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33.準決勝戦
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いよいよ準決勝戦。
僕たちリッカシデン隊は、幸いにも全員で試合に挑むことができた。
ここまでくると観客席も満員となり、獣人たちは対戦相手のビーストユニオンを応援し、他の種族の観客たちが僕たちを応援するという状況になっている。
「よく見ると、すでに敗退した勇者隊の人たちも見に来てるね」
マーチルが言うとベルタも頷いた。
「そうですね。やはり……誰が勝つのか気になるのでしょう」
例によって係員に誘導されて入場すると、それだけで観客たちは大いに拍手をしてくれた。
審判もいつもの通りに挨拶をし、お約束のセリフを言う。
「では、両チームの先鋒以外は……所定の位置に戻ってください」
両チームともに、先鋒の選手以外が戻りはじめたが、やがて対戦相手であるビーストユニオンは、僕たちの行動を見て驚きを隠せないようだ。
それもそうだろう。今回も先鋒として立っているのは僕だ。4度も連続して先鋒に立っているのだから、驚くのは当たり前である。
対戦相手だけでなく、観客席も驚きの声で包まれていた。
「ま、マジかよ……」
「4回連続で、同じヤツが先鋒……」
「しかもコイツ、今まで負けなしなんだよな」
正直なところ、今回は先鋒を務めるかどうか悩んだくらいだ。
判断の決め手となったのは、僕にはリッカシデン号がいるということである。彼が出る事態に陥っていないのだから、当初の予定通り自分で行くことにした。
「では、始めてください!」
ちなみに、相手チームの先鋒は鹿獣人の重戦士タイプだった。
僕にとって重戦士タイプは、かなり組みやすい相手なので、序盤から風の翼を現し、左右の大翼で挟み撃ちを仕掛け、更に両腰の小翼も使って相手の体勢を崩し、20秒ほどで相手をダウンさせた。
「10カウント経過により、先鋒戦はリッカシデン隊の勝利!」
我ながら危なげなく勝てたと、満足しながら振り返ると、すでに両チームの次鋒が歩みを進めていた。
ん……僕のチームの次鋒は……。
「スィグワロス号……頑張ってね」
そう小声で言うと、スィグワロス号は嫌そうな表情を返してきた。
まあ、ケガをしないで戻ってきてくれれば、僕としては充分だ。
「では、次鋒戦……はじめ!」
その声と共に、スィグワロス号は猛ダッシュで対戦相手から逃げていき、無事に逃亡によって怪我なく敗退してきた。
これで両チームとも1勝1敗だ。因みに相手は誰かと言えば、ライオン族の女性……つまり、ビーストユニオンのナンバーツーで勇者の側近。本当は勇者とスィグワロス号をぶつけたかったところだが、ナンバーツーでも良しとすべきだろう。
続いては中堅戦。
ロドルフォたちが選んだのは、どうやら竜人アルマンだった。一方で対戦相手はウェアウルフの弓使いを出してきたので、フリーダが出てくると思っていたようである。
アルマンは全身が固い鱗で守られているので、弓使いにとってはかなり厄介な相手だ。
実際に試合が始まっても、対戦相手はアルマンの突撃に成すすべなく破れ、こちらは2勝1敗とリード広げた。
そして副将戦。
僕たちはフリーダが席を立った。あくまでロドルフォは勇者のように振る舞うつもりのようだ。そして、対戦相手は、チームで唯一の有翼人への対策を取れるチーター勇者が出てくる。
審判は両チームの副将に声をかけ、そして言った。
「では、副将戦……開始!」
直後に、チーター勇者は素早くフリーダに飛びかかり、彼女が飛ぶよりも前に羽交い絞めにしていた。
これほど圧倒的な速さでは、いくらフリーダでも飛び上がることは出来ないだろう。
ロドルフォはすぐに白いタオルを投げ入れた。
「……そこまで! 副将戦はビーストユニオンの勝利!」
「……ケガはないかな?」
「大丈夫です。まだまだ私も修業が足りません」
幸にも、対戦相手であるチーター勇者は紳士的な人物で、フリーダは特にケガはしていなかったようだ。
そしてチーター勇者は、難しそうな顔をしたままロドルフォを見る。
「……これで、大将戦はロドルフォ……リッカシデン隊の勝ち……か」
彼の呟いた通り、僕たちはロドルフォが、そして対戦相手は4番手と思われるウェアウルフが出てきた。
今日がロドルフォの初試合となったわけだが、彼はわずか40秒ほどで勝利をおさめ、危なげない試合運びで勝利をもぎ取った。
「さすがはロドルフォさんだね」
僕が言うと、フリーダも頷いた。
「そうですね。そして次は……どちらが勝つのでしょうか?」
聖剣勇者率いるアルデバランと、構成メンバーは前回王者と言えるインディゴメイルズの1軍バルド隊。
どちらが上がって来ても、厳しい戦いになりそうだ。
僕たちリッカシデン隊は、幸いにも全員で試合に挑むことができた。
ここまでくると観客席も満員となり、獣人たちは対戦相手のビーストユニオンを応援し、他の種族の観客たちが僕たちを応援するという状況になっている。
「よく見ると、すでに敗退した勇者隊の人たちも見に来てるね」
マーチルが言うとベルタも頷いた。
「そうですね。やはり……誰が勝つのか気になるのでしょう」
例によって係員に誘導されて入場すると、それだけで観客たちは大いに拍手をしてくれた。
審判もいつもの通りに挨拶をし、お約束のセリフを言う。
「では、両チームの先鋒以外は……所定の位置に戻ってください」
両チームともに、先鋒の選手以外が戻りはじめたが、やがて対戦相手であるビーストユニオンは、僕たちの行動を見て驚きを隠せないようだ。
それもそうだろう。今回も先鋒として立っているのは僕だ。4度も連続して先鋒に立っているのだから、驚くのは当たり前である。
対戦相手だけでなく、観客席も驚きの声で包まれていた。
「ま、マジかよ……」
「4回連続で、同じヤツが先鋒……」
「しかもコイツ、今まで負けなしなんだよな」
正直なところ、今回は先鋒を務めるかどうか悩んだくらいだ。
判断の決め手となったのは、僕にはリッカシデン号がいるということである。彼が出る事態に陥っていないのだから、当初の予定通り自分で行くことにした。
「では、始めてください!」
ちなみに、相手チームの先鋒は鹿獣人の重戦士タイプだった。
僕にとって重戦士タイプは、かなり組みやすい相手なので、序盤から風の翼を現し、左右の大翼で挟み撃ちを仕掛け、更に両腰の小翼も使って相手の体勢を崩し、20秒ほどで相手をダウンさせた。
「10カウント経過により、先鋒戦はリッカシデン隊の勝利!」
我ながら危なげなく勝てたと、満足しながら振り返ると、すでに両チームの次鋒が歩みを進めていた。
ん……僕のチームの次鋒は……。
「スィグワロス号……頑張ってね」
そう小声で言うと、スィグワロス号は嫌そうな表情を返してきた。
まあ、ケガをしないで戻ってきてくれれば、僕としては充分だ。
「では、次鋒戦……はじめ!」
その声と共に、スィグワロス号は猛ダッシュで対戦相手から逃げていき、無事に逃亡によって怪我なく敗退してきた。
これで両チームとも1勝1敗だ。因みに相手は誰かと言えば、ライオン族の女性……つまり、ビーストユニオンのナンバーツーで勇者の側近。本当は勇者とスィグワロス号をぶつけたかったところだが、ナンバーツーでも良しとすべきだろう。
続いては中堅戦。
ロドルフォたちが選んだのは、どうやら竜人アルマンだった。一方で対戦相手はウェアウルフの弓使いを出してきたので、フリーダが出てくると思っていたようである。
アルマンは全身が固い鱗で守られているので、弓使いにとってはかなり厄介な相手だ。
実際に試合が始まっても、対戦相手はアルマンの突撃に成すすべなく破れ、こちらは2勝1敗とリード広げた。
そして副将戦。
僕たちはフリーダが席を立った。あくまでロドルフォは勇者のように振る舞うつもりのようだ。そして、対戦相手は、チームで唯一の有翼人への対策を取れるチーター勇者が出てくる。
審判は両チームの副将に声をかけ、そして言った。
「では、副将戦……開始!」
直後に、チーター勇者は素早くフリーダに飛びかかり、彼女が飛ぶよりも前に羽交い絞めにしていた。
これほど圧倒的な速さでは、いくらフリーダでも飛び上がることは出来ないだろう。
ロドルフォはすぐに白いタオルを投げ入れた。
「……そこまで! 副将戦はビーストユニオンの勝利!」
「……ケガはないかな?」
「大丈夫です。まだまだ私も修業が足りません」
幸にも、対戦相手であるチーター勇者は紳士的な人物で、フリーダは特にケガはしていなかったようだ。
そしてチーター勇者は、難しそうな顔をしたままロドルフォを見る。
「……これで、大将戦はロドルフォ……リッカシデン隊の勝ち……か」
彼の呟いた通り、僕たちはロドルフォが、そして対戦相手は4番手と思われるウェアウルフが出てきた。
今日がロドルフォの初試合となったわけだが、彼はわずか40秒ほどで勝利をおさめ、危なげない試合運びで勝利をもぎ取った。
「さすがはロドルフォさんだね」
僕が言うと、フリーダも頷いた。
「そうですね。そして次は……どちらが勝つのでしょうか?」
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どちらが上がって来ても、厳しい戦いになりそうだ。
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