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33.ちょっかいを出してくる妖精たち
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ツーノッパ王国にオスペガサスを返還してからは、特に波乱もなくゆっくりと時が過ぎていった。
夏が進むごとに、ウェアウルフたちも農作業や狩猟に忙しいらしく、戦争などしている場合ではないのだろう。
季節が秋になろうとしているとき、僕はと言えば有志を募って天馬隊を組織しようと考えていた。
あの後も、ぽつぽつとペガサスを見つけ、オスペガサス6頭、メスペガサス9頭を集めるのに成功している。
そして、メスペガサスのほとんどが仔を生みたがっているのも判明したので、実際に天馬隊として使えるのは、オス6頭にメス2頭ということもわかった。
「種付けも終わったし……来年からが楽しみだよね!」
イネスがそういうと僕も頷いた。
『ああ、種付けから出産まで1年くらいかかるからな』
そう言いながらも、来年の春ごろには仔ペガサスの顔を拝めるかもしれないと、僕は少し上機嫌だった。
実はマーズヴァン帝国は、種付けしたメスも戦場へと駆り出しており、保護した時からお腹の中に仔がいる個体もいたのである。
ウェアウルフやマーメイドの中でも、動物と話せるアビリティを持っている人がいたので、メスペガサスがいつ頃に種付けをしたのか聞いたら、早い者だと2月ごろにはしていたそうだ。
そんな話をイネスとしていると「いいなぁ~」という声が聞こえた気がした。
耳を動かして周囲を確認してみたが、ここには僕ら以外はいないはずだ。きっと空耳だろう。
その後、薬を作ったり聖水を作ったりしているうちに、空耳のことはすっかり僕の頭からは消え去っており、ゆっくりと伸びをしていると、今度は複数の方向から視線を感じたのである。
『…………』
『…………』
もちろん、近くにジロジロと僕を見そうな人物はおらず、内職をして疲れがたまったのだろうと、楽天的に考えていた。
間もなく横倒しになってゆっくりと休むと、いつもよりも早く眠りについたように感じた。
どれほど眠っただろう。夢の中で聞き覚えのある声が聞こえてきた気がした。
「リュドヴィック殿……」
『……この声は、ルドヴィーカ……?』
そう言いながら目を開けると、周囲は霧のようなモノに包まれていた。
イネスもカロルも眠り落ちており、何やら怪しげな妖気と呼べる気配が漂っている。僕は周囲を睨むと再び、ルドヴィーカの声が脳内に響いた。
――どうやら、妖精たちが本当にイタズラをしてきたようですね
『イタズラ……?』
聞き返すと、ルドヴィーカが頷いた気がした。
彼女は少し間を開けてから脳裏に響く声で伝えてくる。
――なるべく刺激しないように、だけど迷惑なことはしっかり迷惑だと伝えないといけません
僕は頷くと、眠っているイネスに近づいて、鼻先で彼女をつついて起こそうとした。
だけど、寝ぼけた声を上げるだけで起きない。
――他の人たちは、眠りの世界に誘われているようです。貴方様に影響がないのは……ユニコーンだからでしょうね
とにかく、この騒動を起こしているイタズラ妖精と、話を付けなければいけないというのは理解できた。
僕は再び霧を睨むと、妖気にも濃いところと薄いところがあることがわかる。
『なるほど……濃度の強い場所にいるのか』
幸いにも、人魚の隠れ家はホームなので、たとえ寝ぼけていても構造というか間取りは把握している。
少し歩いてみると、当たり前だが川の周囲は妖気も薄いことがわかった。いくら妖精と言っても川の周囲は常にマナが動き回っているので、妖気を込めたマナを漂わせていることが難しいのだろう。
少し歩くと、よく僕の言いつけを破っては仕事をサボっている、マーメイドたちが倒れるように眠っている。
その上をよく見ると、手のひらサイズのフェアリーのような生き物たちが、ヒラヒラと飛びながらダンスを踊っていた。
さて脅すと逆上してきそうだし、まじめに言ってもおちょくられるだけだろう。
僕はニコニコしながら声をかけることにした。
『さあ~て、こんなイラズラをする悪い子は誰かな~ モショモショしちゃうぞ~』
その言葉を聞いたフェアリーたちは、おもしろがっているようだ。
「わー、でたー ウマのお化けだー!」
「きゃー、こっわーい!」
『この身体に悪い、光線を食らえ~~!』
ふざけながら角を光らせたり消したりしていると、フェアリーたちは僕の周りを飛び回って喜んでいた。
「このお馬さん、おもしろーい!」
「ウマじゃなくてユニコーンだよ」
「ねえ、一角獣さん、こいつらまじめに働いていなかったから、キョウセーロードーの悪夢を見せておいたよ。褒めて褒めて」
『その辺にして差し上げろ』
少しふざけた答えを返すと、フェアリーたちはますます喜んでいた。
「その言い回しもおもしろーい!」
『君たちの仲間はどこにいるのかな?』
「こっちだよー」
とりあえず、友好的に接することには成功したが、妖精たちの本体はどんな奴なのだろう。
心の中で勇気を振り絞ると、僕はフェアリーたちに案内されながら、より妖力の強い場所へと足を踏み入れた。
【フェアリー(身長は20センチくらい)】
レベル 12~19
空中攻撃能力 D ★★
地上攻撃能力 C ★★★★
攻撃命中率 C ★★★
防御能力 E
回避能力 B ★★★★★
航続距離 C ★★
探索能力 C ★★★★
単体では、身体の小さな魔法使いくらいの力を持つ。
しかし彼女たちの特徴は、怒らせると集団で襲ってくるところにあるため、見た目のステータスよりも厄介に感じることが多い。
基本的には魔法攻撃が中心となるが、稀にステッキで殴ってきたり、針のようなレイピアで突いてくる個体も存在する。
夏が進むごとに、ウェアウルフたちも農作業や狩猟に忙しいらしく、戦争などしている場合ではないのだろう。
季節が秋になろうとしているとき、僕はと言えば有志を募って天馬隊を組織しようと考えていた。
あの後も、ぽつぽつとペガサスを見つけ、オスペガサス6頭、メスペガサス9頭を集めるのに成功している。
そして、メスペガサスのほとんどが仔を生みたがっているのも判明したので、実際に天馬隊として使えるのは、オス6頭にメス2頭ということもわかった。
「種付けも終わったし……来年からが楽しみだよね!」
イネスがそういうと僕も頷いた。
『ああ、種付けから出産まで1年くらいかかるからな』
そう言いながらも、来年の春ごろには仔ペガサスの顔を拝めるかもしれないと、僕は少し上機嫌だった。
実はマーズヴァン帝国は、種付けしたメスも戦場へと駆り出しており、保護した時からお腹の中に仔がいる個体もいたのである。
ウェアウルフやマーメイドの中でも、動物と話せるアビリティを持っている人がいたので、メスペガサスがいつ頃に種付けをしたのか聞いたら、早い者だと2月ごろにはしていたそうだ。
そんな話をイネスとしていると「いいなぁ~」という声が聞こえた気がした。
耳を動かして周囲を確認してみたが、ここには僕ら以外はいないはずだ。きっと空耳だろう。
その後、薬を作ったり聖水を作ったりしているうちに、空耳のことはすっかり僕の頭からは消え去っており、ゆっくりと伸びをしていると、今度は複数の方向から視線を感じたのである。
『…………』
『…………』
もちろん、近くにジロジロと僕を見そうな人物はおらず、内職をして疲れがたまったのだろうと、楽天的に考えていた。
間もなく横倒しになってゆっくりと休むと、いつもよりも早く眠りについたように感じた。
どれほど眠っただろう。夢の中で聞き覚えのある声が聞こえてきた気がした。
「リュドヴィック殿……」
『……この声は、ルドヴィーカ……?』
そう言いながら目を開けると、周囲は霧のようなモノに包まれていた。
イネスもカロルも眠り落ちており、何やら怪しげな妖気と呼べる気配が漂っている。僕は周囲を睨むと再び、ルドヴィーカの声が脳内に響いた。
――どうやら、妖精たちが本当にイタズラをしてきたようですね
『イタズラ……?』
聞き返すと、ルドヴィーカが頷いた気がした。
彼女は少し間を開けてから脳裏に響く声で伝えてくる。
――なるべく刺激しないように、だけど迷惑なことはしっかり迷惑だと伝えないといけません
僕は頷くと、眠っているイネスに近づいて、鼻先で彼女をつついて起こそうとした。
だけど、寝ぼけた声を上げるだけで起きない。
――他の人たちは、眠りの世界に誘われているようです。貴方様に影響がないのは……ユニコーンだからでしょうね
とにかく、この騒動を起こしているイタズラ妖精と、話を付けなければいけないというのは理解できた。
僕は再び霧を睨むと、妖気にも濃いところと薄いところがあることがわかる。
『なるほど……濃度の強い場所にいるのか』
幸いにも、人魚の隠れ家はホームなので、たとえ寝ぼけていても構造というか間取りは把握している。
少し歩いてみると、当たり前だが川の周囲は妖気も薄いことがわかった。いくら妖精と言っても川の周囲は常にマナが動き回っているので、妖気を込めたマナを漂わせていることが難しいのだろう。
少し歩くと、よく僕の言いつけを破っては仕事をサボっている、マーメイドたちが倒れるように眠っている。
その上をよく見ると、手のひらサイズのフェアリーのような生き物たちが、ヒラヒラと飛びながらダンスを踊っていた。
さて脅すと逆上してきそうだし、まじめに言ってもおちょくられるだけだろう。
僕はニコニコしながら声をかけることにした。
『さあ~て、こんなイラズラをする悪い子は誰かな~ モショモショしちゃうぞ~』
その言葉を聞いたフェアリーたちは、おもしろがっているようだ。
「わー、でたー ウマのお化けだー!」
「きゃー、こっわーい!」
『この身体に悪い、光線を食らえ~~!』
ふざけながら角を光らせたり消したりしていると、フェアリーたちは僕の周りを飛び回って喜んでいた。
「このお馬さん、おもしろーい!」
「ウマじゃなくてユニコーンだよ」
「ねえ、一角獣さん、こいつらまじめに働いていなかったから、キョウセーロードーの悪夢を見せておいたよ。褒めて褒めて」
『その辺にして差し上げろ』
少しふざけた答えを返すと、フェアリーたちはますます喜んでいた。
「その言い回しもおもしろーい!」
『君たちの仲間はどこにいるのかな?』
「こっちだよー」
とりあえず、友好的に接することには成功したが、妖精たちの本体はどんな奴なのだろう。
心の中で勇気を振り絞ると、僕はフェアリーたちに案内されながら、より妖力の強い場所へと足を踏み入れた。
【フェアリー(身長は20センチくらい)】
レベル 12~19
空中攻撃能力 D ★★
地上攻撃能力 C ★★★★
攻撃命中率 C ★★★
防御能力 E
回避能力 B ★★★★★
航続距離 C ★★
探索能力 C ★★★★
単体では、身体の小さな魔法使いくらいの力を持つ。
しかし彼女たちの特徴は、怒らせると集団で襲ってくるところにあるため、見た目のステータスよりも厄介に感じることが多い。
基本的には魔法攻撃が中心となるが、稀にステッキで殴ってきたり、針のようなレイピアで突いてくる個体も存在する。
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