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木のパドル

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俊光様の寝室のベッドの上には、すでに10をこえる打具が並べて用意されていた。そのすべてが板に持ち手がついたパドルと呼ばれるもので、細い棒のケインなどの道具はない。

ただしベッドの傍に黒い箱が置かれていて、そのとなりに細長い鞭が一本置かれているのが不穏だった。黒い箱には蓋がしてあって中身はわからない。

ベッドに並んでいるパドルには、四角いものもあれば丸いものもある、分厚いものも薄いものも、大きいものも小さいものもあって形状は様々だ。

面に丸い穴があいているのもあって、それは打つときの空気抵抗を減らしより打ちつけやすく痛みを助長させる役割がある。打たれたときに面で叩かれる痛みと共に、食い込むような痛みをともなう鋲つきパドルという凶器性の高いパドルが見当たらないのだけが救いだ。

俊光様は私に道具を選ばせてやると言ったが、いざ並んだパドルを目の前にするとそれが自分にとってプラスに働くことなのか疑わしくなっていた。

並んだパドルのなかには、やさしい道具と厳しい道具があって、どちらを選べば正解なのかその判断がとても難しいのだ。

このなかで一番痛いと推測される面が広く穴空きの分厚い黒パドルを選べば間違いもなにもないのかもしれないが、今のこの赤痣のお尻であんなパドルのお尻叩きを受けたら、途中で耐えられなくなって自分で選んだ道具のお仕置きも耐えられないのかと余計に怒らせる可能性がある。

かといって、いかにも一番軽いと思われるパドルを選べばその時点でお前の反省はそんなものかと怒られて結局厳しいお仕置きになる可能性がある……。

「どうしたんだ、早く選べ」

ベッドの前で固まっている私を、俊光様がそう急かす。

は、早く選ばないと……っ。

「こ、これで……っ」
私は大きすぎもせず小さすぎもしない木のパドルで、それでも少しだけ厚く重たいパドルを手に取った。

このパドルのなかでは十分厳しいほうのパドルだと思う。本当はもう少し薄くて軽いものにしたかったけれど……。

パドルを差し出す私の手が震えていることに俊光様は気が付いたはずだが「いいだろう」と頷いただけだった。

「ベッドに手をついてお尻をあげろ」

ゆっくりと柔らかいシーツのうえに両手をつき、頭をさげる。

「もっと、だ」
ぺたん、ぺたん、とパドルの表面がお尻に当てられるだけで、「ぅぅ……ぅっ」と思わず声が漏れる。これからのお尻叩きに耐えられる自信はすでにない。

私が、ぐっとお尻を突き出すと俊光様が「そのまま、姿勢を崩すなよ」と告げて、次の瞬間、パシィイイインッッ!と、お尻の真ん中にパドルが叩きつけられた。

「あっぁぁぁっ!!!」


パシィイイインッッ!!!バシィィィンンッッ!!!パシィイイインッッ!!!
「あぁぁぅぅっ!!!あっぁぁぁんんっ!!!ぁぁああっっ!!!!」

やっぱり、とんでもなく、痛い。パドルがまっすぐに打ちつけられるたびに、まんべんなく腫れたお尻全体にピィッと突っ張るような痛みが走る。

パシィイイインッッ!!!バシィィィンンッッ!!!パシィイイインッッ!!!
「ごごごめ、んなさぃぃぃっ!!!!ぃたぃぃっっ!!!ぃたぁぃぃぃ!!!」

パシィイイインッッ!!!バシィィィンンッッ!!!パシィイイインッッ!!!
「あぁぁんっ!!!ぃぃっぁぁあっ!!!あぁぁあっあんっ!!!!!」

どう頑張っていても膝ががくがくと震えて踵から足が跳ね上がり、痛みを逃すように腰が逃げる。

「姿勢を崩すなと言っただろ」

俊光様の左腕が私の体を抱え込んで、さらにバシィィィンッベチィィンッ!!!と、パドルが両足の太ももに振り下ろされる。

「ひぃぃっっ……っ」

お尻を打たれるのとは違う、脂肪の薄いところを打たれた痛みに息が詰まった。

「もうここは打たれたくないな?」
「はぃぃっ!!!はぃぃっ!!!!」
「それなら体はまっすぐ、しっかり尻を叩いてもらえるように突き出していろ」

バシィィンンンッ!!!!とお尻の膨らみをすくい上げるように叩かれる。

「っっぁぁあんんっはいぃっ!!!」

お尻を再度突きあげると、すぐにバシィィィンンッッ!!!パシィイイインッッ!!!と、パドル打ちが再開する。

バシィィィンンッッ!!!パシィイイインッッ!!!バシィィィンンッッ!!!パッシィイイインッッ!!!
「あぁぁぁんんんっっ!!!ぃぁぁぁぁあああっ!!ぃぃたぁぁぁんんっ!!あっぁっぁああっ……!!!」



結局それから三度も私は太ももを叩いて叱られることになった。いつも以上に、我慢がきかなくて、じっと姿勢を崩さず耐えていることが出来なかったからだ。

バッチィィン!!!パシィイインッッ!!!バシィィィンッッ!!!パシィイイインッッ!!!と、つづけざまに打ち込まれ、「ぃぃぁぁぁあああっ!!!!!」と私が泣き叫んだあと

「よし、このくらいで許してやろう」

と、俊光様が言う声がして、私はそのままベッドに上半身を倒れこんだ。

「はっぁぁぁっ……ぁぁっ」
涙でぐちゃっと濡れた顔をシーツにのせる。

「おい、まだ仕置きは終わってない。ベッドにあがって仰向けで足を抱えるポーズを取れ」
後頭部の髪の毛を掴んで引っ張られた。

もう、少し、休ませてくれても、良いのに……っ。

「返事がないな」

へたりこんだ私のお尻をいきなり、キュゥッと抓られて「ひぃいぁいあっっ」と飛び上がるように立ち上がる。

「はいっっ!!すぐにっっ」

ベッドをよじのぼって天井を見上げる様に仰向けになり両足を抱える。俊光様はベッドのそばの黒い箱の蓋を取り、中から小さな塊を取り出していた。

「なにか分かるか?」

俊光様の片手におさまるサイズの小さな薄黄色のものを見て私は戸惑いながら答える。

「……ショウガ、ですか……??」

「そうだ」

なぜいきなりショウガがでてくるのか困惑する私の顔を見つめて俊光様は「フィギングは知らないのか」と言った。

「は、はい……」
「古代の歴史的な懲罰のひとつだ。皮を剥いたショウガをアナルに挿入する」

そう言いながら俊光様はその場で小型のナイフを取り出し皮を剥き始める。

「挿れるだけですか……? それからどうするんですか?」
「挿れてただ耐える。私が良いというまで落とすなよ」

挿れて耐える……。俊光様が決めたお仕置きがただ異物を挿入するだけの軽いものとは思えないが、この懲罰を知らないので想像ができない。

私は両足を抱えたままの体勢で、じっと、皮をむいていく俊光様の手元を見ていた。

「それじゃあ始めるぞ」

俊光様がショウガを手に、大きく開いた私の足の間にすわり、片手で太ももをおさえるようにしてショウガを蕾にあてがう。

「………っ……」

いつももっと太いものを突っ込まれているので、皮を剥かれた小さなショウガはするりと蕾に差し込まれた。

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