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絆が試される時

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「皇帝陛下のところに行ったのね?…教えて…私は邪魔者?」

「気がついたか?早かったな。…まぁ、教師が掲示板に仕掛けを作ったのは、正解だ。クローリアの考えも間違いではない」

「帝国側は、私の能力を…嫌っているのね?」

「大方、国を乗っ取られると思ったのだろう。アレクサンドロス皇太子殿下にも話していない。帝王の独断によるものだ」

「私は…悪者なのね?そんなに帝国には我儘を言ったつもりはないのに…」

「聖女過ぎても…牽制される。人の闇に触れた気持ちはどうだ?」

意地悪な笑いからは、悪意は感じない。

「人それぞれで考えも違うのね…勉強になるわ」

「…それは本気で言っているのか?だとしたら…」

「だとしたら?」

「染めたくなるな…」

ドキッとする。
綺麗な笑みだった。

「普通は違うことを思うの?」

「そうだな…理不尽を妬み…相手を恨み…能無しの婚約者を嫌うか?」

「はっ?…こんな事で?今の私にはどうしようもない事だけど…私がもっと周りを見ていれば、気がついて対策を練れた案件でしょ?」

「…そう思える人間は少ない」

「そうかなぁ…だって、気がつく人が居るなら…回避できたわけだし…」

「これからは…どうする?」

「帝国側に…何て伝えたの?」

「…婚約破棄をスムーズにしたければ、返事としてすぐにイタズラを辞めろと…」

「無理だと思うよ?…アレクさまが許さないわ」

「アレクサンドロス皇太子殿下が…もしも、クローリア嬢を諦めることがあったら?」

「諦める程度なら…私が贖うわよ?」

「では、他に好きなものが出来て…クローリアを嫌うことになったら?」

「相手次第よね?たかがそこいらの能力のないお嬢様にアレクさまは渡せないわ」

「嫌われていても?」

「私は…そんなに気薄な人間に見えて?」

「では、相手が完璧で、周りから理想のカップルに見えて…幸せが約束されて…アレクサンドロス皇太子殿下が心底惚れて、クローリアをに邪魔に思ったとしたら?」

「ふふっ…そんなに喋る所を始めたて見たわ!…そうねー…私もそうなったら、諦めるしかないわね。でも、そうならないように抵抗すると思うわ」

「美しい笑顔を…汚したくなるな…。では問題だ。…誰がヒロインだ?もう、この学園には存在している。帝国側が用意したアレクサンドロス皇太子殿下の好みな女だ」

「ヒロインがいるの?」

「掲示板にもあっただろう?『ヒロインを探せ』とな…」

酷い話だ。
婚約を求めてきたのは帝国側からだった。
帝国の思惑通りに育たなかったからといって…今更私を手放すなんて…
しかも、平和的に婚約破棄⁇
あり得ない!
破棄と言っている時点で、おかしいでしょう?

「アレクさまの好みの女⁇私以外にいるの?」

独り言が漏れる。
悪役令嬢だと言っているので、私以外の令嬢が、ヒロインになる。
しかも、アレクさまはストレスにより…癒しを求めている状態になっていない筈だ!
…心配をかけている今の現状は、私のストレスにしかならない。


私を悩ませる。

ゲーム補正だと言える程の、強制力と闘うことになるとは…

神様は、私の味方だよネ?
私は、アレクさまと婚約してはいけないの?
私の幸せって何⁇




ヒロインが存在している時点で手遅れなのだとわかったのは…この会話の直後だった。







ーーーーーーーーーーーーーーーー







アレクサンドロス視点




学園を調査中に…ひとりの少女と出会う。
彼女は病気を患っていて、保健室に運んだ。
回復魔法を定期的に受けなくては死んでしまうらしい。
それ程儚い彼女は、生きられるだけ幸せだと笑った。

心がドキリと跳ねた。

リア以外に反応することのなかった…私の心は…いつも第三者的目線で…周りもそれを望んでいた。
完璧を求められて、それに答えてきた。
それに…リアと釣り合う男になりたかった。
今、その願望が…崩れていくのを感じた。

「これが…本当の愛?」

心が和む。リアにはあり得ない感情だ。だって、リアを狙うライバルが多いから、気が抜けない。
儚い彼女を一番に守りたい。リアにはあり得ない行動だ。だって、リアは私より強い。
些細な幸せ?リアにはあり得ない。絶対的な幸せを約束しないと奪われるからだ。

「愛?…私は愛し合う資格がありますか?」

彼女に妃や国母をやれと言うのは無理な事だ。
しかし、淡い恋の相手なら出来る。

「つかぬ間の思い出で良ければ…」

私は、彼女を受け入れていた。
結婚は、クローリアとすれば良い。
彼女とは、一時の戯れだ。

しかし、思いがけず…彼女の病気は直せることがわかった。
帝国の力なら、彼女を普通の令嬢のように元気にしてあげられる。
でも、そんな大々的な事をすれば、クローリアにこの一時の癒しを知られてしまう。

でも?
彼女が元気になれば…妃になれるのではないか?

彼女は、帝国の次に大きな国のお姫様だった。
教育は受けている。
今から妃の教育を受けることは簡単だと思う。

「クローリアと婚約を解消しようと思う。周りから色々言われるとは思うが、私の婚約者になってはくれないか?」

「アレクさまと共に居られるのでしたら…何があっても大丈夫です」

私は、もう歯止めはかからない。
このまま…この感情に流されて見ようと思う。

間違った判断でも…後悔はしないだろう。





全てが仕組まれた出会いに流されたアレクサンドロスは、クローリアとの別れで正気に戻るものの…
自分の気持ちを信じて、後悔しながらも…クローリアを手放すことを受け入れる。





強いはずのクローリアが、愛称も呼ばなくなった元婚約者の私に向かって…涙を流した。
その瞬間は、側に行き慰めたい衝動を持っていたが…

駆け寄る男たちの姿を見て…
クローリアには、慰めてくれる男が周りにたくさんいるのだから。

そう、アレクサンドロスは自分に言い訳をするのだった。


8歳から14までの歳月を全て闇に葬る為に…






ーーーーーーーーーーーーーーーー



とある神視点


決まっていた出会いと別れ

仕方がないことだけど…
幸せになってほしいけれど…

クローリアとアレクサンドロスはどうあっても結ばれない。

この出会いは、あるべき試練なのだ。

だから、更なる幸せの為に…

今は耐えて…クローリア

そして…

「どうか幸せになってください」



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