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30.魔物たちの第二次襲撃

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 翌朝、僕たちはアイラ支部長を見送っていた。
「幸いにも、魔物の襲撃はありませんでしたが、多数のギルドに被害が出たと聞いています。再度の魔物の進行にご注意ください」
『アイラ支部長も、お気を付けて』

 スティレット支部長とアイラ支部長が挨拶を交わしていると、護衛役のウェアウルフの戦士ジルーがギルドの待合室から出てきた。
 彼女の年齢は40近いため戦士としての全盛期は過ぎているが、今まで何度も死線を潜り抜けてきたことを窺えるほど、強い霊力を体中から放っている。
「アイラ支部長、行きましょう」
「はい、よろしくお願いしますねジルーさん」

 ジルーは娘のクロエに視線を送ると、クロエも微笑み返していた。


 アイラ支部長が帰ってもギルド員たちは安心できなかった。
 ジェシカという風紀委員の娘が残っているからである。スティレットはギルドメンバーを見ると、目線と雰囲気と仕草だけで、部下たちに指示を出していた。
【よし、とりあえず危機は去ったが、まだまだ油断は出来ん。各員……ジェシカ嬢にバレないように、細心の注意を払うように!】

 ジェシカは「……?」という状況だったが、他のギルド員は一様に【了解!】という雰囲気を返していた。
 やがてジェシカは、隣にいたキンバリーを見た。
「あの……いま、支部長が指示を出していませんでしたか?」
「ああ、あれは……よく支部長がやるお遊びなので、付き合ってあげてください」
「は、はあ……」


 さて、僕の部隊の中で気を付けなければならないのは……
 スカーレットのオシ活スティレットコレクションと、クロエのオシが実際に使った下着コレクションだろう。スカーレットの方はまだ、支部長を尊敬していると言えばジェシカも納得するかもしれないが、クロエよ……お前は本当にいい趣味している。
 まあ、僕としては、犯罪にかかわるようなモノでなければ、仕事さえしてくれれば文句はないけど。


 その後、僕たちはフロンティアトリトンズが攻撃を受けた際に対応できるように、塀のチェックやギルド内の見回りなど、次の襲撃が起こっても大丈夫なように、準備を進めていた。
「次の襲撃……あるのかな?」
 クロエが隣にいるスカーレットに聞くと、彼女も難しい顔をしながら答えた。
「何とも言えないよね。レア能力者や希少種族の獲得が目的なら……けっこうな数の能力者が連れ去られたみたいだし」

 キンバリーも険しい表情をしたまま言った。
「他人事ではありませんね。我々も用心しなければ……」
「うん……」


 その日の夜。
 正確な時間はわからないけれど、日付は変わってる頃かもしれない。再び街の北側に火の手が上がっていた。
「ま、また襲撃を受けているのですね」
「ああ、まさか2日連続で攻撃を仕掛けて来るなんてね……」


 早めに就寝しておいて良かったと思いながら、僕たちは万一のときに備えて迎撃の準備をした。
 恐らく、大手ギルドや新冒険者街の守備兵たちが迎え撃っているのだろうが、火の勢いが強くなっている所から、旗色は悪いように思える。

 支部長のスティレットは、渡り鳥から話を聞き終えると僕たちを見た。
『付近の住人の避難は済んでいるね?』
「はい、3分ほど前に完了しました」

 人魚の戦士ジェシカが答えると、スティレットは言った。
『魔物の一団がこのギルドに向かってきている。迎撃の準備を!』


 その言葉を聞いて、僕はまさか……と思いながら喉を動かした。
 確か、このギルドと魔物たちの進行ルートには、業界最大手のギルド【レッドトマホーク】があったはずだ。魔物の一団がここに迫ると言うことは……かなりの被害を受けたと思われる。


 スティレットは歩きながら言った。
『陣頭指揮は小生が執る。裏手の守りはミドルダガー、ギルド正門前の守りはアキノスケ小隊』
「は、はい!」

 どうやら支部長は、僕にゴールキーパーのようなポジションを任せてきた。
 彼が陣頭指揮を執るのだから大丈夫だと思うが、もし、彼と僕がしくじれば……ギルド内に避難している民間人たちに被害が出ることになる。

「アビリティ発動!」
 そう低い声でつぶやくと、僕はウマへと姿を変えた。

【アキノスケ(変身中)】

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