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幼女VS盗賊
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バルネ村のとある民家の一室。普段外からの客を迎える場として使用されるその部屋に、男が一人座っていた。村長すらも滅多に飲めない、それこそ大事にとっていた酒を、遠慮もせずにグイグイと飲み干していき、口元は終始弧を描いている。
その男こそ、今回の襲撃を行った盗賊団の頭[バレン]であり、今は自分のお楽しみを終えて余韻を味わっている。上機嫌に盃を傾け、バレンは今回の襲撃を思い返す。
いくらハンターといえど、戦力が分散されている所を狙われれば、ひとたまりも無く、足と勘の良い者だけが一足早く逃げていった。果たして目論見は上手くいき、村の制圧はあっという間であった。
撤退を優先させたハンター達により、多数の女子供は逃がされてしまったが、余った人数でも事は足りる。夕方までに準備を整えて逃げることが出来れば、今頃泡を食って戻ってきている奴らとぶつかる事も無いだろう。
(もう軌道には乗った、後は楽しんで捨ててさようならだ、さあて、次はどこに行こうか。)
順調に進む略奪と、未来を見越して思わず緩む頬。そんな時だった。
「かっかしら!」
何やら慌ただしく、手下の一人が部屋に転がり込んでくる。顔面蒼白で、なにやら酷く動揺している様子なのはひと目でわかる。
「おう、なんだ?盛りすぎて女の上で死んだ奴でも出たのか?。」
面倒事の気配を感じて、思わず軽口を叩いてしまう。
(まさかもうハンター達が戻って来たのか?)
「がっガキが!化物で!髪の毛で!俺たちを!」
狂わんばかりに単語のみを出す手下に苛立つが、ハンターで無いならそこまで動揺することもあるまい。
「おいおい。報告だけはしっかりやれっていつも言ってるだろうが。」
「ばっ化物が出たんだ!ガキの姿をした!!今!笑いながら外で他の奴を殺して回ってる!。」
(化物?人型の?魔物か?)
ゴブリンの様に人型の魔物というのは少なくない。しかし、話を聞くに妙な部分がある・・・(髪の毛?そんな物で戦う魔物等聞いたことは無い)。
きっと何かの見間違えであろうが・・・ここで見逃すわけには行かない。
(一対一ならそうそう遅れを取ることは無いだろう。他の奴らも居ることだし。仕方ねえ、もういっちょ働くしかねえか~)
「案内しろ。そいつは俺が殺してやる。」
バレンは重い腰を上げ、折角の良い気分を台無しにした奴をどんな感じに殺してやろうかと憤怒の表情を浮かべ、怒鳴り声が徐々に大きくなる外に向ったのだった。
バレンは部下の案内についていき、直ぐに問題の場所にたどり着いた。
「・・・なんだ・・・ありゃあ。」
思わず口から溢れた言葉は誰に対して言った物ではなく、ただただ息と一緒に自然と外に漏れてしまった物だ。
俺たちの仲間は全員で50人を超える程の大所帯だった・・・。目の前には20数人が打倒され、見るからに死んでいる者はその半数に至る。死んでいる者の顔はすぐ分かった。まるで血液を全て失ったかのような真っ青な顔色は、遠目からでも判別できる程だからだ。
馬鹿げた話だった。一応盗賊とはいえど、俺主導の下鍛錬はやってきている。実戦で裏打ちされたその実力については、そんじゃそこいらの中途半端な盗賊なんて目じゃない程の強さの筈だ、頭をやっている自分がよく知っている。
「ケタケタ」
ふいに、怒号の中に妙に甲高い声が聞こえる事に気付く。
その声は、妙によく響き、耳に届いてくる。久しく聞くことは無かった、子供が楽しくて楽しくて仕方がないといった時に出す笑い声、それにとても良く似ている。
子供のような幼さを含む声。
それを囲んでいる仲間の隙間から、そいつが見えてくる。人の壁が削れて行くということは当然味方がどんどん減っているという事だが、俺はそこに気付くことなく、そいつの姿を注視していた。
もっと人間離れした容姿なら納得もいったであろう、しかし、この目に映った者はあまりに人間の子供らしく、それでいて、あまりに化物じみていた。
その矛盾した容姿に思わず息を呑む。
地面に付くほどの金色の髪は、先端が赤黒く染まり一束が人間に突き刺さると脈動して血をすすっている。子供自身は掌を人に向けて笑っているだけなのに、その正面にいる者は防御も関係なく細切れになっていく。
「ケタケタケタ・・・かみさまあ楽しいねえ!悪い人にはお仕置きしないといけないよねえ。」
「くっ狂ってるのか?」
神様?何の事を言っているのか分からない、もし奴にそんな力を与えている物がいるとするならば、それこそ悪魔とか邪神と言われたほうがしっくりくる・・・。まあ、誰かがあのガキに力を貸しているって線が濃厚なようだ。
バルネ村のとある民家の一室。普段外からの客を迎える場として使用されるその部屋に、男が一人座っていた。村長すらも滅多に飲めない、それこそ大事にとっていた酒を、遠慮もせずにグイグイと飲み干していき、口元は終始弧を描いている。
その男こそ、今回の襲撃を行った盗賊団の頭[バレン]であり、今は自分のお楽しみを終えて余韻を味わっている。上機嫌に盃を傾け、バレンは今回の襲撃を思い返す。
いくらハンターといえど、戦力が分散されている所を狙われれば、ひとたまりも無く、足と勘の良い者だけが一足早く逃げていった。果たして目論見は上手くいき、村の制圧はあっという間であった。
撤退を優先させたハンター達により、多数の女子供は逃がされてしまったが、余った人数でも事は足りる。夕方までに準備を整えて逃げることが出来れば、今頃泡を食って戻ってきている奴らとぶつかる事も無いだろう。
(もう軌道には乗った、後は楽しんで捨ててさようならだ、さあて、次はどこに行こうか。)
順調に進む略奪と、未来を見越して思わず緩む頬。そんな時だった。
「かっかしら!」
何やら慌ただしく、手下の一人が部屋に転がり込んでくる。顔面蒼白で、なにやら酷く動揺している様子なのはひと目でわかる。
「おう、なんだ?盛りすぎて女の上で死んだ奴でも出たのか?。」
面倒事の気配を感じて、思わず軽口を叩いてしまう。
(まさかもうハンター達が戻って来たのか?)
「がっガキが!化物で!髪の毛で!俺たちを!」
狂わんばかりに単語のみを出す手下に苛立つが、ハンターで無いならそこまで動揺することもあるまい。
「おいおい。報告だけはしっかりやれっていつも言ってるだろうが。」
「ばっ化物が出たんだ!ガキの姿をした!!今!笑いながら外で他の奴を殺して回ってる!。」
(化物?人型の?魔物か?)
ゴブリンの様に人型の魔物というのは少なくない。しかし、話を聞くに妙な部分がある・・・(髪の毛?そんな物で戦う魔物等聞いたことは無い)。
きっと何かの見間違えであろうが・・・ここで見逃すわけには行かない。
(一対一ならそうそう遅れを取ることは無いだろう。他の奴らも居ることだし。仕方ねえ、もういっちょ働くしかねえか~)
「案内しろ。そいつは俺が殺してやる。」
バレンは重い腰を上げ、折角の良い気分を台無しにした奴をどんな感じに殺してやろうかと憤怒の表情を浮かべ、怒鳴り声が徐々に大きくなる外に向ったのだった。
バレンは部下の案内についていき、直ぐに問題の場所にたどり着いた。
「・・・なんだ・・・ありゃあ。」
思わず口から溢れた言葉は誰に対して言った物ではなく、ただただ息と一緒に自然と外に漏れてしまった物だ。
俺たちの仲間は全員で50人を超える程の大所帯だった・・・。目の前には20数人が打倒され、見るからに死んでいる者はその半数に至る。死んでいる者の顔はすぐ分かった。まるで血液を全て失ったかのような真っ青な顔色は、遠目からでも判別できる程だからだ。
馬鹿げた話だった。一応盗賊とはいえど、俺主導の下鍛錬はやってきている。実戦で裏打ちされたその実力については、そんじゃそこいらの中途半端な盗賊なんて目じゃない程の強さの筈だ、頭をやっている自分がよく知っている。
「ケタケタ」
ふいに、怒号の中に妙に甲高い声が聞こえる事に気付く。
その声は、妙によく響き、耳に届いてくる。久しく聞くことは無かった、子供が楽しくて楽しくて仕方がないといった時に出す笑い声、それにとても良く似ている。
子供のような幼さを含む声。
それを囲んでいる仲間の隙間から、そいつが見えてくる。人の壁が削れて行くということは当然味方がどんどん減っているという事だが、俺はそこに気付くことなく、そいつの姿を注視していた。
もっと人間離れした容姿なら納得もいったであろう、しかし、この目に映った者はあまりに人間の子供らしく、それでいて、あまりに化物じみていた。
その矛盾した容姿に思わず息を呑む。
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「ケタケタケタ・・・かみさまあ楽しいねえ!悪い人にはお仕置きしないといけないよねえ。」
「くっ狂ってるのか?」
神様?何の事を言っているのか分からない、もし奴にそんな力を与えている物がいるとするならば、それこそ悪魔とか邪神と言われたほうがしっくりくる・・・。まあ、誰かがあのガキに力を貸しているって線が濃厚なようだ。
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