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第一章 産声

第十話 全日本を請う。

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今の立教大学内はお祭り騒ぎだ。皆一同になって立教を楽しんでいる。
これも全て、立教大学駅伝部のおかげだ。
さぁ、次に挑むのは全日本大学駅伝。立教大学はシード区を逃したものの、関東地区を勝ち上り、2度目の全日本出場を果たした。とは言っても、今回立教大学一年からの出場者はいなかった。
全日本大学駅伝に出場する大学は、立教大学、北海道大学、東北学院大学、日本体育大学、大東文化大学、中央大学、専修大学、順天堂大学、駒澤大学、東海大学、山梨学院大学、早稲田大学、青山学院大学、拓殖大学、明治大学、東京国際大学、信州大学、名城大学、皇學館大学、京都産業大学、近畿大学、立命館大学、高知大学、福岡大学の全24大学が東海で競い合う。
何にも、この全日本は駒沢大学が前人未到の5連覇を成し遂げている。なんとしても駒澤6連覇を阻止するべく、青山学院大学は大幅強化をしている。
そんな中、2度目の出場の立教大学は11位とシードをあと3つの順位とする順位となってしまった。今回の江戸紫立教は、シード値8位を越えるという目標を掲げ今、熱田神宮へ舞い降りた。位置どりはセンター後方。
駅伝部が固唾を飲んだその時、全日本大学駅伝が始まった。第一区は3年の工藤先輩。9.5kmもある区間を序盤から本気で飛ばしている。今回の工藤先輩の作戦はいつもとは違った。
最初の1~5km辺りはスローペースで走り続けるのが最近の駅伝。しかし工藤先輩はその1~5kmを一気に飛ばし、この余った距離で6~10kmを走るという手順だ。
最近で言うと2023年、第99回箱根駅伝の第一区は、関東学連選抜のような感じをしているのだ。
5km通過。2位青山学院大学との差を最大31秒にも伸ばした。
ここから、鶏群の一鶴のように先頭集団と後方集団が分かれていき、2位青山学院大学と筆頭に、先輩を追うようになった。
8km通過。2位とは11秒差にまで縮まった。しかし、ここで諦めないのが工藤先輩。ほんの僅かの余力を生かし、ここでさらにペースを上げていった。
9km通過。2位を走る駒澤大学との差は7秒。行ける。まだ抜かれていない。立教の2区には4年、西先輩がいる。西先輩は出雲駅伝で足を攣ってしまい、2つ順位を落としてしまった。しかし、本来の走りは星野先輩に匹敵する程。
残り200m駒沢大学の姿が視野で捉えられてしまった。最後の一絞り。工藤先輩の力はないが、駒澤の第一区、3年那珂川には力がある。そのまま抜かされてしまった。芋づる式のようかに3位青山学院大学にも抜かれ、3位で襷を渡した。
2区西先輩。11.1km西先輩は均等に走っていく。この平坦な道をかけるにはうってつけのランカーだ。
西先輩はこのまま3位で順位をキープして3区へ渡したが、この区間は大波乱の区間となった。
まず、6連覇がかかった駒沢大学が順位を7つ落としてしまったのだ。そしてそれに反比例するように7位の近畿大学が一気に2位に躍り出たのだ。
1位青山学院大学、2位近畿大学、3位立教大学。
3区の2年菊入先輩は他の外国人選手に圧倒されつつ最低限に順位を保ち5位で4区へ。
4区、5区、6区、7区とそのまま5位で順位を保ち最終8区星野先輩へ。
星野先輩は同じ清風時代の仲間、駒沢大学4年二階堂先輩が走っている。同じ清風のライバルとして負けてられない戦い。8区中継所時点で立教大学5位に対し駒沢大学3位。
まずは4位。この言葉を言う時間もないような刹那な時間で4位皇學館大学を抜かした。
駒澤との差は、8秒。
19.7kmもある道を決して邪な考えはないように、ただひたすらに駅伝してる人のように走っている。その視線の先には二階堂がいた。
13km地点で二階堂先輩と星野先輩の差が遂にピッタリ同じになった。ここでの会話が、感動的であった。
星野先輩「駒澤、6連覇できるのか?」
二階堂先輩「到底できそうにないよ。でも、今星野と喋れたから、行けそうだっ」
こう言って二階堂先輩がペースを上げ、同じのタイミングで星野先輩もペースを上げた。
2位を行く近畿大学との差は44秒。到底行けそうにないが、2人には大きな童心があった。
そのままこの6キロを一緒にかけていき、2位との差を19秒にまで縮めた。
最後100メートル。星野先輩は無言のままで二階堂先輩を抜かし、3位で順位を終えた。
出雲大学2位、立教大学3位の大金星になった。
この年の新語・流行語大賞として『RIKKYO』がある。駅伝に新時代が訪れた確固たる証拠だ。
さぁ、この必然を胸に次なる聖地•箱根へ参ろうぞ!
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