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新婚旅行に行こう2

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 領地の別宅に到着です。いきなりの訪問は、やはり嫌がられますが、監査も兼ねているのです。

 より良い人材には、それに見合った仕事と給金を渡したいからです。

 お土産のクッキーも持って来ましたし、どのような対応をしてもらえるか楽しみです。

「ディア、何か楽しいことでも考えてるのですか?」

「突然行って、皆さんの反応を見ようと思いまして。多分、この別宅の位置がホテルにするのに、一番いいと思ってます。
 だから、抜き打ちで行って、ホテルにしたときの、それぞれの仕事の責任者を探そうと思ってます。

 本格的にホテルになったときは、領地の人達を雇用していきたいですね。抜き打ちすぎて、夕飯が食べれなかったら、どうしましょう」

「それなら、逆に楽しめますよ。街の酒場に行けばいいだけですから」

 レイモンドもノリノリですね。ちょっと待ってください。別宅とはいえ、門番が立っていません。

 いないのですか?レイモンドをみると、不思議そうにしてます。御者に門を開けて入るように指示を出してます。

「ディア、抜き打ちって、凄いですね。仕事をしてないのがすぐにわかります。ちなみに、庭も手入れが行き届いてないですね。

 予算では庭師を雇ってるはずですが。いつも連絡してから行くから、ごまかされてしまうのですね」

「レイったら、全然困ってないみたいですね」

「実は、この別宅の責任者があまり好きではないのですよ。
 ミスしたわけではないから、自分の好き嫌いで判断してはいけないと思ってましたが、理由が出来て、むしろ嬉しくなります。

 もしかしたら、食べ物の心配もですが、寝るところもないかも、アハハ、困ったな」

 よほど嫌いな相手みたいですね、無表情の顔がイキイキとしてます。仕事を頑張ってる人を見つけるはずが、頑張ってない人を発見してしまいました。

 護衛の騎士が、玄関をノックします。面倒くさそうに、女性の使用人が出てきました。

「門番が立っていないので、入ってきました。ここは、シェルエント公爵家の別宅ですよね。庭も荒れてますし、何かありましたか?」

 こういうときは、平凡顔の私が話を聞いてみましょう。楽しいお話が聞けるかも。

「はいシェルエント公爵家の別宅ですよ。管理者のカイトさんが経費節減をするように、公爵様から言われているらしく、庭師も常勤ではないです。

 門番も公爵様達が見えられるときに雇ってるんですよ。
 私達、使用人も最低限です。私は今年雇われたばかりで、長年勤めていた人は、カイトさんとケンカして辞めさせられたようです。

 残っている人が教えてくれました。下手に口出しすると辞めさせられるから注意しろって。

 いけない、お客様に長々と話してしまって、カイトさんに知らせてきます。
 今日は、カイトさんがお客様が見えると聞いていたので」

 あらとても素直な娘さんですね。知りたいことを話してくれました。レイモンドも玄関の影から聞いてます。

「レイ、どうやら、私達ではないお客様が見えるみたい。ご飯は確保できそうよ」

 私の言葉に、レイモンドはニッコリ。

「貴方はどなたですか?私のお客様ではないですね。お帰り下さい。私は忙しいのだから」

「随分と忙しいのだなあカイト。門番も立ってない、庭も荒れ放題、サリーはどうした?呼んでくれないか?あと、私の愛しい妻に帰れだと。この別宅を使って当たり前だろ」

 レイモンドの冷たい声が響きます。

「若様、いつこちらに、連絡がなかったと思いますが」

「こちらによるつもりはなかったが、遅くなったから、今日はこちらに泊まる事にしたんだ。この様子では、当分の間、滞在して、別宅が機能するよう改革が必要だな、ひとまず、どいてくれないか、入れないからな」

 レイモンドは私をエスコートして屋敷に入ります。さっきの使用人にお茶の用意を指示し、ひとまず応接室に行きました。
 カイトの待ってくださいと言う声が後ろから聞こえてきます。応接室に入ると、白い布がかぶせてあり、日頃から手入れがされてないことが、わかる様子です。

「どこか使える部屋と今夜、私達が使える部屋の準備を。夕飯は食べれるのか?料理長のベンを呼んでくれないか?」

「あの、ベンさんは辞めました。料理は私達、女性が交代で作っています。皆様の10人分の食材は、今からですと、用意が難しいです」

 若い使用人の言葉で、騎士の一人に、外で食べれる場所を探してくるように言っています。ここまで、酷いとは、さすがに思ってもいなかったので、レイモンドのコメカミが微妙に怒りでピクピク動いています。

 話が出来るキレイな部屋は使用人達が使っている休憩室でした。根本的に、自分達が使っている部屋と玄関、廊下しか掃除はしていないようです。まあ、使用人の数からして、それは仕方がないのかもしれません。

 休憩室でレイモンドと私の前に、顔色が悪いカイトが座ります。

 レイモンドが話そうとしたときに、カイトのお客様がみえたようです。
 カイトは明らかに狼狽えてます。レイモンドはそのようすをみて、この部屋に通すようにと。

 現れたのは、見るからにガラの悪い手下を連れた人でした。わかりやすく言うと、ヤクザみたいな感じですかね。

「カイトさん、なかなか借りたお金が返して貰えないから直接きましたよ。何やら、取り込み中のようで」

「悪いが、後で必ず訪ねるから、今は帰ってくれないか」

「借りたお金さえ返せば帰りますよ」

 どうやら借金とりですね。ならば私が話しましょう。

「失礼ですが、カイトさんは、何で借金をして、どのくらいあるのですか?」

「なんだい、お嬢さん、代わりに払ってくれるのかな?金貨50枚ほどだ。カイトは、博打が好きでね」

「借りたお金と利子をあわせて以前にも50金貨払ったじゃないか。また、少し借りただけなのに、どんどん利子が膨れあがり50金貨なんて払えるわけない。借りたお金は返したのに」

 そもそも、賭け事で借りるなんて、多分皆さんのお給与で返したのですね。
 レイモンドは無表情ですが、怒りがマックスです。

 新婚旅行で来ましたし、嫌な思い出にしたくありませんから、私が調停役をしましょう。

「では、まず借金取りの人、写しで構いませんので書類を見せてください」

「えらく落ち着いているお嬢さんだな。まあ、写しは常に持っているから、どうぞ。そちらの坊っちゃんは口がきけないのか」

「旦那さまが口をひらけば、命の保証はしません。みせなさい」

  多少の脅しは必要ですから、どれどれ、悪徳高利貸しですね。商売をするときに勉強もしましたし弁護士の先生とも話しましたからね。

 弁護士の先生にも、何度も注意を受けたところをしっかり読み込んで

「借金取りの人、カイトは、結局いくら借りたのですか?以前の分の50金貨を利子込みではらってますよね。

 過払金が発生してますよ。これは、国の基準を超えた金利の設定です。
 まあ、いけないところから借りていますから、そんなこともあるでしょうが、この金利でも、貴方が請求する金額になりません。

 誰が計算したのですか、計算し直しなさい」


 後ろのガラの悪い手下達が、騒ぎます。一種の脅しですね。

「言いましたよね。旦那さまが声を出したら命はないと。
 私が護衛の騎士に声をかけたら、あなた達はどうなると思います。
 計算できないなら、私が計算します。見なさい、ここの計算が違うでしょう。
 カイトは、とっくに支払いが終わってますし、払いすぎです。10金貨返しなさい。

 ここは、シェルエント公爵領の公爵別宅です。わかっていますか、あなた達が生活している領主の館です。
 今あなた達の前にいるのは、将来の公爵閣下ですよ」

 私の言葉で護衛騎士達が、入ってきました。借金取りの人達も、まさか使用人の休憩室に貴族がいるなんて思ってもみなかったのでしょう。
 
 騎士達が借金取りの6人を捕まえました。ひとまず、縛って、おきます。

「ディア、いくら私が怒っても命を取ることはないよ。多少、痛い思いをさせるかもしれないけど」

「レイの怒りが、ビリビリ伝わってきたので、レイなら腕を折るかもと思って」

 さて、どうしましょうかね。お腹が空きました。

「カイト、父上が君を信用して、使用人の給与等を任せていたのに、残念だよ。君はクビだ」

「レイ、クビにしてはいけません。50金貨を返して貰わないといけませんから。借金取りに10金貨、カイトに40金貨です。なので、使用人として給料から天引きです」

 ひとまず、お腹が空きました。何か食べに行きましょう。店を探しに行ってくれた護衛騎士が、帰ってきたので食べに行きましょう。

 本来なら無事に別宅についた夜ぐらいお酒を飲みたいでしょうが、屋敷には借金取りがいるので、お酒はお預けです。

 お腹がいっぱいになると心が優しくなります。ひとまず、簡単につまめる物を6人前お持ち帰りします。今から、どのように決着をつけようか、考えましょう。

 食材探しが世直し(領地の改善)の旅行になりませんように。

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