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鏡※

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 フェリクスって体力お化けだと思う。
 さっきベッドであんなにしたのに、場所を変えようなんて目を爛々と輝かせて提案してくる。

 私は彼に抱えられバスルームに運ばれていた。

 流石、デュボアのスイートルーム。バスルームも広い。
 他のホテルのスイートルームがどうかは分からない。だってスイートルームなんて泊まること自体初めてなので感動することばかりだ。

 フェリクスはバスルームの大きな鏡の前に移動すると、鏡の横の壁に両手をつかせ私を立たせた。

 フェリクスは私の背後に跪くと目の前にある私のお尻を広げる。ぐっしょりと濡れた蜜口が顕わになり、さっきベッドの上で出された白濁の液がドロリと溢れ太腿を伝う。

「はぁ…凄い…暴力的に卑猥…」

「ちょっ…やめて!…フェリクスの変態!」

「ふふ、変態?酷いなぁ。でも、リディに言われると、なんだか嬉しいな…やっぱり変態だね、僕」

 フェリクスは立ち上がると私の膝裏に手を入れ片足を待ち上げる。壁に両手をつき片足で立つ不安定な私の腰を、フェリクスがもう片方の手でしっかり支えてくれる。

「ほら…リディ見て。鏡に写った淫らな姿を」

 鏡には、てらてらと光る淫靡な場所から白濁した液が太腿を伝い流れ落ちていく様が写る。

「…フェリクスがいっぱい…出すから…」

 そういえば、付き合い始めてからというもの確認されることもなく中に出されていた気がする…。
 
 数年前から重い生理痛でピルを常飲している私は、恋人のフェリクスに中に出されても受け入れてしまっていた。
 
 もしかして彼は、私がピルを服用しているのを知っているのかな…私のことをあれだけ調べ上げていたのなら不思議ではない。

「だって、リディとのエッチは特別だから…このくらいじゃ治まらないよ…」

 フェリクスは既に硬度を取り戻していた剛直を、白濁の液が溢れ出る入口に充てがい厭らしい白濁の液を自分のものでクチュクチュと卑猥な音をさせながら撫でつけ広げていく。

「リディ、鏡から目を離しちゃ駄目だよ」

 そう言うと彼の剛直は一気に押し入ってきた。
 私の蜜口は彼のものを喜んで受け入れているように見えた。

「うっ、はっぁ…リディの中ぬるぬる…最高っ」
 
 自分の中に彼の剛直がぬるぬると滑り出入りする様は強い刺激となり、内側から与えられる熱い刺激と相俟って私の体と脳を支配していく。

「うぁ…あ…ん…ふぇりくすぅ…すぅきぃ…しゅきぃ…」

 出し入れされる度に溢れ飛び散る淫靡な液体を見ながら、私は頭の中が真っ白になり何も考えられなくなる。

「ふぁ!あっ……」

 ビクンビクンと全身が痙攣しそのまま崩れ落ちる。背後からフェリクスが抱き締めてくれた。

「いくっ、…リディ…僕も…」

 フェリクスの体がぶるりと震え、私を一層きつく抱き締めた。


 その後はフェリクスにされるがまま。
 丁寧に体を洗われ、フェリクスに背を預けて彼に包まれるような状態で温かい湯船の中にいた。


 二人でラベンダーの香りが漂うお湯に浸かりながら私は最近よく見る不思議な夢の話をした。

「ふーん…ご先祖様が夢に出てくるのか…何かの思し召しか、お導きか…」

 フェリクスはお湯の中で私の腕を愛おしそうに撫でながら続けた。

「僕の家にも言い伝えはあるけれど…確か恋人と引き離された後、戦地に赴いて、そこで戦死したらしいから…リディの見た夢の話とも一部は合致するのかな……」

「もし…夢の通りだとすれば、やっぱり私のご先祖様が愛する妻の元恋人を妬んで戦地に送ったのかな…」

 彼女は愛する夫のしたことを全て自分の責任だと思いたかったのかもしれない。だから罪のない元恋人の隣に眠ることでそれを封印したかったのかな。

 眉間に皺を寄せ考え込む。フェリクスは後ろから私の顔を覗き込むと、そのまま顎を私の肩に乗せ甘えるように頬擦りする。

「リディの夢と過去の出来事が同じかは誰にもわからないよ……例え歴史の年表みたいに起きた事柄だけわかっても…そこに三人の感情や気持ちは書かれていない。傍から見れば、三人とも不幸な結末なのかもしれない……でも本当ところは本人達にしかわからないでしょ?」

 私がフェリクスを振り返り視線を合わせると、フェリクスの手はお湯の中で私の手を握った。

「………僕達が五年前、墓の前で偶然出会って今は恋人同士になれたのは事実だ…そのお導きにだけ感謝して。臆測だけの謎解きなんてしなくていいよ。謎のままのほうが良いことだってあるから…」

 今、この世界で私達が体験したことが事実で、そして全てだ。それだけで良いのかもしれない。
 
 フェリクスに諭されるなんて…と思いながらも、少し気持ちが軽くなっていた。

 私達はお風呂を上がると仮眠をとろうとベッドに入った。
それがまずかった……目覚めたら日付も変わり、爽やかな朝を迎えていた。


 朝帰りをした私に小言を言う母へ平謝りすると、怒りながら応接間のリフォームが終わったから絵を戻すようにと言いつけられる。

 絵は私の部屋から元の場所に戻ることになった。

 壁にかけ終えると静かに微笑む彼女を見つめる。

 正直好きではなかった絵の中の彼女。彼女の微笑みを今日は素直な気持ちで見ることが出来た。
 この絵が描かれた頃、彼女は本当に幸せだったに違いないと思えたから。





♢♢♢♢♢♢♢♢♢♢♢♢





 私達は、五年前に二人が出会った場所へと向っていた。
 
 電車に乗り、そこから更にバスを乗り継ぐ。敢えて車を使わず、あの時と同じ行程を楽しむことにした。

 バスから降りると緩やかな坂を、二人手を繋いで上って行く。緑豊かな墓地に着くと、あの時と同じ淡いピンクの芍薬と白い薔薇を二人並んで墓に手向けた。

 そして、その足で私達は市内に戻り彼女の夫が眠るクレマン家の墓にも同じ花を手向けた。
 
 意外にも、クレマン家の墓へも行こうと言い出したのはフェリクスだった。

「どうして、ここに来ようと思ったの?」 

 フェリクスは優しく目を細めて微笑む。

「うーん、だってさ…僕達の出会いがご先祖様のお導きなら…これから僕達は、ずぅ~っと一緒にいるから安心して眠ってって三人には平等に報告したかったんだ」

 夕陽が周囲を淡いオレンジ色に染めていた。

「ずぅ~っと?」

「うん、ずぅ~っと。もう、この手を離さないし…もしリディがこの手を離すようなことがあっても僕はどこまでででも追いかけてこの手を繋ぎ直すからね。しつこいくらい何度でも。だからもう観念して僕の傍にいてよ」

 優しく微笑む瞳はどこか熱を孕み彼の強い意志を感じた。

「…どこにも行かないし、この手も離さない!」

 私は繋いだままの手を持ち上げ、フェリクスの手にキスをした。
 フェリクスは嬉しそう破顔して同じように繋いでいた私の手にキスをした。

 そのまま顔を近づけフェリクスはリディの唇の柔らかさを楽しむかのように何度も優しくキスをした。

 オレンジ色の夕陽に染められた地面には二人の影が重なったまま長く伸びていった。






〈 おしまい 〉



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