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side シェルエルト公爵家

 私は、レイモンド•ジーク•シェルエルト、自分で言うのもなんだが、貴族令息としてはなかなかの優良物件だと思う。     

 私は、出来たら恋愛結婚が良いが、政略結婚するなら、この人だと思う相手が現れた。

 容姿も性格も知らないが、優先的に好きなお菓子が食べ続けられる相手。
 お菓子は買えばよいが、もともと、野菜嫌いの偏食ぎみで、齢を取り体型が崩れできたら、お菓子は止められるだろう。
 しかし、妻の実家のお菓子なら許してくれるのではと思っている。


「母上、ただいま帰りました」

「なぜ、そんなにも学院から、頻繁に帰ってくるのですか?」

「殿下から、聞きました。今度、王妃様主催のお茶会に
クライブ伯爵夫人も呼ばれたとか。
 もうそろそろ、シフォンケーキが出てから一ヶ月ですよね。
 クライブ伯爵家の新作のお菓子が出る頃ではないですか?
 クライブ伯爵夫人は手土産にイブの新作を持ってくるのではと殿下から聞いてます」
 
「レイモンド、貴方はお菓子の話を聞くために帰ってくるのですか?
 公爵家の跡継ぎが、何を考えているのですか?
 お馬鹿さんなのですか?」

「母上、私はこれでも学院の首席ですよ。
 お馬鹿さんでも、ありませんが、食べ物の欲があるだけですよ。
 今日、帰ってきたのは、弟のグレイシスに頼みがあって来たのです」

「兄上が僕に、お願いですか?珍しいですね。何でしょうか?」

「もう少ししたら、グレイシスも学院に入学するだろう。
 ちょうど、同級生にクライブ伯爵家の長男が入学する。フレディエック・ルーク・クライブ、お前と同室にしておいたから、ぜひ仲良くなって欲しい」

「兄上、待ってください。
 僕は構いませんが、多分クライブ伯爵令息が苦痛だと思いますよ。
 並べく、同じ爵位の令息でないと気を使いすぎると思います」

「学院に入学したら、爵位なんて関係なく平等だ。同室になると、爵位の垣根がとれる。
 もし、クライブ伯爵令息が、新作のお菓子の話や、部屋にお菓子を持ちこんでいたら、ぜひ、私を部屋に、招待してくれ」

「兄上は、お菓子のために、同室になるように細工したのですか?母上、兄上をとめてください」

「レイモンド、何を考えているのですか?」

「私は、イブのクッキーを食べたときに衝撃を受けました。
 自分でもわかっているのですが、私は偏食気味で、公爵家で食べている食べ物が不味いわけでもないのですが、美味しいという喜びもなかった。

 ですが、イブのクッキーを食べた時、初めて食べ物がこんなにも美味しいと感じたのです。

 できることなら、お菓子を作っている人が女性なら結婚して、毎日食べたいぐらいです。もしくは、この家のお菓子担当に引き抜きたい。

 でも、その話をしたら、父上が、今年の天候でクライブ伯爵家がかなりの不作で、国に減税を申請されていたが、他の家との兼ね合いで申請を通す事ができなかったと、苦しそうに言っていたのです。

 宰相である父上の決断でクライブ伯爵家は、かなり苦しい財政難を打開するために、お菓子の事業を初めたんだろうと言っていました。
 そんな話を聞いたら、引き抜きは難しいですからね。

 クライブ伯爵家には姉の令嬢がいるから、ちょうど年齢的に、結婚を申し込んでも良い年齢じゃないか、と考えたら、令息から、色々令嬢の話を聞いてみようと考えまして。
 令嬢と結婚したら、イブのお菓子は、絶対に手に入るだろうし。
 というわけで、グレイシス、僕の未来の義弟を見定めてほしい」

「兄上がこのような事を言ってますが、母上どうしますか?もう、ほっとけばいいですか?」

「もうほっときましょう。お菓子の為に結婚したいなんて……。何も力がない伯爵家ですが、伯爵夫妻は無害ですし、そう考えれば悪い縁組ではないですね」

「母上、理解していただき、ありがとうございます。
 じゃあ、今度の新作のお菓子は私の為に残しておいて下さいね。
 グレイシスも将来の義弟と仲良くな」

 新作のお菓子が楽しみだ。これで安心して、学院に帰れる。
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