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代わりのヒーラーを連れてくるガンスーン
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私の名前はラナ。ガンスーンチームのハンターよ。
Sランク冒険者チームの昇格候補にも挙がったことのあるガンスーンチームだけど、今はBに落ちるのではないかという話さえ出ていて、気を揉まれている。
このランキングシステムというのは、ツーノッパ王国が独自に導入している……まあ、冒険者パーティーの強さを示す指標のようなモノでね。これが上がれば上がるほどに、難しいけど実入りの多い……つまりハイリスクハイリターンな依頼を受けることができるの。
だから、AランクからBランクに落ちるというのは、それだけ稼ぎが少なくなるから困る。
さて、どうしてBランク降格の話が出ているのかと言えば、今まで我がチームを支えてきたソフィアというシスターが、仲間から抜けてしまったからなの。
彼女はどうやら、少し前に脱退させたエッケハルトの件でけっこうな不満を持っていたみたい。私はアイツ……単なる能なしだと思うけど、彼女はシスターだからね。努力だけはしている人間を見捨てられなかったのでしょう。
まあ、とにかく、今はそのガンスが代わりのヒーラーを探してくると言っているから、ここは手腕を拝見させてもらうとしましょう。
彼も仮にもAランクチームのリーダーなんだし、大言壮語ではなく有言実行をして……
「おい、オメーら……ヒーラーを見つけて来たぞ!」
私の隣にいた猫族の戦士ディーラは、視線を上げると……すぐにひきつった顔をした。私も多分、同じ顔をしていたんだろうな。
すぐにガンスーンが「な、なんだよ……」って言ってきたから。
すぐにディーラは、私の耳元でささやいてきた。
「ちょ、ちょっと……あの娘って……」
私もマナの感じですぐに察しがついていた。この娘の体から流れ出てくるマナの感じと、服装は……どう見ても暗黒魔法に通じている人間。
確かに、ヒーリング魔法は使えるかもしれないけど、こんな人間をチームに入れたら教会に目を付けられるし、そもそも生きているのかしら……この人?
ダンジョンとか沼地に出てくる、ゴーストを見ているような感じ。
「ちょ、ちょっと……まさかとは思うけど……ヒーラーって……」
「決まってるじゃねえか、彼女以外に誰がいる!?」
「ま、待ってってば、冗談で言ってるにしても笑えないよそれ!?」
そう2人で反対すると、ガンスーンは不機嫌になった。
「テメーらがやれって言ったから、望み通りヒーラーを連れてきてやったんじゃねーか! 文句があるならてめえらが探せってんだ!」
「そういう問題じゃないでしょ、教会を怒らせると本当にアンタしょっ引かれるわよ!」
ディーラが怒鳴ると、私も加勢することにした。
「ヒーラーの獲得が難しいことがわかったでしょう。今すぐにソフィアに懺悔してきなさい!」
「そーだよ! 今すぐにひれ伏してこい、このマヌケ!」
そう2人がかりで非難すると、ガンスーンは顔を真っ赤にして怒鳴り散らしてくる。
「ふざけんな! テメーら女どもは、俺様の言う通りに動いてりゃいいんだカスっ!」
「カスはどっちよ! 私たちがいなけりゃ何もできないくせに!」
しばらく私たちと言い争うと、やがてガンスーンはかんしゃくを起こした。
「うるせー! テメーらクビだ! 俺様のパーティーにふわさしくねー!」
「アンタなんて、こっちから願い下げよ!」
「ガンスより5歳児の方がまともね。行きましょうディーラ」
「ええ!」
「後悔するなよクソ女ども!」
私たちは受付に行くと、ガンスーンチームからの脱退とギルドバッジの返却を申し出た。
すると当たり前だけど、受付嬢たちは真っ青な顔になっていく。
私は単なるハーフエルフのハンターだけど、ディーラはパワーもある猫族の戦士だからね。今まで挙げてきた実績も多いから、彼女が抜けるとチームの評価も凄く下がると思う。
「ほ、本気ですか!?」
「あのバカガンス。ヒーラーとか言ってとんでもない人を連れてきたの。あたし……もうあの人に関わりたくない」
「ついでに、ギルド長はきっとガンスの言いなりになると思うから、私たちはギルドも去ることにしました。ソフィアに悪いですからね」
「じゃあ、ギルド長によろしく伝えておいてね」
私たちがギルドを後にしようとすると、受付嬢たちが動揺しているのが気配でわかった。
そして、内緒話もしている。
「こ……これはもうCランクまで降格では?」
「魔法弓のラナと、駿足剛拳のディーラの同時抜けなんて……Sランクチームでも2階級降格しかねない失態よ」
まあ、このギルドがどうなろうが知ったこっちゃないよね。
それよりも、すぐに就職活動しないと。貯金だって今の生活水準を維持しようとしたら……半年分くらいしか持たないだろうし。
【ガンスーンがAランクリーダーまで上り詰めたワケ】
わがまま放題で、物語登場から悪手ばかり打っているガンスだが、実は最初のうちは注目を集める能力者だったのである。
普通のパーティーリーダーは、有力なギルド員が脱退しないように気を遣うことが多い。特にヒーラーなどの特殊アビリティの持ち主は、機嫌を損ねるとパーティーから抜けてしまうからである。
しかし、ガンスーンは最初から、俺様に付いてこいのスタイルを貫いていた。それだけだとただのワガママになってしまうが、パーティーの中にアビリティを持たないエッケハルトが居たことが実は大きかった。
ガンスーンはワガママだが、能力のない人間も受け入れるくらいの度量がある。だから只者ではない。
そう実力者たち思われていたから、顧客や支援者から指名クエストを貰ったり、ソフィアのように協力する者が現れてカリスマ性も出ていたが、エッケハルトという【宝剣】を自ら手放してしまったことによって、運に見放されることになった。
ちなみに、このギルドの受付嬢やギルド長のように、数字ばかり気にしている人間に、エッケハルトの値打ちを理解することは不可能である。
【ラナの狩り】
Sランク冒険者チームの昇格候補にも挙がったことのあるガンスーンチームだけど、今はBに落ちるのではないかという話さえ出ていて、気を揉まれている。
このランキングシステムというのは、ツーノッパ王国が独自に導入している……まあ、冒険者パーティーの強さを示す指標のようなモノでね。これが上がれば上がるほどに、難しいけど実入りの多い……つまりハイリスクハイリターンな依頼を受けることができるの。
だから、AランクからBランクに落ちるというのは、それだけ稼ぎが少なくなるから困る。
さて、どうしてBランク降格の話が出ているのかと言えば、今まで我がチームを支えてきたソフィアというシスターが、仲間から抜けてしまったからなの。
彼女はどうやら、少し前に脱退させたエッケハルトの件でけっこうな不満を持っていたみたい。私はアイツ……単なる能なしだと思うけど、彼女はシスターだからね。努力だけはしている人間を見捨てられなかったのでしょう。
まあ、とにかく、今はそのガンスが代わりのヒーラーを探してくると言っているから、ここは手腕を拝見させてもらうとしましょう。
彼も仮にもAランクチームのリーダーなんだし、大言壮語ではなく有言実行をして……
「おい、オメーら……ヒーラーを見つけて来たぞ!」
私の隣にいた猫族の戦士ディーラは、視線を上げると……すぐにひきつった顔をした。私も多分、同じ顔をしていたんだろうな。
すぐにガンスーンが「な、なんだよ……」って言ってきたから。
すぐにディーラは、私の耳元でささやいてきた。
「ちょ、ちょっと……あの娘って……」
私もマナの感じですぐに察しがついていた。この娘の体から流れ出てくるマナの感じと、服装は……どう見ても暗黒魔法に通じている人間。
確かに、ヒーリング魔法は使えるかもしれないけど、こんな人間をチームに入れたら教会に目を付けられるし、そもそも生きているのかしら……この人?
ダンジョンとか沼地に出てくる、ゴーストを見ているような感じ。
「ちょ、ちょっと……まさかとは思うけど……ヒーラーって……」
「決まってるじゃねえか、彼女以外に誰がいる!?」
「ま、待ってってば、冗談で言ってるにしても笑えないよそれ!?」
そう2人で反対すると、ガンスーンは不機嫌になった。
「テメーらがやれって言ったから、望み通りヒーラーを連れてきてやったんじゃねーか! 文句があるならてめえらが探せってんだ!」
「そういう問題じゃないでしょ、教会を怒らせると本当にアンタしょっ引かれるわよ!」
ディーラが怒鳴ると、私も加勢することにした。
「ヒーラーの獲得が難しいことがわかったでしょう。今すぐにソフィアに懺悔してきなさい!」
「そーだよ! 今すぐにひれ伏してこい、このマヌケ!」
そう2人がかりで非難すると、ガンスーンは顔を真っ赤にして怒鳴り散らしてくる。
「ふざけんな! テメーら女どもは、俺様の言う通りに動いてりゃいいんだカスっ!」
「カスはどっちよ! 私たちがいなけりゃ何もできないくせに!」
しばらく私たちと言い争うと、やがてガンスーンはかんしゃくを起こした。
「うるせー! テメーらクビだ! 俺様のパーティーにふわさしくねー!」
「アンタなんて、こっちから願い下げよ!」
「ガンスより5歳児の方がまともね。行きましょうディーラ」
「ええ!」
「後悔するなよクソ女ども!」
私たちは受付に行くと、ガンスーンチームからの脱退とギルドバッジの返却を申し出た。
すると当たり前だけど、受付嬢たちは真っ青な顔になっていく。
私は単なるハーフエルフのハンターだけど、ディーラはパワーもある猫族の戦士だからね。今まで挙げてきた実績も多いから、彼女が抜けるとチームの評価も凄く下がると思う。
「ほ、本気ですか!?」
「あのバカガンス。ヒーラーとか言ってとんでもない人を連れてきたの。あたし……もうあの人に関わりたくない」
「ついでに、ギルド長はきっとガンスの言いなりになると思うから、私たちはギルドも去ることにしました。ソフィアに悪いですからね」
「じゃあ、ギルド長によろしく伝えておいてね」
私たちがギルドを後にしようとすると、受付嬢たちが動揺しているのが気配でわかった。
そして、内緒話もしている。
「こ……これはもうCランクまで降格では?」
「魔法弓のラナと、駿足剛拳のディーラの同時抜けなんて……Sランクチームでも2階級降格しかねない失態よ」
まあ、このギルドがどうなろうが知ったこっちゃないよね。
それよりも、すぐに就職活動しないと。貯金だって今の生活水準を維持しようとしたら……半年分くらいしか持たないだろうし。
【ガンスーンがAランクリーダーまで上り詰めたワケ】
わがまま放題で、物語登場から悪手ばかり打っているガンスだが、実は最初のうちは注目を集める能力者だったのである。
普通のパーティーリーダーは、有力なギルド員が脱退しないように気を遣うことが多い。特にヒーラーなどの特殊アビリティの持ち主は、機嫌を損ねるとパーティーから抜けてしまうからである。
しかし、ガンスーンは最初から、俺様に付いてこいのスタイルを貫いていた。それだけだとただのワガママになってしまうが、パーティーの中にアビリティを持たないエッケハルトが居たことが実は大きかった。
ガンスーンはワガママだが、能力のない人間も受け入れるくらいの度量がある。だから只者ではない。
そう実力者たち思われていたから、顧客や支援者から指名クエストを貰ったり、ソフィアのように協力する者が現れてカリスマ性も出ていたが、エッケハルトという【宝剣】を自ら手放してしまったことによって、運に見放されることになった。
ちなみに、このギルドの受付嬢やギルド長のように、数字ばかり気にしている人間に、エッケハルトの値打ちを理解することは不可能である。
【ラナの狩り】
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