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.遠征なんて無理っ!絶対無理っ! 20
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墓石……。ということは地中に埋まっていたものを掘り起こしたか、もともとここにあったものか。
だとしたら……ギイが見たって言う文字は、俺の時代の人が書いたもの。
「……それじゃ、意味ねぇんだよっ!」
「どうした? マナ。これはなんなのだ?」
「これは……墓石、墓ってあんの? 死んだ人埋葬するとこ。まぁわかんなくてもいいや。もしかしたらギイが見たって言う文字が、過去のアンダーウォーカーのものかもって思ってたけど、違ったみたいだ」
何か手がかりになるかもって、せっかくここまで来たって言うのに、墓石だなんて。
しかも古いから全然字が読めない。そりゃそうだ。江戸時代いや明治時代の墓だって、風化して苔むして読めなくなってたりするもんな。こんな環境じゃ、百年持つかどうか。
落胆する俺を、ハオが慰めるように肩を抱いた。ああくそっ! 悔しくて涙が出そうだ。
そんな中、ギイがおそるおそる声をかけてきた。
「あの、マナ様。オラが見たのはその石じゃねえでやす。こっちのでさぁ」
「どうせ全部昔のもんだろ」
「いや、これだけ石の色が違うんでさ。ほれ」
ギイが指差したのはお墓の一番奥。森の陰でよく見えなかったが、確かに少し色が明るい。
古い墓石をすり抜けて、その前に立つと、そこにははっきりとよく読める文字が彫られていた。
「あった……、あったよ! ハオ!」
「それが、マナが見たかったものなのか?」
「そうだよ! これアンダーウォーカーの墓だ! 見ろ。〝地底人眠る〟って書いてあるっ!」
文字だけ、なにかで塗られた跡がある。ほとんど色落ちているが、しっかりと彫られているから文字はよく見えた。しかも、上手い。俺がこれを彫れって言われても、何年掛ってもムリだったろう。
「これが、いつからあるかわかる? ギイ」
「さて。ただ、オラの爺さんたちが子どものころにはここらにおかしなじいさんが住んでたとは聞いてやす。そん人がこれを作ったんだって、爺さんは言ってやしたが……」
「ギイのおじいさんってことは、そんなに昔でもないよな。てことはそのじいさん……もしかしたら百年前に現れるはずだったアンダーウォーカーなんじゃないか?」
「アンダーウォーカーだとしたら、ムラの者たちが気付くのではないか? 肌の色が違う」
「俺もユウも、たまたま色白なほうだっただけで、転移してきた人が色黒だったら、わかんないんじゃないかなぁ。リノくらいの肌色だったらふつうにいたし」
白く傷のない綺麗な肌ってだけで、アンダーウォーカーだって言われてるけど、ほんと、たまたまだ。日焼けしてる人とか漁師とか、少し色黒の人なら、区別はつかない。
「それに、手に入れた者が覇者になるなんてアンダーウォーカーの言い伝え聞いたら、俺だって隠れるね。しかも無理矢理ヤられるんだって知ったらなおさら」
「ぐっ……」
隣に立つハオを睨むと、苦い顔をした。ふん、ざまぁみろ。あんな曖昧で不確かな伝説のせいで、百年前の覇者は生まれなかったんだ。
俺は伝説から逃げ切った先輩の墓の汚れを払うことにした。
水はないけど、せめて頭に積もった土や葉を取り除いてやろうと思ったんだ。
「あれ……墓石の頭ってなんかあったっけ?」
取り払った後の墓石の頭の部分。ふつうは平なはずがそこにもなにか彫られている。
「〝此処掘れ〟? わざわざ漢字で書くなんて珍し……! そうか! 漢字なら読めないから! ってことは、ここ掘れって墓石の下? ええ? 遺骨とかあったら俺マジ無理なんだけど、でも、先輩が遺してくれたメッセージなんだし……。でもスコップもないし、遺骨ならまだしも土葬だったら無理っ! 絶対無理っ!」
「掘ればいいのか?」
「そう、この下になんかあるみたい……ってハオ?」
俺の返事を待たずにハオはすぐさま墓石を抱えた。
いや、墓石って重いよね? え? は? 嘘だろっ?
ふんっと気合を入れたかと思うと、墓石はあっさり地面から抜けた。
なんか最近忘れてたけど、こいつ本当に強いんだな……。
どかした後の穴の中には、すこし錆ついてはいるものの百年近く経過してるわりには丈夫そうな金属の箱が埋まっていた。
だとしたら……ギイが見たって言う文字は、俺の時代の人が書いたもの。
「……それじゃ、意味ねぇんだよっ!」
「どうした? マナ。これはなんなのだ?」
「これは……墓石、墓ってあんの? 死んだ人埋葬するとこ。まぁわかんなくてもいいや。もしかしたらギイが見たって言う文字が、過去のアンダーウォーカーのものかもって思ってたけど、違ったみたいだ」
何か手がかりになるかもって、せっかくここまで来たって言うのに、墓石だなんて。
しかも古いから全然字が読めない。そりゃそうだ。江戸時代いや明治時代の墓だって、風化して苔むして読めなくなってたりするもんな。こんな環境じゃ、百年持つかどうか。
落胆する俺を、ハオが慰めるように肩を抱いた。ああくそっ! 悔しくて涙が出そうだ。
そんな中、ギイがおそるおそる声をかけてきた。
「あの、マナ様。オラが見たのはその石じゃねえでやす。こっちのでさぁ」
「どうせ全部昔のもんだろ」
「いや、これだけ石の色が違うんでさ。ほれ」
ギイが指差したのはお墓の一番奥。森の陰でよく見えなかったが、確かに少し色が明るい。
古い墓石をすり抜けて、その前に立つと、そこにははっきりとよく読める文字が彫られていた。
「あった……、あったよ! ハオ!」
「それが、マナが見たかったものなのか?」
「そうだよ! これアンダーウォーカーの墓だ! 見ろ。〝地底人眠る〟って書いてあるっ!」
文字だけ、なにかで塗られた跡がある。ほとんど色落ちているが、しっかりと彫られているから文字はよく見えた。しかも、上手い。俺がこれを彫れって言われても、何年掛ってもムリだったろう。
「これが、いつからあるかわかる? ギイ」
「さて。ただ、オラの爺さんたちが子どものころにはここらにおかしなじいさんが住んでたとは聞いてやす。そん人がこれを作ったんだって、爺さんは言ってやしたが……」
「ギイのおじいさんってことは、そんなに昔でもないよな。てことはそのじいさん……もしかしたら百年前に現れるはずだったアンダーウォーカーなんじゃないか?」
「アンダーウォーカーだとしたら、ムラの者たちが気付くのではないか? 肌の色が違う」
「俺もユウも、たまたま色白なほうだっただけで、転移してきた人が色黒だったら、わかんないんじゃないかなぁ。リノくらいの肌色だったらふつうにいたし」
白く傷のない綺麗な肌ってだけで、アンダーウォーカーだって言われてるけど、ほんと、たまたまだ。日焼けしてる人とか漁師とか、少し色黒の人なら、区別はつかない。
「それに、手に入れた者が覇者になるなんてアンダーウォーカーの言い伝え聞いたら、俺だって隠れるね。しかも無理矢理ヤられるんだって知ったらなおさら」
「ぐっ……」
隣に立つハオを睨むと、苦い顔をした。ふん、ざまぁみろ。あんな曖昧で不確かな伝説のせいで、百年前の覇者は生まれなかったんだ。
俺は伝説から逃げ切った先輩の墓の汚れを払うことにした。
水はないけど、せめて頭に積もった土や葉を取り除いてやろうと思ったんだ。
「あれ……墓石の頭ってなんかあったっけ?」
取り払った後の墓石の頭の部分。ふつうは平なはずがそこにもなにか彫られている。
「〝此処掘れ〟? わざわざ漢字で書くなんて珍し……! そうか! 漢字なら読めないから! ってことは、ここ掘れって墓石の下? ええ? 遺骨とかあったら俺マジ無理なんだけど、でも、先輩が遺してくれたメッセージなんだし……。でもスコップもないし、遺骨ならまだしも土葬だったら無理っ! 絶対無理っ!」
「掘ればいいのか?」
「そう、この下になんかあるみたい……ってハオ?」
俺の返事を待たずにハオはすぐさま墓石を抱えた。
いや、墓石って重いよね? え? は? 嘘だろっ?
ふんっと気合を入れたかと思うと、墓石はあっさり地面から抜けた。
なんか最近忘れてたけど、こいつ本当に強いんだな……。
どかした後の穴の中には、すこし錆ついてはいるものの百年近く経過してるわりには丈夫そうな金属の箱が埋まっていた。
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