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42.赤ひげ海賊と堕天使を同時攻撃!

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 攻撃タイミングは、しっかりと見計らった。
 適しているのは夕闇が周囲を包み込もうとする瞬間、つまり夕暮れ時だ。

 僕はエッケザックスの宝玉をしっかりと睨むと、ミホノシュヴァルツ号たちを見つめる。そして、手を上げると、彼らは頷いてから次々と飛び立った。
 リーダーはミホノシュヴァルツ号。天馬1騎。有翼人4人の小隊だ。数は少なめだが、シュヴァルツ号の他にも魔法使いが参加しているから、不意打ちさえ成功すれば赤ひげ海賊団にそれなりの打撃を与えられるだろう。

「じゃあ、僕たちも行こう……頼んだよ、オフィーリア!」
「はい!」
 マーチルは海賊旗をしっかりと握りしめたまま、東側の闇に染まった海域を睨んでいた。このまま進んでいくと、堕天使たちの最も嫌う、夕闇の中に異教徒と遭遇することになる。


 あと10秒……

 あと5秒……

 4……3……2……1……
 遂に堕天使たちの船団が姿を現した。
 その数は報告の合った通り8隻だ。どうやら敵側に探索系能力者はいないらしく、こっちの船の出現におどろいているようだ。それでも航路を変更しないのは、こっちが1隻だからだろう。

 相手の堕天使海賊船団は、我が物顔でまっすぐ近づいてくる。まるでその態度は、ちっぽけな船はさっさと道を開けろと言っているかのように感じる。
 僕は少しだけ航路を逸れるように進んでいくと、連中は無警戒に真横を通り過ぎていく。

 この瞬間に僕はエリンに視線を向けた。攻撃を仕掛けるのは彼女だ。
 エリンはずっと目を瞑っていたが、僕が合図を送ると目を開けて堕天使海賊船団に向けて水系範囲魔法を放った。


 物凄い水飛沫が上がると、次々と堕天使たちの甲板へと降り注いでいき、堕天使海賊団は全員が辺りを見回した後、僕たちを睨んでくる。

 僕はすかさずオフィーリアに進路変更を指示し、僕の海賊船は進路をぐるりと変更しながら人魚島へと向かって行く。
「す、すぐに有翼人隊を出せ!」

 その声が堕天使の船から聞こえてきたが無駄だ。相手の船は水浸しになっているから有翼人が飛び立つコンディションではないし、今は夕暮れ時である。まともな有翼人なら、たとえ洗脳されていても拒否する。

 間もなく僕たちは夕暮れに向かって進んでいく形になり、堕天使船団は僕らを追う形になった。向こうはどうやら僕たちを満足に凝視できないようだ。「あの正体不明の船を追え!」という声が聞こえてくる。


 僕たちはそのまま、赤ひげ海賊団の船が多数停泊している海域へとやってきた。
 どうやら赤ひげ海賊団は、人魚たちとの一戦で勝ったらしく、意気揚々と酒を飲み合ったり、捕らえた人魚たちをからかったりして楽しんでいる。

 そんな状況だったので、僕を迎え撃とうとするような船はなかった。
 僕たちはそのまま、赤ひげ海賊団の船舶が浮いている場所へと突入すると「敵襲だ!」と声を上げた。

「は?」
「なんだ!?」
 赤ひげ海賊団のメンバーは、次々と甲板から出てきたので、僕は更に叫んだ。
「堕天使どもが攻めて来たぞ!」

 その声を響かせた直後だった。
 堕天使航空隊に扮した、ミホノシュヴァルツ号を含む有翼人隊が、次々と赤ひげ海賊団の船に向けて攻撃を開始したのである。
 彼らが意地悪なところは、あえて守りの薄そうな食料運搬船のような船を狙い撃ちにしたことだ。

 次々と風魔法や火矢を撃ち込まれ、食料運搬船は3隻ほど被害を受け、うち1隻は消火に失敗して炎上していく。


 用を済ませたミホノシュヴァルツ号たちが東海岸を目指して飛び去って行くと、今度は本物の堕天使船団が有翼人隊を差し向けてきた。
 その数は20ほどいて、連中は次々と海賊の船団に向けて炎魔法や炎矢を射かけていく。

 海賊たちもさすがに2度目の攻撃には弓矢で対抗しはじめ、堕天使船団も海域に突入すると、次々とバリスタを撃ち込んで来た。
 どうやら僕の時は、不意打ちだったため丸太の装填が追い付かなかったようだ。


 赤ひげ海賊団の船は、次々と丸太を撃ち込まれて損傷したり沈んだりしていくが、やがて応戦準備を進めたらしく反撃を開始した。
 小舟もまた、堕天使たちの船に近づけて船内に突入しようとしていたが、こちらは有翼人隊に妨害されて、次々と海へと投げ出されていく。

 その直後に、赤ひげ海賊団の船のバリスタを受けて、堕天使海賊団の船が傾いて沈没していく。堕天使海賊団もまたバリスタを撃ち返し、赤ひげ海賊団の船を沈めた。
「死を恐れるな! 神の御剣となって戦え! 逃げた者は地獄行きだということを心得よ!」
「カルト教団になんて負けるな! 大海原の猛者としての意地……見せてみろ!」


 両者の潰し合いは、双方に多数の犠牲者を出す事態となっていた。
 そして、その様子は島の人魚たちも見ていたのである。
「今が好機だ! 全軍……かかれっ!」

 南部部族の長の号令が響いた。

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