24 / 38
とある連絡役の幸運
しおりを挟む
-------------------------------------------
付近の森で『ワーグ』を見た。
そんな話が村の中でちらほら囁かれていた噂だったが、どうやらそれは真実だったようで、結果こうして俺は走るはめになっている。
ワーグとは四足歩行でウルフよりも3回りは大きく、獰猛でずる賢く繁殖能力も旺盛な魔獣である。
増え始めると周囲一体の生態系を破壊するように食い荒らす為、見つけ次第高めの報酬で依頼が出される。何が厄介かというと、このワーグ、汚物に毒が含まれており、それを撒かれると草木は枯れ水は汚染されるため非常に後処理が困難なのだ。又、ゴブリン等の亜人と相性が良く、北の方ではゴブリンがワーグに乗っている姿等も確認された事があるほどらしい。5組程しかいないその群れによって、1つの小規模な村が無くなったのはギルドでも有名な話だ。逆に、強靭な牙、丈夫な毛皮、一部薬にもなる内蔵等、有益な部分も多々ある為、依頼の人気はそこそこ高いというか取り合いになる。
強さはウルフ五匹に対してワーグが一匹いればほぼ互角、一匹に対してハンター四人の適正配置(スカウト+タンク+キャスター+アーチャー等)で戦うのが定石だ。
平時ならば各村で協議し、選抜を出し合うのだが、先日の化物の爪痕により、腕の立つ者は大分削られてしまっている。唯一、盗賊の襲撃で戻ったバルネ村のハンターならば対応できるだろうとの事で、伝令役として使い走られている。
着いた当日の様子を見たがバルネ村は平穏その物で、少々時間が経っているとはいえ盗賊に襲撃されたとは思えない程であった。以前来た時と比べると色々と様相が変わっており、変な印の入った旗や、像のような物がまばらに置いてある。・・・どこかで見たような形だが、今は思い出すよりも先にやることがある。
(しかし・・・何だろうな、妙な怖気と共に鳥肌が収まらない・・・。心なしか村人の笑顔も、こう・・・何とも言えない不快?不安?を煽ってくるような感じだし・・・)
腕をさすりながら、代がわりしたと言われる村長の下に案内される。
驚いた事に、村長と直接顔を合わせられる事は出来ないようだ。目の前には簾が掛かっており、その先にある明かりから村長と思われる物の影のみがぼんやりと映し出されている。
(これは・・・流石にちょっと嫌なものを感じるぞ?)
だがしかし、ここで何もせずに帰るわけには行かないと、話を始めると、驚く程幼い声が耳に入ってくる。俺はいったいあと何回驚けばいいのだろうか。
幼い声ではあるが、話の内容はトントン拍子に進んだ。
ただ不可解なのが、討伐予定地区への不干渉や、バルネ村の者との合同チームの禁止等、何かを隠したいというのがバレバレな条件の数々だ。
(ふむ・・・これは探りを入れてみたほうが良さそうだな)と考えていた所、ふと懐からパキリという小気味よい乾いた音が鳴った。慌てて確認すると、昔から肌身離さず持っていたお守り替わりの世界樹の木版が割れている。
全身にビリビリとした疼痛と、鳥肌が広がる。
(あっこれ関わらない方がいいやつだ)
直感的に俺はそう悟ったので、前の思考は完全に放棄して、報告までに留めておくのが吉だろうと思い直した。決まったのならばさっさとこの提案をのんで戻ろう。
付近の森で『ワーグ』を見た。
そんな話が村の中でちらほら囁かれていた噂だったが、どうやらそれは真実だったようで、結果こうして俺は走るはめになっている。
ワーグとは四足歩行でウルフよりも3回りは大きく、獰猛でずる賢く繁殖能力も旺盛な魔獣である。
増え始めると周囲一体の生態系を破壊するように食い荒らす為、見つけ次第高めの報酬で依頼が出される。何が厄介かというと、このワーグ、汚物に毒が含まれており、それを撒かれると草木は枯れ水は汚染されるため非常に後処理が困難なのだ。又、ゴブリン等の亜人と相性が良く、北の方ではゴブリンがワーグに乗っている姿等も確認された事があるほどらしい。5組程しかいないその群れによって、1つの小規模な村が無くなったのはギルドでも有名な話だ。逆に、強靭な牙、丈夫な毛皮、一部薬にもなる内蔵等、有益な部分も多々ある為、依頼の人気はそこそこ高いというか取り合いになる。
強さはウルフ五匹に対してワーグが一匹いればほぼ互角、一匹に対してハンター四人の適正配置(スカウト+タンク+キャスター+アーチャー等)で戦うのが定石だ。
平時ならば各村で協議し、選抜を出し合うのだが、先日の化物の爪痕により、腕の立つ者は大分削られてしまっている。唯一、盗賊の襲撃で戻ったバルネ村のハンターならば対応できるだろうとの事で、伝令役として使い走られている。
着いた当日の様子を見たがバルネ村は平穏その物で、少々時間が経っているとはいえ盗賊に襲撃されたとは思えない程であった。以前来た時と比べると色々と様相が変わっており、変な印の入った旗や、像のような物がまばらに置いてある。・・・どこかで見たような形だが、今は思い出すよりも先にやることがある。
(しかし・・・何だろうな、妙な怖気と共に鳥肌が収まらない・・・。心なしか村人の笑顔も、こう・・・何とも言えない不快?不安?を煽ってくるような感じだし・・・)
腕をさすりながら、代がわりしたと言われる村長の下に案内される。
驚いた事に、村長と直接顔を合わせられる事は出来ないようだ。目の前には簾が掛かっており、その先にある明かりから村長と思われる物の影のみがぼんやりと映し出されている。
(これは・・・流石にちょっと嫌なものを感じるぞ?)
だがしかし、ここで何もせずに帰るわけには行かないと、話を始めると、驚く程幼い声が耳に入ってくる。俺はいったいあと何回驚けばいいのだろうか。
幼い声ではあるが、話の内容はトントン拍子に進んだ。
ただ不可解なのが、討伐予定地区への不干渉や、バルネ村の者との合同チームの禁止等、何かを隠したいというのがバレバレな条件の数々だ。
(ふむ・・・これは探りを入れてみたほうが良さそうだな)と考えていた所、ふと懐からパキリという小気味よい乾いた音が鳴った。慌てて確認すると、昔から肌身離さず持っていたお守り替わりの世界樹の木版が割れている。
全身にビリビリとした疼痛と、鳥肌が広がる。
(あっこれ関わらない方がいいやつだ)
直感的に俺はそう悟ったので、前の思考は完全に放棄して、報告までに留めておくのが吉だろうと思い直した。決まったのならばさっさとこの提案をのんで戻ろう。
0
お気に入りに追加
24
あなたにおすすめの小説
幸福の魔法使い〜ただの転生者が史上最高の魔法使いになるまで〜
霊鬼
ファンタジー
生まれつき魔力が見えるという特異体質を持つ現代日本の会社員、草薙真はある日死んでしまう。しかし何故か目を覚ませば自分が幼い子供に戻っていて……?
生まれ直した彼の目的は、ずっと憧れていた魔法を極めること。様々な地へ訪れ、様々な人と会い、平凡な彼はやがて英雄へと成り上がっていく。
これは、ただの転生者が、やがて史上最高の魔法使いになるまでの物語である。
(小説家になろう様、カクヨム様にも掲載をしています。)
転生トカゲは見届ける。~俺はライゼの足なのです~
イノナかノかワズ
ファンタジー
俺が戦えないトカゲに転生して七十年近く。ずっと森と平原を歩いてようやくとある町に着いた。
そして俺は出会ったんだ。この長い長い旅の中で、煌くひと時を共に過ごし、家族となった子鬼人の男の子に。魔法の才能を持たない魔法使いを目指す最弱種族の子鬼人に。
これは俺の人生、いや、トカゲ生の中の一瞬にも近い物語。
少年と仲間との旅路。いずれ、世界を驚かせる伝説の旅路。
ただ、本格的な旅まで少しだけ時間がかかります。
また、チートはありません。トカゲは本当にトカゲです。戦う事もできません。
子鬼人の少年も色々と努力していますが、それでも強くはありません。
憧れのスローライフを異世界で?
さくらもち
ファンタジー
アラフォー独身女子 雪菜は最近ではネット小説しか楽しみが無い寂しく会社と自宅を往復するだけの生活をしていたが、仕事中に突然目眩がして気がつくと転生したようで幼女だった。
日々成長しつつネット小説テンプレキターと転生先でのんびりスローライフをするための地盤堅めに邁進する。
悪役令嬢は大好きな絵を描いていたら大変な事になった件について!
naturalsoft
ファンタジー
『※タイトル変更するかも知れません』
シオン・バーニングハート公爵令嬢は、婚約破棄され辺境へと追放される。
そして失意の中、悲壮感漂う雰囲気で馬車で向かって─
「うふふ、計画通りですわ♪」
いなかった。
これは悪役令嬢として目覚めた転生少女が無駄に能天気で、好きな絵を描いていたら周囲がとんでもない事になっていったファンタジー(コメディ)小説である!
最初は幼少期から始まります。婚約破棄は後からの話になります。
みんなで転生〜チートな従魔と普通の私でほのぼの異世界生活〜
ノデミチ
ファンタジー
西門 愛衣楽、19歳。花の短大生。
年明けの誕生日も近いのに、未だ就活中。
そんな彼女の癒しは3匹のペット達。
シベリアンハスキーのコロ。
カナリアのカナ。
キバラガメのキィ。
犬と小鳥は、元は父のペットだったけど、母が出て行ってから父は変わってしまった…。
ペットの世話もせず、それどころか働く意欲も失い酒に溺れて…。
挙句に無理心中しようとして家に火を付けて焼け死んで。
アイラもペット達も焼け死んでしまう。
それを不憫に思った異世界の神が、自らの世界へ招き入れる。せっかくだからとペット達も一緒に。
何故かペット達がチートな力を持って…。
アイラは只の幼女になって…。
そんな彼女達のほのぼの異世界生活。
テイマー物 第3弾。
カクヨムでも公開中。
公爵令嬢は薬師を目指す~悪役令嬢ってなんですの?~【短編版】
ゆうの
ファンタジー
公爵令嬢、ミネルヴァ・メディシスは時折夢に見る。「治癒の神力を授かることができなかった落ちこぼれのミネルヴァ・メディシス」が、婚約者である第一王子殿下と恋に落ちた男爵令嬢に毒を盛り、断罪される夢を。
――しかし、夢から覚めたミネルヴァは、そのたびに、思うのだ。「医者の家系《メディシス》に生まれた自分がよりによって誰かに毒を盛るなんて真似をするはずがないのに」と。
これは、「治癒の神力」を授かれなかったミネルヴァが、それでもメディシスの人間たろうと努力した、その先の話。
※ 様子見で(一応)短編として投稿します。反響次第では長編化しようかと(「その後」を含めて書きたいエピソードは山ほどある)。
アルケミスト・スタートオーバー ~誰にも愛されず孤独に死んだ天才錬金術師は幼女に転生して人生をやりなおす~
エルトリア
ファンタジー
孤児からストリートチルドレンとなり、その後も養父に殺害されかけたりと不幸な人生を歩んでいた天才錬金術師グラス=ディメリア。
若くして病魔に蝕まれ、死に抗おうと最後の研究を進める彼は、禁忌に触れたとして女神の代行者――神人から処刑を言い渡される。
抗うことさえ出来ずに断罪されたグラスだったが、女神アウローラから生前の錬金術による功績を讃えられ『転生』の機会を与えられた。
本来であれば全ての記憶を抹消し、新たな生命として生まれ変わるはずのグラスは、別の女神フォルトナの独断により、記憶を保有したまま転生させられる。
グラスが転生したのは、彼の死から三百年後。
赤ちゃん(♀)として生を受けたグラスは、両親によってリーフと名付けられ、新たな人生を歩むことになった。
これは幸福が何かを知らない孤独な錬金術師が、愛を知り、自らの手で幸福を掴むまでの物語。
著者:藤本透
原案:エルトリア
元剣聖のスケルトンが追放された最弱美少女テイマーのテイムモンスターになって成り上がる
ゆる弥
ファンタジー
転生した体はなんと骨だった。
モンスターに転生してしまった俺は、たまたま助けたテイマーにテイムされる。
実は前世が剣聖の俺。
剣を持てば最強だ。
最弱テイマーにテイムされた最強のスケルトンとの成り上がり物語。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる