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5.密猟者にちょっかいを出す
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マンドレイク事件から半月もすれば、仔馬たちも小生から離れていった。
これでやっと落ち着いて除草作業に専念できると思っていると、ん、何だか気になる足跡を見つけた。
「…………」
鼻を近づけてみると、人間のにおいがした。
嗅覚が鈍いモンスターに、こういう話をすると、人間は履物をしているからにおいは残らないとか言われたりもするが、生き物というのは歩く際にフケや皮膚の一部を地面に落とすので、しっかりとにおいは残るのである。
「人間と一口に言っても、勇者から犯罪者まで色々いるらしいよな……何だろう?」
好奇心に駆られた小生は、そっと後を付けることにした。
しばらく音を立てないように歩いていくと、人間そのものを見つけることができた。性別は女。数は1人。複数の衣服を身の纏い、背中には弓と呼ばれる飛び道具を持っている。
確か弓というのは、アウトレンジからこちらに致命傷を与えてくる恐ろしい武器だ。長さもあるので威力も高そうだ。ハンターというヤツだろう。
「……ふむ、なるほど」
弓使いと言うことは裏を返せば、近づいてしまえばどうということはないとも言える。
あと女の武装で殺傷力のありそうなのは、腰から下がっているナイフくらいだけど、弓がメインの武器だとしたら、せいぜい補助的な武器に過ぎないだろう。
さて、善人か悪人かわからないが、ここを嗅ぎまわられても面倒だ。幸い1人なら小生単独でも対処可能だし、ちょっと牽制でもしに行くか。
なるべく物音をたてないように近づき、背後から「わっ!」と脅かしてみた。
「ひっ!? って、う、ウマぁ!?」
「やあ、お姉さん……ここで何してるの?」
「な、何でもいいでしょ!」
「いいやよくない」
そう言うと小生は、ハンターの女に身体を摺り寄せて、しばらくスリスリとしていく。
「……? なにしてるの?」
「体に人間のにおいを付けて仲間に見せるの。こうすれば人間が来たことがわかる」
さらに意地悪な小生は、踏み込んだことも言った。
「それに、毛についたマダニをお裾分け!」
「ふ、ふざけないでよ!」
ハンター女は小生から離れると、すぐに服を手で払いはじめた。
因みにマダニの話はブラフだ。小生は毎日泥浴びなどをして身体を清潔に保っているし、なぜか生まれつきダニや蚊が寄ってこない。
「わ、私はね……ユニコーンを狩る者ユニコーンスレイヤーよ! アンタのようなウマ風情なんて眼中にないから安心しなさい」
「ほう……ユニコーンスレイヤーか。そんな二つ名を持つということは、弟子もたくさんいるんだよね?」
「……え、ええ、いるわ! いるとも!」
「それだけでなく、弓の腕も一流なんだよね?」
「え、ええ! そうとも!」
「弦が切れてるけど……」
「え?」
ハンター女は、自分の弓の弦を見るとぎょっとしていた。
実は小生、身体をすり寄らせながら、隙を見て弦を歯でかみ切っておいたのである。当然のことながら、ハンター女はにっこりと笑った。
「こらあ! あまりバカにしてると馬刺しにするぞ!」
「生食はダメゼッタイ! 野生馬には寄生虫がいることもあるよ」
「だから、ああもう! なんでアンタは、こんなにムダに頭がいいの!」
「ちなみに世の中にはね、寄生虫の身体に寄生する寄生虫がいるんだよ。気を付けてね」
「だから、どうしてアンタがそれ知ってるの!」
「ギャグノベルにリアリティを求めてはいけない!」
そうきっぱり言うと、ハンター女はビシッとツッコミを入れてきた。
「それ言っちゃお終いでしょー!」
ハンター女は、切れた弦を見ると、恨めしそうに言った。
「もう、このイタズラウマ……あんたのせいで無駄足になっちゃったじゃない!」
「ああ、ハンター様、予備の弦を持っていないとは情けない……」
「うるせぃ!」
ハンター女は、グニュ~と小生の頬を引き延ばすと、ブツブツと文句を呟きながら立ち去っていった。人間というのは本当にオモシロイ生き物だと思う。
「…………」
「小生の正体に気付かないなんて、やっぱり3流ハンターだったんだなぁ……」
【ハンター女性】
これでやっと落ち着いて除草作業に専念できると思っていると、ん、何だか気になる足跡を見つけた。
「…………」
鼻を近づけてみると、人間のにおいがした。
嗅覚が鈍いモンスターに、こういう話をすると、人間は履物をしているからにおいは残らないとか言われたりもするが、生き物というのは歩く際にフケや皮膚の一部を地面に落とすので、しっかりとにおいは残るのである。
「人間と一口に言っても、勇者から犯罪者まで色々いるらしいよな……何だろう?」
好奇心に駆られた小生は、そっと後を付けることにした。
しばらく音を立てないように歩いていくと、人間そのものを見つけることができた。性別は女。数は1人。複数の衣服を身の纏い、背中には弓と呼ばれる飛び道具を持っている。
確か弓というのは、アウトレンジからこちらに致命傷を与えてくる恐ろしい武器だ。長さもあるので威力も高そうだ。ハンターというヤツだろう。
「……ふむ、なるほど」
弓使いと言うことは裏を返せば、近づいてしまえばどうということはないとも言える。
あと女の武装で殺傷力のありそうなのは、腰から下がっているナイフくらいだけど、弓がメインの武器だとしたら、せいぜい補助的な武器に過ぎないだろう。
さて、善人か悪人かわからないが、ここを嗅ぎまわられても面倒だ。幸い1人なら小生単独でも対処可能だし、ちょっと牽制でもしに行くか。
なるべく物音をたてないように近づき、背後から「わっ!」と脅かしてみた。
「ひっ!? って、う、ウマぁ!?」
「やあ、お姉さん……ここで何してるの?」
「な、何でもいいでしょ!」
「いいやよくない」
そう言うと小生は、ハンターの女に身体を摺り寄せて、しばらくスリスリとしていく。
「……? なにしてるの?」
「体に人間のにおいを付けて仲間に見せるの。こうすれば人間が来たことがわかる」
さらに意地悪な小生は、踏み込んだことも言った。
「それに、毛についたマダニをお裾分け!」
「ふ、ふざけないでよ!」
ハンター女は小生から離れると、すぐに服を手で払いはじめた。
因みにマダニの話はブラフだ。小生は毎日泥浴びなどをして身体を清潔に保っているし、なぜか生まれつきダニや蚊が寄ってこない。
「わ、私はね……ユニコーンを狩る者ユニコーンスレイヤーよ! アンタのようなウマ風情なんて眼中にないから安心しなさい」
「ほう……ユニコーンスレイヤーか。そんな二つ名を持つということは、弟子もたくさんいるんだよね?」
「……え、ええ、いるわ! いるとも!」
「それだけでなく、弓の腕も一流なんだよね?」
「え、ええ! そうとも!」
「弦が切れてるけど……」
「え?」
ハンター女は、自分の弓の弦を見るとぎょっとしていた。
実は小生、身体をすり寄らせながら、隙を見て弦を歯でかみ切っておいたのである。当然のことながら、ハンター女はにっこりと笑った。
「こらあ! あまりバカにしてると馬刺しにするぞ!」
「生食はダメゼッタイ! 野生馬には寄生虫がいることもあるよ」
「だから、ああもう! なんでアンタは、こんなにムダに頭がいいの!」
「ちなみに世の中にはね、寄生虫の身体に寄生する寄生虫がいるんだよ。気を付けてね」
「だから、どうしてアンタがそれ知ってるの!」
「ギャグノベルにリアリティを求めてはいけない!」
そうきっぱり言うと、ハンター女はビシッとツッコミを入れてきた。
「それ言っちゃお終いでしょー!」
ハンター女は、切れた弦を見ると、恨めしそうに言った。
「もう、このイタズラウマ……あんたのせいで無駄足になっちゃったじゃない!」
「ああ、ハンター様、予備の弦を持っていないとは情けない……」
「うるせぃ!」
ハンター女は、グニュ~と小生の頬を引き延ばすと、ブツブツと文句を呟きながら立ち去っていった。人間というのは本当にオモシロイ生き物だと思う。
「…………」
「小生の正体に気付かないなんて、やっぱり3流ハンターだったんだなぁ……」
【ハンター女性】
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