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一章
番外編 無茶な要求(レクス視点)
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「国王陛下お願いしたい事があります」
「却下」
目の前の男が何か言う前に、即座に提案を却下する。何を頼もうとしているのか、聞かなくても分かっているので、悩む必要もない。思った通り、休暇についての話だった。
念のために、どれくらいの休暇が欲しいのかと聞けば、2週間というふざけているとしか思えない事を言い出した。
「さっさと仕事しろ!」
「常に4、5人分の仕事を回されて、毎日こなしているが?」
「うっ…」
それを言われると、こちらとしても痛い。アルノルドには、多くの仕事をこなして貰っているという自覚もある。だから、休まれても困るが、休みをやっても良いとも思ってはいる。
「もう少し、近場にならないのか?2、3日くらいなら…何とかなるかもしれん…」
新年祭の前であるこの時期は、食材や警備の調整、貴族対応など、多くの仕事があるが、新年祭が終わった後の後片付けくらいなら、私達だけでもどうにかなるだろう。
「無理だな。この付近は、あまり雪が降らない」
「雪何て、邪魔なだけだろう…」
「リュカが、遊びたいと言ったのだ。ならば、叶えてやりたい」
この男は…仕事では右に出る者がいないほど優秀なのに、家族が関わると途端にポンコツになる…。学院時代は、こんなではなかったのだがな…。私は、アルと初めて合った日を思い出していた。
私は、第1王位継承者として生まれはしたが、母親の爵位があまり高くなかったため、当時、宰相を勤めていたアルノルドの父親であるあの男からは、よく嫌味を言われていた。
だから、その息子も、同じ思考を持っていると思っていた。遠目で見ていても、他人を見下すよに表情を変えない様は、見ていて嫌悪感しかなかった。私は、関わりを持つ事を避けていたが、アルノルドが私の側近役を希望していると言う事で、顔合わせの場が用意された。
私は、あの男から嫌味を言われながら、部屋に向かうと、既にアルノルドは座って待っていた。だが、腕を組み、私が来ても目を閉じたまま、こちらを見ようともしない様に、苛立ちが募る。
「父上は、遠慮してもらえますか。2人で話がしたいので」
私の苛立ちなど関係ないと言わんばかりに、私を無視して会話をしていた。
「座れ」
あの男を追い出した後、アルノルドが私に言った。仮にも王族相手に、命令口調とはどういう事だ!益々苛立ちが募る中、俺は椅子へ腰を掛けた。
「君が、私の側近を希望するとは思わなかったよ?私は、たしかに、継承権が高いけど、血筋は良くないよ~。だから、私の側近をするのは、辞めといた方がいいんじゃないかな~?」
「血筋が良くても、父上のような無能の下に付くの願い下げだ…。お前は、王族の中では、比較的有能そうだから、側近を希望した。王族の権威を使わせて貰う変わりに、お前のために私が働く。お互い、利害が一致すると思うのだが、どうだ?」
あの男、自分の息子に無能だと思われているとは、まさに滑稽だな。まあ、たしかに、アルノルドは、学院では優秀な事でも有名だから、何かと役には立つだろう。お互い、利害関係がある関係、ねぇ…。
「君、思ってたのと少し違うね~。いいよ~。私にも、損はないみたいだし~。これからよろしくね?」
あの頃は、アルがこんな人間になるとは、思ってなかったな…。だが、今のポンコツなアルの方が良いと、私も思っているのも事実なのだが…。
「とにかく、2週間は無理だ。休暇が欲しいなら仕事を終わらせろ」
「ちっ…」
アルは、何も言わずにそのまま部屋を出て行った。だが、普通に舌打ちしていきやがった!お前、休暇やらないぞ!?
「陛下、結局どうするのですか?」
隣に控えていた秘書が、控えめに私に聞いてくる。
「う~ん。アルには休暇はあげたいけど、今の時期はさすがにねぇ~。もう少し、後になれば落ち着くんだけどね…」
学院の卒業や入学を控えた家族達が、新年祭が終わった後も、王都に居座って問題を起こすから忙しいのであって、それさえ終えてしまえば、仕事も落ち付いてくるため、休みを出す事が出来る。
そもそも、自領で通じていた事が、何故王都でも通用すると、思っているのか…。子供は、外で過ごした事が無いから、仕方ない部分はあるが、親がそれを止めてくれとしか言えない…。そうすれば、店から上がってくる苦情対応なども減るというのに…。
「やっぱり…無理かな…。一応、アルが休みを取っても大丈夫そうな日にちがないか、確認して貰えるかな?」
「…ありますかね」
「アルなら、休暇を取るために、さらに倍の速度で仕事していそうだからね。だから、私達も少し気合を入れて仕事しようか?」
昔の事もあるし、アルが休暇を取れるようにと、私達が休憩時間を削って、仕事をしていたというのに…。
「レクス、少し聞きたい事が…」
「仕事してろよ!!」
仕事をしていると思っていた相手が、まさか仕事をしないで、出歩いているとは思わなかった!!
休暇と、アルが聞きたい情報を教えてやる代わりに、私の仕事を手伝うように言ったら、机に乗っている書類の4分の1しか持って行かなかった!出歩いている余裕があるなら、半分くらい持って行け!!
「却下」
目の前の男が何か言う前に、即座に提案を却下する。何を頼もうとしているのか、聞かなくても分かっているので、悩む必要もない。思った通り、休暇についての話だった。
念のために、どれくらいの休暇が欲しいのかと聞けば、2週間というふざけているとしか思えない事を言い出した。
「さっさと仕事しろ!」
「常に4、5人分の仕事を回されて、毎日こなしているが?」
「うっ…」
それを言われると、こちらとしても痛い。アルノルドには、多くの仕事をこなして貰っているという自覚もある。だから、休まれても困るが、休みをやっても良いとも思ってはいる。
「もう少し、近場にならないのか?2、3日くらいなら…何とかなるかもしれん…」
新年祭の前であるこの時期は、食材や警備の調整、貴族対応など、多くの仕事があるが、新年祭が終わった後の後片付けくらいなら、私達だけでもどうにかなるだろう。
「無理だな。この付近は、あまり雪が降らない」
「雪何て、邪魔なだけだろう…」
「リュカが、遊びたいと言ったのだ。ならば、叶えてやりたい」
この男は…仕事では右に出る者がいないほど優秀なのに、家族が関わると途端にポンコツになる…。学院時代は、こんなではなかったのだがな…。私は、アルと初めて合った日を思い出していた。
私は、第1王位継承者として生まれはしたが、母親の爵位があまり高くなかったため、当時、宰相を勤めていたアルノルドの父親であるあの男からは、よく嫌味を言われていた。
だから、その息子も、同じ思考を持っていると思っていた。遠目で見ていても、他人を見下すよに表情を変えない様は、見ていて嫌悪感しかなかった。私は、関わりを持つ事を避けていたが、アルノルドが私の側近役を希望していると言う事で、顔合わせの場が用意された。
私は、あの男から嫌味を言われながら、部屋に向かうと、既にアルノルドは座って待っていた。だが、腕を組み、私が来ても目を閉じたまま、こちらを見ようともしない様に、苛立ちが募る。
「父上は、遠慮してもらえますか。2人で話がしたいので」
私の苛立ちなど関係ないと言わんばかりに、私を無視して会話をしていた。
「座れ」
あの男を追い出した後、アルノルドが私に言った。仮にも王族相手に、命令口調とはどういう事だ!益々苛立ちが募る中、俺は椅子へ腰を掛けた。
「君が、私の側近を希望するとは思わなかったよ?私は、たしかに、継承権が高いけど、血筋は良くないよ~。だから、私の側近をするのは、辞めといた方がいいんじゃないかな~?」
「血筋が良くても、父上のような無能の下に付くの願い下げだ…。お前は、王族の中では、比較的有能そうだから、側近を希望した。王族の権威を使わせて貰う変わりに、お前のために私が働く。お互い、利害が一致すると思うのだが、どうだ?」
あの男、自分の息子に無能だと思われているとは、まさに滑稽だな。まあ、たしかに、アルノルドは、学院では優秀な事でも有名だから、何かと役には立つだろう。お互い、利害関係がある関係、ねぇ…。
「君、思ってたのと少し違うね~。いいよ~。私にも、損はないみたいだし~。これからよろしくね?」
あの頃は、アルがこんな人間になるとは、思ってなかったな…。だが、今のポンコツなアルの方が良いと、私も思っているのも事実なのだが…。
「とにかく、2週間は無理だ。休暇が欲しいなら仕事を終わらせろ」
「ちっ…」
アルは、何も言わずにそのまま部屋を出て行った。だが、普通に舌打ちしていきやがった!お前、休暇やらないぞ!?
「陛下、結局どうするのですか?」
隣に控えていた秘書が、控えめに私に聞いてくる。
「う~ん。アルには休暇はあげたいけど、今の時期はさすがにねぇ~。もう少し、後になれば落ち着くんだけどね…」
学院の卒業や入学を控えた家族達が、新年祭が終わった後も、王都に居座って問題を起こすから忙しいのであって、それさえ終えてしまえば、仕事も落ち付いてくるため、休みを出す事が出来る。
そもそも、自領で通じていた事が、何故王都でも通用すると、思っているのか…。子供は、外で過ごした事が無いから、仕方ない部分はあるが、親がそれを止めてくれとしか言えない…。そうすれば、店から上がってくる苦情対応なども減るというのに…。
「やっぱり…無理かな…。一応、アルが休みを取っても大丈夫そうな日にちがないか、確認して貰えるかな?」
「…ありますかね」
「アルなら、休暇を取るために、さらに倍の速度で仕事していそうだからね。だから、私達も少し気合を入れて仕事しようか?」
昔の事もあるし、アルが休暇を取れるようにと、私達が休憩時間を削って、仕事をしていたというのに…。
「レクス、少し聞きたい事が…」
「仕事してろよ!!」
仕事をしていると思っていた相手が、まさか仕事をしないで、出歩いているとは思わなかった!!
休暇と、アルが聞きたい情報を教えてやる代わりに、私の仕事を手伝うように言ったら、机に乗っている書類の4分の1しか持って行かなかった!出歩いている余裕があるなら、半分くらい持って行け!!
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