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24.ザ・コレクションズの恐怖

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 心の中で、オタク風の男の言ったことを否定した。
 僕が生きてきた地球でも、このツーノッパという世界でも、絶対というモノは存在しないと確信している。

 この神がもたらしたというアビリティという能力だって、閉じ込める能力があれば、必ず解き放つ能力だって存在するんだ。
 キンバリーと共に洞窟の闇に紛れたが、オタク風の男はだいたいの位置がわかるらしい。
 すぐに叫び声を上げた。

「ガーディアンたち、あそこを攻撃しろ!」
 叫び声が響くと、男の背後から無数のゴブリンたちが姿を見せて襲ってきた。その数も多く……軽く20匹はいる。

「応戦します!」
 キンバリーはそう叫ぶと同時に手を放し、その姿をあらわした。


 オタク風の男が驚くと同時に、キンバリーは周囲に炎の気を纏って無数の炎球を発射した。
 その炎の球は次々とゴブリンに命中すると、最初に向かってきた勇敢な7匹を撃退し、やや臆病そうな個体がナイフを手に向かってくる。

「アビリティ発動……!」
 僕もまた、人からウマへと変化し、黒毛馬になって最初に突っ込んできたゴブリンを蹴り飛ばした。
 すると、ゴブリンたちも僕の姿を見て委縮した。僕はいまサラブレッドタイプのウマになっているので、肩までの高さだけでも170センチくらいある。


 キンバリーはその隙を見逃さずに、更に5発の炎球を撃ち放った。
 それらの炎魔法はホーミングしながら僕を避け、次々とゴブリンたちを焼き尽くしていく。僕もまた前進してゴブリンの生き残りを蹴散らした。

 僕たちがゴブリンと戦っている間、スティレット支部長はオタク風の男に魔法攻撃を仕掛けていた。
 彼が放つ水系魔法は、狙いを外したモノでも洞窟に生えている低木をなぎ倒したり、小さい岩なら吹き飛ばす威力があるが、オタク風の男には効かないようだ。


 ゴブリンたちが片付いた後は、キンバリーも炎魔法でオタク風の男を狙い撃ちにしたが、炎が当たる瞬間に男の身体は、まるで材質が変わったかのように歪んで、炎の球が突き抜けていく。

 スティレット支部長が風系の魔法を放っても、男の身体を通過していった。まるでコイツの身体は煙でできているかのようだ。
「まるで、スカーレットの時と同じだ……いったい、どうなっているんだ?」


 僕たちの目に映っている男は、あくまでホログラムのような偽物で、本物が別の場所に居るとでもいうのだろうか。
 そう思った僕は辺りを見回していたが、目を凝らしても臭いを嗅いでも、それっぽい人間は見当たらない。

 いや、それだけでなく、この男は不敵に笑って言った。
「無駄な努力、ご苦労様ぁ! 出ろ……ヴァルキュリア、アルファぁ!」

 僕はハッとすると、キンバリーの側に駆けよった。
 その直後に、物陰から現れたウェアウルフの女戦士が襲い掛かってくる。僕は自分の頭の中の手帳を捲るように女戦士への対処を考えた。

 ユニコーンキーシステム。スペース。キリン式テレパシー。ユニコーンアイ。ミニ・ホバークラフト。ユニコーンライト。ユニコーンウォーター。
 いま、僕が完全に使いこなせるのは、この技で全部だ。

 考えがまとまらないうちにウェアウルフの女戦士が迫ってきた。もう時間がない!
 僕はとっさに、ユニコーンライトを用いた。


 すると、さすがのウェアウルフの女戦士も目がくらんだようだ。
 オオカミ族は夜でも視界を失わないほど、夜目が利くため、かえって急に光を浴びると目つぶしの効果になるようだ。
 納得した僕は、更に次の1手を出した。
「ユニコーンウォーター!」


 勢いよく発射した水塊は、ウェアウルフの女戦士の顔面に命中した。
 女戦士は訳も分からないうちに転倒したと見え、頭を岩に打ち付けて蒸発していく。やった……そう思った直後だった。
「上だ! 2人とも!!」


 スティレット支部長の声を聞いた僕は、すぐに視線を上げた。
 そこにはもう一人。有翼人の女戦士が急降下してきており、オタク風の男を攻撃しようとしていたキンバリーの不意を突く形で組み伏せていた。

 僕はすぐにフォローに入ろうとしたが、有翼人の女戦士がキンバリーの首筋にナイフを突きつけたため、止まらざるを得なかった。
「よぉぉしっ……でかしたぞぉ、ヴァルキュリアベータ!」

 オタク風の男が叫ぶと同時に、有翼人の女戦士とキンバリーの姿が消え、男の手には透明な石が現れていた。
 その中には……囚われてしまったキンバリーの姿があった。


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