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一章

番外編 リュカのために(アルノルド視点)

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「アルノルド様、急がないと遅れますよ」

「分かっている…」

私は、ドミニクから急かされながら、馬車に向かう最中、玄関の手すりに積もった雪が目に入った。私は、その雪を手ですくい上げ、手の平に乗せると、雪は私の体温で直ぐに溶け出し、水へと変わった。

今日の朝食で、リュカが雪で遊びたいと言ってから、私は、雪に付いて考えていた。さすがに、天気を操る事は出来ないが、似たような物は作れないかと思ったのだ。

しかし、雪を溶かせば水になるのに、水を凍らせれば氷になるのは、どういう事だ?雪の感触は、氷を砕いた時の感触とも違う。ならば、氷をさらに細かく砕けば雪になるのか?それに、何故、雪は綿の形状で空から降るのだ?

城へと向かう馬車の中でも、雪に付いて考えていた。だが、まずは確実な方法を得るために、私は城に付くと、真っ先にある男の部屋へと向かった。

「国王陛下、少しお願いがあります」

「却下」

「まだ、何も言っていませんが?」

「お前が、私を陛下呼びする時は、決まって休暇が欲しい時だ」

「分かっているなら、さっさと休みを寄越せ」

「今の時期に休みなんて、無理に決まってんだろ!!はぁ…ちなみに聞くが、どれくらいだ?」

「雪が降る北の町まで行くから、2週間だな」

「さっさと仕事しろ!」

その後も、休みを寄越すように要求してみたが、レクスは頑として私に休暇を寄越さなかった。たしかに、昔、働くとは言ったが、さすがに、仕事の量が多すぎる。学院時代から、私がどれだけ働いていると思っているのか…。

「報告書です。ご確認をお願いします」

「…分かった」

レクスへの不満を感じながら、自分の仕事をこなし、部下から回ってく報告書にも目を通す。それ以外にも、部下への仕事の割り振りや、不足の事態への対応策の考案、突発的に起こる問題の解決。

いくら手を動かしても、仕事が減る気配がなく、むしろ、増えていっている気がする…。ほんとうに、手が幾らあっても足りはしない…。

「…昼だ。皆休め」

時計を見れば昼の時間になっていた。私は、部下達に休むように伝えて部屋を出る。上司である私が部屋にいては、休めるものも休めないだろうと思い、別の部屋で過ごすようにしている。

たしかに、仕事は山のようにあるが、休みもなく、昼も食べずに働いても、作業効率が悪くなるだけだ。なので、昼の休憩は、毎日、必ず入れているようにしている。そして、部下達には残業を認めていない。そんな事を許せば、私が家族との夕食に間に合わなくなる。だから、部下を全員、定時で帰す事にしている。

私達がいなくて困ろうとも、定時を過ぎてから仕事を持ってくる方が悪い。それに、各自で対応出来るように、手引書も作ってやったのだから、それを見て各自で対応しろ。

何時も休んでいる部屋で、私は1人、紅茶を飲みながら一息付く。

昔は、仕事をするのは、それほど苦ではなかった。家族が、子供が出来てからは、仕事でその成長を見れない事が苦痛に感じる。

「しかし…昔は、私がレクスに仕事しろと言っていたのだがな…」

最初の頃のレクスは、仕事を抜け出す事が多く、よく注意していたものだ。まあ、私が働くと約束していたため、あまり強くは言わなかった。それに、人脈を作りに行っているというのも、理由の1つではある。まあ、遊びに行っている事が多かったが…。

レクスは、当時からいい加減な言動をしている事が多かった。だが、それは表面だけだという事に、私は気付いていた。だから、王家の人間の中では、比較的まともな、レクスに付く事にしたのだ。私は、父のような無能な人間の下に付くのは願い下げだからな。

「はぁ…頼りがないのは、元気な証拠とも言うが…さっさと、死ねばいいものを…」

死んだという報告が、私の所に届かないのなら、父はまだ生きているのだろう。全く、無能共と一緒に、さっさと死ねばいいものを…。まあ、届く報告書の中には、たまに、興味深い物はあったから、少しは役にはたったか?

まあ、思い出しても不快になるだけと、好茶を飲もうとした時、紅茶から出ている湯気が気になった。私は、紅茶から出る湯気に手をかざせば、当然のごとく、私の手は湯気で湿っていた。

湯気は、水を熱した時に発生する。そして、手が湿るという事は湯気は、水で出来ているという事だ。ならば、この湯気を凍らせれば小さな氷が出来るのではないか?そして、大量の湯気を作る事が出来れば、雪を作る事が出来るのではないのか?

ただの仮説ではあるが、やってみる価値はあるのではないかと思う。それに、その条件を満たす事で雪が降るのなら、遠い場所へと行かなくても、雪で遊ばせてやる事が出来る。

条件を満たす事が出来る場所を、自分で調べるより、レクスに聞いた方が速い。私は、飲み掛けの好茶を机に置くと、奴のいる執務室へ向かうため、私は部屋を後にした。
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