13 / 55
12.頼りになる彼女
しおりを挟む
キンバリーは、恥ずかしそうに僕を見ていた。
「申し訳ありません。私が見張るはずだったのに……眠ってしまっていたなんて……」
「あんな目に遭ったんだから、疲れが溜まっていて当然だよ。それよりも邪竜のねぐら……だったよね?」
邪竜のねぐらという話をすると、キンバリーは頷いた。
「……はい。あそこからは、様々な古代器や薬の素材などが見つかっています。きっと、アキノスケ様もご満足いただけると思います」
その言葉を待っていた。
僕は満足しながら頷くと、後ろ脚を下げてお座りのようなポーズを取った。
「それは楽しみだ! 早速、新冒険者街を目指そう!」
「わかりました」
キンバリーを背中に乗せると、僕はゆっくりとした足取りで歩き出した。
「歩きやすいね。もしかして……エルフの道?」
「はい。ここまで離れればウェアウルフたちも追ってはこないと思いまして……」
「心配しなくても大丈夫だよ。今の僕はウマだから前よりも監視できるし、いざとなったら振り切ってみせる」
「では、私もお役に立てるように頑張ります」
強気なことを言っていても、やはりキンバリーに頼らないと旅一つできないのが僕である。
なにせ、樹海の中を歩いた経験なんて物はないから。彼女に行先をナビしてもらわないと、どこに進めばいいのかわからないのだ。
しかもキンバリーは木の実が成っている場所や、沢のある場所を見つけて小休憩を入れられるようにもしてくれている。特に喉が渇いたときは、彼女の能力はとても重宝した。
いくらウマのような見た目になると言っても、生水を飲んだらお腹を壊してしまう。
そこで彼女は荷物からバケツを取り出すと、沢の水をすくってから魔法で水をろ過する魔法を使ってくれた。
「便利な魔法だね」
「元々は、【チャージウォーター】というアビリティだったようです」
ウォーターチャージ。如何にもという雰囲気の名前だけど、どういう能力だったんだろう。
「どういうアビリティなの?」
「砂漠のように水気のない場所でも、水を出現させる固有特殊能力だったそうです。とても便利なので魔法使いたちが魔法化しようと努力した結果……様々な魔法が出ました」
僕は自分の目の前にあるバケツを眺めた。
「この水のろ過魔法も……その研究の成果というわけだね?」
「はい、この魔法は【フィルトレーション】と言います。他にも……」
彼女はそういうと、指を折りながら説明を始めた。
「大気の水分から水を集める魔法や、地面から水を集める魔法。海水を水と塩などに分離する魔法。植物から水分を取り出して乾燥させる魔法などもあります」
ほえ~~という感じで聞き流してしまいそうな会話だが、この1つ1つの魔法を作るために、魔法使いたちは昼夜を問わずに研究を重ねて苦労したのだろう。
これらの魔法を作りたくても実用化までいかずに、一生を終えてしまった魔法使いも星の数ほどいると考えると、彼らの努力には頭が下がる。
「それらの魔法について……もう少し踏み込んだ話を聞きたいな」
そう伝えると、キンバリーは丁寧に魔法1つ1つの構造を説明してくれた。
まだまだ若いというのに、思わず感心してしまうほど彼女の説明は上手で、脳内にその魔法を使っている光景が思い浮かんでくる。
おおよそ30分ほどで、全ての説明を聞き終えると、僕は実際にそれらの魔法を使ってみた。
まずは水をろ過し、次に大気の湿気から水を集め、3番目に湧き水からミネラルを取り出し、最後に植物から少しだけど水を出したとき……僕の中でひらめきが起こった。
――固有魔法【ユニコーンウォーター】
これは簡単に言えば、最も調達しやすい場所から水分を集める魔法だ。
結局やっているのは、5つの水調達魔法のどれかを使っているだけなのだが、どの方法が自分や周りの環境に負担が少ないのかを自動的に見つけ出してくれるという特徴がある。
試しに、目の前にある泉に使ってみると、同じくらいの透明度が実現できた。
「ほ、本当にきれいな水ですね……」
「すこし身体を洗っておこうかな。そろそろ街道に出るんだよね?」
そう伝えると、キンバリーは微笑んだ。
「それなら、身体のお手入れはお任せください!」
「申し訳ありません。私が見張るはずだったのに……眠ってしまっていたなんて……」
「あんな目に遭ったんだから、疲れが溜まっていて当然だよ。それよりも邪竜のねぐら……だったよね?」
邪竜のねぐらという話をすると、キンバリーは頷いた。
「……はい。あそこからは、様々な古代器や薬の素材などが見つかっています。きっと、アキノスケ様もご満足いただけると思います」
その言葉を待っていた。
僕は満足しながら頷くと、後ろ脚を下げてお座りのようなポーズを取った。
「それは楽しみだ! 早速、新冒険者街を目指そう!」
「わかりました」
キンバリーを背中に乗せると、僕はゆっくりとした足取りで歩き出した。
「歩きやすいね。もしかして……エルフの道?」
「はい。ここまで離れればウェアウルフたちも追ってはこないと思いまして……」
「心配しなくても大丈夫だよ。今の僕はウマだから前よりも監視できるし、いざとなったら振り切ってみせる」
「では、私もお役に立てるように頑張ります」
強気なことを言っていても、やはりキンバリーに頼らないと旅一つできないのが僕である。
なにせ、樹海の中を歩いた経験なんて物はないから。彼女に行先をナビしてもらわないと、どこに進めばいいのかわからないのだ。
しかもキンバリーは木の実が成っている場所や、沢のある場所を見つけて小休憩を入れられるようにもしてくれている。特に喉が渇いたときは、彼女の能力はとても重宝した。
いくらウマのような見た目になると言っても、生水を飲んだらお腹を壊してしまう。
そこで彼女は荷物からバケツを取り出すと、沢の水をすくってから魔法で水をろ過する魔法を使ってくれた。
「便利な魔法だね」
「元々は、【チャージウォーター】というアビリティだったようです」
ウォーターチャージ。如何にもという雰囲気の名前だけど、どういう能力だったんだろう。
「どういうアビリティなの?」
「砂漠のように水気のない場所でも、水を出現させる固有特殊能力だったそうです。とても便利なので魔法使いたちが魔法化しようと努力した結果……様々な魔法が出ました」
僕は自分の目の前にあるバケツを眺めた。
「この水のろ過魔法も……その研究の成果というわけだね?」
「はい、この魔法は【フィルトレーション】と言います。他にも……」
彼女はそういうと、指を折りながら説明を始めた。
「大気の水分から水を集める魔法や、地面から水を集める魔法。海水を水と塩などに分離する魔法。植物から水分を取り出して乾燥させる魔法などもあります」
ほえ~~という感じで聞き流してしまいそうな会話だが、この1つ1つの魔法を作るために、魔法使いたちは昼夜を問わずに研究を重ねて苦労したのだろう。
これらの魔法を作りたくても実用化までいかずに、一生を終えてしまった魔法使いも星の数ほどいると考えると、彼らの努力には頭が下がる。
「それらの魔法について……もう少し踏み込んだ話を聞きたいな」
そう伝えると、キンバリーは丁寧に魔法1つ1つの構造を説明してくれた。
まだまだ若いというのに、思わず感心してしまうほど彼女の説明は上手で、脳内にその魔法を使っている光景が思い浮かんでくる。
おおよそ30分ほどで、全ての説明を聞き終えると、僕は実際にそれらの魔法を使ってみた。
まずは水をろ過し、次に大気の湿気から水を集め、3番目に湧き水からミネラルを取り出し、最後に植物から少しだけど水を出したとき……僕の中でひらめきが起こった。
――固有魔法【ユニコーンウォーター】
これは簡単に言えば、最も調達しやすい場所から水分を集める魔法だ。
結局やっているのは、5つの水調達魔法のどれかを使っているだけなのだが、どの方法が自分や周りの環境に負担が少ないのかを自動的に見つけ出してくれるという特徴がある。
試しに、目の前にある泉に使ってみると、同じくらいの透明度が実現できた。
「ほ、本当にきれいな水ですね……」
「すこし身体を洗っておこうかな。そろそろ街道に出るんだよね?」
そう伝えると、キンバリーは微笑んだ。
「それなら、身体のお手入れはお任せください!」
0
お気に入りに追加
104
あなたにおすすめの小説
タブレット片手に異世界転移!〜元社畜、ダウンロード→インストールでチート強化しつつ温泉巡り始めます〜
夢・風魔
ファンタジー
一か月の平均残業時間130時間。残業代ゼロ。そんなブラック企業で働いていた葉月悠斗は、巨漢上司が眩暈を起こし倒れた所に居たため圧死した。
不真面目な天使のせいでデスルーラを繰り返すハメになった彼は、輪廻の女神によって1001回目にようやくまともな異世界転移を果たす。
その際、便利アイテムとしてタブレットを貰った。検索機能、収納機能を持ったタブレットで『ダウンロード』『インストール』で徐々に強化されていく悠斗。
彼を「勇者殿」と呼び慕うどうみても美少女な男装エルフと共に、彼は社畜時代に夢見た「温泉巡り」を異世界ですることにした。
異世界の温泉事情もあり、温泉地でいろいろな事件に巻き込まれつつも、彼は社畜時代には無かったポジティブ思考で事件を解決していく!?
*小説家になろうでも公開しております。
おウ魔王のごくごく平凡なダンジョン作成記 〜だから勇者さま、後生ですから、くれぐれも討伐には来ないで下さい〜
スィグトーネ
ファンタジー
馬モンスターのチャンスコネクター号は、緊張していた。
すでに就職活動で12連敗している彼にとって、今回の面接は決して失敗は許されない。
なぜ、それほどまでに彼が苦戦しているのかと言えば、最近の魔王たちは、採用人数を大きく絞っているからである。
近年ゴーレムの性能が上がっているため、少ない人員でもダンジョンを管理できてしまう。
魔王たちは、如何に少ない人員でダンジョンを運営するかを自慢しはじめており、巷ではコスパの良いダンジョンが持てはやされている。
だから、チャンスコネクター号も、今回の魔王に不採用と言われてしまうと、モンスター街の有力魔王で頼れる者がいなくなってしまう。
彼は緊張しながら待機していると、魔王の秘書がドアを開け……チャンスコネクターの名を呼んだ。
※この物語はフィクションです。
※また、表紙絵や物語の中に登場するイラストは、AIイラストさんで作成したモノを使っています。
バイトで冒険者始めたら最強だったっていう話
紅赤
ファンタジー
ここは、地球とはまた別の世界――
田舎町の実家で働きもせずニートをしていたタロー。
暢気に暮らしていたタローであったが、ある日両親から家を追い出されてしまう。
仕方なく。本当に仕方なく、当てもなく歩を進めて辿り着いたのは冒険者の集う街<タイタン>
「冒険者って何の仕事だ?」とよくわからないまま、彼はバイトで冒険者を始めることに。
最初は田舎者だと他の冒険者にバカにされるが、気にせずテキトーに依頼を受けるタロー。
しかし、その依頼は難度Aの高ランククエストであることが判明。
ギルドマスターのドラムスは急いで救出チームを編成し、タローを助けに向かおうと――
――する前に、タローは何事もなく帰ってくるのであった。
しかもその姿は、
血まみれ。
右手には討伐したモンスターの首。
左手にはモンスターのドロップアイテム。
そしてスルメをかじりながら、背中にお爺さんを担いでいた。
「いや、情報量多すぎだろぉがあ゛ぁ!!」
ドラムスの叫びが響く中で、タローの意外な才能が発揮された瞬間だった。
タローの冒険者としての摩訶不思議な人生はこうして幕を開けたのである。
――これは、バイトで冒険者を始めたら最強だった。という話――
異世界で生きていく。
モネ
ファンタジー
目が覚めたら異世界。
素敵な女神様と出会い、魔力があったから選ばれた主人公。
魔法と調合スキルを使って成長していく。
小さな可愛い生き物と旅をしながら新しい世界で生きていく。
旅の中で出会う人々、訪れる土地で色々な経験をしていく。
3/8申し訳ありません。
章の編集をしました。
アイスさんの転生記 ~貴族になってしまった~
うしのまるやき
ファンタジー
郡元康(こおり、もとやす)は、齢45にしてアマデウス神という創造神の一柱に誘われ、アイスという冒険者に転生した。転生後に猫のマーブル、ウサギのジェミニ、スライムのライムを仲間にして冒険者として活躍していたが、1年もしないうちに再びアマデウス神に迎えられ2度目の転生をすることになった。
今回は、一市民ではなく貴族の息子としての転生となるが、転生の条件としてアイスはマーブル達と一緒に過ごすことを条件に出し、神々にその条件を呑ませることに成功する。
さて、今回のアイスの人生はどのようになっていくのか?
地味にフリーダムな主人公、ちょっとしたモフモフありの転生記。
クラス転移で無能判定されて追放されたけど、努力してSSランクのチートスキルに進化しました~【生命付与】スキルで異世界を自由に楽しみます~
いちまる
ファンタジー
ある日、クラスごと異世界に召喚されてしまった少年、天羽イオリ。
他のクラスメートが強力なスキルを発現させてゆく中、イオリだけが最低ランクのEランクスキル【生命付与】の持ち主だと鑑定される。
「無能は不要だ」と判断した他の生徒や、召喚した張本人である神官によって、イオリは追放され、川に突き落とされた。
しかしそこで、川底に沈んでいた謎の男の力でスキルを強化するチャンスを得た――。
1千年の努力とともに、イオリのスキルはSSランクへと進化!
自分を拾ってくれた田舎町のアイテムショップで、チートスキルをフル稼働!
「転移者が世界を良くする?」
「知らねえよ、俺は異世界を自由気ままに楽しむんだ!」
追放された少年の第2の人生が、始まる――!
※本作品は他サイト様でも掲載中です。
日本列島、時震により転移す!
黄昏人
ファンタジー
2023年(現在)、日本列島が後に時震と呼ばれる現象により、500年以上の時を超え1492年(過去)の世界に転移した。移転したのは本州、四国、九州とその周辺の島々であり、現在の日本は過去の時代に飛ばされ、過去の日本は現在の世界に飛ばされた。飛ばされた現在の日本はその文明を支え、国民を食わせるためには早急に莫大な資源と食料が必要である。過去の日本は現在の世界を意識できないが、取り残された北海道と沖縄は国富の大部分を失い、戦国日本を抱え途方にくれる。人々は、政府は何を思いどうふるまうのか。
神々の仲間入りしました。
ラキレスト
ファンタジー
日本の一般家庭に生まれ平凡に暮らしていた神田えいみ。これからも普通に平凡に暮らしていくと思っていたが、突然巻き込まれたトラブルによって世界は一変する。そこから始まる物語。
「私の娘として生まれ変わりませんか?」
「………、はいぃ!?」
女神の娘になり、兄弟姉妹達、周りの神達に溺愛されながら一人前の神になるべく学び、成長していく。
(ご都合主義展開が多々あります……それでも良ければ読んで下さい)
カクヨム様、小説家になろう様にも投稿しています。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる