わないように、言葉には気を付けてはいた」
「え?あれで?」
父様との会話を思い出しても、何も変わっていなかったと思うんだけど…。
「主席合格だって?」
「そうだが?」
「爵位を持たない者が主席を取るなんて事は、学院でも初めてだったそうだ」
「悪いのか?」
「非難しているわけではない。ただ、学院で生活するのは何かと大変だろう?なにせ、周りにいるのは子供だけだからこそ、偏見を持っている者は多い。リュカの友人であるなら、私は力を貸す事は惜しまない」
「……覚えておく」
僕は、2人の会話をハラハラしながら聞いていた。父様は優しいから、ネアの言葉使いに怒ったりはしないとは思うけれど、聞いているこっちが落ち着かない。父様が、兄様を連れて部屋を出た時は、母様とは別の意味でホッとした。
「バルドは、どう思った?」
「俺でも、あの態度はさすがに無理だぞ…」
「だよね…」
僕だけなのかと思ったけど、やっぱりバルドもそう思っていたようだ。
「それで、ネアは父様達に会いたがっていたけれど、実際どうだったの?」
「そうだな。迂闊な事は出来ない、とは思ったな」
ネアは、もうやらかしているような気もするけどね…。それに比べて、コンラットは未だに落ち込んでいた。ネアの態度でも怒られないんだから、そんなに気にする必要もないのに。
「コンラッドも、そんなに気にしなくて良いと思うよ。父様や兄様は、優しいからきっと怒ってないよ。それに、そんなに気にするなら、夕食の時にフォローしておくから」
「本当ですか!?」
「う、うん」
「絶対ですよ!!今度は、忘れないでくださいね!」
たぶん、忘れない、大丈夫…。その後、僕は帰る直前まで、コンラッドから念押しされ続けた…。
その日の夕食での話題は、自然とみんなの話になった。
「約束した手合わせの件だが、軽くで良いのか?」
「たぶん?学院で会った時に、バルドに聞いてみるね」
「相手の予定も、合わせて確認しておいて欲しい。私も、仕事を調整して合わせるつもりではあるが、リュカとの訓練の時間も、出来れば確保したい」
「明日もやるの?」
「明日は、そこまでの時間は取れそうにない。だから、ルーン文字を教えるくらいだな」
「覚えられるかな…」
コンラッドから、記憶力のなさを指摘されたばかりだったので、まったく自信がない…。
「絵を眺めるように、文字を見ているだけでも記憶には残るものだ」
「うーん…」
まあ、眺めるだけでいいなら、僕にも出来るかな?
「あ!!友達が、父様達にちゃんと挨拶出来なかったって気にしてたんだ。僕が、来る事をみんなに伝えるの忘れていたから、驚いて緊張したみたい。だから、怒らないでね」
「そんな事で、怒ったりはしないよ。子供は、名前を言えるだけで褒められるべきだと、部下も言っていた」
「私も、怒ってはいない。それよりも、父上は仕事を抜け出して来て、本当に良かったんですか?来月には、陛下の生誕祭があったと思いますが?」
「毎年の事で、みんな慣れているからね。それに、レクスに媚びを売るために、大人しくしている貴族ばかりだから、それほど対応も大変ではないよ」
「それなら、良いのですが…」
僕も、少し心配はしていたので、何も問題がないなら良かった。それに、2人も怒っていないようなので、コンラットにはいい報告が出来そうだ。まあ、少し忘れかけた事は、内緒にしておこう。
「ご、ごめん…。忘れてた…」
父様達が書庫から去って行った後、コンラットから事情を聞かれた僕は、正直に来る事を伝え忘れていたと言った。
「そういう大事な事は、忘れないで下さい!!勉強の前に、記憶力を何とかした方が良いんじゃないですか!?」
僕も、それが出来るならそうしたいけど、記憶力の向上なんてどうすればいいのさ…。
「まあ、リュカも悪気があったわけじゃないんだから、そんなに怒るなって」
「貴方も、何ちゃっかりと手合わせの約束を取り付けてるんですか!?」
「会えたら、駄目もとで頼んでみようと思ってたんだよ」
「ああ…。挨拶らしい挨拶も、何も出来なかった…。礼儀知らずだと、思われてないですよね…」
僕からバルドに、怒りが転化したと思ったら、今度は盛大に落ち込み初めた。下手に声を掛けると、また怒られそうなので、少しでも話題を変えるために、ネアと話しを振った。
「ネアは、緊張しているのかと思ってたけど、何も変わってなかったね」
「そんな事はない。俺も、余計な事は言わないように、言葉には気を付けてはいた」
「え?あれで?」
父様との会話を思い出しても、何も変わっていなかったと思うんだけど…。
「主席合格だって?」
「そうだが?」
「爵位を持たない者が主席を取るなんて事は、学院でも初めてだったそうだ」
「悪いのか?」
「非難しているわけではない。ただ、学院で生活するのは何かと大変だろう?なにせ、周りにいるのは子供だけだからこそ、偏見を持っている者は多い。リュカの友人であるなら、私は力を貸す事は惜しまない」
「……覚えておく」
僕は、2人の会話をハラハラしながら聞いていた。父様は優しいから、ネアの言葉使いに怒ったりはしないとは思うけれど、聞いているこっちが落ち着かない。父様が、兄様を連れて部屋を出た時は、母様とは別の意味でホッとした。
「バルドは、どう思った?」
「俺でも、あの態度はさすがに無理だぞ…」
「だよね…」
僕だけなのかと思ったけど、やっぱりバルドもそう思っていたようだ。
「それで、ネアは父様達に会いたがっていたけれど、実際どうだったの?」
「そうだな。迂闊な事は出来ない、とは思ったな」
ネアは、もうやらかしているような気もするけどね…。それに比べて、コンラットは未だに落ち込んでいた。ネアの態度でも怒られないんだから、そんなに気にする必要もないのに。
「コンラッドも、そんなに気にしなくて良いと思うよ。父様や兄様は、優しいからきっと怒ってないよ。それに、そんなに気にするなら、夕食の時にフォローしておくから」
「本当ですか!?」
「う、うん」
「絶対ですよ!!今度は、忘れないでくださいね!」
たぶん、忘れない、大丈夫…。その後、僕は帰る直前まで、コンラッドから念押しされ続けた…。
その日の夕食での話題は、自然とみんなの話になった。
「約束した手合わせの件だが、軽くで良いのか?」
「たぶん?学院で会った時に、バルドに聞いてみるね」
「相手の予定も、合わせて確認しておいて欲しい。私も、仕事を調整して合わせるつもりではあるが、リュカとの訓練の時間も、出来れば確保したい」
「明日もやるの?」
「明日は、そこまでの時間は取れそうにない。だから、ルーン文字を教えるくらいだな」
「覚えられるかな…」
コンラッドから、記憶力のなさを指摘されたばかりだったので、まったく自信がない…。
「絵を眺めるように、文字を見ているだけでも記憶には残るものだ」
「うーん…」
まあ、眺めるだけでいいなら、僕にも出来るかな?
「あ!!友達が、父様達にちゃんと挨拶出来なかったって気にしてたんだ。僕が、来る事をみんなに伝えるの忘れていたから、驚いて緊張したみたい。だから、怒らないでね」
「そんな事で、怒ったりはしないよ。子供は、名前を言えるだけで褒められるべきだと、部下も言っていた」
「私も、怒ってはいない。それよりも、父上は仕事を抜け出して来て、本当に良かったんですか?来月には、陛下の生誕祭があったと思いますが?」
「毎年の事で、みんな慣れているからね。それに、レクスに媚びを売るために、大人しくしている貴族ばかりだから、それほど対応も大変ではないよ」
「それなら、良いのですが…」
僕も、少し心配はしていたので、何も問題がないなら良かった。それに、2人も怒っていないようなので、コンラットにはいい報告が出来そうだ。まあ、少し忘れかけた事は、内緒にしておこう。
20
お気に入りに追加
74
あなたにおすすめの小説
スローライフとは何なのか? のんびり建国記
久遠 れんり
ファンタジー
突然の異世界転移。
ちょっとした事故により、もう世界の命運は、一緒に来た勇者くんに任せることにして、いきなり告白された彼女と、日本へ帰る事を少し思いながら、どこでもキャンプのできる異世界で、のんびり暮らそうと密かに心に決める。
だけどまあ、そんな事は夢の夢。
現実は、そんな考えを許してくれなかった。
三日と置かず、騒動は降ってくる。
基本は、いちゃこらファンタジーの予定。
そんな感じで、進みます。
主人公は高みの見物していたい
ポリ 外丸
ファンタジー
高等魔術学園に入学した主人公の新田伸。彼は大人しく高校生活を送りたいのに、友人たちが問題を持ち込んでくる。嫌々ながら巻き込まれつつ、彼は徹底的に目立たないようにやり過ごそうとする。例え相手が高校最強と呼ばれる人間だろうと、やり過ごす自信が彼にはあった。何故なら、彼こそが世界最強の魔術使いなのだから……。最強の魔術使いの高校生が、平穏な学園生活のために実力を隠しながら、迫り来る問題を解決していく物語。
※主人公はできる限り本気を出さず、ずっと実力を誤魔化し続けます
※小説家になろう、ノベルアップ+、ノベルバ、カクヨムにも投稿しています。
レジェンドテイマー ~異世界に召喚されて勇者じゃないから棄てられたけど、絶対に元の世界に帰ると誓う男の物語~
裏影P
ファンタジー
【2022/9/1 一章二章大幅改稿しました。三章作成中です】
宝くじで一等十億円に当選した運河京太郎は、突然異世界に召喚されてしまう。
異世界に召喚された京太郎だったが、京太郎は既に百人以上召喚されているテイマーというクラスだったため、不要と判断されてかえされることになる。
元の世界に帰してくれると思っていた京太郎だったが、その先は死の危険が蔓延る異世界の森だった。
そこで出会った瀕死の蜘蛛の魔物と遭遇し、運よくテイムすることに成功する。
大精霊のウンディーネなど、個性溢れすぎる尖った魔物たちをテイムしていく京太郎だが、自分が元の世界に帰るときにテイムした魔物たちのことや、突然降って湧いた様な強大な力や、伝説級のスキルの存在に葛藤していく。
持っている力に振り回されぬよう、京太郎自身も力に負けない精神力を鍛えようと決意していき、絶対に元の世界に帰ることを胸に、テイマーとして異世界を生き延びていく。
※カクヨム・小説家になろうにて同時掲載中です。
『収納』は異世界最強です 正直すまんかったと思ってる
農民ヤズ―
ファンタジー
「ようこそおいでくださいました。勇者さま」
そんな言葉から始まった異世界召喚。
呼び出された他の勇者は複数の<スキル>を持っているはずなのに俺は収納スキル一つだけ!?
そんなふざけた事になったうえ俺たちを呼び出した国はなんだか色々とヤバそう!
このままじゃ俺は殺されてしまう。そうなる前にこの国から逃げ出さないといけない。
勇者なら全員が使える収納スキルのみしか使うことのできない勇者の出来損ないと呼ばれた男が収納スキルで無双して世界を旅する物語(予定
私のメンタルは金魚掬いのポイと同じ脆さなので感想を送っていただける際は語調が強くないと嬉しく思います。
ただそれでも初心者故、度々間違えることがあるとは思いますので感想にて教えていただけるとありがたいです。
他にも今後の進展や投稿済みの箇所でこうしたほうがいいと思われた方がいらっしゃったら感想にて待ってます。
なお、書籍化に伴い内容の齟齬がありますがご了承ください。
僕の召喚獣がおかしい ~呼び出したのは超上級召喚獣? 異端の召喚師ルークの困惑
つちねこ
ファンタジー
この世界では、十四歳になると自らが呼び出した召喚獣の影響で魔法が使えるようになる。
とはいっても、誰でも使えるわけではない。魔法学園に入学して学園で管理された魔方陣を使わなければならないからだ。
そして、それなりに裕福な生まれの者でなければ魔法学園に通うことすらできない。
魔法は契約した召喚獣を通じて使用できるようになるため、強い召喚獣を呼び出し、無事に契約を結んだ者こそが、エリートであり優秀者と呼ばれる。
もちろん、下級召喚獣と契約したからといって強くなれないわけではない。
召喚主と召喚獣の信頼関係、経験値の積み重ねによりレベルを上げていき、上位の召喚獣へと進化させることも可能だからだ。
しかしながら、この物語は弱い召喚獣を強くしていく成り上がりストーリーではない。
一般よりも少し裕福な商人の次男坊ルーク・エルフェンが、何故かヤバい召喚獣を呼び出してしまったことによるドタバタコメディーであり、また仲間と共に成長していくストーリーでもある。
ローグ・ナイト ~復讐者の研究記録~
mimiaizu
ファンタジー
迷宮に迷い込んでしまった少年がいた。憎しみが芽生え、復讐者へと豹変した少年は、迷宮を攻略したことで『前世』を手に入れる。それは少年をさらに変えるものだった。迷宮から脱出した少年は、【魔法】が差別と偏見を引き起こす世界で、復讐と大きな『謎』に挑むダークファンタジー。※小説家になろう様・カクヨム様でも投稿を始めました。
異世界召喚に条件を付けたのに、女神様に呼ばれた
りゅう
ファンタジー
異世界召喚。サラリーマンだって、そんな空想をする。
いや、さすがに大人なので空想する内容も大人だ。少年の心が残っていても、現実社会でもまれた人間はまた別の空想をするのだ。
その日の神岡龍二も、日々の生活から離れ異世界を想像して遊んでいるだけのハズだった。そこには何の問題もないハズだった。だが、そんなお気楽な日々は、この日が最後となってしまった。
女神から貰えるはずのチート能力をクラスメートに奪われ、原生林みたいなところに飛ばされたけどゲームキャラの能力が使えるので問題ありません
青山 有
ファンタジー
強引に言い寄る男から片思いの幼馴染を守ろうとした瞬間、教室に魔法陣が突如現れクラスごと異世界へ。
だが主人公と幼馴染、友人の三人は、女神から貰えるはずの希少スキルを他の生徒に奪われてしまう。さらに、一緒に召喚されたはずの生徒とは別の場所に弾かれてしまった。
女神から貰えるはずのチート能力は奪われ、弾かれた先は未開の原生林。
途方に暮れる主人公たち。
だが、たった一つの救いがあった。
三人は開発中のファンタジーRPGのキャラクターの能力を引き継いでいたのだ。
右も左も分からない異世界で途方に暮れる主人公たちが出会ったのは悩める大司教。
圧倒的な能力を持ちながら寄る辺なき主人公と、教会内部の勢力争いに勝利するためにも優秀な部下を必要としている大司教。
双方の利害が一致した。
※他サイトで投稿した作品を加筆修正して投稿しております
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる