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12.目に見えない道
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間もなくヤーシッチが、船の舵をしっかりと握っていた。
ベテラン船乗りである彼がこの場所に立つと、とても安心のだが、今回は場所が場所だ。誰しもが緊張したまま様子を見ている。
「レーダー手。頼りにしているぞ」
ヤーシッチに言われて、僕もしっかりと頷く。
そして……例の丸盾を彼に見せた。
『風の向きは南西方向に約2メートルだ』
「オフィーリア……ゴーレムたちにオール漕ぎを指示してくれ!」
「わかりました」
丸盾を見やすいようにテーブルに置くと、オフィーリアはその位置関係を確認してから目を瞑って、自分の額に人差し指と中指の先を当てていた。
恐らく、船底でオールを漕いでいる30体のゴーレムたちに、指示を出しているのだろう。
僕たちの海賊船は浅瀬を縫うように進んでいくが、最初の難関と言えるポイントに差し掛かった。
ここには、いくつもの船が座礁したまま放置されている。恐らく、海底の様子がわからなくて浅瀬に乗り上げて大破したのだろう。
「ここから正面500メートルに浅瀬がある。左に迂回してくれ」
「りょうかい!」
海面の様子を監視していたマーチルは、こちらを見てくる。
「いま……人魚の影が映ったよ」
「乗り込んでくる様子は?」
『ないな……野次馬的に見物している感じだ』
ならば問題ないと思いながら、僕たちは航海を続けた。
次の難所は、それから5分ほどで現れた。一見するとわからないくらい、微妙な位置に海底があるのだ。ご丁寧に海藻なども生えているため、目だけで判断するのは困難だろう。
「……こっちは、右方向に迂回しよう」
「おーもーかーじーーいっぱい!」
おお、これぞ海の男って感じだ。
ちなみに主舵いっぱいとは、船が右に向くように目いっぱい舵を切ることを言う。
ヤーシッチの判断は正しく、船はまさに安全な場所を悠々と航行していた。同時に様子を見ていたミホノシュヴァルツ号も指示を出す。
『マーチル、ニッパー、リーゼ、3人で帆を下げてくれ。これ以上先は風を受けると危険だ』
「すぐやるよ!」
帆を下げ終えると、いよいよ最大の難所の登場だった。
それは、渡り鳥たちが言っていたという、昆布の海底樹海。先ほどの難所とは比べ物にならないくらいに昆布などの海藻が生い茂っており、海の底の様子が全然わからない場所である。
「これ……食材の調達場所としては……素晴らしいのですが……」
リーゼが言うと、マーチルも青ざめた顔をしていた。
「下手すれば……私たちがエサになりそうだよね」
「…………」
僕は丸盾を睨むと、その道筋がはっきりと見えた。
「このまま、まっすぐ」
ヤーシッチやニッパーと言った、海のベテランほど青い顔をして僕を見ていた。
それもそうだろう。盾が指し示した場所は……最も海面樹海を長く通過しなければならないルートだ。普通なら、こんな底が見えないような回路など、1メートルでも短く通りたいと思うのが人情だろう。
だけど、僕は自分のアビリティを信じたい。
船が真っ直ぐに進んでいくと、オフィーリアはときどきオールを漕ぐことを中断させながら、ゴーレムたちに指示を出している。どうやら、海藻の切れ端がオールに纏わりついてくるようだ。
慎重に……だけど指示通り真っ直ぐに、僕たちの海賊船は海藻の大樹海を通り抜けていく。
そして、大樹海を越えた先の海岸には、何十と言う人魚たちが、こちらを眺めていた。
マーチルも、その様子を眺めながら横目で僕を見てくる。
「で……来たのはいいけど、これからどうするの?」
「貿易ができないか話し合ってみようと思うんだ。僕たちの積み荷の中で、彼女たちが興味を持ちそうなモノといえば……?」
そう、質問をするとジッパーは、自慢のあごひげを触りながら言った。
「やっぱりビールだろうな。海賊連中が大勢乗っていれば必需品だが、今の面々では到底使い切らなくてダメになっちまうだろうよ」
話を聞いていたシュヴァルツ号も頷いた。
『次点で、イモ類などか……もし食糧事情などに不安があるのなら欲しがるはずだ』
僕は人魚たちに向けて声をかけた。
「おーい! 取引をしよう! 僕たちは……そのためにきたー!!」
その言葉を聞いた人魚たちはお互いを見ると、すぐに1人が声を返してきた。
「わかったー! どんな品物を持っているー?」
「ビール……酒だ!」
そう声を出すと、人魚たちは再びお互いを見合うと、頷いた。
「わかったー! 具体的に話をしたい……降りてきてくれ!」
僕は仲間の中から、ミホノシュヴァルツ号を選ぶと、2人で人魚の島へと上陸することにした。
【人魚の強さ】
ツーノッパ地域では個体数を減らしてしまったが、ツノテン諸島やスカンツノビア半島などの地域ではまだまだ多くの人魚たちが暮らしている。
魚やヘビに似ている下半身だけでなく、人間に似た上半身もレザーアーマーに匹敵する防御力を持つ。
また、知力や器用さも人間並みに高いため、飛び道具やハルヴァードなどの特殊武器も難なく使いこなす。欠点としては陸上では素早さで人間に及ばないが、下半身をヘビのように動かすことで平行移動もできる。
なお……水中では無類の強さを発揮。
ベテラン船乗りである彼がこの場所に立つと、とても安心のだが、今回は場所が場所だ。誰しもが緊張したまま様子を見ている。
「レーダー手。頼りにしているぞ」
ヤーシッチに言われて、僕もしっかりと頷く。
そして……例の丸盾を彼に見せた。
『風の向きは南西方向に約2メートルだ』
「オフィーリア……ゴーレムたちにオール漕ぎを指示してくれ!」
「わかりました」
丸盾を見やすいようにテーブルに置くと、オフィーリアはその位置関係を確認してから目を瞑って、自分の額に人差し指と中指の先を当てていた。
恐らく、船底でオールを漕いでいる30体のゴーレムたちに、指示を出しているのだろう。
僕たちの海賊船は浅瀬を縫うように進んでいくが、最初の難関と言えるポイントに差し掛かった。
ここには、いくつもの船が座礁したまま放置されている。恐らく、海底の様子がわからなくて浅瀬に乗り上げて大破したのだろう。
「ここから正面500メートルに浅瀬がある。左に迂回してくれ」
「りょうかい!」
海面の様子を監視していたマーチルは、こちらを見てくる。
「いま……人魚の影が映ったよ」
「乗り込んでくる様子は?」
『ないな……野次馬的に見物している感じだ』
ならば問題ないと思いながら、僕たちは航海を続けた。
次の難所は、それから5分ほどで現れた。一見するとわからないくらい、微妙な位置に海底があるのだ。ご丁寧に海藻なども生えているため、目だけで判断するのは困難だろう。
「……こっちは、右方向に迂回しよう」
「おーもーかーじーーいっぱい!」
おお、これぞ海の男って感じだ。
ちなみに主舵いっぱいとは、船が右に向くように目いっぱい舵を切ることを言う。
ヤーシッチの判断は正しく、船はまさに安全な場所を悠々と航行していた。同時に様子を見ていたミホノシュヴァルツ号も指示を出す。
『マーチル、ニッパー、リーゼ、3人で帆を下げてくれ。これ以上先は風を受けると危険だ』
「すぐやるよ!」
帆を下げ終えると、いよいよ最大の難所の登場だった。
それは、渡り鳥たちが言っていたという、昆布の海底樹海。先ほどの難所とは比べ物にならないくらいに昆布などの海藻が生い茂っており、海の底の様子が全然わからない場所である。
「これ……食材の調達場所としては……素晴らしいのですが……」
リーゼが言うと、マーチルも青ざめた顔をしていた。
「下手すれば……私たちがエサになりそうだよね」
「…………」
僕は丸盾を睨むと、その道筋がはっきりと見えた。
「このまま、まっすぐ」
ヤーシッチやニッパーと言った、海のベテランほど青い顔をして僕を見ていた。
それもそうだろう。盾が指し示した場所は……最も海面樹海を長く通過しなければならないルートだ。普通なら、こんな底が見えないような回路など、1メートルでも短く通りたいと思うのが人情だろう。
だけど、僕は自分のアビリティを信じたい。
船が真っ直ぐに進んでいくと、オフィーリアはときどきオールを漕ぐことを中断させながら、ゴーレムたちに指示を出している。どうやら、海藻の切れ端がオールに纏わりついてくるようだ。
慎重に……だけど指示通り真っ直ぐに、僕たちの海賊船は海藻の大樹海を通り抜けていく。
そして、大樹海を越えた先の海岸には、何十と言う人魚たちが、こちらを眺めていた。
マーチルも、その様子を眺めながら横目で僕を見てくる。
「で……来たのはいいけど、これからどうするの?」
「貿易ができないか話し合ってみようと思うんだ。僕たちの積み荷の中で、彼女たちが興味を持ちそうなモノといえば……?」
そう、質問をするとジッパーは、自慢のあごひげを触りながら言った。
「やっぱりビールだろうな。海賊連中が大勢乗っていれば必需品だが、今の面々では到底使い切らなくてダメになっちまうだろうよ」
話を聞いていたシュヴァルツ号も頷いた。
『次点で、イモ類などか……もし食糧事情などに不安があるのなら欲しがるはずだ』
僕は人魚たちに向けて声をかけた。
「おーい! 取引をしよう! 僕たちは……そのためにきたー!!」
その言葉を聞いた人魚たちはお互いを見ると、すぐに1人が声を返してきた。
「わかったー! どんな品物を持っているー?」
「ビール……酒だ!」
そう声を出すと、人魚たちは再びお互いを見合うと、頷いた。
「わかったー! 具体的に話をしたい……降りてきてくれ!」
僕は仲間の中から、ミホノシュヴァルツ号を選ぶと、2人で人魚の島へと上陸することにした。
【人魚の強さ】
ツーノッパ地域では個体数を減らしてしまったが、ツノテン諸島やスカンツノビア半島などの地域ではまだまだ多くの人魚たちが暮らしている。
魚やヘビに似ている下半身だけでなく、人間に似た上半身もレザーアーマーに匹敵する防御力を持つ。
また、知力や器用さも人間並みに高いため、飛び道具やハルヴァードなどの特殊武器も難なく使いこなす。欠点としては陸上では素早さで人間に及ばないが、下半身をヘビのように動かすことで平行移動もできる。
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