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20.公爵の来訪

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 私は、自分の部屋でノートを広げた。カミラちゃんのお母様の公爵夫人の精霊が話していた内容をまとめよう。

 公爵夫人の精霊は、公爵夫人がシェリー夫人を信じ切っているが、友情や信頼からくるものではないと言っていた。

 守護する精霊がシェリー夫人の言葉を信じさせる力を持っているのではないかと、私の精霊に話していた。
 シェリー夫人を守護する精霊が、何らかの不思議な力を持っている?っていう事よね。

 だから、公爵夫人は決してカミラちゃんを嫌ってないし、本当は抱きしめたり、姉のソフィア令嬢みたいに一緒にでかけたいと願っている。
 でもシェリー夫人が、言葉巧みに、カミラちゃんとの仲に距離が出来るように誘導する。
 公爵夫人の精霊自身がシェリー夫人の精霊に止めてほしいと願ったが無言のままだった。
 守護するものとして、公爵夫人が幸せになってほしいのだけど、シェリー夫人の精霊には、届かないし、理由を話してもくれない。
 精霊同士には効かないけど、シェリー夫人の精霊の言霊を強くする力には、どうしようもない。

 公爵夫人の精霊が、どうすれば良いか私の精霊に助けを求めていた。
 私の精霊が、シェリー夫人を守護する精霊がシェリー夫人を守れなかったため、シェリー夫人の精霊が自分の声を犠牲にして言霊を強くする力を得たのだろうと答えていた。


 まずは、シェリー夫人に何があったか、過去を知らなければ、根本的に解決にはならない。
 精霊が自分の声を犠牲にしてまで、なぜそのような事をしたのか?
 私が思っていたより、問題が広がっているような気がする。
 人の人生で精霊が関わりが強くでるのを知ると、もしかしたら、私の前世の婚約破棄も精霊が関わっているのかもしれないなあと、ふと思ってしまった。
 私の魅力ではなく、精霊の力と考えると、気が楽になってくる。

 気分が滅入ってくる時は、寝るに限る。たまに、前世の婚約者を思い出しては、考えてしまう。
 今更考えても仕方がないのに。もし、私が生まれ変わったように、彼達も生まれ変わっているのだろうか?
 姿や性別だって違うかもしれないのに、今夜はなぜか思い出してしまう。


 カミラちゃんは、すっかりうちの家族になりつつる。カミラちゃんにパパママと呼ばれ、若返った気分だと私にもパパママ呼びを強要するようになった。
 お父様お母様より、パパママのほうがテンションがあがるらしく、うっかりパパママと呼んだ日は、記念日かというぐらいのはしゃぎ様だ。

 カミラちゃんも年上に甘える喜びを知ったようで、特にケヴィンお兄様に甘えるようになった。
 ダイエットの食事メニューや、適度な運動、やはり心の安定がよいのか、たった一週間なのに、体重が変化してきた。
 まあ、メイドにいつも渋いお茶を出され、ストレスがたまると甘い物を食べて嫌な出来事を発散してたようだから、さぞかし栄養バランスも悪かったのだろう。

 お母様とケヴィンお兄様、私とカミラちゃんで服を新しく作るために店に来た時の話をしよう。
 カミラちゃんは、いつも選んだ服をけなされる為、自分で選ぶのを怖がった。
 そこで、ケヴィンお兄様が何色が好きか聞いて、カミラちゃんに似合いそうなワンピースをチョイスして、そこから選んでご覧と促したのだ。
 最初は戸惑っていたカミラちゃんも、自分で選べれる楽しさや、服に合わせて靴やアクセサリーを選ぶセンスも勉強出来る。お母様は、カミラちゃんにはこの色も似合うとアドバイスしながら、オシャレの楽しみ方を教えている。

 私はカミラちゃんと色違いのブレスレットを買った。女の子らしいブレスレットではなく、中性的な品を選んでいると、カミラちゃんも私の考えることがわかったのか、ルーカス君にはこの色が似合うよねと話し合いながら、3人の仲間のブレスレットを選んだのだ。

 私自身もお兄様と年が離れているから、カミラちゃんがいるお陰で毎日充実し始めた。
 なぜなら、貴族の場合、年の近い友達同士で遊ぶには手順がいる。遊ぶっていっても、お茶して話す位だ。
 令嬢に、日焼けは注意、8歳の女の子が外で体を動かす事もない。
 でもダイエットの名目上、外でウォーキング、ストレッチ、走って、疲れて寝転んだり、やりたいことが自由に出来る。
 カミラちゃんも家でこんな事が出来るはずがないのがわかっているから、何でも挑戦して、池に落ちても楽しい経験になっているようだ。

 そんなある日、約束通りに、公爵がカミラちゃんの様子を見にやって来た。

 たった一週間しか経っていないのに、やはり親としてわかるのか、カミラちゃんの表情が明るくなったことに驚いてる様子だ。無言でカミラちゃんを抱きしめ、髪を撫ぜている。

「カミラ、元気そうで安心した。エミリー令嬢とは仲良くやっているのかい?」

「お父様、エミリーちゃんと仲良しなのよ。見て下さい。エミリーちゃんとルーカス君とお揃いのブレスレットです。ケヴィンお兄ちゃんとママとエミリーちゃんと買い物に行った時に買って貰いました」


 嬉しそうなカミラちゃんの言葉に公爵は頭が疑問で一杯のようだ。
 私のお父様が、しまったと言う表情で公爵をみていた。

「ようこそ、シュタイベルト公爵、せっかくですから部屋で話しませんか?」

 カミラちゃんがこっちよと嬉しそうに私の手を繋いで、公爵を案内しようとしている。
 その後をついて行きながら、公爵とお父様が小声で会話をしている。先輩後輩というだけあって、気安い仲が伺える。

「イーサン、ママやケヴィンお兄ちゃんとはなんだ?」

「先輩、カミラ令嬢をうちで預かる間、カミラ令嬢は、カミラちゃん、私や妻はパパとママです。
 息子達はお兄ちゃん呼びで仲良く暮らす事にしました。
 最近、すっかりパパと呼ばれ、ケヴィンの事をお兄ちゃんと呼んで甘えてくれてます。笑顔が、増えて楽しそうです。
 もちろん、エミリーとも毎日勉強や遊びを楽しんでますよ。
 あと、ローマン辺境伯令息の件はどうなりました?レイピアは3人で習うと言うので、先生は確保しましが、始めれてないです」
 
 「ローマン辺境伯に手紙は送ったんだが、返事がなくてな。早く始めたいなら、やはり、王都の屋敷に直接話に行ったほうがよいかもしれないなあ。
 しかし、イーサンがカミラのパパなのか?私もパパと甘えられたい」

「なら、早く問題を解決に導く事が大切ですね。だいたい、先輩は口下手なのがいけないんですよ。
 毎日、娘に大好きの頬にチュウをしていれば、こじれなかったのでは?」

「え、お前、エミリー令嬢にそんな事をしているか?」

「当たり前じゃないですか。妻には口に、娘には頬に毎日してます。息子にも、5歳位の時までしてましたが、嫌がられてからはしてません。
 娘にチュウ出来るのは子供のうちだけですよ。さっそく、今日帰るときにカミラちゃんにしたらどうですか?ちなみに、娘みたいですが、私はカミラちゃんにはしていないので安心して下さい」

 お父様達は小声で、話しているから私達には聞こえないと思っているみたいだが、全て聞こえている。

 私とカミラちゃんは、お互いに笑いをこらえながら歩いた。
 応接室につくと、お父様、私、カミラちゃんが一つのソフィアに座り、向かい側に公爵が一人ポツンと座った。

 公爵は、カミラちゃんを見ながら目線でこちらのソフィアが空いてるよと訴えているが、所詮、声に出して言わなければ判らないと、なぜ気づかない。
 ここは、子供特有の素直な気持ちを言って、そんな態度では、カミラちゃんが気づかないよと教えてあげなくては、お互いにすれ違いのままだ。

「公爵様、カミラちゃんが自分の隣座ってほしいと、お思いなら、言葉に出さないとわからないです。
 多分、公爵様の部下の方はわかるかもしれませんが、私達は全くわかりません。
 言葉に出さなければ、誤解を招く時もあります。
 いつも公爵様の気持ちをカミラちゃんに伝えてましたか?
 目線ではなく言葉で伝えたほうが絶対に良いです。私はお父様にチュウってされると、お父様に愛されているなあと感じます。
 だから、公爵様も言葉で伝えて下さい」

 私の話を聞いて、ビックリした表情で私を見た公爵は、カミラちゃんに向かって

「カミラ、お父様の隣においで。お父様は、カミラが隣にいないと淋しいよ。おいで」
 
 カミラちゃんもビックリした顔をしたが、嬉しそうにぎこちなく公爵の隣り座った。そしてお互いにニッコリと笑った。
 お茶を飲みながら、どのように遊んだとか、買い物が楽しかったとか、ケヴィンお兄様に抱き上げられてうれしかったとか、カミラちゃんは、うちに来て体験したことを楽しそうに父親に話した。
 公爵も嬉しそうに話すカミラちゃんを優しい表情で頷いていた。

 そろそろ時間だと公爵家の部下の人が迎えに来て、公爵は、また来るよとカミラちゃんを抱き上げて、頬にチュウっとしたのだ。
 カミラちゃんも照れたが公爵の照れの方が凄まじく、顔が真っ赤になっている。

 挨拶もそこそこになるなか、私にコソッと手紙を渡してきた。また詳しく分かったら連絡すると言って、帰って行った。


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