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一章
街へ
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「あまり私から離れないで下さいね」
街の広場近くまで馬車で移動した後、そこからは目立たないように歩いて移動した。普段来る事のない場所では、見える物すべてが楽しくて、どうしてもキョロキョロと辺りを見渡しながら歩いてしまう。そのせいで、フェリコ先生から注意を受けてしまった。
「はい……」
「気になる物があるのは分かります。しかし、前を見ていないと、迷子になってしまったり、誰かにぶつかって、相手や自分が怪我をしまう危険だってあるんです。痛い思いをしたり、誰かに怪我をさせたくはないでしょう?」
フェリコ先生は、少し落ち込む僕を、慰めるように頭を撫でながら、ゆっくりと理由を説明された。
「お店は、逃げて行かないので、ゆっくり見て回りましょう」
「はい!!」
元気よく返事をする僕を見て、フェリコ先生は笑いながら頷いてくれた。
「あれ!あれが、食べてみたいです!!」
僕は、さっそく気になっていた屋台を指で指す。さっきから、いい匂いがここまで香って来て、朝食を食べたばかりなのにもうお腹が空いてくる。
「ああ、串焼きの屋台ですね」
「串焼き?」
「普段食べている食事では、出る事も無いですから、見た事ないかもしれませんね」
「食べてみたい!!」
「では、行ってみましょうか」
今すぐにでも、走って行きたい!だけど、注意されたばかりなので、何とか気持ちを抑え、屋台の前までやって来た僕達に、屋台の店主が声をかけてきた。
「いらっしゃい!!お一つどうだい!」
「では、2つ下さい」
フェリコ先生が、なれた様子で屋台の店主に注文を伝える。
「まいど!!2つで280ルピアだ!」
「坊っちゃん。どれを使えばいいか分かりますか?」
「……!は、はい!」
坊っちゃんと呼ばれて咄嗟に分からなかったが、街で名前を出すと何処の家の者か分かってしまうため、安全のために坊っちゃん呼びをすると説明を受けていた事を思い出す。
何でも、僕が産まれる前から、父様が商人達に僕達の話していたため、商人達の間で僕達は有名になっているらしい……。
僕は、袋の中から目当ての硬貨を探して、銅貨2枚と鉄貨8枚を屋台の店主に渡す。
「お!その年でちゃんと出来るなんて偉いな!」
ちょうど硬貨を渡せた僕を、屋台の店主が褒めてくれる。隣にいるフェリコ先生も、笑顔を向けてくれるのが嬉しく感じるとともに、何だか照れくさい。
「また来いよ!」
屋台の店主に手を振りながら、近くにある広場のベンチを目指す。フェリコ先生とベンチに座りながら串焼きを一口食べてみると、味はシンプルなのに、噛むごとに中から熱い肉汁が出てきて美味しい。
僕は、ハフハフと熱さと戦いながら、夢中になって串焼きを食べていたら、隣から小さな笑い声が聞こえてきた。横を振り向くと、フェリコ先生が楽しそうな顔をしながら、僕が食べる様子を見ている事に気付いた。僕は、マナーを忘れて食べていた事を思い出し、途端に恥ずかしくなった。
「リュカ様、マナーを笑ったわけではないですよ。ただ、微笑ましいと思っただけです。それに、こんな所でマナーを気にする人なんていませんよ?」
言われて周りを見渡せば、僕と同じように食べている人が大勢いた。中には歩きながら食べている人もいて、皆、楽しそうに食べていた。
「マナーは、場所によって変わります。それは、相手を不快にさせない配慮であり、気遣いです。でも、そればかりに囚われる必要はないと私は思います。食べ物は、皆で楽しく食べた方が美味しいですからね」
そう言ってフェリコ先生は、優しく僕の頭を撫でてくれた。
「それと、遅くなりましたが、しっかりお金を使えていてえらかったですよ」
「はい!でも、鉄貨が見つからなくて大変でした……」
さっきの出来事を思い出して、フェリコ先生に伝える。
「ああ…袋の中には、ほとんど金貨しか入っていなかったですからね…。私の持ち合わせからできる限り両替はしたのですが…そこまで持ち合わせがなくて……」
フェリコ先生は、何処かばつが悪そうに視線をそらす。
「銀貨とかは持ち歩かないんですか?」
普段から金貨を使っていて、銀貨とかを持ち歩かないから、両替が出来なかったのかな?
「いえ…普段から、必要な分しかお金を持ち歩かないようにしたいるのもありますが…今回は買い物ため、金貨を持って来ていたので、細かいのをあまり持って来なかったんです…。しかし、今までこんな大金持ち歩いた事がないので、落ち着きません…だいだい金貨1,2枚あれば、街での買い物は出来ますから……」
僕と同じ貴族のはずなのに、何処か庶民的な考え方に親近感を感じる。それに、普段のしっかりと様子と違って、頼りない様子が、何だか可笑しくて笑ってしまう。気が付くと、横でフェリコ先生も笑っていて、ベンチに座りながら、二人で一緒に声を上げてしばらく笑っていた。
街の広場近くまで馬車で移動した後、そこからは目立たないように歩いて移動した。普段来る事のない場所では、見える物すべてが楽しくて、どうしてもキョロキョロと辺りを見渡しながら歩いてしまう。そのせいで、フェリコ先生から注意を受けてしまった。
「はい……」
「気になる物があるのは分かります。しかし、前を見ていないと、迷子になってしまったり、誰かにぶつかって、相手や自分が怪我をしまう危険だってあるんです。痛い思いをしたり、誰かに怪我をさせたくはないでしょう?」
フェリコ先生は、少し落ち込む僕を、慰めるように頭を撫でながら、ゆっくりと理由を説明された。
「お店は、逃げて行かないので、ゆっくり見て回りましょう」
「はい!!」
元気よく返事をする僕を見て、フェリコ先生は笑いながら頷いてくれた。
「あれ!あれが、食べてみたいです!!」
僕は、さっそく気になっていた屋台を指で指す。さっきから、いい匂いがここまで香って来て、朝食を食べたばかりなのにもうお腹が空いてくる。
「ああ、串焼きの屋台ですね」
「串焼き?」
「普段食べている食事では、出る事も無いですから、見た事ないかもしれませんね」
「食べてみたい!!」
「では、行ってみましょうか」
今すぐにでも、走って行きたい!だけど、注意されたばかりなので、何とか気持ちを抑え、屋台の前までやって来た僕達に、屋台の店主が声をかけてきた。
「いらっしゃい!!お一つどうだい!」
「では、2つ下さい」
フェリコ先生が、なれた様子で屋台の店主に注文を伝える。
「まいど!!2つで280ルピアだ!」
「坊っちゃん。どれを使えばいいか分かりますか?」
「……!は、はい!」
坊っちゃんと呼ばれて咄嗟に分からなかったが、街で名前を出すと何処の家の者か分かってしまうため、安全のために坊っちゃん呼びをすると説明を受けていた事を思い出す。
何でも、僕が産まれる前から、父様が商人達に僕達の話していたため、商人達の間で僕達は有名になっているらしい……。
僕は、袋の中から目当ての硬貨を探して、銅貨2枚と鉄貨8枚を屋台の店主に渡す。
「お!その年でちゃんと出来るなんて偉いな!」
ちょうど硬貨を渡せた僕を、屋台の店主が褒めてくれる。隣にいるフェリコ先生も、笑顔を向けてくれるのが嬉しく感じるとともに、何だか照れくさい。
「また来いよ!」
屋台の店主に手を振りながら、近くにある広場のベンチを目指す。フェリコ先生とベンチに座りながら串焼きを一口食べてみると、味はシンプルなのに、噛むごとに中から熱い肉汁が出てきて美味しい。
僕は、ハフハフと熱さと戦いながら、夢中になって串焼きを食べていたら、隣から小さな笑い声が聞こえてきた。横を振り向くと、フェリコ先生が楽しそうな顔をしながら、僕が食べる様子を見ている事に気付いた。僕は、マナーを忘れて食べていた事を思い出し、途端に恥ずかしくなった。
「リュカ様、マナーを笑ったわけではないですよ。ただ、微笑ましいと思っただけです。それに、こんな所でマナーを気にする人なんていませんよ?」
言われて周りを見渡せば、僕と同じように食べている人が大勢いた。中には歩きながら食べている人もいて、皆、楽しそうに食べていた。
「マナーは、場所によって変わります。それは、相手を不快にさせない配慮であり、気遣いです。でも、そればかりに囚われる必要はないと私は思います。食べ物は、皆で楽しく食べた方が美味しいですからね」
そう言ってフェリコ先生は、優しく僕の頭を撫でてくれた。
「それと、遅くなりましたが、しっかりお金を使えていてえらかったですよ」
「はい!でも、鉄貨が見つからなくて大変でした……」
さっきの出来事を思い出して、フェリコ先生に伝える。
「ああ…袋の中には、ほとんど金貨しか入っていなかったですからね…。私の持ち合わせからできる限り両替はしたのですが…そこまで持ち合わせがなくて……」
フェリコ先生は、何処かばつが悪そうに視線をそらす。
「銀貨とかは持ち歩かないんですか?」
普段から金貨を使っていて、銀貨とかを持ち歩かないから、両替が出来なかったのかな?
「いえ…普段から、必要な分しかお金を持ち歩かないようにしたいるのもありますが…今回は買い物ため、金貨を持って来ていたので、細かいのをあまり持って来なかったんです…。しかし、今までこんな大金持ち歩いた事がないので、落ち着きません…だいだい金貨1,2枚あれば、街での買い物は出来ますから……」
僕と同じ貴族のはずなのに、何処か庶民的な考え方に親近感を感じる。それに、普段のしっかりと様子と違って、頼りない様子が、何だか可笑しくて笑ってしまう。気が付くと、横でフェリコ先生も笑っていて、ベンチに座りながら、二人で一緒に声を上げてしばらく笑っていた。
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