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第一部 勇者パーティ追放編
18 装飾屋にて
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街の商店の通りに装飾屋はあった。そこにあるとは知っていたけれど、体を飾るイヤリングやネックレスはどうも邪魔だと感じて、今までは足を踏み入れたことはない。
私が店のドアを開けると、カランとドアの上に付けられたベルが鳴る。
「ごめんください」
私が声をかけると、ルーペを使って宝石を見ていた壮年の男性が顔を上げた。太い縁の眼鏡の印象が際立っている。
「いらっしゃい」
「この石をピアスに仕立ててほしいんですけれど」
加護付きの石を見せると、男性はベロア生地のジュエリートレーを出してくれた。その上にそっと石を乗せる。
男性はルーペを使い、石をじっくりと見た。
「できなくもないが……変わった石だなぁ……」
男性は独り言のようにボソボソと喋った。
「ダンジョンで拾ってきた石なんです」
「そうだったんだね。詳しく見させてもらってもいい?」
「どうぞ」
男性は色んな角度から細部を見始めた。
「綺麗に磨かれているね。まるで職人が一日かけて磨いたようだ」
「ありがとうございます」
石の精霊の協力のおかげだ。協力を取り付けたリアのおかげでもある。私一人の力では出来上がらなかったものだ。
「これは加護が付いている……?」
さすがプロの仕事だ。私の付けた加護を見抜いた。
「その人の望みが叶いますように……と祈りを込めた加護を付けています」
「幸福を呼ぶ石と言えばいいのか。珍しい加護だな」
「自分で加護は付けたんです。だから、どんな加護にしようかだいぶ悩みました」
「加護を自分で!? そんなことができるのは聖女の中でも限られた人しかできないよ!」
男性はずり落ちた眼鏡を上げながら、驚きの声を上げた。
正しくは元聖女だけどね。と、心の中で訂正を入れる。
「昔から、加護を付けるのは趣味みたいなものなんです。今は冒険者をしていて、加護を付けるのは本業ではないんですけれど」
この説明では多分納得してくれないだろう。聖女だったことは有耶無耶にしているし、趣味でできる範囲の加護でもないし。
「趣味で加護を付けられるのなら、これを仕事にすればいいのに。まとまった金になるぞ」
「あはは……」
男性からの追及を笑って誤魔化した。
「僕は良いものを見かけると、買って店に商品として並べたくなってね。無理を承知で聞かせてもらいたい。……この石をカロス金貨五枚で買いたいが、売ってくれないか?」
材料費ゼロ円なのに、値段が付くとは。しかもカロス金貨五枚。いいお肉を食べまくってもお釣りが来るじゃない!
……って。一瞬心がぐらついたけれど、ダメダメ!
「値段は付けられません。これは大切な人への贈り物なんです」
私がキッパリと言い切ると、男性は「やっぱりそうか……」と少し残念そうに言った。
「さて、これをピアスに加工でいいんだね。どんな風に仕上げたいとか希望はあるかな?」
「戦闘した場合でも壊れないくらいの強度でお願いします」
今は勇者パーティを引退しているけれど、後輩の指導をする場面などが出てくるだろう。
「強度だね。わかった。これは男性用かな?」
「はい」
「男性の冒険者用に作らせてもらうよ」
「それでお願いします」
男性は加工の作業に取りかかる。金色の石座に石をのせて、手をかざした。しばらくそうしていると、石と石座がくっついて離れなくなった。それだけでも石が落ちることはなさそうだけど、見栄えのためか、ペンチで爪の部分を折り曲げた。
そして完成。プロの流れるような仕事はあっという間だった。
「できたよ」
「ありがとうございます」
深い青の石に金色の留め具。大魔法使いさまに似合いそうだ。
紺色のベロアのピアスケースに入れてくれた。パカっと開けるタイプのものだ。
私が渡すと一生に一度のプロポーズでもする人みたい。でも、そのくらいの気持ちだもん。
憧れの大魔法使いさまに渡せる日が楽しみになった。
私が店のドアを開けると、カランとドアの上に付けられたベルが鳴る。
「ごめんください」
私が声をかけると、ルーペを使って宝石を見ていた壮年の男性が顔を上げた。太い縁の眼鏡の印象が際立っている。
「いらっしゃい」
「この石をピアスに仕立ててほしいんですけれど」
加護付きの石を見せると、男性はベロア生地のジュエリートレーを出してくれた。その上にそっと石を乗せる。
男性はルーペを使い、石をじっくりと見た。
「できなくもないが……変わった石だなぁ……」
男性は独り言のようにボソボソと喋った。
「ダンジョンで拾ってきた石なんです」
「そうだったんだね。詳しく見させてもらってもいい?」
「どうぞ」
男性は色んな角度から細部を見始めた。
「綺麗に磨かれているね。まるで職人が一日かけて磨いたようだ」
「ありがとうございます」
石の精霊の協力のおかげだ。協力を取り付けたリアのおかげでもある。私一人の力では出来上がらなかったものだ。
「これは加護が付いている……?」
さすがプロの仕事だ。私の付けた加護を見抜いた。
「その人の望みが叶いますように……と祈りを込めた加護を付けています」
「幸福を呼ぶ石と言えばいいのか。珍しい加護だな」
「自分で加護は付けたんです。だから、どんな加護にしようかだいぶ悩みました」
「加護を自分で!? そんなことができるのは聖女の中でも限られた人しかできないよ!」
男性はずり落ちた眼鏡を上げながら、驚きの声を上げた。
正しくは元聖女だけどね。と、心の中で訂正を入れる。
「昔から、加護を付けるのは趣味みたいなものなんです。今は冒険者をしていて、加護を付けるのは本業ではないんですけれど」
この説明では多分納得してくれないだろう。聖女だったことは有耶無耶にしているし、趣味でできる範囲の加護でもないし。
「趣味で加護を付けられるのなら、これを仕事にすればいいのに。まとまった金になるぞ」
「あはは……」
男性からの追及を笑って誤魔化した。
「僕は良いものを見かけると、買って店に商品として並べたくなってね。無理を承知で聞かせてもらいたい。……この石をカロス金貨五枚で買いたいが、売ってくれないか?」
材料費ゼロ円なのに、値段が付くとは。しかもカロス金貨五枚。いいお肉を食べまくってもお釣りが来るじゃない!
……って。一瞬心がぐらついたけれど、ダメダメ!
「値段は付けられません。これは大切な人への贈り物なんです」
私がキッパリと言い切ると、男性は「やっぱりそうか……」と少し残念そうに言った。
「さて、これをピアスに加工でいいんだね。どんな風に仕上げたいとか希望はあるかな?」
「戦闘した場合でも壊れないくらいの強度でお願いします」
今は勇者パーティを引退しているけれど、後輩の指導をする場面などが出てくるだろう。
「強度だね。わかった。これは男性用かな?」
「はい」
「男性の冒険者用に作らせてもらうよ」
「それでお願いします」
男性は加工の作業に取りかかる。金色の石座に石をのせて、手をかざした。しばらくそうしていると、石と石座がくっついて離れなくなった。それだけでも石が落ちることはなさそうだけど、見栄えのためか、ペンチで爪の部分を折り曲げた。
そして完成。プロの流れるような仕事はあっという間だった。
「できたよ」
「ありがとうございます」
深い青の石に金色の留め具。大魔法使いさまに似合いそうだ。
紺色のベロアのピアスケースに入れてくれた。パカっと開けるタイプのものだ。
私が渡すと一生に一度のプロポーズでもする人みたい。でも、そのくらいの気持ちだもん。
憧れの大魔法使いさまに渡せる日が楽しみになった。
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