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9.不毛な消耗戦

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 脱衣ブラックジャックは7回戦へと突入しようとしていた。
 奇術師の子供。×上着、×帽子、×靴、〇セーター、〇ズボン、〇ソックス、〇シャツ、〇パンツ
 ディディ。〇全身服、〇靴
 アレックス。×上着、×靴、×シャツ、〇ズボン、〇パンツ
 ケヴィン。×上着、×靴、×シャツ、×ズボン、〇パンツ
 レティシア。×上着、×靴、×シャツ、〇スカート、〇ソックス、〇下着
 ジルー。×上着、×靴、×シャツ、×ソックス、〇ズボン、〇下着
 ソフィア。×上着、×靴、×シャツ、〇スカート、〇ソックス、〇下着

 7回戦は、誰もエースを引かなかったし、さらにソフィアが3枚目を受けたった際に22を超えるアクシデントにも見舞われた。更に4枚目を受け取ったところでアレックスとジルーも立て続けにバストし、パーティーも半壊する状況となったが、ここでケヴィンの手札に奇跡が起きた。
「よし、エース来た!!」
 ケヴィンの幸運により、奇術師の子供もセーターを脱ぎ、どうにか負け試合を実質引き分けにすることができた。

 しかし続く8回戦では、誰もいいカードを引かないという不運が襲ってきた。
 これによって、アレックス、ケヴィン、さらにはジルーまでもが一気に脱落し、小生たちの目の前で3人もの仲間が一気に消滅することになった。
「ここまでか……」
 アレックスが肩を落とすと、ジルーは小生を見た。
「後は……お願いねディディ」
 その言葉を受けた小生は、あえてジルーの席に腰を下ろすことにした。隣に座っているレティシアも、姿勢を正して奇術師の子供を睨んだ。

 奇術師の子供。×上着、×帽子、×靴、×セーター、〇ズボン、〇ソックス、〇シャツ、〇パンツ
 ディディ。〇全身服、〇靴
 レティシア。×上着、×靴、×シャツ、×ソックス、〇スカート、〇下着
 ソフィア。×上着、×靴、×シャツ、×スカート、×ソックス、〇下着

 まだ小生を含めて3人残っているとも言えるが、脱衣ブラックジャックのルールを考えると、凄く不利な状況に追い込まれたと言える。このゲームはプレイヤーの頭数が減れば減るほど出題者が有利になるからだ。
「…………」
 このままじゃ負け確定だ。何か方法は無いか。頭数を1人でも増やすアイディアは……
 考えを巡らせていると、小生の能力はユニコーンケンタウロスだということを思い出した。完全にウマやヒトになるだけでなく、身体の一部でもウマに出来ないだろうか。
 今は座っているのだから、例えば足などは要らないはず。

――アビリティオン! ユニコーンケンタウロス!!

 心の中で力いっぱいに念じると、小生は両足を一時的に消滅させる代わりに、自分の背中にウマの頭や前脚を出すことに成功した。それだけでなく、覆面、シャドーロール、手綱、ウマの服、鞍、前脚のバンデージ、蹄もおまけ付きだ。
 突然のウマの登場に、奇術師の子供も驚いた様子で目を見開いていた。
「……ウマが出て来るなんて驚いたな」
「コイツも小生たちの仲間だ。人数に加えてもいいだろう?」
「あ、ああ……人数にカウントしよう」

 奇術師の子供。×上着、×帽子、×靴、×セーター、〇ズボン、〇ソックス、〇シャツ、〇パンツ
 ディディ。〇全身服、〇靴
 ドリーミング。〇覆面、〇シャドーロール、〇手綱、〇ウマの服、〇鞍、〇バンデージ、〇蹄
 レティシア。×上着、×靴、×シャツ、×ソックス、〇スカート、〇下着
 ソフィア。×上着、×靴、×シャツ、×スカート、×ソックス、〇下着

 9回戦開始と共に、奇術師の子供はカードを渡してきた。
 小生の手札は、ハート3、スペード5、合わせて8。
 ドリーミングの手札は、ダイア7、クラブ9、合わせて16。
 レティシアの手札は、クラブK、ハート5。合わせて15。
 ソフィアの手札は、ダイア6、スペードJ。合わせて16。
 この状況だと、全員が1枚ずつ引く必要がある。

 まず、小生が3枚目を引くと、クラブ4。合わせて12。
 次にドリーミングの分は、ダイアK。合わせて26でバスト。さっそくウマの服を失った。
 レティシアは、スペードの8を引きバスト。スカートを失う。
 最後にソフィア。彼女はハート6を引きバスト。遂に彼女を守るモノも全てなくなってしまった。
「ここまでのようですね……皆さんのご武運を……お祈り……」

 そう言いながらソフィアは、手札だけを残して消滅した。
 ここで勝てなければ、一気に全滅に近づいてしまう。そう思いながら小生は自分の手札を睨んだ。
「更に1枚」
「はい」
 カードを受け取ると、出てきたのはスペードの9。小生は少しだけ安堵しながら4枚のカードを奇術師の子供に見せた。
 奇術師の子供も、ソックスを脱ぐとこちらを見た。
「では、10回戦……行こうか!」
「ああ!」

 奇術師の子供はカードを切り直すと、こちらにカードを配った。
 小生の手札は、クラブK、ハート9。合わせて19
 ドリーミングの手札は、ダイア4、スペード6。合わせて10。
 レティシアの手札は、スペード7、クラブ8。合わせて15。
 1枚ずつもらうと、小生はハートのJでもちろんバスト。靴を失った。
 ドリーミングは、クラブの3。合わせて13。
 そしてレティシアは、ハートの10を引いてしまった。
「これで……私も最期……」
「いや待って! ゲームマスター」
「ん? なんだい?」
 小生はダメ元でヘリクツを並べることにした。

「よく見て、レティシアの髪の毛が、ドリーミング号のタテガミに絡まっている。彼女はプレイヤーであると同時に、ドリーミング号の衣服だ。消滅は待って欲しい!」
 さすがの奇術師の子供も、苦笑しながら小生やレティシアを眺めた。
「ま、まあいいだろう……ウマだけになったら、手札も握れないだろうしね」

 奇術師は、嫌らしい笑みを浮かべたまま言う。
「服なら服らしく、お馬さんにしがみついてて」
 そう言われたレティシアは、ドリーミング号の首を両手で抱きしめた。これで残った戦力は、小生とドリーミング号だけだ。ここからが……苦しくなりそうだ。


【パーティーリーダーのアレックス】

 アレックスチームのリーダーだが、ワンマンではなく協調・調和タイプ。
 実は祖父が異世界転移した勇者だが、勇者は好色家としても有名で、旅先で口説かれた村の少女がアレックスの祖母である。
 ただ、アレックス自身には祖父のアビリティは、それほど引き継がれてはおらず、今の段階では一端の冒険者としてくすぶってしまっている状況だ。
 アレックスから見て祖父は、尊敬できる勇者であるが、同時に異性にだらしなく、異母兄弟や親戚が何人いるかわからないという、一言では言い表せない特異な存在らしい。
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