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第三章 初デートと二度目のキス、その後は......

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(これ神崎に似合いそうだな......)
ショッピングモールで服を見ながら遼は思う。自分の服を見ていたはずが、気付いたら大河に似合いそうな服ばかり遼は考えていた。
なんせ大河は王子様のような整った美貌と、モデル並みのスタイルの持ち主だ。
見るものすべてがなんでも大河に似合いそうだと思ってしまって、遼はすっかり自分の買い物を忘れてしまっていた。
(そういえばあいつ......いつもシンプルな服ばかり着てるな)
冬場は無地のセーターかタートルネックに似たような形のパンツ、今日もシャツにデニムだったし、まるで某○ニクロの専属モデルかというぐらい常にシンプルな服装だ。
(まぁそれでも十分かっこいいけど......)
そう思って遼はふふっと笑った。
「おにーさん!」
そこに声がかけられる。振り向くとあきらかにチャラいと分かる金に近い茶髪に、何個空けてるんだと思うぐらい耳にピアスをつけた男性が立っていた。チャラそうだけれど、その見た目をちゃんと生かしオシャレに決めている彼、どうやらこの店の店員のようだ。
「めっちゃイケメンっすね!」
「......」
言われた言葉に、遼は目を瞬かせる。営業トークにしてはストレートすぎるその言葉。
だけど彼は遼をキラキラした瞳で見つめていた。その瞳に、これは服を買って欲しくて言っているお世辞ではなく、どうやら純粋に褒めてくれているのだということが伝わってきた。
「ありがとう」
こういう純粋な誉め言葉は嬉しいものだ。遼は店員を見つめ返してにっこりと微笑んだ。遼の微笑みに、店員が照れるように頬を緩ませる。
「青木」
瞬間、後ろから伸びてきた腕に遼は抱きしめられた。確かめなくてもそれが誰の腕かなんてすぐに分かる。
「神崎、いいところに来た」
遼は後ろにいる大河を見上げる。
「ちょうどお前に似合いそうな服見つけたんだよ」
「俺に似合う?」
「そうこれとかさ......」
抱きしめる大河の腕に自然な仕草で手を添えながら、遼が服を大河に見せようとする。
「あのっ!」
かけられた声に、大河と遼は店員の方を向いた。店員は大河を見て、思いっきり目を見開いていた。
「お兄さんもめちゃくちゃかっこいいっすけど......後ろのお兄さん......え......もしかして俳優さんですか?」
あまりに整った大河の顔面に、店員は動揺しているようだ。
「はいゆうさん......?いえ神崎です」
「神崎さんって名前なんですね」
名前も渋いっす!と店員は興奮するように言う。
「SNSとかやってたら教えてください、あとでチェックしときます」
「あ......ソーシャルネット系はやってなくて、もっと情報共有や、チーム内同士で交流できるようなコンテンツ作成とかには興味あるんですけど」
「なるほど!ファンクラブ会員限定ってやつですね!ファンを大事にしてる神崎さんかっこいいっす!」
「............」
何故会話が成立しているんだ?と遼は思う。
そんな遼を大河がぐっと自分の方に引き寄せた。
「そんなことより」
抱きしめる大河の腕が強くなる。
「確かに青木はかっこいいし素敵だけど、俺の恋人だからだめ」
「っ!」
大河は遼をギュウと抱きしめて、店員を牽制するように遼に顔を寄せる。
「おまっ、お前……っ!」
(ここは大学じゃないんだぞ!それにかっこいいとは言われたけど素敵とまでは言われてないし!)
遼はあれよあれよという間に、真っ赤になった。
「ちょっ人前だから!」
恥ずかしくて遼は大河の腕から抜け出そうとする、だけどやだというように強く抱きしめられて思わずキュンとしてしまう。
(ときめいてる場合か俺!)
そう思うけれどこうなってしまうと、遼は大河を振り解けなくなってしまう。大人しくさっきと同じように大河の腕の中に収まった遼は、恐る恐る店員を見た。
店員は何故か先程よりキラキラとした目でこちらを見ていた。
「えーすごい!美男美女ならぬ美男美男カップルっすね!」
顔面偏差値えげつないっす!と店員は遼と大河を見て笑顔になった。
「お似合いです~」
「ありがとう......」
店員の言葉に、大河がはにかんでお礼を言う。ほんわかとした大河の雰囲気につられて、店員もどこか和むように笑顔になる。
「…………行くぞ」
遼は大河の腕を掴むと、そう声をかける。
「でもまだ青木が選んでくれた服見てない」
「いいから!」
並んでいる服に視線を向ける大河を、半ば引っ張るようにして遼はその店を後にする。
「俺そういうの偏見ないっすからまた来て下さいね~」
そんな二人の背中に、後ろから相変わらずノリの軽い明るい声がかかる。どうやら見た目はチャラいがとてもいい人のようだ。
(落ち着いたら、ちゃんとこの店に買いに来よう)
赤くなった頬を、深く息を吸い込んで落ち着かせながら遼は思う。大河はまだ、さっきの店に後ろ髪を引かれている様子だった。
「そんなに新しい服が欲しかったのか?」
「青木が俺に似合うって思った服が欲しかった......」
「いや俺が思っただけで、実際似合うかどうかは分からないし」
いや大河に似合わない服なんてない、言った後に遼はすぐ思い直した。そんな遼を大河がジッと見つめてくる。
「でもそれを着たら青木の好みに近づけるってことでしょ、そしたら青木がもっと俺のこと好きになってくれるかもしれないし」
「っ......」
(この男はほんとに......)
遼の大好きな王子顔を近づけ、熱のこもった瞳で遼を見つめて、平気で甘い言葉を囁く。
「バカッ!!」
大河といるとときめきすぎて死ぬんじゃないかと思ってしまう。赤くなった頬が収まる間もなく、また赤くされてやつあたりのように遼は大河を詰った。
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