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一章

父様は優秀?

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「父様!人を泣かせるような事をしてはだめです!」

「え、えっとね!泣くというのは、比喩、例え話だから!泣き言は…言うかもしれないけど……」

「父様!ちゃんと仕事しないと駄目ですよ!そもそも、僕達みたいな普通の貴族が宰相になれるものなんですか!?」

宰相なんて、凄い立場の仕事をさせてもらっているのに、何処か他人事のように言う父様には、もう少し危機感を持って仕事して欲しい。

「ん?レクスなら、仕事さえ出来れば階級については何も言わないと思うよ?私は、次期公爵家当主ということもあってね。学院時代からレクスの側近をしていたから、レクスが王位継承した後も、そのまま城で働いているだけだね」

「えっ…」

公爵って何か身分が高そうなんだけど…。でも、身分とかが高くなると色々と仕事がありそうなのに、父様が家で仕事をしている所を見た事がないんだけど……。

「父様は、宰相の仕事をしながら、家の仕事しているんですか?」

「ん?家の仕事の片手間に、宰相の仕事をしているんだよ?」

父様!そんな不思議そうに返されても、それは片手間でやる仕事じゃないですから!!

そもそも、片手間で宰相の仕事をこなしてるんですか!?それなのに、家では兄様に叱られてるってどういう事何ですか!?

「片手間にやってて、クビになったりしないの!?」

「前、レクスの机に辞職届け置いて帰って来たら、半日もしないうちに連れ戻された事はあったね。その後も、何回か辞職届けを出したけど、受理された事はないね。後任者は、ちゃんと置いて来てたんだけどな?」

半日もしないうちに、連れ戻されるくらいの仕事こなしながら、家の仕事をしているんですか!?え!あれ?逆!?

「リュカ。ひとまずその話は、また今度にしましょう。今日は、もうゆっくり休む事だけを考えて、ね?。アルも、リュカをあまり興奮させるような事は言わないように!」

「はい……」

「エレナ、すまない……」

たしかに、窓の外を見れば、日が沈んで辺りが暗くなって来ていた。教会に行ったのが昼前だった事を考えると、だいぶ時間がたっているようだ。

「……リュカ。オルフェと話した後ではあるけど、リュカとも話したい事があるんだ…」

母様に叱られたせいか、父様は何処か躊躇いに僕に言った。

「何ですか?」

「それは…リュカが元気になった時に話しをする事にするよ。だから、今日はエレナの言う通り休みなさい。ご飯は食べられそうかな?」

「今は、お腹すいてないです」

ほとんど寝ていたからか、あんまり空腹は感じなかった。

「もし、お腹が空いたら何時でも言うんだよ?」

その後も、なかなか心配して部屋を出て行こうとしない父様を見かねたのか、ドミニクが父様を急かすようにして部屋から連れ出して行った。

僕は、部屋を出て行く両親達を見送った後、ベットに横になって今日一日の出来事を思い出していた。

朝から色々あり過ぎて、もの凄く疲れた……。

正直な所、儀式を失敗した僕にたいして、両親がどんな反応をするのか分からなかったから、会うのが少し怖かった……。

でも、両親は僕を攻める事もせず、僕の心配ばかりしてくれた。それが、ただ純粋に嬉しかった。

まだ、寂しさや悲しみは少しあるけれど、心に残っていた不安は、それだけで消えていくようだった。


しかし、まさか父様が、城で宰相の仕事をしているなんてまったく知らなかった……。

父様は毎日のように、同じ時間に家を出て、何時も同じ時間に帰ってきていた。帰ってきた後も、家で仕事をしている姿なんて見た事がなかった。

だから僕は、父様が仕事をしているという感覚すらなく、何処かに一人で遊びに出かけているものだとばかり思っていた……。

ある日、一人で遊びに行かないで僕と遊んで!と父様に我儘を言った事があった。僕の我儘に、父様は怒ったりさせず、次の日は昼過ぎに帰って来て、僕と一緒に遊んでくれていた。

母様から注意されてしまったから、言わないようにしていたけど、もしかして、あの時も部下に仕事を押し付けて帰って来ていたんだろうか?知らなかったとはいえ、今更ながら見た事がない、父様の部下の人達や、王様に申し訳ない気持ちになった……。

「はぁ…」

何だか優秀なんだか、そうじゃないのか父様は分からないな……。

それにしても、父様の職業も、国王陛下の名前さえも知らないのは、宰相の息子として大丈夫なのかな……。

僕は明日からの授業に不安を感じつつ、眠りへと落ちていった。
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