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一章

青い龍に乗った兄様

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宿の夕食は、屋敷で食べる料理と変わらないほどに美味しかった。それに、久しぶりに全員揃っての夕食だった事もあって、よりいっそう美味しく感じられた気がした。

「リュカ。明日何だけど、上手く行けば、楽しい物を見せてあげられるかも知らないよ?」

「楽しい物!何ですか!?」

父様が、食事の途中で、何処か躊躇いがちに明日の事について話し始めた。

「うーん…まだ、上手く行くと決まったわけではないから、詳しくも言えないけれど、ちゃんと失敗した時の事も考えてはいるから、今は、明日のお楽しみにしておいてくれるかな?」

「はい!!分かりました!」

父様が失敗する事なんて思えない僕は、明日何があるんだろうと、1人想像を巡らせてながら明日に期待していた。そんな時、1人の給仕が飲み物を持ちながらこちらに、近づいて来るのが見えた。

「お客様へのサービスで、お飲み物をお持ちしました」

飲み物を特に頼んでいたわけではないけれど、給仕は慣れた手付きで、父様と母様にはワインを、僕と兄様にはジュースをグラスに注ぐと、僕達の前を去って行った。

「?アルは、飲まないの?」

母様がワインを飲んでいる横で、父様がまったく口を付けようとしていなかった。それを母様が、不思議そうに父様に聞いた。

「私はまだやる事があるから、お酒は止めておこうかな」

そう言うと、側にいた別の人に、お酒以外の物に交換して貰っていた。兄様も、ジュースが不満だったのか父様と同じ物に交換していた。僕は、ジュースで良かったので、そのまま出された物を飲んだ。

「ふぁ~」

今日、1日馬車移動をして疲れたせいか、何だか何時もよりも速く眠くなって来た。母様も疲れていたのか、母様も眠そうにしていたため、速めに食事を切り上げて部屋へと移動した。

両親の部屋は一緒だったけど、僕と兄様の部屋は、それぞれ別れていた。僕は、自分の部屋に入ると、そそくさと布団に入って、あっという間に眠りへと落ちて行った。

次に、僕が目覚めた時には、周りの様子が全て変わっていた。

「残りの奴はまだ見つからねぇのか!!」

突然聞こえて来た大声で飛び起きると、何故か布団ではなく硬い地面の上に寝ていた。驚いて手足を動かそうとしても、何かで縛られているのか、動かす事が出来ない。それに、首にも何か付いていて、何だか息苦しいような気がするうえに体が重い…。

「すいやせん!!今、下のもんに町の中を探させて入るんですが、まだ…」

「速くしろ!町中で騒がれたら面倒だ!!」

声がする方に視線を向ければ、知らない大柄の男が、周りにいる男達に怒鳴り散らしているのが見えた。

「リュカ……」

僕の事を、か細い声で呼ぶのが聞こえ、視線を向ければ、母様も僕と一緒に、地面に転がされているのが見えた。しかし、周りには父様と兄様の姿は見えない。

「母様!!」

僕が、大きな声を出した事で、目が冷めた事に気付いた男が、視線をこちらに向け、僕達の方に近づいて来た。

「何だ?目が冷めたのか?他の2人が見つかるまでは、殺しはしねぇから大人しくしてろよ。金を手に入れるまでは、大事な客だからな」

口角だけを上げて、意地悪く笑う様に恐怖で、身が震える。

「それと、お前ら貴族のための、魔力封じの首輪をしているから、抵抗しようとしても無駄だからな。まあ、大人しくしてりゃあ、ガキくらいなら殺さずに売り飛ばしてやってもいいぜ。何せ俺は優しいからな…」

こちらに、抵抗する様子が見られない事に満足したのか、後ろにいる男たちの方を振り返る。

「てめぇら!こいつらをしっかり見張って、逃がすんじゃねぇぞ」

男は、部下たちに命じると、自分はそのまま奥の部屋へとそのまま消えて行った。

「少しでも長生きしたければ、大人しくして…!何だ!」

部下がこちらに近づいて来て、話をしている最中に、大きな爆音と共に屋根が抜けて、上から何かが落ちてきた。

何かが落ちて来た事で、周りに土煙のようなものが舞う。煙が落ち着いた後には、青い龍に乗った兄様がこちらを見ているのが見えた。
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