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2話 松明 たいまつ
しおりを挟む[ 灯台下暗し ]
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この言葉で締めくくられたこの本には、とてつもない説得力を秘めていた。それはこれを読んだ二人の子供の胸の高鳴りが証明している。もちろん彼らにとっては内容はほとんど理解できないものだった。それもそのはずで、彼らはずっとマヤッカで暮らしてきた。そのため{海}や{人類}など、ほとんど単語の意味を理解できないためである。しかしそこはアイノおばさんもわかっていたのか、しっかり注釈が加えられており、殴り書きではあるものの、幼い彼らにも理解できるほどには補足されていた。しかし単語の意味が分かったところでこの翻訳じみた文章たちを理解するのには多大な時間を要した。
「イロナ、これって」
「うん。そうだよ。これはきっとアイノおばさんが何かを私たちに伝えようとしているんだ。」
「何かって、{海}とかのいろんな言葉をってこと?」
「それもあるかもしれないけど、、でも、もっと大事な何かだと思う。だって、この本には{数々の星}って言葉があったんだ。これってまるで私たちが観測している星がたくさんあるって言ってるみたいじゃないか」
「たしかに。でもエレマは一つしかないよね?だって一つしか見たことないもん。」
「じゃあこの本を書いてる人が嘘ついてるってこと?」
「うーん。ぼくはそんな気がするけどなあ。」
「でも私たちはまだ知らないことがたくさんあるよね?」
「どういうこと?」
「私たちは{外}を知らない」
「、、、、言われてみれば」
「ねえ、一緒に外にでてみな....
「お邪魔します。やあ二人とも、久しぶりだね。」
そういって二人の話を遮りマヤッカに入ってきたのは、二人の父親であるエイノだった。エイノの防寒具で固められた胴体とは裏腹にびっちりと固められた髪が幼い二人の精神を抑え込む。
「お、お父さん。こんにちわ!」
そういってイロナは持っていた本をとっさに隠して口角が引っ張られたような笑顔でおびえながら答えた。
「元気かい?君たちの様子はアイノさんからしか聞いていないからね。会えてうれしいよ。」
そう無機質な表情で話しかけた。
「げ、元気だよ!お父さんは?」
「僕かい?僕はいつもどおりだよ。そんなことよりエレマの様子はどうだい?」
「エレマは最近少しずつ明るくなってきてるよ!」
「そうか。ありがとう。では僕はもう行くからこれからも引き続き観測をよろしくね。」
「う、うん!」
「、、、ふ~~あぶなかった~~」
「すぐに隠してくれて助かったよ」
察しのいい読者は気づいただろう。そう、父親は二人のことなど微塵も気にしていない。エレマのほうが大事なのである。{力}を求めるあまり、自分の息子たちですら道具に挿げ替えてしまった。そんな中、
カラン。そんな音が半球の中を往復して増幅し、耳をついた。
「なんか本から落ちてきたよ」
「なんだろうこれ。、、、、、っ鍵だ!鍵だよ!マティアス見て!」
「本当だ!もしかしてこれって、」
「うん。そうだよ!きっとマヤッカの入り口の鍵だよ!」
「ってことは、やっぱりアイノおばさんは私たちを外に行くためのヒントをくれてるんだよ!」
「よし!やってみよう!」
彼らはすぐに行動に移した。その鍵の形をした優しさを携えて。
「それじゃあいくよ。。。」
「うん。」
ガチャ。開いた。そう開いたのだ。この音は恐らく彼らの中で最も記憶に残る音なのだろう。
「開いたよ!マティアス!やったよー!」
「よし二枚目の扉もこの調子で開けちゃおう!」
「よし。じゃあ行くよ!」
ガキン。この音もまたある意味彼らにとって最も記憶に残る音の一つであるのだろう。
「あれ?開かない、、、」
「何をしてるんだいイロナ。早く開けてよ」
「いや、開かないんだ。いくら回しても。」
「もしかしてもう一つ別の鍵が必要なんじゃ、、、」
「そ、そうみたいだね。」
この時点で彼らはもう気付いている。無意識のうちに外に何かあるということを。そしてアイノおばさんが私たちに対して手を差し伸べてくれる一筋の光だということを。
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