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21.私と精霊との話

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 公爵からの手紙を読むと、前公爵夫人がシェリー夫人について語った内容が書いてあった。

 実際に、嫁ぎ先の出来事は調べている最中だが、前公爵夫人が言葉を濁し、王都の屋敷ではなく、領地の屋敷に引き取るとまで言わせるぐらいだ、精霊さえも自分の声を犠牲にしてまで助けたいと思うぐらいなのだから、悲惨な目にあったと考えるのが妥当だろう。
 
 精霊の声は聞こえるけど、会話が出来ない。私の守護する精霊が高位精霊だから、他の精霊が色々と話してくれるが、私が知りたい情報をどうやって聞けばよいか?

 やはり、ここは神様にお願いしよう。使えるものは何でも使おう。
 断わられる前提で、お願いして、願いが叶えばラッキーと思おう。

 何時もの方法、窓辺でブツブツと、精霊と会話が出来るようになりますようにと願い事を言う。
 神様が煩いと嫌がる位に言い続ける。よし、これぐらいお願いすればいいかな。
 明日の朝、葉っぱが落ちてたらラッキー。ダメなら明日も願うだけ。

 朝起きると葉っぱが落ちていた。なになに、《煩い、余り精霊との会話はおすすめしない。会話が出来ると精霊達が押しかけてくる。だが、自分の精霊とは心が通じていれば、自分の精霊とのみ会話が、出来る》と書いてあった。

 なるほど、確かに霊が自分の思いを伝えるために会話が出来る人に近寄ってくると聞いたことがある。
 精霊もやはり自分の気持ちを伝えたいと会話が出来る人に近寄ってくるのだろう。
 自分を守護する精霊と、どのように心を通じあえるのだろうか?不親切な神様、どうせなら方法も教えてほしいものだ。ひとまず、神様にお願いするみたいに、ブツブツと話しかけてみよう。

「えっと、私を守護する精霊さん、私とお話しませんか?私は、今シェリー夫人の精霊の事が知りたいとおもってます。だから、もし何か知っていたら、教えて欲しいです」

 こんな感じで独り言のように話をつづける。もし、私に何か話しているかもしれないので、奥歯を噛み締めて耳をすませてみた。

『エミリー、僕に話しかけてくれて嬉しい。僕は、ずっと君を守護してきた。キャサリンであった時も、ロジーナであった時もずっと君を守護してきた』

 今言われた名前は、前前世と前世の時の私の名前よね。この精霊は私がこの世界で産まれてからずっと守護してくれていたってこと?
 もしかして、守護する精霊って、魂にずっとついてくるの?

「えっと、教えて下さい。守護する精霊は、生まれ変わってもずっと守護するのですか?違う魂というか、他の魂の人間は守護しないのですか?」

『もし君が婚約破棄されずに幸せになっていたら、きっと僕は、ちがう魂の人間を守護したと思う。
 キャサリンとしての君は、婚約破棄されても修道院で幸せそうだったが、たまに悲しそうな顔をしていた。

 あの時は、男爵令嬢を守護する精霊の力が強かった、僕の力が強ければ、君を悲しませる事なんてなかったのにと思ったよ。
 キャサリンが死んで僕は誰をも守護せず過ごした。久しぶりにふらふらしてたら、懐かしい気配がし始めたんだ。赤ちゃんが産まれた瞬間にわかったよ。キャサリンが生まれ変わったと。
 周りをみると僕と気が合いそうな精霊ばかりだから、また君(ロジーナ)を、守護することにしたんだ。

 そしてあることに気づいたんだよ。ロジーナとしての君の婚約者は、同じ魂の人間だと。守護する精霊は違ったけど、同じ魂の人間が婚約者だと。
 今度こそ幸せになると思ったのに、ロジーナの時も婚約破棄された。男爵令嬢はキャサリンの幸せを邪魔した同じ魂の人間だったんだよ、守護する精霊は違うのに。

 守護する精霊は違うのに、また僕の力が弱かったせいで、君に悲しみを与えてしまった。婚約破棄されても、君は持ち前の才能で楽しく過ごした。
 でも、キャサリンの時みたいに誰もいない部屋で悲しい顔をするだ。僕はそんな君は看取って決心したんだよ。

 高位精霊になって、今度生まれ変わった君を幸せになるようにしようとね。
 だが、君がどこで生まれ変わるかわからないだろう。全神経を集中して気配に気を配っていたら、精霊の力もどんどん上がってね、高位精霊にいつのまにかなったんだ。そして、君が、生まれるのをずっと待ってたんだよ。
 エミリーが生まれて君を守護できて、今度こそ、他の精霊の力には負けないから、幸せになってほしい』

 驚きの連続です。私の幸せを願って高位精霊になったのもありますが、前前世と前世の婚約者が同じ魂を持つ同一人物で、男爵令嬢も前前世と前世の同一人物だったとはビックリしました。もしかして、今世も同じ魂を持った人達が私に絡んでくるのでは、どんな因縁なんだろうか。
 神様も今度ぐらいは結婚をと言ったのは、この因縁めいた事が加味しているのかもしれない。

 シェリー夫人の精霊の話を聞くつもりだったのが、私の前世の因縁を聞いてしまった。そうだ、シェリー夫人の事を聞かなくては、あともし元婚約者と男爵令嬢の魂を持つ人が近くにいるか聞いてみよう。

「あの、シェリー夫人の精霊の事を教えて下さい。あと元婚約者の人達の魂の生まれ変わりは近くにいるのですか?」

『シェリー夫人の精霊というのは、自分の声を犠牲にしてまでも守護する精霊の事か?自分が守護する人間が余程酷い目にあったのだろう。
 精霊は決まった人間を見守るぐらいしかしない。でも、その人間に思いいれが深かった場合は、守りたい助けたいと言う気持ちが強くなる。
 精霊は気ままに生きる、精霊同士であっても、わからない。ただ、エミリーが気になるなら、あった時に尋ねてみよう。声を犠牲にしてもわかる方法がある。

 あと、元婚約者達の魂の気配は近くではしない』

「ありがとうございます。」

『僕から、エミリーに話しかける時は、この部屋にいる時だけにしよう。他の人には姿が見えないから、まるで独り言を話しているように見えてしまう。ピカピカ光ってみえたら、僕から話があると思って欲しい』

「あのもし名前があるなら、私から精霊さんを呼ぶ時の名前を教えて頂けませんか?」

『発音が難しいので、リーと呼んでくれればよい』

 リーと私は色々な事を話した。ただ奥歯を噛みしめるのが疲れたため、私は休憩することにした。
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