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第一部 勇者パーティ追放編

01 聖女はパーティから追放される

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「ロザリー、お前のような役立たずはクビだ。パーティに二人も聖女はいらない。足手まといなんだよ」

 聖女である私は、勇者で第四王子であるアーサーからクビを言い渡された。

「どうしてでしょうか? 私、何か失敗しましたか?」
「何か失敗しましたか、じゃない! 回復魔法をサボって聖女ソニアに任せっきりにしていただろう。だからクビなんだ」
「そ、それは……」

 簡単には説明できなかった。そんな戸惑いの声をアーサーは私が萎縮したと思ったらしい。フフンと鼻で笑ってきた。

「今までご苦労だった。散々パーティに迷惑をかけておいて、お前のクビだけで済んだのは、聖女の口添えがあったからだ。感謝しろよ」
「偽物の聖女はいらないんですって」

 今度はクスクスと聖女が笑う。アーサーの言う本物の聖女が。

 当初、パーティには私が聖女として入っていた。その後、勇者の強い希望があって二人目の聖女として迎えられたのが彼女だ。二人目の聖女は不要だと、私は声を上げた。

 しかし、勇者は「大臣の許可はもらった。お前は自信がないから反対するのか?」と勘繰ってきて頑として聞き入れてくれなかった。一般に、勇者と聖女は魔王討伐などの任務の後に結婚することになっていたが、ようするに私では勇者の好みに合わなかったのだったのだろう。

 そして、後から入ってきた女は勇者と恋仲になった。スラっと背が高く胸が豊満の妖艶な美女。私は背が低く童顔、胸は……大きくはない。私とは真逆な容姿だ。この追放は、真の聖女と言われる彼女の思惑に違いない。

 パーティの回復魔法は私がまとめて引き受けていたのに、何を勘違いしたのかソニア一人の手柄としたらしい。戦闘中に、やみくもに回復魔法を打つものだから、回復魔法が全然効いていなかった。それを必死にカバーしてあげていたのに。

 戦闘後にソニアが一人で回復魔法をしていたが、それはかすり傷の治療だった。かすり傷の治療は二人もいらないから、彼女に任せていたのが誤解を招いたのだろうか。

 どうやら、聖女は回復魔法ではなく、誘惑魔法がお得意らしい。そのおかげで勇者は聖女の言うことを信じ切っている。私が反論したところで、相手にされないだろう。反論したとしても「往生際が悪い」と言われて、さらに難癖をつけられるかもしれない。

 それにしても、誘惑魔法にまんまと引っかかる勇者は、勇者としてどうなのか。魔物の誘惑魔法にも引っかかりやしないだろうか。ま、心配してもしょうがないか。

 それでも聖女の加入前のパーティは楽しかったな。仲間としてパーティの皆が好きだった。彼女が入ってから、全てが変わってしまったけれど。

 パーティの他の二人はしばらく成り行きを見守っていたが、女剣士のネイヴァは私を睨みつけてきた。

「お前のいるせいで、パーティの雰囲気が悪くなっている。責任を取ってやめるべきだ!」

 一方。男の魔法使いのフィアルは、悲しみの表情を浮かべた。

「ロザリーは、勇者パーティが合わなかっただけだ。きっと他の道もある」

 引き留めてくれるわけではなく、オブラートに包んで辞めるように言ってきた。彼の考えていることは本心なのかわからないときがある。

 ここまで言われて、このパーティにしがみつく必要はないよね?
 私は目を閉じて、未練を断ち切った。

「私、ロザリーは勇者パーティを辞めさせていただきます」

 言った瞬間、アーサーの口元に笑みが浮かんだ。

「賢明な判断だ。お前のヘボスキルが役に立てる場所があればいいな」
「そうですかね。……次は、冒険者になります」
「冒険者? また他のパーティに属して冒険者になるのか。足手まといには向いているとは思えないけどな。幸運を祈っている」
「そうですかね。ありがとうございます」

 勇者の嫌味のあるセリフには、適当に返事しておいた。何も始めていないのに、向いている、向いていないとか考えること自体が馬鹿げていると思う。そもそも向いていないと他人から言われるのも嫌だ。一度やってみて、それでもダメだったら試行錯誤して、もがいてみてもいいでしょう?

 どうやら、勇者たちとは根本的に考えが合わないみたい。
 おバカ勇者たちには言いたいように言わせておく。私のヒーラー技術がわからない勇者パーティに貢献するのは、それこそバカげている。そっと立ち去るのみだ。

 本物のヒーラーがいなくなったパーティ運営は困難を極めるでしょうね。もう、私には関係のないことだけど。
 さようなら。どうかお元気で。

 パーティを追い出されて、悔しいとはまったく思わなかった。これまで頑張ってきたのが馬鹿みたい。胸がスッキリ。辞めてせいせいした。
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