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44.瘴気を放つ森

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 僕は、オリヴィアやスティレットと共に、待ち合わせ場所へと向かった。
 ちょうど、インディゴメイルズのリック隊もこちらに向かってきており、どちらも待機することなく集合することができた。

「おはようございます、皆さん!」
 こちらから挨拶をすると、リック隊のメンバーも笑顔を見せてくれた。
「我が隊員をご紹介します。まず……僭越ながら隊長を務めさせてい頂いているリックです。ポジションは戦士系のアタッカー」

 彼はウシ族の重戦士の紹介をした。
「続いて、我が部隊のタンク兼アタッカー……ゴワス家の18番目です」
「よろしく!」
 ゴワスの身長は190センチ近くあり、更に筋肉質なので体重も100キログラムは越えているだろう。これほどの戦士が前衛を守ってくれるのなら、味方は大いに安心できそうだ。

「3番目に、我が部隊で唯一の女性隊員……弓使いのエルフ、アリーシャです」
 肌がやや黒めのエルフだった。
 彼女はどうやら、先祖が南方出身の人らしい。
「弓の腕はまだまだですが、エンチャントのアビリティを持っています。どうぞよろしくお願いします」


 エンチャントという言葉を聞き、オリヴィアとスティレットは表情を変えて驚いていた。
 これはヒーリングに匹敵するアビリティである。熟練度こそ必要だが、武器に魔法コーティングをすることで、次のメンテナンスまで、切れ味を鋭くしたり耐久力を上昇させたりする効果がある。

 驚く僕たちをよそに、リック隊長は仲間の紹介を続けた。
「最後に、ウェアウルフのエドワードです」
「今回の任務では、バッグアタック警戒に当たります。よろしくお願いします」
「こちらこそ……」


 間もなく僕たちは隊列を組んだ。
 先頭は重戦士のゴワス。2番手のアタッカーとしてリックと僕。真ん中はオリヴィアとスティレット。その後ろにはアリーシャが控え、しんがり役にウェアウルフのエドワード。

 こうしてリック隊は街道を進んでいき、冒険者街を突っ切ると南方向を通って樹海の前へと出た。
「…………」

 その樹海は、僕たちがスティレットと出会った場所よりも、危険な魔境だった。
 森全体が瘴気を放出しており、僕くらい鈍感な感覚しか持っていなくても、決して近寄ろうとは思わないような場所だ。

 リック隊は当たり前のように入っていくが、これは勇気がいる。
 樹海に足を踏み入れると、一斉に様々な生き物の視線がまるで突き刺さるかのように向けられてきた。2番手という比較的安全な場所にいてこれなのだから、先頭と最後尾の受けるプレッシャーは、この比ではないだろう。
『気持ちの悪い視線だね……群れから離れる人間の命を刈り取る気満々という感じだ』
「そうですね。この森は精霊まで攻撃的です」

 彼女たちが話をしていたら、アリーシャも話に加わった。
「今日はこれでも穏やかな方だけど、霧が出ている日は気をつけてね……精霊がモンスター化することもあるから」

 オリヴィアはもちろん、スティレットも表情をこわばらせていた。


 それからおおよそ10分くらいだろうか。
 リック隊は問題なく進んでいたが、ここで先頭を歩く重戦士ゴワスが警戒するように歩みを止めた。

 その前に視線を向けると、歩行している人間や動物のガイコツが、おおよそ5体いた。
 普通の人間には骨が立っているだけに見えるだろうが、よく目を凝らすと骨をコーティングするように瘴気が濃く燃え上がっている。
「不死者だ! 迎撃せよ!」


 まず、不死者に向かって行ったのはゴワスだった。
 彼は斧を一気に振り下ろすと、その威力で瘴気も骨も一刀両断にしたが、瘴気はまるでガイコツを縫い合わせるかのように骨同士を結合して蘇生をはじめている。

 更に別のガイコツも、鈍足ながら側面に回り込んでゴワスを攻撃しようとしている。
 こっちにはリックが援護に入って斬撃を見舞っていたが、リックの攻撃を受けた個所を、瘴気はガイコツを修復していく。
「くそ……相変わらず、厄介な奴らめ!」
「ダメージを積み重ねていくしかない。地道にやろう!」

 リックが言っている横で、今度は別のガイコツがオリヴィアやスティレットを狙いに来た。
 僕も身構えて迎撃の体勢を取ったが……よく考えてみた。


 このガイコツ……実は本体は、この瘴気の方なんじゃないか……?


【リック隊のアリーシャ】
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