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31.再び敵のアジトを探るカイト
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まもなく僕は、ジルーと共に敵アジトの側まできた。
「……この穴からオリヴィアの匂いがするよ」
「ありがとう」
やはりジルーが仲間にいるのは心強い。僕一人では総当たりで洞窟に空いた小さな穴から、中の様子を確かめなければいけなかった。
アビリティ【偽物の右手剣】を出すと、すぐに形状変化を行い、刀身を紐のようなものに変化させて、洞窟の小さな穴へと入り込ませた。
そして先端に【潜望鏡】の役割を果たさせる。すると……
なんとオリヴィアは、地面に倒れて眠っていたのである。
念のためジルーに視線を向けると、彼女は再び匂いを確かめてくれた。
「……間違いなくオリヴィアの匂いだよ」
僕はここで考えを巡らせていた。
オリヴィアは貴重なヒーリングアビリティの持ち主である。それを放置しているということは、すでに吸血鬼化が成功してしまったと考えるべきだろうか。
それとも別の罠……例えば、警備に絶対の自信を持っているから、拘束もせずに放置しているのだろうか。
ジルーはじっと僕のことを見つめたまま黙っていた。恐らく、僕に判断を委ねているのだろう。
僕はまだ思案を続けることにした。
オリヴィアを放置しているということは、何かあってもすぐに対処できると敵のリーダーが思っている。その自信の表れに違いない。
ジルーや、マーフォークたちが撃破されたことを知っているのなら、もう少し警戒するだろうし、オリヴィアを囮として使うには、取り返された時のリスクも高すぎる感じがする。
そんな折に、僕の視界の隅に1羽のハトの姿が映った。
「……攻め込もう。今ならまだ、敵の迎撃態勢が整ってない」
そう伝えるとジルーは頷いてくれた。
「わかった。私も協力するね」
攻撃開始の話を持って行くと、ビルたち村の自警団員も快く応じてくれた。
「我々が正気を取り戻せたのは君のおかげだからな」
「よし、マーフォーク魂を……吸血鬼共に見せてやろう!」
ビルも言うと、他のマーフォークの戦士たちも頷いた。
「よし、僕が先頭になって切り込みます……皆さんは……」
「待って!」
そう言いながら話を遮ったのはジルーだった。
「私の方が夜目が利くのだから、先頭は私が引き受けるよ。カイト君は奥さんの奪還を最優先にして」
彼女の言う通りだと思ったので、僕は申し訳なく思いながら頷いた。
「わかった。では、先鋒は君にお願いするよ」
「カイト君は、オイラたちと一緒に突入しよう。そうすれば……誰がキーマンなのかわかりづらい」
そう言うとビルはニッと笑った。
こうしてみると、本当に頼もしい仲間たちと巡り会えたものだと思う。
僕たちは物音を立てないように、洞窟の入口へと向かった。
そこには吸血鬼化したマーフォークが、見張り役として守りについているが、それ以外にこれと言った防御手段を張り巡らせているような感じはしない。
太陽の位置を確認すると、ちょうど今が日没という感じである。
僕はまず、ジルーを見て、そして自警団の団長やビルたちを見た。誰もが準備は万端という様子である。
「よし、行こう……!」
そう言うと僕とジルーは反対方向に走った。
まずは、ジルーが物陰から飛び出すと、見張りの一人を組み倒し、驚いた敵のマーフォークが応戦しようとした次の瞬間には、僕が物陰から【レフトナイフ】を飛ばした。
その攻撃は目の前のマーフォークの胸を通過して、そのままジルーの取り押さえていた、マーフォークの頭を通過して地面へと突き刺さっている。
今の一撃で、マーフォーク2人は正気を取り戻したらしく、辺りを見回していた。
予定通りなので、僕は洞窟の入り口に親指を向けると、まずはジルーが突入し、次に自警団員たちも次々と中へと突入していき、若いビルが2人のマーフォークたちに事情を説明していた。
僕もまた、洞窟の奥へと入った。
【拘束もされずに放置されているオリヴィア】
「……この穴からオリヴィアの匂いがするよ」
「ありがとう」
やはりジルーが仲間にいるのは心強い。僕一人では総当たりで洞窟に空いた小さな穴から、中の様子を確かめなければいけなかった。
アビリティ【偽物の右手剣】を出すと、すぐに形状変化を行い、刀身を紐のようなものに変化させて、洞窟の小さな穴へと入り込ませた。
そして先端に【潜望鏡】の役割を果たさせる。すると……
なんとオリヴィアは、地面に倒れて眠っていたのである。
念のためジルーに視線を向けると、彼女は再び匂いを確かめてくれた。
「……間違いなくオリヴィアの匂いだよ」
僕はここで考えを巡らせていた。
オリヴィアは貴重なヒーリングアビリティの持ち主である。それを放置しているということは、すでに吸血鬼化が成功してしまったと考えるべきだろうか。
それとも別の罠……例えば、警備に絶対の自信を持っているから、拘束もせずに放置しているのだろうか。
ジルーはじっと僕のことを見つめたまま黙っていた。恐らく、僕に判断を委ねているのだろう。
僕はまだ思案を続けることにした。
オリヴィアを放置しているということは、何かあってもすぐに対処できると敵のリーダーが思っている。その自信の表れに違いない。
ジルーや、マーフォークたちが撃破されたことを知っているのなら、もう少し警戒するだろうし、オリヴィアを囮として使うには、取り返された時のリスクも高すぎる感じがする。
そんな折に、僕の視界の隅に1羽のハトの姿が映った。
「……攻め込もう。今ならまだ、敵の迎撃態勢が整ってない」
そう伝えるとジルーは頷いてくれた。
「わかった。私も協力するね」
攻撃開始の話を持って行くと、ビルたち村の自警団員も快く応じてくれた。
「我々が正気を取り戻せたのは君のおかげだからな」
「よし、マーフォーク魂を……吸血鬼共に見せてやろう!」
ビルも言うと、他のマーフォークの戦士たちも頷いた。
「よし、僕が先頭になって切り込みます……皆さんは……」
「待って!」
そう言いながら話を遮ったのはジルーだった。
「私の方が夜目が利くのだから、先頭は私が引き受けるよ。カイト君は奥さんの奪還を最優先にして」
彼女の言う通りだと思ったので、僕は申し訳なく思いながら頷いた。
「わかった。では、先鋒は君にお願いするよ」
「カイト君は、オイラたちと一緒に突入しよう。そうすれば……誰がキーマンなのかわかりづらい」
そう言うとビルはニッと笑った。
こうしてみると、本当に頼もしい仲間たちと巡り会えたものだと思う。
僕たちは物音を立てないように、洞窟の入口へと向かった。
そこには吸血鬼化したマーフォークが、見張り役として守りについているが、それ以外にこれと言った防御手段を張り巡らせているような感じはしない。
太陽の位置を確認すると、ちょうど今が日没という感じである。
僕はまず、ジルーを見て、そして自警団の団長やビルたちを見た。誰もが準備は万端という様子である。
「よし、行こう……!」
そう言うと僕とジルーは反対方向に走った。
まずは、ジルーが物陰から飛び出すと、見張りの一人を組み倒し、驚いた敵のマーフォークが応戦しようとした次の瞬間には、僕が物陰から【レフトナイフ】を飛ばした。
その攻撃は目の前のマーフォークの胸を通過して、そのままジルーの取り押さえていた、マーフォークの頭を通過して地面へと突き刺さっている。
今の一撃で、マーフォーク2人は正気を取り戻したらしく、辺りを見回していた。
予定通りなので、僕は洞窟の入り口に親指を向けると、まずはジルーが突入し、次に自警団員たちも次々と中へと突入していき、若いビルが2人のマーフォークたちに事情を説明していた。
僕もまた、洞窟の奥へと入った。
【拘束もされずに放置されているオリヴィア】
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