【完結】胃袋を掴んだら溺愛されました

成実

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 婚約式も終わり、無事に王都に戻ってきました。

 レイモンドに買ってもらった調味料や香辛料をひとまずクライブ伯爵家に運んで貰いました。

 カレースープにするには、どのぐらいの香辛料を使うか、計量しながら作ろうと思います。

 基本のターメリックとクミン、コリアンダーと唐辛子をベースに作ることにし、玉ねぎを飴色になるまで炒め、お肉と人参も細かく切って炒めます。
 香辛料を大さじ一杯ぐらいずついれて、味見をしながら、加えていきます。

 香りだけで、とても食欲を引き出してます。なんちゃってカレースープの出来上がりです。
 ひとまず、厨房のシェフに味見をしてもらい、更にアドバイスを貰うことにしました。

「お嬢様、なんとも食欲がそそる匂いですね。では、味見をさせてもらいます」

「辛味があるスープなので、パンと一緒に食べると美味しいと思います」

「ゴホ、美味しいのですが、後で辛味が強く出て、口の中が痛いです」

「僕は辛いと思いますが、この辛味が美味しく感じます」

 やはり、人の味覚はそれぞれですね。少し牛乳を入れて煮込んでみましょう。辛味がまろやかになり、厨房の皆が美味しいと言ってくれました。

 でも、レイモンドが美味しく感じる辛さを知りたいため、今度の休みに、是非カレースープの試食に来てもらいたい事を手紙に書きました。

 厨房で味を見ながら、好みの味に知りたいです。毎日、香辛料の分量を変えて試作を続けます。カレーを毎日食べているせいか、美容効果でお肌の調子が良いのです。

 さあ、今日は、ドレスショップに行く日です。

 ドレスショップのマダムとは、良い関係を続けています。私が着たドレスが着たいと、若い令嬢が殺到しているため、新しい顧客が増え、ご機嫌なのです。
 私が行くと、前から丁重にもてなしてくれましたが、今は超お得意様の接待を受けてます。

 お母様達から頼まれていたドレスのイメージが浮かんだので、私なりのデッサンをしました。
 お母様達と一緒に行き、それぞれの意向を聞きながら、マダムに更にデッサンしてもらう事になっているんです。
 
 お二人の予定に合わせて、いざドレスショップに行きましょう。

 お母様はAラインを基本にスレンダーを強調し、お義母様はマーメイドラインにして腰の細さを強調するデザインを提案しました。
 二人の雰囲気にあわせ、より美しくみせる事が基本です。

 マダムはやはり私が求めているデザインを、私のデッサンと言葉で、センスよく次から次に描いてくれます。

 私の絵では、イメージがわかなかった、お母様達も、マダムのデッサンをみて気に入ってくれました。後は色と生地選びです。しかし、マダムは

「公爵夫人、伯爵夫人、私にもうしばらく日数をいただけないでしょうか?
 クライブ伯爵令嬢からのアイディアで、更により良いデッサンにしたいのです。私が納得するデザインを書き上げたいのです」

「ディアちゃんのデザインが更にステキになるなら、私は待ちますわ。じっくり描いてください」

「私もマダムの腕は良く知っていますから、待ちますわ」

「ありがとうございます。必ず、もっと素晴らしいデザインにしてみせます」

 マダムの気合が凄いです。さすがプロ、妥協は許さない仕事ぶりですね。

 馬車の中でお義母様が私の頬を触ります。何かついているのでしょうか?

「ねえ、ディアちゃん、今日あったときも思ったのだけど、お肌の調子がとても良いわね。触って確信したわ、エステかしら?何をしたか教えてちょうだい」

 私も肌の調子が良いかもと思っていたけど、見てわかるほどとは。やはりカレースープ効果ですかね?

「もしかしたら、レイモンド様に食べていただく料理の研究をしてまして。毎日作っては、食べてます。その料理の効能かもしれません」

「あの独特の匂いのスープ?あのスープを飲むと肌が綺麗になるの?」

「断定は出来ませんが、香辛料がムクミなどに効きますから、そのせいかと」

「ディアちゃん、私も是非食べたいわ」

「では、レイモンド様と一緒に食べに来てください。約束で一番最初はレイモンド様が食べることになっているんです。

 だから、家族でさえも食べてないので。
 ただ、まだ試行錯誤しながら、味の調整をしています。当日も食べていただきながら、辛味を変えていくかもしれません」

「まあ、レイモンドのためにありがとう。レイモンドと一緒に行くわ。楽しみだわ」

 今度の休みの日が、カレースープの試食会になりそうです。

 朝から玉ねぎを飴色になるまで炒めます。人参、お肉、ジャガイモ、じっくりコトコト煮ます。レイモンドの顔を思い浮かべながら、作ると自然と笑みが広がります。

「お嬢様、シェルエント公爵夫人と令息が見えられました」

 さあ、今日はお母様も一緒に食べると言っていたから、四人でカレースープを食べましょう。

 辛味が違うのを3つ作ったので、どの味が気に入ってくれるか楽しみです。

「ディア、私のためにありがとう。母上から聞いて、とても嬉しいよ。こないだ買った香辛料から作ってくれたんだろ。楽しみだ」

「レイモンド様、約束通り、貴方が一番最初ですよ。辛味が強いため、3種類準備いたしました。

 食べてみてください。お義母様達も、パンを用意してありますので、一緒に食べると美味しいですよ」

 辛味が弱い順から食べてもらうことにしました。お義母様達は、甘口がちょうどよい辛さで、レイモンドは辛口が一番美味しいとのこと。
 私は中辛が一番美味しく感じました。やはり、人それぞれですね。

 お義母様達は、そのまま二人でお茶をするようです。私達は、庭で散歩をすることにしました。

「とっても美味しかったです。人参、玉ねぎ、野菜が気にならない味でした。あれならどんな野菜でも食べれそうです」

「レイの顔を思い浮かべながら作ったんですよ。喜んで貰えて良かった。
 あのカレースープは、何回も作り、色々香辛料の配合を考えました。

 あの商人のかたと、香辛料が定期的に買えるなら、カレースープの元として売れるかもとか、色々考えてしまいました。令嬢なのに、商売の事ばかり話すなんて、すみません。

 最初は、ただお菓子を作れて食べれれば満足だったのに、以前も話したように、天候の関係で領民が税金を払えなくて、そのため、お父様が税金を立て替えたのが店を始めた理由でした。
 
 農作物は食べていくのに、とても大切ですが、天候に左右されやすいです。
 領民には農作物の他に稼げる仕事をもたせるべきじゃないかとおもったのです。
 だから、ついこれは商売になるじゃないかと色々と考えてしまって。せっかく、レイと一緒にいるのに。

 レイの学院での生活を教えて下さい。卒業式まで、後3ヶ月ですね。卒業式には、婚約者として出席しますね。レイの学生服姿カッコイイですよね」
 
「私は、ディアが商売の事を考えていても、気にならないよ。もともと、イブのクッキーから貴方と結婚したいと思ったのだから。

 今は、ディアの作る食べ物がないと生きていけない。もちろん、ディアがいる前提だけどね。

 いつも一緒に出かけると思ってしまう、私の大切な人だから見るなってね。よくグレイに重たい人だと思われるから絶対束縛するなと言われているだ。

 だから、私を嫌いにならなければ、ディアが楽しく商売でも何でも考えてくれれば良いよ」

 グレイが色々とレイに注意してくれていたのですね。確かに、どこに行っていたとか、男性と話すと心配しますからね。
 私の事を好きだからとわかっていても、ちょっと面倒くさいと思うこともありました。

「私は必ずレイのいる場所に戻ってきます。だから、男性と話しても、心配しなくても大丈夫です。

 それこそ、あまり心配されると疑われているみたいで、悲しくなります。
 レイ、私を信じて、不安になったら聞いてください。私はいつでもレイが大好きですよ」

「ディアを信じてます。私が不安になったら、今みたいに好きだと言って下さい」


 レイモンドが心配しないよう、いつも貴方が言ってくれたように、私も好きと、言葉であらわしますね。
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