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18.社のグレードアップ

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 自分のメニューを眺めると、僕はやがて頷いた。
 神社なら、まずは本殿があることが最優先だが、次に必要なモノと言えば……やはり鳥居だろう。

 なにせ、神社が家だとしたら、鳥居は庭先の門のようなものだ。
 特にダンジョンでは、頻繁にモンスターも攻めて来るわけだし、鳥居があると本殿の負担が減るように思える。

 僕はフリーダと共にボスエリアへと戻ると、予定通りに鳥居を設置してみた。
【SP211→111】

 すると、見上げるほど大きくはないが、僕でも充分に潜れるサイズの鳥居が現れたうえに、更に本殿を囲むように塀までセットで現れてくれた。
「ボスエリアも広くなりましたね」
「ああ……! まだまだ規模は小さいけれど、こうしてみると立派な神社だ」

 思わずつぶやくと、隣に立っていたフリーダも鳥居の中と外に立ち、マナの様子を確認していた。
「どうやら、このトリイというモノは、マナの壁を作っているようです」
「マナの壁?」
「はい。この神殿の中か近くにいれば、霊力だけでなくケガや病気といった身体の不調も、少しずつですが回復させることができそうです」
「そ、それは……凄いな!」

 彼女は、興奮した様子で僕を見た。
「これはきっと、他の施設も建てれば……より、魔王さまのお力を強めることができますね!」
「あ、ああ……努力するよ……」
 そう言いながら、僕のポイントを確認すると111ポイントだった。
 いま新たに施設を立ててしまうと無防備な人間に戻ってしまう。最低でもあと1日は待った方が……と思っていると、おやポイントが80も増えた。

 視線を上げると、フリーダはニコニコと微笑みながら言う。
「ぜひ、私のポイントもお役立てください」
「いや、でもそうしたら君のエリアが……」
「大丈夫です。私は元々安全なエリアにいるわけですし……遠慮なさらず!」
【マルクフリーダのSP 132→32】
【チャンスコネクターのSP 111→191】

 貰った以上は、期待に応えるしかない。
 僕はそう思いながら再びリストを眺めた。

 鳥居が出来たのなら、次は【手水屋】を生成すべきだろうか。
 そう思いながら見てみると、おや……御神木の生成というモノが増えている。
「…………」
「…………」

 手水屋も正直捨てがたいのだが、フリーダからポイントを貰ったのだから、彼女を連想するモノを召喚したいと感じ、僕は御神木を選ぶことにした。
【チャンスコネクターのSP 191→91】

 ポイントを消費すると、本殿の後ろのスペースが広がっていき、同時に白いオーラのようなものが一直線に伸びた。
 それは徐々に枝分かれしていき、白い光に徐々に質感が現れはじめ、枝別れしたオーラも徐々に枝や葉っぱを現しはじめ、葉は緑色に、そして枝は茶色に変わっていく。

 およそ10秒ほどで、僕の前には立派な木が登場した。
 何だか若々しいと思っていると、フリーダも近づいていき……そっと手で触れた。
「この子は……1000年樹の若木ですね」
「そ、そうなんだ……凄く大きいから、それなりの年齢なのかと思った」
「今はまだ充分にスペースがありますが、私が死ぬ頃には、本殿も立て替えないといけないでしょうね」

 その言葉で1000年樹の凄さを知った。
 今はまだ、本殿とは20メートルほどのスペースがあるけれど、それが埋まってしまうということは、相当大きな木に成長するということだ。
「…………」
「…………」
 おや、木から神聖なオーラが周囲に流れ出している。まるでミストシャワーのようだ。

「凄く穏やかだけど、強いオーラだね」
「はい。トリイや門があるので、すぐにこの空間を聖域にしてくれると思います」
 
 彼女の言う通り、1000年樹の聖なるオーラは、すぐに神社内の気を整えていき、ダンジョンマスターである僕の霊力を上昇させてくれたようだ。
 そして12時になると、霊力が回復した。
【チャンスコネクターSP 91→109】
【マルクフリーダのSP 32→46】

 回復量が大幅に上昇したので驚いていると、ジルーが戻ってきた。
「魔王さまー! 急にSPが……って、これなんですか!?」

 ジルーはまず鳥居に驚き、次に1000年樹に驚いている。
「ああ、フリーダと相談して、まずは施設設備に投資しようということになったんだ」
 そう伝えると、フリーダも頷いた。
 
 どうやらジルーも、6時間ごとに9ポイントほど霊力が回復するようになったようだ。
 ちなみに僕はこのときは知る由もなかったが、この1000年樹の影響範囲は思っていた以上に広く、お隣さんであるオスカーのダンジョンにも影響を与えていたようだ。

 いやはや全く、1000年樹の力とは恐れ入るものである。


【1000年樹を見上げるチャンスコネクター】



【作者のひとりごと】
 ウマのポーズがとても気に入りましたが、尻尾の色と周りが平地っぽくなっているところが……
 思った通りの絵を出すのは、難しいモノです。
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