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第二章 桃源郷

第十八話 蒼穹の韋駄天

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始まりの季節と称される卯月、白と桃の狭間の色合いの色した桜舞う卯月。僕らにもその意味の知らせが届いた。
『新一年生の入学』


高校のときは新一年生の入学ときたら、ませた仲間と共に
「うちの部活に来ないw?」「いいねいいね、筋あるよw!」
なんて言って””とか題して高二ならではの概念を創っては馬鹿笑いしながら享楽に耽るひと月を過ごしていた。こうゆうことがじゃんけんや100m走、駅伝等といった現代社会の根本を築いているのだと今は考えている。
『うちの部活にこないw?』”草生やすな”である。


大学二年生になった今はどうだろうか、結果はとても忙しい師走の語源のような4月になっている。
新入生歓迎会のために大々的なチラシの作製やコンパの開催なんかに勤しんでいる。僕は経営学部経営学科なので広報系に向いていると判断されチラシ製作の副リーダーに就任することになった。

高谷「これでどう、横浜?」
「ちょっと情報が多すぎやな。文字なんで10文字くらいで十分やし、もっとでっかくトラックの絵を見せるようにしたり、必須事項は日時と場所くらいで、気持ち小さめで印刷してOK。」
「というかさ、この絵うますぎじゃね?誰が描いたん?」
高谷「え、浜田だよ?知らないの?あいつ意外と画伯さんなんだよね。高校の時に県の絵コンクール?みたいなので金賞とったんやで。」
「まじか、見直したわ。」
高谷「www」

「よっしゃ。これで完璧やな。何枚印刷するやったっけ?」
高谷「えーっとね、300枚くらいだよ。」
「おけ。印刷しとくわ。」
「よーやく終わった!あー疲れた!死にかけたわ。」
高谷「こっちの方が死にかけたわ。てか死んでるわ。これ死体、幽体離脱。」


印刷室の扉を開ける。原本をプリントにかける。横に俺と同じように印刷機に向かってる女がいた。
凛としてる女。ウルフボブだっけ、なんかそういう最近の流行りのような髪型で、身長は僕より2回りくらい小さくて、肌色のマスクで…
見惚れてたら、そいつも僕の方を見てきて目が合った。どっかで見た事があるような人のような。まあ、そう感じさせる人だったのは確かだった。
印刷機が僕より忙しく動いている。
浜田のトラックの絵。めっちゃうまい絵。黒でデザインした文字とかが印刷される。駅伝部のみんなの想い、願いが詰まった一枚がゆっくりながらも印刷される。
ゆっくりと印刷されてゆくチラシを見るのが暇なので、印刷機を背にして座ることにした。
あの女はまだ印刷機に見惚れている。あの印刷機が自分だったらなぁって思う。そういう考えが恋愛かなんて思った。
ー人生何回目の恋愛だろう。いつも億劫で自らいかない人だったなー
女がしゃがむ。何か考えるそぶりしながら。
女の向いてる方を見る。窓越しに見えるのは蒼穹。15時頃、太陽はちょっと東にいて、上弦の月が太陽のうん十倍と小さくて薄く見えた。薄く見えた。薄く、小さく見えた。



ー3日後ー
一年生を迎え入れるため、自慢のチラシ片手にこう言う、
「うちの駅伝部に入らない?」
と。受け取る一年生は意外と多いもので、チラシがあっという間に腕から消えていた。
背が僕よりでかいやつや逆にめっちゃ小さいやつ、おしゃれ気取りの大学生らしいやつなど十人十色やった。

工藤先輩「めっちゃいっぱい来たな。2、4、6、8、10、12、14、15人も!まあこの部活に来てくれてありがとう。部長の工藤です。前回の出雲2位、全日本3位、箱根11位を達成したので、みんなでもう一回奇跡を掴みましょう。」
『おおーーー!!!乾杯!』
四年生になった工藤新部長の合図によって新歓コンパが始まった。
「ここのジンジャーエールうま!」
前野「いい店取ったね、横浜。」
「まあね。それよりさ、今年1年生多いよね。」
浜田「んね。なんかさ、今年1年にさ、去年高校駅伝優勝した佐久長聖の3区走って区間新出たやつと7区走ってたやつもいるらしいよ。」
「まじか、バケモンやん。」
浜田「それに、清風のやつも1人、いるっぽい。」
「ほーん、OB同士。うぇーい!」
浜田「うぇーい。」
二口目のジンジャーエールを飲む。
「うわっ!ヤバいジンジャーエール派手に溢した。」
『wwwwww、やべぇ姿やわ横浜wwwどうするのw?」
「もぅ、それどころやないわ!うっ、生姜くせえ服になったし。」


“Save me , if you were there.”
youを見つける1年間。
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