上 下
6 / 38

6話 聖女じゃないとまた言われました

しおりを挟む

ロラン様が、打ち解けてきて、言葉遣いも穏やかになった頃、他の王子達が聖女3人を連れて、私たちの近くに来ました。

「ロラン、そんな平民に構っていないで、もっと有意義な時間を過ごしたらどうだ?」

皇太子殿下ですね。……名前は知りませんが、お辞儀をしておく。

「サカエは聖女なのだから、気にしなくていいんだよ。兄様方も、サカエを酷く言わないでください。父上に怒られますよ?」
「ロラン、聖女はこの3人のことを言う。巻き込まれただけの平民に、何が出来るというのだ?そんな事よりも、騎士団長と魔導師長の模擬戦は、見苦しいな……もう年なのか?世代交代をした方がいいね」
「我々ならば、もっと華麗に動き回れましょう」
「派手な魔法も連発できます。節約して、体力を気にする戦いほど見苦しくはありません」

何だ??この戦いを見苦しいですと!?
冗談ですか?
頭脳を駆使して、考え抜かれた動きと相手との動きの読み合い。
ベテランの域に達しているですよね。
……これ以上の動きをするの??
化け物ですか?

「凄いですね。これ以上の動きを見せてくれるのですか?」

私は聖女達に向けて話を振る。

「よくはわからないけど、見てみたいな」
「私も、魔法を使っているところを見たいです」
「剣も使うんですよね。カッコいいだろうな!」

キャイキャイ言う娘達に感化されて、イケメンな騎士団長の息子さんと魔導師長の息子さんが、次に模擬戦をすることになった。

「最近、全くここに顔を見せていないお前が、やっとでやる気を見せたか?どれだけ強くなったか、見てやろう」
「魔法の一つでも覚えたか?格好つけてばかりいたお前が、どれだけの実力になったか、見てみよう」

模擬戦中断して、息子達に声をかける。

威厳からして、全く違うように見えますが?
気のせいですか?
もっと、二人の模擬戦が見ていたかったのにな。

残念に思っている私をおいて、他の聖女達は、応援の声援を送る。
……ダメでしょう?厳正なる戦いに、そんな声なんてかけるのは……。
そう思う私とは裏腹に、手を振り返す男達に、私は正直に呆れた。

ダメじゃね?こいつら……

私の思った通り、彼らは派手な技ばかり振りかざして、全くつまらない戦いをする。
派手な技ばかりなので、他の聖女達は、褒めちぎっていますが……

「サカエ、顔がつまらなそうだが……この戦いは、どう思う?」
ロラン様が、不意に聞いてきた。

私の声が他に聞かれると嫌なので、小声でロラン様に答える。
「体力が持たないですね。武器も直ぐに痛むでしょう。……何より、見所が無いです。隙だらけで、大技を仕掛けない方が、勝てそうですね」

何処から来たのか?その会話を聞いていたフラン様とコリン様は、にこやかに私のところにきて、話に加わる。
「サカエもそう思うか?……息子達に聞かせてあげたいところだ。身体能力に頼り切った動きのせいで、何も意味も成さない模擬戦になっている」
「無駄な体力、無駄な魔力、無駄な技、無駄な思考、無駄ばかり目立つ」
「やってられんわ。見てもいられんわ。これが、我が息子とは……情けない」
「騎士団長や魔導師長は世襲制ではないので、世代交代をしても、息子達に出番はない」
「悲しいかな……爺さんも、その前の爺さんも、ご先祖から、ずっとこの役職をもらっているが、ここまでだろうな。私の代で、その流れも切れるだろう」
「息子は他にもいるが、どれもパッとしない」
「平和ではなくなっているこの世の中で、力が衰えるのは、いい傾向では無い」

悲しそうな会話だ。

「サカエもそう思う?」
「ロラン様、人は何か事が起こるたびに、成長するものです。ある日突然変わることもあるかもしれません」
「変わらないこともあるよね」
「……それは、悲しいことですね。でも、周りに彼らを愛する人がいれば、目覚めるのもはやいかもしれませんね」

聖女達に模擬戦の報告をする彼らを見る。
息切れしながら、話をしている彼らには、正直興味が持てない。

体力無さ過ぎですって……。
親の1/10も戦えてなかったよね?

心でツッコミを入れていると、男どもが、私を睨んでくる。
やめてほしいです。
何もしていないのに……

「……父上達に取り入ってどうするつもりだ?聖女ではない癖に……」

聖女じゃなくていい。
自由に過ごしたいだけだ。

「……父上、その女をどうするつもりですか?」
「……何がいいたい?」
「聖女ではない女を我が家に迎えたくは無い」
「……サカエは聖女だよ」
「召喚されていても、女であっても、聖女ではない場合もあります。騙されないでください。召喚した我々が感じているのは、役にも立たない気配のみ、私にはわかるのです。構っても無駄ですよ?」

話をしても無駄だと悟ったフランは、私と向き合う。

「……息子は見る目がないな」
「……あんな小娘共よりも、ずっと良い女なのにな」

ないない。褒めちぎっても何も出ませんよ?
どうして、イケおじ様達は、私を甘やかすのでしょうか?
しおりを挟む

あなたにおすすめの小説

マイナー18禁乙女ゲームのヒロインになりました

東 万里央(あずま まりお)
恋愛
十六歳になったその日の朝、私は鏡の前で思い出した。この世界はなんちゃってルネサンス時代を舞台とした、18禁乙女ゲーム「愛欲のボルジア」だと言うことに……。私はそのヒロイン・ルクレツィアに転生していたのだ。 攻略対象のイケメンは五人。ヤンデレ鬼畜兄貴のチェーザレに男の娘のジョバンニ。フェロモン侍従のペドロに影の薄いアルフォンソ。大穴の変人両刀のレオナルド……。ハハッ、ロクなヤツがいやしねえ! こうなれば修道女ルートを目指してやる! そんな感じで涙目で爆走するルクレツィアたんのお話し。

今夜は帰さない~憧れの騎士団長と濃厚な一夜を

澤谷弥(さわたに わたる)
恋愛
ラウニは騎士団で働く事務官である。 そんな彼女が仕事で第五騎士団団長であるオリベルの執務室を訪ねると、彼の姿はなかった。 だが隣の部屋からは、彼が苦しそうに呻いている声が聞こえてきた。 そんな彼を助けようと隣室へと続く扉を開けたラウニが目にしたのは――。

一宿一飯の恩義で竜伯爵様に抱かれたら、なぜか監禁されちゃいました!

当麻月菜
恋愛
宮坂 朱音(みやさか あかね)は、電車に跳ねられる寸前に異世界転移した。そして異世界人を保護する役目を担う竜伯爵の元でお世話になることになった。 しかしある日の晩、竜伯爵当主であり、朱音の保護者であり、ひそかに恋心を抱いているデュアロスが瀕死の状態で屋敷に戻ってきた。 彼は強い媚薬を盛られて苦しんでいたのだ。 このまま一晩ナニをしなければ、死んでしまうと知って、朱音は一宿一飯の恩義と、淡い恋心からデュアロスにその身を捧げた。 しかしそこから、なぜだかわからないけれど監禁生活が始まってしまい……。 好きだからこそ身を捧げた異世界女性と、強い覚悟を持って異世界女性を抱いた男が異世界婚をするまでの、しょーもないアレコレですれ違う二人の恋のおはなし。 ※いつもコメントありがとうございます!現在、返信が遅れて申し訳ありません(o*。_。)oペコッ 甘口も辛口もどれもありがたく読ませていただいてます(*´ω`*) ※他のサイトにも重複投稿しています。

異世界は『一妻多夫制』!?溺愛にすら免疫がない私にたくさんの夫は無理です!?

すずなり。
恋愛
ひょんなことから異世界で赤ちゃんに生まれ変わった私。 一人の男の人に拾われて育ててもらうけど・・・成人するくらいから回りがなんだかおかしなことに・・・。 「俺とデートしない?」 「僕と一緒にいようよ。」 「俺だけがお前を守れる。」 (なんでそんなことを私にばっかり言うの!?) そんなことを思ってる時、父親である『シャガ』が口を開いた。 「何言ってんだ?この世界は男が多くて女が少ない。たくさん子供を産んでもらうために、何人とでも結婚していいんだぞ?」 「・・・・へ!?」 『一妻多夫制』の世界で私はどうなるの!? ※お話は全て想像の世界になります。現実世界とはなんの関係もありません。 ※誤字脱字・表現不足は重々承知しております。日々精進いたしますのでご容赦ください。 ただただ暇つぶしに楽しんでいただけると幸いです。すずなり。

つがいの皇帝に溺愛される幼い皇女の至福

ゆきむら さり
恋愛
稚拙な私の作品をHOTランキング(7/1)に入れて頂き、ありがとうございます✨ 読んで下さる皆様のおかげです🧡 〔あらすじ〕📝強大な魔帝国を治める時の皇帝オーブリー。壮年期を迎えても皇后を迎えない彼には、幼少期より憧れを抱く美しい人がいる。その美しい人の産んだ幼な姫が、自身のつがいだと本能的に悟る皇帝オーブリーは、外の世界に憧れを抱くその幼な姫の皇女ベハティを魔帝国へと招待することに……。 完結した【堕ちた御子姫は帝国に囚われる】のスピンオフ。前作の登場人物達の子供達のお話に加えて、前作の登場人物達のその後も書かれておりますので、気になる方は是非ご一読下さい🤗 ゆるふわで甘いお話し。溺愛。ハピエン♥️ ※設定などは独自の世界観でご都合主義となります。

公爵様、契約通り、跡継ぎを身籠りました!-もう契約は満了ですわよ・・・ね?ちょっと待って、どうして契約が終わらないんでしょうかぁぁ?!-

猫まんじゅう
恋愛
 そう、没落寸前の実家を助けて頂く代わりに、跡継ぎを産む事を条件にした契約結婚だったのです。  無事跡継ぎを妊娠したフィリス。夫であるバルモント公爵との契約達成は出産までの約9か月となった。  筈だったのです······が? ◆◇◆  「この結婚は契約結婚だ。貴女の実家の財の工面はする。代わりに、貴女には私の跡継ぎを産んでもらおう」  拝啓、公爵様。財政に悩んでいた私の家を助ける代わりに、跡継ぎを産むという一時的な契約結婚でございましたよね・・・?ええ、跡継ぎは産みました。なぜ、まだ契約が完了しないんでしょうか?  「ちょ、ちょ、ちょっと待ってくださいませええ!この契約!あと・・・、一体あと、何人子供を産めば契約が満了になるのですッ!!?」  溺愛と、悪阻(ツワリ)ルートは二人がお互いに想いを通じ合わせても終わらない? ◆◇◆ 安心保障のR15設定。 描写の直接的な表現はありませんが、”匂わせ”も気になる吐き悪阻体質の方はご注意ください。 ゆるゆる設定のコメディ要素あり。 つわりに付随する嘔吐表現などが多く含まれます。 ※妊娠に関する内容を含みます。 【2023/07/15/9:00〜07/17/15:00, HOTランキング1位ありがとうございます!】 こちらは小説家になろうでも完結掲載しております(詳細はあとがきにて、)

【R18】殿下!そこは舐めてイイところじゃありません! 〜悪役令嬢に転生したけど元潔癖症の王子に溺愛されてます〜

茅野ガク
恋愛
予想外に起きたイベントでなんとか王太子を救おうとしたら、彼に執着されることになった悪役令嬢の話。 ☆他サイトにも投稿しています

婚約破棄された検品令嬢ですが、冷酷辺境伯の子を身籠りました。 でも本当はお優しい方で毎日幸せです

青空あかな
恋愛
旧題:「荷物検査など誰でもできる」と婚約破棄された検品令嬢ですが、極悪非道な辺境伯の子を身籠りました。でも本当はお優しい方で毎日心が癒されています チェック男爵家長女のキュリティは、貴重な闇魔法の解呪師として王宮で荷物検査の仕事をしていた。 しかし、ある日突然婚約破棄されてしまう。 婚約者である伯爵家嫡男から、キュリティの義妹が好きになったと言われたのだ。 さらには、婚約者の権力によって検査係の仕事まで義妹に奪われる。 失意の中、キュリティは辺境へ向かうと、極悪非道と噂される辺境伯が魔法実験を行っていた。 目立たず通り過ぎようとしたが、魔法事故が起きて辺境伯の子を身ごもってしまう。 二人は形式上の夫婦となるが、辺境伯は存外優しい人でキュリティは温かい日々に心を癒されていく。 一方、義妹は仕事でミスばかり。 闇魔法を解呪することはおろか見破ることさえできない。 挙句の果てには、闇魔法に呪われた荷物を王宮内に入れてしまう――。 ※おかげさまでHOTランキング1位になりました! ありがとうございます! ※ノベマ!様で短編版を掲載中でございます。

処理中です...