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25.勇者マックス隊との戦い

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 マックス達は、森に入って15分ほどでダンジョンゲート内へと乗り込んできた。
 その数は、カテリーナの報告通り8名。どうやらブレーズ隊も勇者一行に加勢するつもりのようだ。

 有翼人カテリーナは、すぐにこちらを見た。
「魔王さま……勇者マックス一行と、ジルー隊の先鋒の戦いが始まりました」
 ジルーはダンジョンの入り口に、コボルド2匹、アタックドッグ6匹という守備隊を配置していた。
 勇者一行は、ザコモンスターの登場に笑っていたが、実際に戦わせると意外にも強くて驚いているようだ。

 なぜ、ザコモンスターが勇者一行に善戦したのかと言えば、僕自身が護身術を身に着けていることが関わっている。コボルドやアタックドッグに魔法を使うほどの霊力はないが、肉体はきちんとあるので、僕のノウハウが一部だが彼らに影響を与えるのである。
「……報告します。今、最後のアタックドッグが撃破されました」
「なるほど。わかった」
 勇者一行は、ジルー隊の先鋒を全滅させたが、最後の1匹を倒すまでに2分近くかかっていた。


 さて、そのマックス一行は、そのままダンジョンを歩いていくと、冒険者としてのクセなのか宝箱を探す行動をはじめた。
 彼らはそのままジルーの配置した、銅貨入りの宝箱に近づくと、そこには守備と配置しているコボルド1匹とアタックドッグ3匹がいる。

 勇者一行はそのまま迎撃態勢を取ったが、ここにジルーがけしかけた別動隊が到着した。
 別動隊は、コボルド2匹とアタックドッグ3匹だ。
「く……くそ、挟み撃ちか!」
「支援術師を守れ!!」
 マックス一行は、応援部隊であるブレーズ隊の3人も活用して、こちらの挟み撃ちに対処した。

 ここまでダンジョン内に入ってくれると、僕の鏡にも映し出されるので、直接この目で戦いを観戦できる。
 このコボルド隊との戦いは、おおよそ3分ほどかかっていた。

 被害はジルー宝箱守備隊、別動隊は全滅。
 その代わりに、ブレーズの戦士と魔法使いにケガを負わせることに成功。それだけでなく、本隊であるマックス隊の戦士たちのスタミナを大きく削ることにも成功したようだ。
「何とか……上手く切り抜けたな」
「ここまで上手く行ったのだから、さぞいいアイテムが入って……」

 格闘家は不用意に宝箱を開けようとしたが、ここは勇者マックスが止めた。
「バカ! まずは罠がかかっていないかのチェックだ……頼むぞブレッシー!」
「はい」

 エルフの魔法使いは、宝箱のトラップチェックをした。
 その発動の早さは、まさに上級魔法使い。
「……罠はかかっていません」
「おっけー!」
 そう言いながら格闘家が宝箱を開けると、中に入っていたのは銅貨9枚。
 中身を見た途端に、格闘家の表情は一瞬にして引きつり、すぐに怒鳴り声を上げていた。
「はぁっ!? マジで、ふざけんなよ!!」

 さすがに、これだけ苦戦させておいて、宝箱の中身が銅貨9枚は……精神的に大きな打撃を与えたようだ。
 エルフの魔法使いや勇者さえ、無表情のまま固まり、ケガまでしたブレーズ隊の3人に至っては魂が抜けかかっている。
 かなりのトラップになったので、次回もまた宝箱の中身は銅貨9枚にしておくことにしよう。


 隣で様子を見ていたカテリーナは、僕を見た。
「魔王さま……敵の疲労が溜まっています。トラップを発動すべきでは?」
「そうだね……ジルー!」

 僕はそうテレパシーを送ると、ジルーはすぐに返事をした。
「迷いの森発動だね……力を貸して、フリーダさま!」
「はい!」

 その言葉のあと、ジルーは切り札をトリガーしたようだ。
 今までは見慣れた構造をしていたジルーの支配領域は、グチャグチャに構造が変わっていき、支配者の僕でさえも内部の様子が理解不能になっていく。

 すぐに勇者一行も、迷いの森がトリガーしたことを察したようだ。
「な、なんだ……やべえことが起こってるぞ!」
 格闘家が叫ぶと、勇者もエルフの魔法使いブレッシーを見た。
「ブレッシー、頼む……対抗呪文を!」
「だ、ダメです……パワーが……強すぎます!」


 すっかりと変化したダンジョンに立った勇者一行は、辺りを見回している。
 ブレッシーという魔法使いも、勇者マックスを見た。
「このパワー……間違いなく敵にハイエルフがいます」
「ハイエルフの力に、更にユニコーンのブーストか……もしや、退路を塞がれたか?」
「恐らく……敵は持久戦を仕掛けてきたのだと思います」

 僕は頷きながら、鏡の中の勇者パーティーを睨んだ。
 相手は勇者だ。ならば相手の状況は最悪で、こちらの状況は最善という状況を作り出して勝負するのがベター。

 さて、どこまでこちらに有利な状況を作れるだろう。


【勇者から見た、チャンスコネクターのイメージ】
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