また逢うことができたなら

ななし

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第二章: 家族

2-2

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病院からの帰り道ふと思ってしまった。

「家族っていいな」

俺には3人の家族がいた。
父、母、、、そして姉だ。

俺が9歳の時に起こった地震で家族全員を失ってしまった。

この地震は俺から何もかもを奪った。
家、友達、両親、そして「彼女」。

「はぁ、」 溜息が零れる。

俺にとってあの地震はトラウマのようなものだ。120パーセント帰ることができないのに地震が起こる前へ来た俺が言えることではないことくらいわかっている。でも、、それでも、、、怖いものは怖いのだ。

俺は8年間のスラム生活で人間の醜さなどいろいろなものを見てきた。
それでもあの地震に勝つ恐怖を感じたことはなかった。

俺は全ての人に問いたい。

「あなたは全てを失う恐怖を知っていますか。」と。

そんなことを一人で考えているうちに時刻は夜中の一時を過ぎていた。
どうやら過去では18歳未満が夜に出歩いていると「補導」されるらしい。

家に帰ろと歩を進めていると、どこからか嫌な音が聞こえてきた。
鈍い音と、微かに聞こえる悲鳴だった。
見ると10歳代の見るからに弱弱しい男の子が、20歳前後のチンピラのような男三人に囲まれていた。

無視することはできた。
しかし俺の本能が「この男の子を助けろ」と叫んでいた気がした。
いや、それは確信に近かった。なぜだか俺は赤の他人である男の子を助けるため無意識に彼の方へ歩いていた。

「ボゴッ」鈍い音が鳴り、男は苦悶が漏れると同時に倒れた。
立ち向かってきた一人はローキックで骨を折り、逃げたもう一人は頚を殴って気絶させた。

安堵からかはわからないが、男の子は弱弱しく立ち上がり、俺にお礼を言ってきた。
彼はなにかお礼がしたいと言い、連絡先を交換して「また今度連絡します。」と言って去っていった。

携帯電話を見ると、「松永大輔(まつなが だいすけ)」と書いてあった。
どこか既視感がある名前だったが、気にすることもなく家に向かって歩き出した。

すると「ゴゴゴゴゴ・・・」

日付は3026年11月2日

俺は確信した。

「これが俺からすべてを奪った大地震、、、世界大震災だ」と。

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