落ちこぼれの貴族、現地の人達を味方に付けて頑張ります!

ユーリ

文字の大きさ
上 下
41 / 248
一章

宿を抜けて(オルフェ視点)

しおりを挟む
新年祭も無事に終わった次の日、私達は家族で旅行へと出掛けた。

馬車で目的地であるラクスを目指す間に、母からリュカとの事に付いて聞かれた。

「リュカとは最近どうなの?」

「…避けられなくは…なりました」

「昔は、泣かれてばかりいたけれど、オルフェが頑張ったから、もう泣かれなくもなったものね」

「……そうですね」

泣かれない変わりに、避けられるようになりましたけど…。

「オルフェは、難しい事もそつなくこなせるのに、人に対しては、本当に不器用よね。この旅行を期に、もう少しリュカに対して素直になってみたら?」

「素直に…」

それが出来出来るのならば、何も苦労はしていないのですよ…。

ラクスには、予定通りの時間に到着した。自分の部屋に荷物を運び終わり、一息付くと私は、家族が待つ下へと向った。

夕食を食べている間も、リュカは楽しそうにしていた。途中、飲み物を持って来た奴がいたが、私の前にもジュースを置いていった。

別にジュースでもかまわなかったのだが、リュカの前で飲むのは何か躊躇われたので、父上が代わりを頼んだ時に、私の分の飲み物も一緒に交換して貰った。

リュカは、ここまでの移動で疲れていたのか、夕食の途中から眠そうにしていた。だが、母上も一緒になって眠そうにしているのは珍しい。前の日が、新年祭だったから疲れていたんだろうか?

部屋に戻ってしばらくすると、誰かが部屋から出てくる気配がした。窓の外を見ていれば、父上が湖の方へと向かう姿が見えた。

私も、宿から抜け出す機会を伺っていたので、父上が出掛けているうちに、私の用事も済ませてしまう事にした。私は、部屋を出ると町の外の方へと向かった。

レグリウス家に手を出す者は誰もいないだろうが、二人だけを宿に残しているのは、少し不安もあったため、急いで宿に戻って来るつもりだ。

「…ここならいいだろう」

町から少し離れた人気のない森に入ると、私はアイツらを呼ぶために魔力を練った。

「来い、アクア、イグニス」

2つの魔法陣が光を放ち森を照らす、その光が大きくなり消えた後に、青い龍と赤い龍の2体の龍が姿を現した。どちらも色以外は似ていて、5メートルくらいの大きさがあった。森という視界が遮られた空間で見ると、さらに2体の存在感が増していた。

2体の龍は、鋭い爪を持ち頭にはそれぞれ2本角があった。そして、背中には巨体に見合うだけの大きな翼が生えていた。尻尾まで覆われた鱗も、1枚1枚が月の光を反射するように煌めいていて、全体的に神秘的な雰囲気を醸し出していた。

久しぶりにあったが、やはり無駄にでかいな…。他人から見れば、見ごたえはあるのだろうが、見慣れている私には、特に感じる所もない。それに、コイツラの中身を知っていればなおさらだ…。

早々に要件を済ませようと2体に向き合えば、イグニスが私の方に突撃して来るのが見えた。私が、避けてかわすと、イグニスはそのまま頭から地面に激突していた。

「突っ込んで来るな、体格差を考えろ」

自分の召喚獣ではあるものの、考えずに行動する所が、レオンに似ていてため息を付きたくなる。

イグニスは、赤い鱗を持ち炎を得意とする炎龍だが、感情や思い付きで行動する事が多く、真っ先になにかしらの問題を起こすのがコイツだ。

アクアは、青い鱗を持った水を得意とする水龍で、イグニスよりも冷静ではあるが、結局は一緒になって騒いでいるので頭が痛い…。

屋敷にいた頃は、あちこちで遊び回っては、何か物を壊していた。だから、リュカが動き回るようになってからは、リュカが怪我をしたら大変だと思い、なるべく私の部屋から出ないように2体には言っておいた。

学院から帰って来てた後、2体の様子を見るために部屋に行くと、飾り棚に置いていた小物が全て全滅していた…。私は、あまりの怒りに魔力が暴走し、気が付いた時には部屋が半壊していた…。もちろん、原因である2体も吹っ飛んでいたが、その後何気ない顔をして戻って来たので、もう1度吹っ飛ばしておいた。

そんな事があったので、部屋から2体を裏庭へと追い出した。すると今度は、裏庭をめちゃめちゃにしながら、裏庭にいる小動物を追い掛けて遊んでいたので、山で魔物でも狩るようにと王都の外に追い出した。その後も順調に、大きさを増していく2体の様子を、王都の外まで定期的に見に行っていたが、先月は色々あって行けていなかった。

「はぁ…お前達には今後、リュカの護衛などを頼む事が出てくると思う…。だが、絶対に!絶対に問題を起こすなよ!」

龍だからなのか、何でも力技でその場を何とかしようとする癖があり、そのせいで小さな事も大事にする事が多々あった。私がいる時ならばそれでも良いが、リュカしか側にいない時に問題を起こされては困る。私は、その後も2体に問題を起こさないように釘を差していたら、宿に戻るのが少し遅くなってしまった。

宿へと戻ろうと道を急いでいた時に、町の中に何か不穏な空気を感じた。私は、あたりを警戒しながら宿へと足を速める。私が、宿へと付く頃そいつらは現れた。
しおりを挟む
感想 1

あなたにおすすめの小説

婚約破棄?一体何のお話ですか?

リヴァルナ
ファンタジー
なんだかざまぁ(?)系が書きたかったので書いてみました。 エルバルド学園卒業記念パーティー。 それも終わりに近付いた頃、ある事件が起こる… ※エブリスタさんでも投稿しています

一級警備員の俺が異世界転生したら一流警備兵になったけど色々と勧誘されて鬱陶しい

司真 緋水銀
ファンタジー
【あらすじ】 一級の警備資格を持つ不思議系マイペース主人公、石原鳴月維(いしはらなつい)は仕事中トラックに轢かれ死亡する。 目を覚ました先は勇者と魔王の争う異世界。 『職業』の『天職』『適職』などにより『資格(センス)』や『技術(スキル)』が決まる世界。 勇者の力になるべく喚ばれた石原の職業は……【天職の警備兵】 周囲に笑いとばされ勇者達にもつま弾きにされた石原だったが…彼はあくまでマイペースに徐々に力を発揮し、周囲を驚嘆させながら自由に生き抜いていく。 -------------------------------------------------------- ※基本主人公視点ですが別の人視点も入ります。 改修した改訂版でセリフや分かりにくい部分など変更しました。 小説家になろうさんで先行配信していますのでこちらも応援していただくと嬉しいですっ! https://ncode.syosetu.com/n7300fi/ この物語はフィクションです。登場する人物・団体・名称等は架空であり、実在のものとは関係ありません。

国外追放だ!と言われたので従ってみた

れぷ
ファンタジー
 良いの?君達死ぬよ?

知識スキルで異世界らいふ

チョッキリ
ファンタジー
他の異世界の神様のやらかしで死んだ俺は、その神様の紹介で別の異世界に転生する事になった。地球の神様からもらった知識スキルを駆使して、異世界ライフ

幸せな人生を目指して

える
ファンタジー
不慮の事故にあいその生涯を終え異世界に転生したエルシア。 十八歳という若さで死んでしまった前世を持つ彼女は今度こそ幸せな人生を送ろうと努力する。 精霊や魔法ありの異世界ファンタジー。

異世界転移しましたが、面倒事に巻き込まれそうな予感しかしないので早めに逃げ出す事にします。

sou
ファンタジー
蕪木高等学校3年1組の生徒40名は突如眩い光に包まれた。 目が覚めた彼らは異世界転移し見知らぬ国、リスランダ王国へと転移していたのだ。 「勇者たちよ…この国を救ってくれ…えっ!一人いなくなった?どこに?」 これは、面倒事を予感した主人公がいち早く逃げ出し、平穏な暮らしを目指す物語。 なろう、カクヨムにも同作を投稿しています。

召喚学園で始める最強英雄譚~仲間と共に少年は最強へ至る~

さとう
ファンタジー
生まれながらにして身に宿る『召喚獣』を使役する『召喚師』 誰もが持つ召喚獣は、様々な能力を持ったよきパートナーであり、位の高い召喚獣ほど持つ者は強く、憧れの存在である。 辺境貴族リグヴェータ家の末っ子アルフェンの召喚獣は最低も最低、手のひらに乗る小さな『モグラ』だった。アルフェンは、兄や姉からは蔑まれ、両親からは冷遇される生活を送っていた。 だが十五歳になり、高位な召喚獣を宿す幼馴染のフェニアと共に召喚学園の『アースガルズ召喚学園』に通うことになる。 学園でも蔑まれるアルフェン。秀な兄や姉、強くなっていく幼馴染、そしてアルフェンと同じ最底辺の仲間たち。同じレベルの仲間と共に絆を深め、一時の平穏を手に入れる これは、全てを失う少年が最強の力を手に入れ、学園生活を送る物語。

隠密スキルでコレクター道まっしぐら

たまき 藍
ファンタジー
没落寸前の貴族に生まれた少女は、世にも珍しい”見抜く眼”を持っていた。 その希少性から隠し、閉じ込められて5つまで育つが、いよいよ家計が苦しくなり、人買いに売られてしまう。 しかし道中、隊商は強力な魔物に襲われ壊滅。少女だけが生き残った。 奇しくも自由を手にした少女は、姿を隠すため、魔物はびこる森へと駆け出した。 これはそんな彼女が森に入って10年後、サバイバル生活の中で隠密スキルを極め、立派な素材コレクターに成長してからのお話。

処理中です...