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11.晴れて入団が決まると……
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フェイルノートの階段に戻ってくると、小生の姿は人間フォームへと戻っていた。
それだけでなく、ゲームから排除されたアレックスたちも、鎧などを装着した状態で隣に立っていた。全員が無事で良かったと思っていると、隣にいたレティシアも安心した表情をしている。彼女もかなり心配していたのだろう。
アレックスは、すぐに小生に聞いてきた。
「ディディ、どうだった?」
「無事に勝てたよ……本当に手強い相手だった」
そう話をすれば、アレックスは満足そうに頷いたが、隣にいたケヴィンやジルーは不思議そうな表情をした。
恐らく、あの状況からどうやってゲームをひっくり返したのかが気になっているのだろう。詳しいことはレティシアが知っているので、気になっているのなら後で聞くだろう。
いつまでも階段でたむろしていると、他のギルドメンバーの邪魔になるので2階に上がると、そこにはごく普通の弓使いという感じのエルフの男性がいた。
「バンジャマンさん!」
そうレティシアが声をかけると、バンジャマンはにっこりと笑いながら言った。
「僕のしょうもないゲームに付き合ってくれてありがとう。アレックス隊長……見どころのある新人を連れて来たね」
「まさか、仕掛け人が貴方だったなんて思いませんでしたよ」
「俺もさ、すっかり騙されたぜ!」
その言葉を聞いたバンジャマンは笑った。
「最近は、新入りギルド員を装った泥棒や魔王側のスパイも多いからね。危機的な状況にパーティーが陥っても、にげない人材か……確かめる必要があったんだ」
彼は少し真顔になった。
「特に、ディディ君の場合……肉体と本人の霊力にちょっとした乖離を感じたからね」
今の言葉を聞いて小生は唸った。確かに小生がバンジャマンだったら、今の自分のようなヤツが来たら警戒するだろう。
小生はユニコーンケンタウロスだが、ウマのボディーで生活している方が多かった。だから不慣れな人間に変身したら、生命力というか霊力の巡らせ方が不自然になったのだろう。
「なるほど……同じギルド員だからって、油断は出来ない状況なんですね……」
「生きづらい世の中だよね」
バンジャマンは苦笑していたが、何かを思い出したように言った。
「そういえば、近いうちに冒険者街でホースレースがあるんだけど……君たちも参加するかい? 優勝すれば、けっこうな賞金も出るらしいが……?」
小生は少し考えてみた。
ホースレースということは地方の大会でも、優勝すればまとまった賞金が手に入るだろう。
だけど、小生は普段は人間として生活しているわけだし、一角獣としての実力はまだまだだ。下手に目立って魔王に目を付けられたりしたらたまらないし、大人しくしていた方がいい。
「……せっかくのお誘いですが、冒険者になって日も浅いので、まずは慣れたいと思います」
そう答えるとバンジャマンも、それはそうかと言いたそうな表情をして頷いた。
「それはそうだね。まずは基礎修業が大事だよ」
「わかりました」
彼と別れると、小生たちは3階部分へと上がった。
どうやらフェイルノートでは、2階部分にギルド長やギルドメンバーでも古参のメンバーなどが住んでおり、アレックスたちのような新人は3階部分で生活しているようだ。
アレックスは3階部分でも、比較的奥の方へと進んだ。
「ここが、僕たちの部屋だよ」
「ちなみに、あたしとレティシアは隣の部屋にいるから、用があったら来てね」
「ああ、わかった」
アレックスやケヴィンに案内されながら部屋へと入ると、部屋の広さは縦幅3メートル、横幅4メートルと言った感じだった。
部屋の中には2段ベッドが2つ備え付けられており、木の板の上にカーペットや毛布を敷いて、自分で柔らかさを調整するような雰囲気だ。アレックスは右側の2段ベッドの下段を使い、ケヴィンは左側のベッドの上段を使っている。彼らは仲がいいのか悪いのか……と思いながら小生は質問する。
「ベッドは空いている場所なら、好きなところを使ってもいいのかい?」
「構わないよ」
それなら、小生はケヴィンの下を使わせてもらうことにした。これなら寝ぼけてウマに変身してしまっても、寝ぼけて落下……なんて心配がなくなるので助かる。
「さて、少ししたらサウナでも入るか!」
ケヴィンが言うと、アレックスも微笑んだ。
「そうだね。いつもより早く戻ってきたし……レティシアたちを誘ってみようか」
サウナか。父さんや母さんは好きだったらしいが、おじいちゃんは苦手と言っていた。果たしてどのようなモノなのだろう。
小生たちがサウナ風呂を楽しんでいたとき、ある場所で冒険者の街の様子を、無表情で眺める魔族がいた。
その姿は女の悪魔で、吸血鬼ともコウモリの悪魔とも見える。悪魔は優越感に浸りながら冒険者に住む人々を見下すように残忍な笑みを浮かべている。
そこに手下の小悪魔が来た。
「申し上げます。作戦ナンバー18の準備が整いました!」
「わかった。予定通りに始めなさい」
「ははっ!」
小悪魔が飛び去ると、その悪魔は不敵な笑みを浮かべた。
それだけでなく、ゲームから排除されたアレックスたちも、鎧などを装着した状態で隣に立っていた。全員が無事で良かったと思っていると、隣にいたレティシアも安心した表情をしている。彼女もかなり心配していたのだろう。
アレックスは、すぐに小生に聞いてきた。
「ディディ、どうだった?」
「無事に勝てたよ……本当に手強い相手だった」
そう話をすれば、アレックスは満足そうに頷いたが、隣にいたケヴィンやジルーは不思議そうな表情をした。
恐らく、あの状況からどうやってゲームをひっくり返したのかが気になっているのだろう。詳しいことはレティシアが知っているので、気になっているのなら後で聞くだろう。
いつまでも階段でたむろしていると、他のギルドメンバーの邪魔になるので2階に上がると、そこにはごく普通の弓使いという感じのエルフの男性がいた。
「バンジャマンさん!」
そうレティシアが声をかけると、バンジャマンはにっこりと笑いながら言った。
「僕のしょうもないゲームに付き合ってくれてありがとう。アレックス隊長……見どころのある新人を連れて来たね」
「まさか、仕掛け人が貴方だったなんて思いませんでしたよ」
「俺もさ、すっかり騙されたぜ!」
その言葉を聞いたバンジャマンは笑った。
「最近は、新入りギルド員を装った泥棒や魔王側のスパイも多いからね。危機的な状況にパーティーが陥っても、にげない人材か……確かめる必要があったんだ」
彼は少し真顔になった。
「特に、ディディ君の場合……肉体と本人の霊力にちょっとした乖離を感じたからね」
今の言葉を聞いて小生は唸った。確かに小生がバンジャマンだったら、今の自分のようなヤツが来たら警戒するだろう。
小生はユニコーンケンタウロスだが、ウマのボディーで生活している方が多かった。だから不慣れな人間に変身したら、生命力というか霊力の巡らせ方が不自然になったのだろう。
「なるほど……同じギルド員だからって、油断は出来ない状況なんですね……」
「生きづらい世の中だよね」
バンジャマンは苦笑していたが、何かを思い出したように言った。
「そういえば、近いうちに冒険者街でホースレースがあるんだけど……君たちも参加するかい? 優勝すれば、けっこうな賞金も出るらしいが……?」
小生は少し考えてみた。
ホースレースということは地方の大会でも、優勝すればまとまった賞金が手に入るだろう。
だけど、小生は普段は人間として生活しているわけだし、一角獣としての実力はまだまだだ。下手に目立って魔王に目を付けられたりしたらたまらないし、大人しくしていた方がいい。
「……せっかくのお誘いですが、冒険者になって日も浅いので、まずは慣れたいと思います」
そう答えるとバンジャマンも、それはそうかと言いたそうな表情をして頷いた。
「それはそうだね。まずは基礎修業が大事だよ」
「わかりました」
彼と別れると、小生たちは3階部分へと上がった。
どうやらフェイルノートでは、2階部分にギルド長やギルドメンバーでも古参のメンバーなどが住んでおり、アレックスたちのような新人は3階部分で生活しているようだ。
アレックスは3階部分でも、比較的奥の方へと進んだ。
「ここが、僕たちの部屋だよ」
「ちなみに、あたしとレティシアは隣の部屋にいるから、用があったら来てね」
「ああ、わかった」
アレックスやケヴィンに案内されながら部屋へと入ると、部屋の広さは縦幅3メートル、横幅4メートルと言った感じだった。
部屋の中には2段ベッドが2つ備え付けられており、木の板の上にカーペットや毛布を敷いて、自分で柔らかさを調整するような雰囲気だ。アレックスは右側の2段ベッドの下段を使い、ケヴィンは左側のベッドの上段を使っている。彼らは仲がいいのか悪いのか……と思いながら小生は質問する。
「ベッドは空いている場所なら、好きなところを使ってもいいのかい?」
「構わないよ」
それなら、小生はケヴィンの下を使わせてもらうことにした。これなら寝ぼけてウマに変身してしまっても、寝ぼけて落下……なんて心配がなくなるので助かる。
「さて、少ししたらサウナでも入るか!」
ケヴィンが言うと、アレックスも微笑んだ。
「そうだね。いつもより早く戻ってきたし……レティシアたちを誘ってみようか」
サウナか。父さんや母さんは好きだったらしいが、おじいちゃんは苦手と言っていた。果たしてどのようなモノなのだろう。
小生たちがサウナ風呂を楽しんでいたとき、ある場所で冒険者の街の様子を、無表情で眺める魔族がいた。
その姿は女の悪魔で、吸血鬼ともコウモリの悪魔とも見える。悪魔は優越感に浸りながら冒険者に住む人々を見下すように残忍な笑みを浮かべている。
そこに手下の小悪魔が来た。
「申し上げます。作戦ナンバー18の準備が整いました!」
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「ははっ!」
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