33 / 48
勇者軍の出陣(語り部パワハーダ)
しおりを挟む
時は来た!
伝説の勇者の生まれ変わりである俺こそパワハーダは長い冒険の果てに、真のラスボスである国王を倒すためにいま立ち上がろうとしている。
考えても見れば、ここまでの道のりは長く険しいものだった。
まずは貧乏くさく領民の機嫌ばかりを取っていた、チンケな領主を誅殺して俺様の素晴らしさを内外に知らしめ、そのおかげで魔王軍の手先共に追われる身となったが、ラスボス国王は俺様の功績を認めて国に招いた。
それからはいろいろあって、たくさんの家来たちが死んだが魔王を倒すことができ、城へと戻ると魔王の娘の首のことで難癖をつけられて、今度は俺様が第二の魔王に仕立て上げられそうになっている。
まあ、味方だと思っていた奴が真の黒幕だったという話はよくあることだ。
そもそもラスボス国王は、最初から腹黒そうな顔をしていたから怪しいと思っていたんだ。だから参謀の魔法使いに色々と調べさせたら、自分のアニキから王位権を奪うなんてことをしてやがった。
「俺様に付いて来れば、全ての民にパンと女と職をくれてやる! 死ぬ気で戦え!」
「おー!」
「お前ら! ニセ国王のヤローを今すぐぶっ潰すぞ!」
「おー!」
俺様は頭がいいからよくわかる。
馬鹿を説得するために難しい言葉を使うのは悪手だ。バカにはわかりやすく簡単な言葉を使うに限る。
例えば戦い方も、ぶっ潰せとだけ叫びながら、そのぶっ潰したいモノに剣を向けるのが一番だ。ごちゃごちゃと難しいことを言うから部下共は混乱するし、俺様の意図しない動き方をしはじめるんだ。
「いくぞお前ら―!」
「おー!」
こうして俺様は、手下どもを引き連れて王国領に入った。
ここには王国軍の兵どもがいたが関係ねえ。要は暴れるだけ暴れて領内にいる民をボコれば、それだけ王国も弱るという話になる。
「よーし、お前ら俺様から命令だ……ぶっ潰せ! この城も城下町も全部だ!!」
「おおおおお!」
そう略奪を指示すると、武将も兵も我先へと領内へとなだれ込んで敵兵も民草もお構いなしに襲い始めた。もちろん相手にも軍隊がいるから、あちこちで戦闘がはじまるが……関係ねえ。
敵兵が死ねば俺様に敵対する人間が減るし、敵の民草が減れば国力が下がる、そして味方の将兵が死ねば褒美として支払う土地や金を節約できるというワケだ。
少し見ていると、俺は思わずつぶやいた。
「へぇ……こいつら、意外とやるじゃねえか」
略奪をしてモチベーションが上がったのか、俺様の手下どもは次々と王国軍の軍隊を撃退し始めたのである。武装も数も向こうの方が上のはずなのだが、人の気持ちというのは本当に俺の想像の斜め上を行くのだから侮れねえ。
王国軍の兵が倒れると、俺様の兵士たちは次々と鎧をはぎ取ったり、近くにある民家を襲って金品や女子供を奪い取ったりしている。ふふ……本当に戦場は地獄というヤツだな。
けっきょく兵どもは王国軍の守備隊を蹴散らすと、そのまま城下町を荒らし回りながら城の包囲した。
このまま兵糧攻めと行きたいところだが、略奪分を含めても1ヶ月以内に食い物も無くなっちまうだろう。
こいつらこテンションも高いうちに、俺様は城に剣を向けて命令した。
「ぶっ潰せ!」
さすがに今までは弱い者イジメをしてきたこいつらも、籠城している相手がどれほど危険かは理解しているようだ。
さすがに自分は死にたくないと見えて、誰も前に出たがらない。
じれったく思っていると、丁度いいことを思いついた。
「お前らがやる気を出さないなら仕方ねえ……おい、ここに食料を集めろ! ぶん取った分も含めてだ!!」
兵どもは渋々という様子で、俺様の前に食料を集めると、俺はその中に向けて松明を投げ入れた。
慌てて何人かが止めに入ろうとしたので、俺は怒号を響かせる。
「動くな! 次に動いた奴は叩き斬るぞ!!」
全員が止まったところで、俺様は命じた。
「食料ならまだ……あの中にある。飢え死にするのが嫌なら、今すぐにぶっ潰して来い」
まだ、兵士どもは茫然としていたので、俺は更に大きな声で叫んだ。
「ぶっ潰せぇ!!」
「お、おおーーーー!」
一人が動き出すと、武将も兵士も雪崩が起こったかのように動き出して城へと攻めかかった。
城の中の兵士どもも激しく抵抗して、兵士だけでなく武将も次々と討ち死にしたが、こんな連中の代わりなんざ履いて捨てるほどいる。
こうして俺様は、城を1日で攻略して、頭の良さと恐ろしさを内外に見せつけたワケだ。
伝説の勇者の生まれ変わりである俺こそパワハーダは長い冒険の果てに、真のラスボスである国王を倒すためにいま立ち上がろうとしている。
考えても見れば、ここまでの道のりは長く険しいものだった。
まずは貧乏くさく領民の機嫌ばかりを取っていた、チンケな領主を誅殺して俺様の素晴らしさを内外に知らしめ、そのおかげで魔王軍の手先共に追われる身となったが、ラスボス国王は俺様の功績を認めて国に招いた。
それからはいろいろあって、たくさんの家来たちが死んだが魔王を倒すことができ、城へと戻ると魔王の娘の首のことで難癖をつけられて、今度は俺様が第二の魔王に仕立て上げられそうになっている。
まあ、味方だと思っていた奴が真の黒幕だったという話はよくあることだ。
そもそもラスボス国王は、最初から腹黒そうな顔をしていたから怪しいと思っていたんだ。だから参謀の魔法使いに色々と調べさせたら、自分のアニキから王位権を奪うなんてことをしてやがった。
「俺様に付いて来れば、全ての民にパンと女と職をくれてやる! 死ぬ気で戦え!」
「おー!」
「お前ら! ニセ国王のヤローを今すぐぶっ潰すぞ!」
「おー!」
俺様は頭がいいからよくわかる。
馬鹿を説得するために難しい言葉を使うのは悪手だ。バカにはわかりやすく簡単な言葉を使うに限る。
例えば戦い方も、ぶっ潰せとだけ叫びながら、そのぶっ潰したいモノに剣を向けるのが一番だ。ごちゃごちゃと難しいことを言うから部下共は混乱するし、俺様の意図しない動き方をしはじめるんだ。
「いくぞお前ら―!」
「おー!」
こうして俺様は、手下どもを引き連れて王国領に入った。
ここには王国軍の兵どもがいたが関係ねえ。要は暴れるだけ暴れて領内にいる民をボコれば、それだけ王国も弱るという話になる。
「よーし、お前ら俺様から命令だ……ぶっ潰せ! この城も城下町も全部だ!!」
「おおおおお!」
そう略奪を指示すると、武将も兵も我先へと領内へとなだれ込んで敵兵も民草もお構いなしに襲い始めた。もちろん相手にも軍隊がいるから、あちこちで戦闘がはじまるが……関係ねえ。
敵兵が死ねば俺様に敵対する人間が減るし、敵の民草が減れば国力が下がる、そして味方の将兵が死ねば褒美として支払う土地や金を節約できるというワケだ。
少し見ていると、俺は思わずつぶやいた。
「へぇ……こいつら、意外とやるじゃねえか」
略奪をしてモチベーションが上がったのか、俺様の手下どもは次々と王国軍の軍隊を撃退し始めたのである。武装も数も向こうの方が上のはずなのだが、人の気持ちというのは本当に俺の想像の斜め上を行くのだから侮れねえ。
王国軍の兵が倒れると、俺様の兵士たちは次々と鎧をはぎ取ったり、近くにある民家を襲って金品や女子供を奪い取ったりしている。ふふ……本当に戦場は地獄というヤツだな。
けっきょく兵どもは王国軍の守備隊を蹴散らすと、そのまま城下町を荒らし回りながら城の包囲した。
このまま兵糧攻めと行きたいところだが、略奪分を含めても1ヶ月以内に食い物も無くなっちまうだろう。
こいつらこテンションも高いうちに、俺様は城に剣を向けて命令した。
「ぶっ潰せ!」
さすがに今までは弱い者イジメをしてきたこいつらも、籠城している相手がどれほど危険かは理解しているようだ。
さすがに自分は死にたくないと見えて、誰も前に出たがらない。
じれったく思っていると、丁度いいことを思いついた。
「お前らがやる気を出さないなら仕方ねえ……おい、ここに食料を集めろ! ぶん取った分も含めてだ!!」
兵どもは渋々という様子で、俺様の前に食料を集めると、俺はその中に向けて松明を投げ入れた。
慌てて何人かが止めに入ろうとしたので、俺は怒号を響かせる。
「動くな! 次に動いた奴は叩き斬るぞ!!」
全員が止まったところで、俺様は命じた。
「食料ならまだ……あの中にある。飢え死にするのが嫌なら、今すぐにぶっ潰して来い」
まだ、兵士どもは茫然としていたので、俺は更に大きな声で叫んだ。
「ぶっ潰せぇ!!」
「お、おおーーーー!」
一人が動き出すと、武将も兵士も雪崩が起こったかのように動き出して城へと攻めかかった。
城の中の兵士どもも激しく抵抗して、兵士だけでなく武将も次々と討ち死にしたが、こんな連中の代わりなんざ履いて捨てるほどいる。
こうして俺様は、城を1日で攻略して、頭の良さと恐ろしさを内外に見せつけたワケだ。
0
お気に入りに追加
82
あなたにおすすめの小説
ママと中学生の僕
キムラエス
大衆娯楽
「ママと僕」は、中学生編、高校生編、大学生編の3部作で、本編は中学生編になります。ママは子供の時に両親を事故で亡くしており、結婚後に夫を病気で失い、身内として残された僕に精神的に依存をするようになる。幼少期の「僕」はそのママの依存が嬉しく、素敵なママに甘える閉鎖的な生活を当たり前のことと考える。成長し、性に目覚め始めた中学生の「僕」は自分の性もママとの日常の中で処理すべきものと疑わず、ママも戸惑いながらもママに甘える「僕」に満足する。ママも僕もそうした行為が少なからず社会規範に反していることは理解しているが、ママとの甘美な繋がりは解消できずに戸惑いながらも続く「ママと中学生の僕」の営みを描いてみました。
小さなことから〜露出〜えみ〜
サイコロ
恋愛
私の露出…
毎日更新していこうと思います
よろしくおねがいします
感想等お待ちしております
取り入れて欲しい内容なども
書いてくださいね
よりみなさんにお近く
考えやすく
クラス転移で無能判定されて追放されたけど、努力してSSランクのチートスキルに進化しました~【生命付与】スキルで異世界を自由に楽しみます~
いちまる
ファンタジー
ある日、クラスごと異世界に召喚されてしまった少年、天羽イオリ。
他のクラスメートが強力なスキルを発現させてゆく中、イオリだけが最低ランクのEランクスキル【生命付与】の持ち主だと鑑定される。
「無能は不要だ」と判断した他の生徒や、召喚した張本人である神官によって、イオリは追放され、川に突き落とされた。
しかしそこで、川底に沈んでいた謎の男の力でスキルを強化するチャンスを得た――。
1千年の努力とともに、イオリのスキルはSSランクへと進化!
自分を拾ってくれた田舎町のアイテムショップで、チートスキルをフル稼働!
「転移者が世界を良くする?」
「知らねえよ、俺は異世界を自由気ままに楽しむんだ!」
追放された少年の第2の人生が、始まる――!
※本作品は他サイト様でも掲載中です。
どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~
さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」
あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。
弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。
弟とは凄く仲が良いの!
それはそれはものすごく‥‥‥
「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」
そんな関係のあたしたち。
でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥
「うそっ! お腹が出て来てる!?」
お姉ちゃんの秘密の悩みです。
僕のスライムは世界最強~捕食チートで超成長しちゃいます~
空 水城
ファンタジー
15になると女神様から従魔を授かることができる世界。
辺境の田舎村に住む少年ルゥは、幼馴染のファナと共に従魔を手に入れるための『召喚の儀』を受けた。ファナは最高ランクのAランクモンスター《ドラゴン》を召喚するが、反対にルゥは最弱のFランクモンスター《スライム》を召喚してしまう。ファナが冒険者を目指して旅立つ中、たったひとり村に残されたルゥは、地道にスライムを育てていく。その中で彼は、自身のスライムの真価に気が付くことになる。
小説家になろう様のサイトで投稿していた作品です。
誰一人帰らない『奈落』に落とされたおっさん、うっかり暗号を解読したら、未知の遺物の使い手になりました!
ミポリオン
ファンタジー
旧題:巻き込まれ召喚されたおっさん、無能で誰一人帰らない場所に追放されるも、超古代文明の暗号を解いて力を手にいれ、楽しく生きていく
高校生達が勇者として召喚される中、1人のただのサラリーマンのおっさんである福菅健吾が巻き込まれて異世界に召喚された。
高校生達は強力なステータスとスキルを獲得したが、おっさんは一般人未満のステータスしかない上に、異世界人の誰もが持っている言語理解しかなかったため、転移装置で誰一人帰ってこない『奈落』に追放されてしまう。
しかし、そこに刻まれた見たこともない文字を、健吾には全て理解する事ができ、強大な超古代文明のアイテムを手に入れる。
召喚者達は気づかなかった。健吾以外の高校生達の通常スキル欄に言語スキルがあり、健吾だけは固有スキルの欄に言語スキルがあった事を。そしてそのスキルが恐るべき力を秘めていることを。
※カクヨムでも連載しています
日本列島、時震により転移す!
黄昏人
ファンタジー
2023年(現在)、日本列島が後に時震と呼ばれる現象により、500年以上の時を超え1492年(過去)の世界に転移した。移転したのは本州、四国、九州とその周辺の島々であり、現在の日本は過去の時代に飛ばされ、過去の日本は現在の世界に飛ばされた。飛ばされた現在の日本はその文明を支え、国民を食わせるためには早急に莫大な資源と食料が必要である。過去の日本は現在の世界を意識できないが、取り残された北海道と沖縄は国富の大部分を失い、戦国日本を抱え途方にくれる。人々は、政府は何を思いどうふるまうのか。
老衰で死んだ僕は異世界に転生して仲間を探す旅に出ます。最初の武器は木の棒ですか!? 絶対にあきらめない心で剣と魔法を使いこなします!
菊池 快晴
ファンタジー
10代という若さで老衰により病気で死んでしまった主人公アイレは
「まだ、死にたくない」という願いの通り異世界転生に成功する。
同じ病気で亡くなった親友のヴェルネルとレムリもこの世界いるはずだと
アイレは二人を探す旅に出るが、すぐに魔物に襲われてしまう
最初の武器は木の棒!?
そして謎の人物によって明かされるヴェネルとレムリの転生の真実。
何度も心が折れそうになりながらも、アイレは剣と魔法を使いこなしながら
困難に立ち向かっていく。
チート、ハーレムなしの王道ファンタジー物語!
異世界転生は2話目です! キャラクタ―の魅力を味わってもらえると嬉しいです。
話の終わりのヒキを重要視しているので、そこを注目して下さい!
****** 完結まで必ず続けます *****
****** 毎日更新もします *****
他サイトへ重複投稿しています!
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる